フューチャー・フューチャーの日々・パート2

更新日 Latest Developments on 2013年 8月 26日

By Sam Stoddard

Sam Stoddard came to Wizards of the Coast as an intern in May 2012. He is currently a game designer working on final design and development for Magic: The Gathering.

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 もうひとつのフューチャー・フューチャーの日々へようこそ。今回はパート2――スタンダードではないものです。フューチャー・フューチャー・リーグについて詳しく知りたい方は、「フューチャー・フューチャーの日々」をお読みいただければ分かると思います。

 フューチャー・フューチャー・リーグ(FFL)ではそのセットを現実世界に送り出したときにスタンダードがどのようになるかについて合理的な考えを得ることができますが、それは様々な未来の可能性を見ることによるものです。我々はどのカードが強力で優れた働きをするか(そして一般的にはリスクを負うのに見合うか)、そしてどれがそうでないかを決定することによって、来年のスタンダードがどんなものになるかを選ぶいくらかの能力を持っています。もしフューチャー・フューチャー・リーグが何のリスクも背負わなかったならば、マジックはかなり退屈なものになってしまうでしょう。全ては計画されたものに基づいています。

燃え立つ復讐》 アート:Raymond Swanland

 我々がカードをプレイしてその決定を行うのはそのセットのデベロップが終わりに近づいたときで、どのカードが単体で強すぎるか、もしくはどのカードが1つのデッキにとって得るものが多すぎるかを見つけ出します。我々は健全で多様性のあるメタゲームを作ることを求め、そしてそのための唯一の良い方法は、どのデッキもセットの中から強いカードを得すぎないようにすることです。時々、人々にもう少し調整したほうが良かったとコメントされるカードがあります。それらの例の多く(例えば《闇の領域のリリアナ》の初期忠誠値など)は、もともとは人々の期待していた数値でした。我々は、たとえそのカード1枚に問題が生じたとしても、その変更がスタンダード全体のためになると感じたからこそそれらに変更を加えたのです。もちろんこれら全ては、我々が一般の人は見ることのない大きく異なったデッキが支配していたバージョンのスタンダードを過ごしてきたことを意味しています。例えば『イニストラード』の時には、我々の環境では《燃え立つ復讐》デッキが(しばらくの間)最強のデッキでした。我々はそのデッキを以前のような支配的な存在にしないようにするためにいくつかの調整を加えた結果、ついでにいくつかのデッキが我々の予想以上に強くなり、このデッキがトップメタとして再浮上することはありませんでした。これは当然の結果と言えます。もし我々の少数のプレイテスターのグループが1年後のスタンダードがどのようになるかを正確に推測できるようでは、我々は十分に興味深く複雑な環境を作ることなどできないでしょう。

 FFLでプレイしてカードの調整をする過程で、何かを壊したりそのフォーマットで最良のデッキを作り出したことの報酬は、現実世界と違ってトーナメントでの優勝ではなく、そこに入っているカードのうち何枚かが調整されるのを見ることだけです。そのことに苛立つことはありますが、しかしながらそれらは全て仕事の一部であり、個人の趣味のデッキではなくスタンダード全体のプレイの雰囲気に焦点を当てることに慣れていき、そのフォーマットで多くの楽しく興味深いことが起こるように試みるようになります。FFLの目標のひとつは、可能な限り多くの異なる奇妙でイカれたデッキを普通のデッキと同じぐらいプレイし、そのフォーマットを支配するものを何も印刷しないようにすることです。つまり片っ端から試してどうなるかを見ているわけです。

 時には、我々はカードの修正が必要だと考えることがあります。カードはマナを追加されるか変更されたり、トランプルのような能力を得たり失ったり、我々が良しとしない相互作用がある場合は新しいキーワード能力を得たりします。しかしそれは全てが弱体化されるというわけではありません。少し弱いけど楽しいカードのタフネスを上げ、その環境の最も一般的な除去で死なないようにすることもできます。我々は基本セット以外のエキスパンションでは、カードがFFLに行くまではそれを取り除かないようにしていますが、それが必要なときもあります。そのカードがFFLでテストされるまでには、それらのほとんどはリミテッドのテストが済んでいて、イラストがついてあり、我々がそれを差し替える、何か本当に良い代替案が常にはあるわけではありません。どうしても必要な場合には我々はそれをデザインしなおすことができますが、リミテッドのバランスを維持するために可能な限り最小限の調整に抑えようとします。

 基本セットに対処する場合は少し事情が違っており、カードの多くが再録のため、その古いカードが現在のスタンダード環境にない場合、我々はそれらのカードの数字を正確に調整することができません。そういうわけで、基本セットの再録カードは新しいカードよりも少し不安定です。我々は再録の大きなリスクを背負うことを、そのセットがFFLに行く前の段階にします。この場合差し替えはとても容易であるためです。

 《イーオスのレインジャー》は我々が再録しようとしたカードの一例です。このカードはエキサイティングで思い出深いものでしたが、これのカードパワーはスタンダードで使用可能な1マナクリーチャーの数と強さに直結しており、現在のスタンダードにはかなりの数の1マナクリーチャーが存在します。

ザックの黒白ゾンビ

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 これは《イーオスのレインジャー》でアドバンテージを得るために作られた様々な白黒デッキの中のひとつです。他の主なものは《ザスリッドの屍術師》を使って《宿命の旅人》を2枚持ってきたときの価値を高めたものや、全体除去から高速で復帰するために《教区の勇者》を2枚持ってくるものなどがありました。この相互作用は数ヶ月間興味深いものでしたが、このデッキは既に多くのカードを『基本セット2014』から得ており、我々は《イーオスのレインジャー》を『基本セット2014』から外すことを決断しました。これの利点は、各セットにはいくつかの新しいアートがFFLに託されるときに割り振られることです。もしあなたが《威圧する君主》をお好きなら、このカードはかつて《イーオスのレインジャー》が占めていた位置にいるカードです。我々は《修復の天使》と《スラーグ牙》がいかに現実世界で影響を与えていたかを見ており、スロットの1つを使って、それらに対して効果的なカードを作ろうと決めたのです。

イーオスのレインジャーザスリッドの屍術師

 《イーオスのレインジャー》はデベロップでとても強力なカードと見なされていたため注目されていましたが、差し替えられる必要のあるカードとして最も興味深かったのは、おおむね予想外のものでした。最初はスタンダードで無害だったものが、異なる環境では突然狂った強さを発揮します。下記のデッキはその一例です。

イアンの青白奇跡

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 なんと、《時間の把握》です。『神河物語』時代のスタンダードでは常にイマイチなカードだと見なされていて、特に《思案》と比べると非常に安全に見えました(我々が『基本セット2014』のデベロップをしていた時に、それらは現実世界のスタンダードにあったのです)。結局のところ、我々は間違っていました。《時間の把握》は奇跡のメカニズムと組み合わせるとかなり狂った強さを発揮しました。これと《熟慮》によって奇跡コストで呪文を毎ターン唱えることがかなり多く発生し、信じられないぐらい苛立たしいゲームを引き起こすことを発見しました。

時間の把握熟慮

 さて、これは《時間の把握》が全体的に見てスタンダードで強すぎるという意味ではありません。カードパワーはそのカードの周囲と直接関係があり、そして奇跡との相互作用がなければ我々は《時間の把握》を印刷できていたでしょう。そのうち、何かのセットで出会うこともあるでしょう。

 もちろん単純に再録するには強すぎると判明したカードも多くあります。また我々は新しいカードをいれてその性能を試し、そしてそれらがやりすぎにならないようにすることを求めています。

モンスの黒赤魔女

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Instant (6)
3 電謀 3 悲劇的な過ち
Artifact (2)
2 泡立つ大釜
Other (3)
3 泥沼煎じの魔女(1BBで1/1、T:イモリか大釜を得る」能力つき)
60 Cards

 ある日、モンス・ジョンソン/Mons Johnsonが赤黒の生け贄デッキに入れるまでは《泥沼煎じの魔女》は多くのテスターに初期に注目されなかった地味なカードでした。当時の《泥沼煎じの魔女》の問題は、出たターンにすぐに除去できないとクリーチャーデッキがこれに対抗するのが基本的に不可能なところでした。当時は《ただれたイモリ》と《泡立つ大釜》をアンタップ状態で戦場に出していたので、それと競うことを困難にしていました。

 《ソンバーワルドの賢者》も似たような効果になりえて、2〜3ターン目の賢者は次のターンに何でも出すことができましたが、そうするには賢者を引いてそれが次のターンまで生き残ること、そしてマナ加速して出すカードが手札にあることが要求されました。《泥沼煎じの魔女》は他のカードがあなたのデッキに入ってさえいればいいので、これはまずい事態になります。この魔女はとても除去に弱いのですが、そのマナコストはアンタップ状態のこれをあなたが構えているときのゲームに与える影響に比べて、実に低いものでした。これは1ターン目のマナエルフから2ターン目に簡単にこのカードが出せることに対してリスクの大きさが見合うものではありませんでした。この調整により、《泥沼煎じの魔女》は、いくつかの主流でない構築でプレイされるにせよスタンダードを支配しない、という我々の望む立ち位置に近いところに置かれました。

泥沼煎じの魔女ソンバーワルドの賢者

 お見せする対処困難なコンボデッキは、これだけではありません。このセットには《血なまぐさい結合》があり、『アヴァシンの帰還』の《極上の血》との無限コンボが可能です。この2枚が出てしまえば、どんなライフの増減も対戦相手のライフを0にしてしまいます。5マナのエンチャント2枚のコンボがスタンダードを壊すかどうかは疑わしいところですが、少なくともお決まりのデッキでいつもプレイするよりは少しは良いでしょう。

 これをテストするため、私は下記のデッキを組み、そして《天使の協定》とスタンダードにある他のライフを獲得すると得をするカードを入れてみました。

サムのジャンク・ライフゲイン

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 このテストは非常に調整されたデッキが生み出し、使おうと考えているカードがどのようなものかについての考えを得るのに最適です。他の場合、特にFFLの初期には多くの未テストカードと一緒に何かを入れて、何が予想以上の動きをするかを見るのに向いています。今回は後者のほうです。

 このデッキは調整された状態からは程遠いものですし、私がすばやく見つけ出した《血なまぐさい結合》と《極上の血》のコンボの動きはトップメタの戦略にならないでしょう。しかしフライデー・ナイト・マジックやそれに近いレベルで誰かが組むことができ、よく動く楽しいコンボデッキです――しかし《天使の協定》はオールスター級のカードでした。『基本セット2014』ドラフトの白緑のアーキタイプは《大食のワーム》と《天使の協定》の2枚の2マナアンコモンを中心に構築されたライフ獲得デッキでした。《天使の協定》の能力は、特にこのフォーマットの強力なライフ獲得手段を考慮するとかなり強いと見なされていました。《天使の協定》はたった2マナで、あなたがライフを得る呪文を唱える前に簡単に設置でき、最高の効率でこれをマナカーブに組み込むことが保証されていました。加えて、《ヴィズコーパの血男爵》、《交易路》、《泡立つ大釜》、《戦導者のらせん》、そして《テューンの大天使》(この時点では4/4でした)など4点以上ライフを得る手段はかなりの数がありました。我々が素早く見つけたのはこのカードは、得られる快適さよりもリスクのほうが大きいということで、《天使の協定》は4マナに引き上げられ、リミテッドで必要とされたことを満たすようにしました。

極上の血天使の協定

 もちろん、我々がフューチャー・フューチャー・リーグで作るデッキのいくつかは現実世界でプレイされることはありません。ある時はそれらは十分な強さがなく、またあるときは現実世界のメタゲームに我々が挑んだデッキが巧く納まる場所がありませんでした。今日、私はそのようなデッキのひとつをお見せしようと思います。私にはこれが現在のメタゲームでプレイするのが正しいデッキかどうかは分かりませんし、ズヴィ・モーショヴィッツ/Zvi Mowshowitzの白緑エルフがマナ加速してコンボの代わりに出す《カロニアのハイドラ》や《ウルフィーの銀心》に全体的に劣るかもしれません。ですが、このデッキはとても楽しく、やってみる価値があります。

イアンの緑白エルフ!

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 ではまた来週お会いしましょう。

サムより


(Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)

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