フューチャー・フューチャーの日々

更新日 Latest Developments on 2013年 6月 24日

By Sam Stoddard

Sam Stoddard came to Wizards of the Coast as an intern in May 2012. He is currently a game designer working on final design and development for Magic: The Gathering.

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 先週、どんな種類の記事を読んでみたいですか? という質問をしました。いただいたメールにはこのようなものがありました。「フューチャー・フューチャー・リーグって何?」「開発部の計画したメタゲームと現実のメタゲームはどれぐらい近いの?」「あと、開発部内でプレイされたカードの中で現実世界でプレイされているのを見なかったものは?」

 よろしい、その答えは順番に「かなりすごいもの」「なんとなく近いもの」「この記事を読めばわかるもの」です。

 確かに我々は、テーブルにあるカードがテストでの予想通りの方法で使われているマッチを現実世界で見かけることもあります。しかし、デッキやその構築の詳細はしばしば根本的に異なっています。例えば我々は《ボロスの反攻者》をコントロールでそれほど防御的には使いませんでした。我々は《ボロスの反攻者》と《冒涜の行動》のコンボは使いましたが、無限ライフのコンボは使いませんでした。物事は認識できましたが、同じではなかったのです。

冒涜の行動》 アート:Daarken

 ほとんどのプレイヤーが行う傾向にある事柄として、最良のデッキ(少なくとも彼らがそう感じるもの)を探し出すことと、そのデッキを最新のものにするために毎週調整し続けて、メタゲームのトップに上り詰めさせることがあります。我々の目標はそれとは異なります――フォーマットに存在する全てのデッキがすることに対して十分なカードがあるようにし、そして我々が世に出すカードのバランスを合理的に取ることです。我々はどのデッキが最良になりうるかについての理論構築に時間を費やしますが、ほとんどのプレイヤーがするような現実世界の調整と同じことをするにはカードが早く変化しすぎます。それはデベロップの後期でさえよくあることで、2〜3枚のカードが毎週調整され、それぞれが根本的な部分でメタゲームを潜在的に変化させるのです。

    フューチャー・フューチャー・リーグ

 フューチャー・フューチャー・リーグでは、献身的なプレイテスター達が毎週会議をしてカードについて語り、そして座って先週の間に手がけていたデッキで戦います。他の人が目を通せるよう、取り組んでいるデッキを投稿できる場所があり、そしてセットのリーダーは彼らがテストを望んでいるカードについて、あるいは変更されたカードについてのメモを残します。

 現在最もフューチャー・フューチャー・リーグに関係している人たちは以下の面々です。

  • エリック・ラウアー/Erik Lauer(FFL代表)
  • デイブ・ハンフリー/Dave Humpherys
  • トム・ラピル/Tom LaPille
  • ビリー・モレノ/Billy Moreno
  • マックス・マッコール/Max McCall
  • サム・ストッダート/Sam Stoddard
  • イアン・デューク/Ian Duke
  • ベン・ヘイズ/Ben Hayes
  • モンス・ジョンソン/Mons Johnson
  • ガヴィン・ヴァーヘイ/Gavin Verhey
  • スティーヴ・ワーナー/Steve Warner

 他のデザイナーや他の部門の人々もたまにやってきて、デッキを持ちより少しゲームをしますが、これらメインの人々は常に新しいデッキをその脳内から醸し出すことができるとされている人です。

 我々のフューチャー・フューチャー・リーグでの主な仕事は完璧にメタゲームを予知することではありませんが、カードの正しい位置づけを得ようと努力しています。これらの毎週の会議で議題に含まれているのは、例えばどのカードが楽しいか、どのカードがそうでないか、どのカードに追加で燃料を足せるか、どのカードが少しやりすぎか、どの戦略が強すぎると実証されたか、そしてもしひとつの戦略が強すぎる場合に安全弁として作用するよう我々が投げ入れることができるカードは何か、などです。グループ全体として一週間の間に、どのカードを調節するか、どのカードのデザインを変更するべきか、またそのカードの中の数値をいくつにするかの結論を出そうと挑みます。

    舞台裏のデッキのことは気にしない

 我々はフューチャー・フューチャー・リーグでプレイしている人々のデッキの多くを公開しない傾向にありますが、それは現実世界のメタゲームが壊れることを気にしすぎているわけではなく、単に現実世界に存在しないデッキを作る傾向にあるからです。《育殻組のヴォレル》と《思考を築く者、ジェイス》を根底としたデッキや、《真火の聖騎士》が先制攻撃と警戒の両方を元から持っていたときのボロスデッキなどは公開するのに良いとは言えないでしょう。変更のタイミングは常にあなたにお見せする情報がそろっているとは限らないのです。『ドラゴンの迷路』が最新セットとしてテストを乗り越えたときでさえ、『マジック基本セット2014』のカードは我々が『ドラゴンの迷路』のカードのバランスを取ることに影響を及ぼしました。最良のタイミング(『ドラゴンの迷路』が最新セットのとき)において、『マジック基本セット2914』の何かを損なうことなく、この相互関連性を示すのは基本的に不可能です。ですが、私は記録を調べ、FFLにあったときとさほど変わっていないカードを含むデッキの例をいくつか見つけてきました。我々がしていることの理由に関して理解を深めてもらうために、私はこれらを共有したいと思います。

[card]育殻組のヴォレル++真火の聖騎士[/card]

 我々が作ったいくつかのデッキは、スタンダードでの役割を潜在的に担うものとして我々によって安定させられ、そして我々はそれらに注目し続け、新たに醸し出したデッキの定期的な入れ替わりの中で維持されるようにします。一例として、この赤白青デルバー・デッキは多くの魔除けと《瞬唱の魔道士》からなり、重量級のフィニッシャーである《雷口のヘルカイト》をマナカーブの頂点としています。

赤白青デルバー

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 現実世界のデッキはこれよりも良く調整され(そしてより洗練されたマナ基盤を持ち)、最終的に《秘密を掘り下げる者》が抜けて《ボロスの反攻者》が入りました。とはいえ、このデッキをプレイしたことは、我々にこの手のデッキが将来的にどうプレイされることになるかについてのかなり良い判断基準となりました。いつも期待通りに行くとは限りませんが、基準として働くには十分に近いものになります。

[card]秘密を掘り下げる者++ボロスの反攻者[/card]

 我々が時々とる別の戦術は、現実世界で成功しているデッキを基に、我々が取り組んでいるセットの更新を組み入れて、それがどれぐらいの強いかのより良い展望を得ることです。我々は『アヴァシンの帰還』のデベロップの時期に《血の芸術家》を少しはプレイしていましたが、そのカードは我々が予想したよりももっと多く使われました。《殺戮の波》ゾンビ・デッキが独立トーナメントで侮れない勢力を作り出したとき、我々は『ドラゴンの迷路』でどんなゾンビが使われるかを知るためにデッキを作りました。

ゾンビ

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 このリストの中の多くのカードは現実世界でプレイされているのを見かけませんが、これは広く様々なカードを試し、それがどのようにプレイされるかを見るという我々の目的にとっては一般的に良いことです。重要な相互作用をすっかり見逃してしまうより、最初にプレイする時からいくつか最善でないカードを入れるほうが良いのです。

 FFLのプレイテストは、単に最強のデッキを試すことや明らかに強力なカードのバランスをとることだけではありません。我々は何が最強なのかについて思い違いをするもので、そして重要なのは最良のテスト用デルバー・デッキを考え出そうとする間に見落としをしないことです。我々の作るセットの中には多くのカードがあり、役割を担う候補だとは考えていなかったカードを見つけることがあるので、それらの全てと何回かゲームをしようとすることは重要です。時には、このような我々が試みるデッキは洗練されたものではなく、そしてトーナメント・デッキの中でどのように見えるかを反映するよう意図されたものでもありません。代わりに、これらのデッキはいくつかの相互作用をテストし、そして機能した場合どれぐらい強力なのかの感触を得るために作られます。このデッキは《第10管区のラヴィニア》をテストしたデッキで、彼女が戦場に出たときの能力が「点数で見たマナコストが4以下」だけでなく、「あなたの対戦相手がコントロールする全ての土地でないパーマネント」を留置していた初期の状態で作られました。

第10管区のラヴィニア

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ソーサリー (7)
4 遥か見 3 至高の評決
インスタント (9)
3 雲隠れ 3 静寂宣告 3 スフィンクスの啓示
アーティファクト (3)
3 妖術師の衣装部屋
エンチャント (3)
3 拘留の宝球
63 カード

 我々はすでに様々な人達から、彼女の能力は信じられないほどうっとおしい、という意見を受け取っており、統率者戦でどのようにプレイされるかの懸念がありました。そしてFFLのあるメンバーは最悪のシナリオがどんなものか見るためにこのデッキを投入しました。もし毎ターン《第10管区のラヴィニア》を明滅できたならどうなってしまうでしょうか? それはどんな風に見えるでしょうか? これはまだ調整段階ですが、それでもいくつかのゲームを勝ち取るのには十分でしょう。このデッキが《第10管区のラヴィニア》と《妖術師の衣装部屋》の両方をどうにかして揃えた場合、他のほとんどのデッキを倒してしまうのは当然の結末と言えます。その結果、我々は《第10管区のラヴィニア》が4マナ以下のパーマネントだけを留置するよう変更し、ほとんどのデッキが留置される範囲を越えられるようにしました。


    テストの手順

 我々はフューチャー・フューチャー・リーグのマッチとは別に数時間をとり、週に2回の定例会議を行います。しかし、しばしば誰かがデッキのアイデアを持っていたり、デベロップの会議の後でセットの状態に変更があったり、カードの再評価が必要、といった場合には週のうちどこでも誰かを捕まえてプレイします。

 我々はいつも通常のマジックのイベント規定に従っているわけではありません。まず最初に我々は変則的なマリガンのルールを使っています。土地が0、1、6、7枚のいずれかならマリガンして7枚引き直せます。我々は各対戦のゲームを少ない回数しかプレイできず、少なくとも物事の主な構想の中で、我々が行うテストが1人の2〜3連続の引きの悪さによってひどく歪められないようにするためです。また我々は誰が前のゲームで勝ったかに関わらず、交互に先攻後攻を入れ替えます。

 他に、我々が特にコンボカードやメタゲーム上のカードをテストするときに行っている重要な策として、6枚カードを引いてからそのカードを自動的に初手に加えていることがあります。アグレッシブなデッキと戦うためにデザインされた新しいカードはどのような動きをするのでしょうか? ええ、では毎ゲーム3ターン目に現れた場合の動きを見てみましょう。それが何もしない場合は、では、えー……計画段階に戻るべき時ですね。毎回ゲームに勝ってしまう場合も……ええ、これもまた計画段階に戻るべき時ですね。それは影響力があり、しかし倒せないわけではなく、サイドボード後を想定したゲームをより興味深いものにするのが理想的です。

    我々がすることをする理由

 我々のフューチャー・フューチャー・リーグでの目的は、可能な限り間違いのないカード群を作るようにすることです。我々の目標は一年後にそのセットが出たときにスタンダードで見られるであろう各デッキを正確に予想することではありません。全体的に正確であろうとするにはあまりに多くのパーツがあり、我々が予想に基づいたバランスをとろうと時間を費やしすぎた場合、たった1つのデッキの評価を誤って全てを台無しにする危険性があります。さらに、我々の目標はキッチンのテーブルからフライデー・ナイト・マジック、果てはプロツアーまであらゆる場所でプレイする何十万というマジックプレイヤーがいて、しかも存在するあらゆるデッキを成長させているという中で、その圧力に耐えうるだけの多様で複雑なメタゲームを作ることです。もし我々FFLのテスターがその費やした時間の中で、フォーマットがどのようにプレイされるかを計算できた場合は、現実世界のプレイヤー基盤はすぐにそれを解き明かしてしまうことでしょう。

 我々の予想とは異なったカードという点では、《ドムリ・ラーデ》は我々の内部のメタゲームでは大きな部分を占めていましたが、現実世界では少し使われただけでした。《絡み根の霊》は我々の主力の2マナ生物で、そして《思考を築く者、ジェイス》はフォーマットで最良のプレインズウォーカーの1人でした。何がこの違いを引き起こしたのでしょう? ええ、その理由は色々あります。《スラーグ牙》は我々の予想以上に強く、我々がそれを入れてテストしなかったバント・コントロールのようなデッキにも採用されました。これはもちろん、成功したアグロデッキの構成を変化させ、リアニメイトデッキを我々がテストしていたコンボ寄りのバージョンよりも優れたものにし、コントロールデッキに我々が使っていた勝利条件とは違うものを使うことを強制しました。幸運にも、我々はフォーマットの中にこれら全ての違いに容易に適応できる十分な余地を残しており、そしてフォーマットは依然として楽しくバランスの取れたものであり続けました。


 ここに来てから1年ちょっとが過ぎましたが、この仕事を始めたときにビリー・モレノ/Billy Morenoが教えてくれた、我々は個々のカードのパワーレベルにおいては基本的に正しく、そしてデッキの構成においては基本的に間違っているのだ、という一般的な見解が正しかったということが言えます。我々が『ドラゴンの迷路』をテストしている時にプレイした多くのカードは、それらが存在できるようにメタゲームが変化するのを待っているのかもしれません。私は『マジック基本セット2014』と『テーロス』、そしてそれらの登場によって出番を待っているカードののうちどれの出番が実現するか、それにもまして、我々が作り出した他の全てのカードがどのように動くかを見るのが楽しみです。

 サムより


(Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)

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