モダンのデベロップ

更新日 Latest Developments on 2013年 7月 1日

By Sam Stoddard

Sam Stoddard came to Wizards of the Coast as an intern in May 2012. He is currently a game designer working on final design and development for Magic: The Gathering.

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 この週末、『Modern Masters』リミテッドで行われるグランプリ・ラスベガスはグランプリの最大参加者記録を更新する見込みです―それも事前受付だけで。このことは『Modern Masters』のリミテッドがどれだけ人気のあるフォーマットか、またどれだけ人々が『Modern Masters』のカードに興奮しているかの両方を表しています。モダンは開発部内がとても興奮したフォーマットであり、そして我々はマジック全体が成長していく中でも、『Modern Masters』がより多くの人々にこのフォーマットの門戸を開く助けになるための、十分なカードを供給することを望んでいます。全体的に見て、『Modern Masters』はその仕事を立派に成し遂げてくれそうです。

タルモゴイフ》 アート:Ryan Barger

 モダンはレガシーやヴィンテージよりもはるかに参入しやすい、ローテーションのないフォーマットですが、それでも人々がそれらのフォーマットで楽しめる多くの良さを維持しています。例えばより安定したメタゲーム、毎週同じデッキをプレイして調整する能力、そして単純にスタンダードよりも強力なカードプールなどがあります。この敷居の低さは、レガシーでは不可能だったプロツアー予選のフォーマットとしての採用を可能にしました。一方で、スタンダード向けのカードをデベロップするときに、このフォーマットを破壊しないようにするというさらなる重圧を我々に課しました。

 私は以前に、我々がレガシーやモダンのためのデベロップはあまりしていない、という共通認識を聞いたことがありますが、それは完全な真実ではありません。スタンダードとリミテッドが認定トーナメントの大部分を占めており、その結果、我々の注意とデベロップのリソースの大部分がそこに振り分けられているのは真実ですが、我々はモダンやレガシー、統率者戦にも注意を向けるようにしています。我々のこのフォーマットに対するプレイテストは最小限ですが、ほとんどのデベロッパーはそのセットのデベロップの間に注意を払い続ける十分な聡明さを持っています。我々がスタンダードとリミテッドに最も注意すべきだというのは、それらのフォーマットは強力すぎるカードに対処する能力が最も少ないからで、我々がそれらのバランス取りの作業をする理由です。もし我々がカードの強さを間違えたなら(そして我々はこれからも時々間違うに違いありません)、フォーマットがそのカードの周りで歪んでしまう深刻な危機があります。

 スタンダードのためにデベロップをしているとき、我々はそのフォーマットに適する、対策となるカードが十分に含まれるようにしています。メインデッキからサイドボード、あるいはデッキに入らない状態まで、《火柱》のようなカードは踊ります。ゾンビや《復活の声》が圧倒的な場合、赤のデッキは《火柱》をメインデッキに入れて他のデッキを環境から押し出します。それに応じて、《火柱》に対しては強いが、それと入れ替えにデッキから抜けた除去(《灼熱の槍》とか)には弱いデッキが勢いを増し、そしてメタゲームは回り続けます。

火柱復活の声

 このような種類の動きをモダンやレガシーでやろうとしても、我々がセットをデベロップする持ち時間の中でははっきり言って不可能に近いでしょう。このフォーマットは非常に多くのパーツと方法が環境を出入りできるので、我々ができるベストは、本当に楽しく興味深いと感じるカードを考え出し、それらがフォーマットに対してどう働くかを見ることでした。我々は《唯々》や《死儀礼のシャーマン》のような懸念のあるカードについて多くの時間を費やして議論しますが、しかし最終的には、そのカードが今そこにある危機をフォーマットに提示しないなら、我々はリード・デベロッパーが判断するまでそれを残します。

予測されたリスク

 しかしながら、モダンの興味深さを保つことは、所々にいくつかのリスクを負うことも意味しています。もしあなたが『マジック基本セット2014』のカードギャラリーをご覧になったことがあるなら、〈テューンの大天使/Archangel of Thune〉というカードをご覧になったかもしれません。スタンダード向けのデベロップのとき、これがモダンやレガシーで《スパイクの飼育係》とのコンボで、望む数のライフと+1/+1カウンターをあなたのコントロールするクリーチャーに置く無限ループを可能にしたことが注目されました。我々はこれが引き起こす結果について議論しましたが、最終的にはたとえこれが新たにコンボパーツとして《出産の殻》デッキに適応したとしても、これらのデッキは既に違うコンボパーツでいっぱいになっており、従って〈テューンの大天使/Archangel of Thune〉は大きなリスクとはならないと判断されたので、このカードは変更されることなく生き残り『マジック基本セット2014』に収録されました。

スパイクの飼育係出産の殻

 このような2枚コンボがモダンよりもスタンダードで深刻な脅威となるかもしれないのは、使用可能な対策カードの強さと種類の差によるものです。モダンのデッキでは《マナ漏出》、《四肢切断》、《思考囲い》、《流刑への道》などのカードが使用できます。

 対策が難しいフォーマットにコンボを入れる場合、我々は注意しなければなりませんが、クリーチャー除去でなんとかなるものは比較的安全です。

 モダンにおいて我々が対処しなければならないより大きなリスクには、デッキにとって有効な、同じ効果をフォーマットに許容される限界を超えて作りすぎること(例えば《溶岩の撃ち込み》のバリエーションを印刷すると、バーンデッキが3〜4ターンで確実に20点与えられる状況にその1枚分だけ近づくのです)や、極めて効率的な2対1交換を作ってしまうことがあります。しかしながらモダンというフォーマットが発展し、そして我々がますます多くのカードを発売する中でも、このフォーマットは反発力を作り続けるべきで、そして時間が経てばより多くの脅威を対処することができるようになっていくことでしょう。

 我々が『プレインチェイス』や『マジック・ザ・ギャザリング 統率者』のような製品でレガシーと統率者戦での大きなリスクを負うことができるのは、それらがスタンダードやモダンには関係せず、レガシーのパワーレベルははるかに強力なカードの流入に対処できるからです。これらの製品の中で我々はレガシーに影響を与えることにもっと集中したカードを対象にでき、そしてそれは《悪意の大梟》、《断片無き工作員》、そして《漁る軟泥》のなどのそのフォーマットの中で役割を持ったカードをもたらしました。もちろん、カードがこれらの製品のうち1つから出てきたということで、それが永遠にレガシーだけで収まることを意味するのではありません。この記事を読んでいないあなたのために言うと、《漁る軟泥》が『マジック基本セット2014』の発売によってスタンダードとモダンにデビューするのです。このカードを過去に多くプレイして、私はこれがスタンダードに与える影響を見るのが楽しみですが、モダンでも何ができるか楽しみです。緑の2マナ生物の王《タルモゴイフ》を王座から引きずり下ろすかどうかは知りませんが、少なくとも《タルモゴイフ》の良きライバルにはなるでしょう。

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フォーマットを制御する

 デベロッパーがモダン・フォーマットの基礎を作る仕事の中で最も難しい部分の1つは、正確な禁止カードリストを定めることです。もちろん、《頭蓋骨絞め》のようなレガシーでも強すぎるカードをリストに載せるのは簡単ですが、 Magic Online Community Cupではリストに載っていなかったけども、プロツアー・フィラデルフィアの公式アナウンスの時点でリストに追加されたグレーゾーンのカードは多く存在します。

 この禁止カードリストはプレイヤーたちとウィザーズ内部の両方で多くの議論の話題となっていました。モダンの禁止カードリストのように枚数が多い禁止リストを良いと思っているわけではありませんが、今存在しているこのフォーマットにとっては今のリストが正しいと信じています。禁止カードリストには多くのプレイヤーがプレイしたい多くのカードがあります……私がプレイしたいカードもたくさん載ってます。禁止カードリストからカードを取り除くとそのフォーマットで使用可能なカードの枚数が増えますが、それは環境に存在できるデッキの数を減らしてしまう深刻なリスクを負います。モダンにおける我々の目標は、多種多様なデッキが存在し、1つの戦略が支配的すぎず、3ターンキルが安定して発生することのない環境を提供することです。《頭蓋骨絞め》や《暗黒の深部》、《垣間見る自然》や《精神を刻む者、ジェイス》のような強力なカードのうち1つがモダンの他の全てのカードと結びついた場合、必然的にその1枚のカードを中心とせざるを得ないフォーマットに変化してしまうでしょう。《思案》や《定業》のような他の禁止カードは、コンボデッキにとても多くのカードの流れをもたらし、「フェア」なデッキが競争するのが不可能に近くなります。私はこの禁止カードリストが完璧だとは思いませんが、それに極めて近いとは思っており、去年に1年にわたって多くの高レベルのイベントを通して試されたにも関わらず示された多様性はその証拠です。

頭蓋骨絞め定業

 とは言え、去年我々は《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を禁止カードリストから取り除き、そしてその変更に影響されたこのフォーマットにとても満足しています。《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》もまた、強力だが支配的ではないという我々の期待通りの範囲に入り込みました。フォーマットが進化し我々が新しいカードを加えるとともに、いくつか他のカードが禁止カードリストから取り除かれる余地があるのはもっともなことです。

モダンの進歩

 既に書いたとおり、あと1か月でモダンのプレイヤーたちは《漁る軟泥》をそのフォーマットでプレイする最初の機会を得るでしょう。モダンがフォーマットとして作られてから2年が近づき、そしてモダンを意識してデザインとデベロップがされた初めてのサイクルが発売され始めるので、私はこのフォーマットがどのように進化し続けるのかに興奮しています。我々が(机上の空論だけのバージョンではなく)実際のフォーマットでプレイする機会を得れば得るほど、そしてその中でどんな種類のデッキが現れるか見れば見るほど、我々はスタンダードを壊すことなくこのフォーマットに適応するカードをより良くデザインできるようになります。『マジック基本セット2014』、『テーロス』、そしてそれに続くセットで何が来るかを知り、私はモダンがどのように成長と適合をし続けるかを見ること、そしてこのフォーマットの奥深さを広げる新たな手段を作ることにとてもわくわくしています。

 サムより


(Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)

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