リミテッドのパワーレベル

更新日 Latest Developments on 2013年 7月 8日

By Sam Stoddard

Sam Stoddard came to Wizards of the Coast as an intern in May 2012. He is currently a game designer working on final design and development for Magic: The Gathering.

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 この間のグランプリ・ラスベガス(リンク先は英語)、そして『Modern Masters』リミテッドを見て起きたものは畏敬の念でした。『Modern Masters』は過去数年に我々が生み出したどのリミテッドのフォーマットとも異なったものです。もちろん、我々はその過去数年の最も強力なカードを選び、そしてそれらをまとめて1つの環境に入れ、結果として個々のリミテッド環境では起きなかった複雑な相互作用を可能にしたのです。

 私がグランプリ・ラスベガスであった最も好きなプレイの1つは、メリッサ・デトラ/Melissa DeToraが《来世への旅》を彼女の対戦相手のクリーチャーに唱え、その後《裂け目掃き》を唱えてそのクリーチャーをオーナーのライブラリーに戻してシャッフルしたことです。他のどのリミテッド環境でも起こらないこの相互作用を見て、楽しくなりました。


 『Modern Masters』は我々が過去10年間で生み出した中で群を抜いて複雑かつ強力なリミテッド環境で、また私は長年のプレイヤーと新しいプレイヤーの両方がどのようにその環境を受け止めたかから学ぶ、多くの教訓があると感じました。しかしながら、それはマジックのデベロッパーが次の何ヶ月かに渡って話すことなので、今日はリミテッドのパワーレベルとは何かについてお話しします。

    リミテッドのパワーレベルの格差

 様々なリミテッドのフォーマットは、一般的にそれらのコモンのパワーレベルによって定義されています。強力なアンコモンやレアは常に存在しますが、それらの現れる頻度は低いでしょう。そのセットのプレイの方法を最も定義するのは、コモンのレアリティにカードパワーがどれだけ費やされているかです。我々が今のところ気をつけているのは、コモンのパワーレベルを《闇への追放》よりも下に保つことです。つまり、あなたは《忌まわしい光景》のようなカードを時々見かけることはあっても、《氷河の光線》のようなカードをまた見かけることは滅多にないでしょう――そう、『Modern Masters』を除いては。


 大昔には、我々はセットのコモンのパワーレベルでとても大きな間違いをしていて、そしてドラフトのフォーマット全体がそれを中心に歪んでいました。あなたがかつてウルザズ・サーガ・ブロックの《黒死病》や、オンスロート・ブロックの《火花鍛冶》を相手にプレイしたことがあるのなら、私が何について話しているかお分かりでしょう。リミテッドで最強のカードのいくつかがコモンのとき、全てのドラフトはそれらにどう対処するかのプランに集中し、そしてそれはそのドラフトフォーマットを再びプレイしようとする意欲を激しく損なってしまいます。上記のうち1つを例に取ると、『オンスロート』3つでのドラフトでは、コモンでありどのドラフトでも1回以上対戦することが事実上保証されている《火花鍛冶》が存在したので、それに対処する方法を持っていない青白、青緑、白緑をドラフトすることは基本的に不可能でした。リミテッドの楽しい部分の1つは強力なアンコモンやレアを毎回プレイできるわけではないところです。もしそれらがコモンと比べて見劣りするなら、コモンばかりがプレイされて毎回のドラフトが全く同じようになるでしょう。

 我々がきっちり仕事をしていれば、リミテッドの各色はそのリミテッドのフォーマットの全てのセット間で良くバランスが取れているのですが、とは言えそのバランスがどんなものであるかは、ドラフトのフォーマットごとに変化し得ます。これは我々がそれぞれ違う感触のリミテッド環境を作る方法の1つです。カードのパワーレベルの微妙な調整によって、セットに最も良く適応するプレイの形に影響を与えるのです。

 例として、『イニストラード』の赤のコモン上位5つを順位付けしてみましょう。

    『イニストラード』

 今度は『エルドラージ覚醒』の赤のコモン上位5つ(恐らく我々が新世界秩序を始めてから最強のコモン)を順位付けしてみましょう。

    『エルドラージ覚醒』

 その次に、この2つのリストを順位付けすると、このようになります。

    『イニストラード』&『エルドラージ覚醒』

 このリストのいくつかの順位について食い違いがあるもしれませんが、要点はこの2つのリミテッドのフォーマットは、パワーレベルが非常に異なっているということです。どちらもコミュニティの評判は一般的に良いものです。『エルドラージ覚醒』はマナ加速、巨大なクリーチャー、そして横道戦略がテーマでした。これはアグレッシブな「ブロックしない」フォーマットだった『ゼンディカー』からの大きな転換でした。この感覚を成し遂げた方法は、小さなクリーチャーと戦うのにはとても良いが、巨大なエルドラージに対してはとても苦戦する強力なコモンを文字通りセットに詰め込むことでした。『イニストラード』の感触はかなり異なっており、コモンのプレイされかたがそれを際立たせました。《硫黄の流弾》は《炎の斬りつけ》や《よろめきショック》よりも大きなクリーチャーを殺せますが、その効果を最大限に発揮するために何かが死亡しなければなりません。同じように《エムラクールの孵化者》が場を荒らして巨大なエルドラージを呼ぶことと、《燃え投げの小悪魔》が場を荒らして対戦相手があえてこれを殺すことを比較すると、これら2つのセットが異なる軸の上でどのように動作したかについての、興味深い縮図が見えてきます。


    ハードルを定める

 そのセットの最良のコモンのプレイされかたが、単純に環境全体をどうプレイするかを定義するでしょう。我々が各色の最良のコモンをアグレッシブなクリーチャーにした場合、そのフォーマットは自然にとてもアグレッシブなフォーマットになるでしょう。一方で我々が強力なコントロール用カードを各色のトップコモンにしたなら、その環境は自然と遅い方向へ向かうでしょう。

 デベロップ・チームがリミテッドのセットに取り組んでいるときに多く起こる状況の1つは、各色の最良のコモンが何かを決め、そして次のような事柄が起こるようにすることです。(1)それらのカードがマナカーブの違う地点にあり、(2)各色のそのカードは基本的に違う動きをし、さらに(3)それらのカードはそのセットのテーマやメカニズムを強調する。

 各色の最良のカードが除去呪文の場合、プレイヤーがパックを開けたときにそのプレイヤーにとって最も重要な問題は「どんなデッキにしたいか?」よりも「どの色の除去を最初に取るか?」でしょう。

 デベロップチームが持つ特別な力とはもちろん、何を優れたものにするか決定する能力です。我々が通常の傾向を壊して黒の最良のコモンをドロー呪文に、そして緑最良のコモンを除去呪文にしたい場合、我々にはそうすることができます。それらは全て以前のリミテッド環境とは違う感触のリミテッド環境を作り上げるためです。

 では例として『Modern Masters』の各色の最良のコモンを選んでみましょう。

 :《静寂の捕縛》(とは言え《聖域のガーゴイル》を最良だとするもっともな意見を見たこともあります)

 :《遍歴のカゲロウ獣

 :《ラースのわな師

 :《氷河の光線

 :《放漫トカゲ

 各色のトップコモンを定義することは、その色をドラフトする経験全体を定義する助けとなります。例えば《静寂の捕縛》を初手でピックしたとき、多くのメリットがあるためレベル戦略に向かうことが推奨されます。対して、《氷河の光線》を取ることは連繋するための秘儀探しという違った方向性にあなたのデッキを導きます。《ラースのわな師》を取ることはレベルへの道を開き続けますが、彼がならず者であることは後の方のパックで《掛け鍵のフェアリー》をピックする方向へ導くかも知れません。


 もちろん、『Modern Masters』のリミテッドでこれらのシナジーが形成されたことはコモンに強力な除去が少ないことを意味しており、それは《崩老卑の囁き》と《処刑人の薬包》のようなカードをアンコモンに増やして埋め合わせるという結果を我々にもたらしました。我々は一般的により強力な除去をコモンに入れたいと思いましたが、それが多すぎないようにしたかったのです。

    より高いレアリティ

 リミテッドはそのパックのレアリティに沿って構築されることがとてもよくあります。リミテッドにおいては、アンコモンがコモンよりも強く、レアがアンコモンよりも強い傾向にあるというのは正に真実です。《シヴ山のドラゴン》は構築では大興奮するカードではないでしょうが、ほとんどのリミテッド環境であなたがパックから当てることができたならとても興奮するカードの1つです。その理由はリミテッドは一般的にデッキ作成でのシナジーとカード効率によって強さを増しますが、そのデッキをあなたが好きな方向に向けることは滅多にできないからです。あなたはパックがの中身のなすがままにされるしかありません。

 私の考えでは、『ミラディンの傷跡』リミテッドの欠点の1つはいくつかの爆弾レアがお互いに余りにもよく似た感じであることです。《鋼のヘルカイト》や、《太陽破の天使》、《蔵製錬のドラゴン》、《執行の悪魔》を見てみましょう。これらは大きく、回避能力をもったクリーチャーで、相手の場を一掃する副次的な能力を持っていました。トーナメントでプレイすることがあって、別々のゲームでそれらのうち別々の1つに負けたとしても、その内容はあまり違わないことがありえます。それどころか、ドラゴンが出てきて陣営を殺されて負けた、と感じるだけでしょう。私はこれが素晴らしい経験になるとは思いません。デベロッパーとして我々は、あなたが負けたときでさえも新しく異なった感じの経験を作るために、多彩な負け方を作ることに大きく力を費やしています。


 イニストラード・ブロックが偉大な成功を収めたと私が思うのは、その強力なレアの感触がそれぞれ違うことです。したがってそれらに負けたときでさえも、何度も同じゲームを繰り返しているようには感じさせませんでした。《オリヴィア・ヴォルダーレン》と《血統の守り手》は両方とも信じられないほど倒すのが難しい、飛行を持つ吸血鬼ですが、そのプレイパターンは大きく異なります。同じように、私は《扇動する集団》と《精神叫び》がとても多くのゲームに勝利してきたのを見ましたが、それらが動いたときの感触は大きく違うものでした。さらに、これらのレアのうち1つに対して有利なデッキは、他のものに対しては不利になることがしばしばありました。この脅威の多様性はリミテッドを繰り返し楽しんでプレイするためにとても重要だと私は考えていますし、我々はそれを進歩させていきたいと思っています。


 人々が負けても楽しいようにするというのは変な目標のように見えますが、これは間違いなくデベロップの目標です。いかなるプレイヤーであっても勝率が50%を超えるということは期待できないので、敗北時の経験が可能な限り異なって変化があるようにすることは重要なのです。

 今週はここまでです。来週は『基本セット2014』のマナ基盤のお話でご一緒しましょう。


( Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)

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