ドラゴンの迷路のリミテッドの構造

更新日 Latest Developments on 2013年 5月 6日

By Sam Stoddard

Sam Stoddard came to Wizards of the Coast as an intern in May 2012. He is currently a game designer working on final design and development for Magic: The Gathering.

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(訳注:この記事の原文は4月26日に掲載されたものです)

 『ドラゴンの迷路』のプレリリースの準備はできているでしょうか、我々ウィザーズ・オブ・ザ・コースト開発部の2年を越える努力がプレイヤーの経験へと変換されるのを見ることになるので、私はゲーム・デザイナーとしてとても興奮しています。私の見解では、『ドラゴンの迷路』/『ギルド門侵犯』/『ラヴニカへの回帰』は我々の作り出した中でも最良のリミテッド環境のひとつで、大人気だった往年の『ラヴニカ:ギルドの都』/『ギルドパクト』/『ディセンション』の後継者にふさわしいものです。これらから我々はリミテッド環境のデザインとデベロップについて得るものがありました。そして私はあなたに我々と同じぐらい楽しんで欲しいと思っています。

ジェーレンのスフィンクス》アート:Wesley Burt

 しかしながら、それらは偶然にこうなったわけではありませんでした。環境がそうなるまでに2年に渡ってプレイされ、デザインとデベロップの両方で多くの決断がありました。アレクシス・ヤンソン/Alexis Jansonとザック・ヒル/Zac Hillの両名は二つの大型セットを結びつけて密接な環境にするという難しい仕事を抱えていました。そして私が思うに両名は素晴らしい仕事をしました。しかしながらその仕事をしたのは彼らだけではありません。デザインとデベロップの両方の誰もが最終的に現在の環境を最終的に作り上げた決断をしています。今日の記事では、それらの点のいくつかに触れて、そしてできれば皆さんにラヴニカへの回帰・ブロック全体のリミテッドがどのように構築されているかの見識を贈ることができればと思います。

    黄金期到来の機会

 旧ラヴニカ・ブロックはマジックのデザインの成功の最高水準にありました。簡単に言うと、その次元にしばらくの間(私が開発部に入るずっと前)戻りたかったことは分かっていましたが、しかし我々は時が来るまで待たなければなりませんでした。ブロックのテーマには様々な種類があり、中でも金色はより人気がある傾向にありますが、我々は毎年それを行うことはできません。金色が何年かぶりに戻ってきたときに、我々はそれが特別なものだと感じさせるように他のテーマを経験する必要があります。

 マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterは彼のコラムでここ数週に渡って、このセットがデザインを通してどのようにしてできて行ったかを述べました。ラヴニカへの回帰ブロックが5/5/10のパターンでギルドを収録することに決定された後、その鍵となったのは10のギルドを持つセットの意義を見つけ出すことでした。我々はアラーラ再誕で全てが金色のセットを試し、そしてそれは興味深いものでしたが、ラヴニカではありませんでした。我々は多くの金色のカードが必要なことは知っていました。それらを使わずにラヴニカの成功は難しいでしょう。しかし我々はリミテッドで基本的な働きをするカードも必要とし、同時にセットを結び付けるためにより色を安定させるカードを加えました。こうした問題のうちいくつかは、リミテッドで開封されたパックがどのようにゲームを展開するかの筋書きを決めうる、レアリティを用いて対処しました。

 セットがリミテッドにおいてどのように見えるか議論するために我々が開発部で使う表現のひとつに「開封比/as-fan」があります。つまるところ、あなたがブースター・パックを開封したときにカードがどれぐらい見られるかです。我々は金色の開封比は『ドラゴンの迷路』で高くなるようにしたいことは分かっていました――サポートするべき10のギルドがあるのですから――しかし我々は『アラーラ再誕』のような14の比率は求めていませんでした。その解答はセットの中の40枚のアンコモンのうち30枚(残りの10枚は分割カード)、同じようにレアの3分の2、そして全ての神話レアを金色にすることでした。しかしコモンには10枚だけしか金色を作りませんでした。これにより我々に楽しくエキサイティングな、ギルドに根ざしたカードを作る多くの余地が得られ、そして金色に多くの単純なカードパワーを加える一方、パックの金色の開封比は5枚ぐらいに留められます。

 これの副次的な利点として、あることに我々の焦点を置かせたことがありました。ギルドに焦点を置いたデッキで接着剤の役割を果たす、より単純な単色のコモンを作ることです。アンコモンやレアは一般的にリミテッドにおいてコモンよりも強力ですから、ドラフトの焦点として最初はより強力な金色のカードを取り、それから、それほど強くないが唱えるのがより簡単で、最終的にあなたのデッキに入りそうな可能性のある単色のカードをピックすることになるでしょう。「門番」サイクルのようなカードはどのギルドの組み合わせにも適応しますし、もし完璧なマナ・カーブに沿って色が揃わなくても十分簡単にプレイできる軽視はできないこれらを見逃せないでしょう。我々のテストでは、デッキの強力カードの多くは多色である一方、マナが揃わなかったときにもゲームプレイをうまく回せるようにする、といういいバランスをもたらしてくれました。


    構造の健全さ

 大型セット単体で見たときのラヴニカへの回帰・ブロックが2色のギルドの組み合わせに(時々3色の弧に滑り込みますが)ついてのものである一方、『ドラゴンの迷路』を加えた完全なブロックでは自然と3色、もしくはそれ以上に焦点が向けられます。これは旧ラヴニカ・ブロックで起こった戦略と酷似していますが、それらの目標を達成すべく、その構造をより巧く扱っていると私は考えています。

 旧ラヴニカ・ブロックの3セットでのドラフトでは、よく理解していないと間違った方向に行くのはありがちなことでした。例えば、ドラフト経験の少ない人が最初のパックで赤緑白のボロスとセレズニアの両方にかぶったデッキに向かうのはよくあることです。2番目のパックではグルールがありますが、しかしそれらのプレイヤーは3パック目では完全に(分割カードを除いて)取るべき金色のカードがないことに気付くでしょう。

 これは4/3/3という形式の内包する欠点でした。これはそれぞれのパックでギルドをドラフトしていくといくつかのギルドの組み合わせしか行えないことを意味していました。5/5/10の順番は、3つのパック全てで、どのギルドの組み合わせでも、金色のカードを取ることを可能にしました。ボロスとオルゾフ? ラクドスがまだ『ラヴニカへの回帰』に用意されています。アゾリウスとイゼット? ボロスが『ギルド門侵犯』に用意されています。他にも色々あります。違ったギルドの様々な側面を組み合わせた、思いもよらないような楽しく興味深い方向性を与えてくれるでしょう。

 しかしながら、この構造は自由というわけではありません。我々が過去数年間により焦点を置いている事柄は、リミテッドで10の色の組み合わせ全てを与えることです。これはドラフトのフォーマットの深さを広げて、人々に10回目、15回目、あるいはそれ以降もドラフトするときに新たな行動と発見を与えるためです。これはラヴニカへの回帰・ブロックの1つのセットだけでのドラフトでは現実的な選択肢ではありませんでした。もし我々がその片方のフォーマットが悪いと考えたならばこの道筋を取っていなかったでしょうが(実際両方とも一般的には好評でした)、同時に我々はそのフォーマットがブロック構造によってそれぞれに限界を持っていると知っていました。例えば、『ラヴニカへの回帰』には素晴らしいボロスの戦略はありませんでした。『ラヴニカへの回帰』のどの2つのギルドを組み合わせても、まとまりのあるデッキを得ることはできますが(少なくとも我々はメカニズムが互いに補完しあうようにしました)、しかし一般的にドラフトにおいて行える選択肢の数を減らしていました。

 もうひとつの犠牲は、『ラヴニカへの回帰』と『ギルド門侵犯』の両方が、我々が自然に描いたリミテッド環境よりも少し速いものになったことです。これは5/5/10の環境を最適にプレイする最良の方法としてエリック・ラウアー/Erik Lauerが考えたもうひとつの新機軸でした。もし『ラヴニカへの回帰』と『ギルド門侵犯』の速度が『イニストラード』のようなセットに近いならば、2色ベースのデッキから3色ベースのデッキに切り替えて導き石のようなマナ安定器を加えたとき、その環境は一般的に楽しめると我々が考える範囲を超えて遅くなってしまうでしょう。また、セットが全部揃ったブロックでアグレッシブな戦略がどれぐらい強くなるかにも直接に影響し、最良のデッキが4色、もしくは5色に傾く危険があります。最終的にこの環境は、速度とギルドの能力の間でよいバランスが取れ、実際に深いリミテッドの経験を作り、高速と低速の両方の戦略がブロックの中で作用できるものになったと私は信じています。

[card]ラクドスの魔鍵++セレズニアの導き石[/card]

 我々は古典的な大・大・小と異なるブロック構造の実験をローウィン・ブロックで始め、それらは一般的に構築とリミテッドの両方に良い結果を生んだと私は思っています。私はゲームを新鮮に保つために時々危険を冒すことが我々ウィザーズの開発部にとって大事なことだと信じていますし、そして(率直に言って)我々が全てを考え出し、可能な限りの最良のブロック構造の作り方を既に知り尽くしていると考えるのは傲慢でしょう。『ドラゴンの迷路』のような実験は、我々によりよいリミテッドの環境を作る方法の有益な情報を与えてくれます。これはデザインとクリエイティブの目標である、よりよい物語と統合されたメカニズムの提供とデベロップの目標であるゲームのプレイを可能な限り楽しくバランスが取れたものにすることと結び付けさせます。それらの決定は、『ドラゴンの迷路』で可能な限り最良のリミテッドのフォーマットを作るのに見合う価値があったと私は信じていますが、この実験を将来再び行う価値があるかどうかを見るために、皆さんからの反響を得ることを楽しみにしています。

    マナの安定

 以前の金色が多いドラフト環境では、マナを安定させた上で他のプレイヤーと戦うか、ドラフトの初期に強力なカードを取って二流のマナ基盤に甘んじるか、の決定を求められることがしばしばありました。これはなぜかと率直に言うと、個々のマナを安定させるカードは、強すぎたか十分な数がなかったかのどちらかだったからです。我々は『ドラゴンの迷路』で初期にマナ調整のカードをできるだけ取り(セットのエキサイティングなカードを無視し)、その後強力な呪文が流れていくのはあまり見たくないものであることは分かっていました。エリック・ラウアーはその解決策を発見しました。それは、ほとんどのプレイヤーの予想よりも多くのマナ調整カードを多く作り、その結果それらのカードを必要としているプレイヤーに行き渡らせることでした。

 話は変わりますが、私の考えでは近代のリミテッド環境を良くしているもののひとつはコモンの「悪い」除去の増加です。「悪い」と言うのはプレイに値しないという意味ではなく、それをデッキにいっぱい入れたくないカードである、という意味です。全ての除去呪文を《殺害》のレベルにする必要はありません。我々が「クリーチャー1体を対象とし、それを破壊する」を5マナや6マナにしたり条件付きにする場合、人々はしばしばプレイできないとか、一般的に「悪い」と不満を漏らしますが、それらがデッキから外されるのをあまり見たことがありません。これらの呪文は爆弾カードに対処するためにデッキに入れておきたい傾向にありますが、しばしばあなたのデッキにとってより魅力的な選択肢がパックにはあるでしょう。もし正解が「ドラゴン以外はまず除去呪文を取る」ことであった場合、ドラフトのフォーマットは有意義な戦略やパターンに従うことが少なくなります。

 コモンの除去を割高や条件付きにする意味は、単純にコモンの最良のカードの多くを除去呪文ではないようにするためです。この方針の下では、もしあなたのデッキの除去が強いなら、《終止》をパスするような普通は通らない道を通るでしょうし、デッキの除去が弱ければそれを取るでしょう。これらの種類のカードは卓の周りをさらに進み、ドラフトのデッキが最終的にまとまるようにしてくれます。インベイジョンのリミテッドのときに人気があった「除去と《灰色オーガ》だけ」のデッキは少数で、そして「クリーチャーは強いけど除去がない」デッキも少数です。その代わりに皆のデッキはより興味深い構成を持つ傾向があります。余談はこれで終わりです。

ラクドスのギルド門》 アート:Eytan Zana

 『ドラゴンの迷路』のドラフトであなたは門を最初にピックできますが、しかし我々はほとんどの場合それが正解のピックではないようにしています。導き石と門の間で、あなたのマナを安定させるチャンスがあるカードはパックごとに「2と2/3枚」あります。ええ、それらは必ずしもあなたが探しているものとは限りませんが、あなたの助けになるものは卓のどこかで開けられているでしょう。その目標は、カードがそのプレイヤーがいったん色を決めてからでもそれらをピックする機会があるようにして、そしてプレイヤーを導く傾向にあった旧ラヴニカ・ブロックのバウンス土地やアラーラ・ブロックの3色土地のように、パックから開けたマナ安定器によって色を決めなくてもいいようにすることです。

    まとめ

 私はリミテッド・フォーマットについての核心的な詳細をもう2000〜3000語ぐらいは書けると確信していますが、皆さんが自分でそれを経験するための機会を得た後にしたいと思っています。我々はフォーマット多くの難しい仕事と愛を注ぎ、そして私はそれが成功することを望んでいます。

 ひとまずは、私は皆さんに我々がどうやってこの場所に到着したかについての基本を書きました。私はあなたがのようにフォーマットを楽しむかについてのあらゆる反響に、特に『ラヴニカへの回帰』単独や『ギルド門侵犯』単独と比べての反響を楽しみにしています。

サム


(Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)

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