リミテッド戦術の作り方

更新日 Latest Developments on 2012年 2月 17日

By Zac Hill

Zac is a former game designer/developer for Wizards of the Coast and was the lead developer for Dragon's Maze. His articles have appeared in The Huffington Post, The Believer, and on StarCityGames.com. Currently he serves as the chief operating officer of The Future Project, a nonprofit education initiative, and holds a position as a research affiliate in the MIT Game Lab.

 私は今1週間後のための記事を書いている。これは、その頃には私は美しいハワイのホノルルでマウスとキーボードから解放されくつろいでいることを意味している。もちろん、マジックのデベロッパーとしての人生には苦難・困難・危険を伴っていることは十二分に分かっている。そのおかげでパラソルとそれに似合うフローズンのトロピカルドリンクを準備し忘れるほどに。恐ろしや!

 死ぬまで、私はこの失態を後悔するだろう。

 プロツアーでいつもしようとすることの一つに、PTをサーキットする友人たちと何回かドラフトをすることがある。これをする理由の一つは、3年近く"内側"にいるため、その実力が衰えていないかを確認するためだ。(ネタバレ警報:衰えてます。) ((再ネタバレ警報:恥ずかしい攻撃をしたことについて、今まさに考えています。)) (((例:私は2/2の《 骨塚のワーム 》がいる状態で、《 暴動の小悪魔 》で攻撃した。彼は《 夢のよじれ 》をフラッシュバックした。私は顔に手を押し付け、その力で眼鏡が壊れた。))) しかしこれは我々が想定した通りの環境になっているかを確認する大事な作業でもある。我々が仕込んだ因子が本当にうまく働いているのか? 我々が強力だと思っていたものが、実際には期待に応えられていないのではないか? 誤って将来取り除かなければならないようなカードを印刷していないか? もちろんマジック・オンラインからもたくさんの情報を収集するが、世界の上位プレイヤーと同席して昔からの方式で対戦することには代えがたい。

 この工程が、リミテッド環境の屋台骨のデザインをどのようにするかに大いに反映される。我々はDailyMTG.comで「どういった要素が良いリミテッドのゲームプレイへと導くか」についてたくさん話してきたが、ゲームプレイを保証するための工程については掘り下げた説明をしていなかった。

 おっと、今、ひらひらふわふわなんて書くところだった。そんなことをコラムで書くなんてあり得ない。今目の前にある海のそよ風が何を引き起こしたかを書きそうになったのだ、何というか、シャンプーの広告に出ている人の振る舞いについて理解できたような。そんなことを書いても、オアフ島の観光産業を促進するための役にしか立ちはしないのに。

 あー、気が散るなぁ。

 バーディ!

::ポイント::

 もし《 聖所の猫 》がここにいたら、私をじっと見つめ、その美しい絹のような毛皮で集中させてくれるだろう...

"おいで、ザック"
 

 ああ、そうだ、リミテッドだ!

 思い出した。

 セットにおけるカードというのは、文中における単語のようなもので、目的を果たすためにどれもが必要だ。現在その目的は「独立した内容としてイケていること」ということもあるが、あなたの中だけの素晴らしい想像をしてもらうためにカードにほんの少し柔軟性を残してある。開発者が養うことができる最も必要不可欠なスキルの一つは"カードを先送りにする"ことだ。――例えカードが興味をそそるものだったとしても, それは現在の環境に入るとは限らない。私は開発部に入る前、働く時間のほとんどをイケてるカードをセットに加えていくことに費やすものだと思っていた。今は、真実はそうではないということを理解している。実際には、229の素晴らしい、魅力的な呪文を用意することはたやすい――実にたやすい。デザインの終盤/デベロップの初期での仕事のほとんどは、ファイルが持つ「福袋のような感じ」を取り除いてやることなのだ。

 方向性が与えられた時、ほとんどのリミテッドフォーマットは改善するものだ――方向性が与えられた時とは、ほぼすべてのカードが、ある種の戦略に当てはまったときだ。これらの戦略は線形かもしれないし、無制限かもしれない、また、狭いかもしれないし、剛健たりえるかもしれないが、我々の目的はできるだけたくさんの実財産のかけらたちに価値を確かに与えることだ。それはなぜかというと、セットのデベロップにおけるもっとも重要なステージのうちの一つは、工程のとてもとても早い段階に訪れるからだ。ほとんどのドラフト環境においてプレイヤーは2色の組み合わせでプレイすることが推奨されているため、デベロップ・チームは部屋に集まってそれぞれの色の組み合わせが行うと思われるものの計画を立てる。通常、我々はそれぞれの組み合わせに第1、第2の戦略をあてはめる。それらには非常に一般的なもの(クリーチャーを唱えて攻撃するとか、コンバットトリックでダメージを押し通すとか)から、とても特殊なもの(あなたのライブラリーを削り、《 骨までの齧りつき 》で生きながらえながら、骨が折れる《 蜘蛛の発生 》や、《 記憶の旅 》/《 ルーンの反復 》の繰り返しでゲームを決める)まで、そして単純なもの (《 燃え立つ復讐 》を解決して、なにかフラッシュバックの呪文を唱える)から、込み入ったもの(《 感覚の剥奪 》や《 静かな旅立ち 》のような効果でテンポを崩し生きながらえ、《 血まみれの書の呪い 》をつけながら、《 グール呼びの鈴 》から《 夢のよじれ 》へつなぎ、対戦相手からのダメージと競争する)まで。大事なことはそれがまず最初に存在するということだ。一旦それらの具体化が始まったら、それらの目的が本気にできるかどうかの見当をつけられるようになる。

血まみれの書の呪い | アート: Jaime Jones

 さて、これらの戦略は何もないところからは生み出されない。これらはセットの初期のバージョンをプレイしながら生まれ、さらに私たちはその可能性を探る。このステージのキーポイントは、可能な限り個別のカードパワーとレアリティ配置がおかしな関係にないかを試したり、そのままにしたり、そして実際にどういった働きをするかを理解するために深く掘り下げていくことだ。つまるところ、"ティム"効果(またはそういったもの)を後からアンコモンに入れることはできるが、安易にある色のプレイパターン全体にタネを仕込むことはできない。潜在的な面白いと感じる何かを我々が認識すうrと、そのうち何が作用して面白くしているのかの本質を考える。その後、私たちはそれが起こるようにする。「本質でなければならないこと」が別の色からの支援を含んでいる場合、それはしばしば第1か第2の戦略の根幹となる。

 注目すべきことに、ブースターパックのクリーチャーカードの比率を下げた理由の1つは、デッキに3マナの2/2を詰め込んで最善の結果を期待するというのではなく、これらの戦略をより探しやすくするためである。イニストラードについてのコメントでよく耳にしたのは、このように適正な環境下ではプレイできるカードの比率が高いというものだ。良い結果となってうれしい――だが、一方で我々が作ったものには多数のプレイヤーが心の中で好いていないものも含まれている。我々がカード1枚1枚でのパワーレベルを平均的に弱くしたので、あなたはパワー不足を補うためにシナジーを探すことを強いられる。それはプレイヤーにちょっとした認識の飛躍をすることを求めるが、マジックをする人たちはとても賢いので、我々はそのリスクに充分見合う対価を得られると思っている。《骸骨の渋面》をエンチャントした《 腐敗した沼蛇 》か、《 月霧 》で戦闘をふき飛ばしてゲームに勝つたびに、私はこの方向性へ持って行けたことをうれしく思う。

腐敗した沼蛇
骸骨の渋面

 一旦、各色が何をしたいと求めているのか(または何をしたいと求めるべきなのか)がわかったら、我々はそのしたいことが実際に実現可能であることを保証しなければならない。私たちは、ターン終了時までペンギンアドバイザーを青くすることは、世界で最も素敵なことだ!と考えたかもしれないが、それによる勝利の可能性がないのならば、それを追い求めるのはほんのわずかなプレイヤーに過ぎないだろう。

 戦略失敗のサインとしては、戦略にカーブができていないことがある。ほとんどのプレイヤーはおそらくマナカーブという考え方についてよく知っている――マナカーブというのは1ターン目に1マナの呪文を、2ターン目には2マナの呪文を唱えられるように、呪文を点数で見たマナ・コストごとに重み付けして配分する考え方のことだ。ゆえに失敗したセットのサインの一つに、クリーチャーをベースに考えたときにこのカーブが成立していないことがあげられる。簡単に言うと、ある1色がスムーズな流れが保証されて、別の色でそれがされていなかった場合、後者はゲームに勝つのに非常に困難を伴うだろう。クリーチャーをこのカーブに沿って配分し、それを滑らかにすればこの問題を回避することができるのだ。

 しかしながら、これははじめの一歩にすぎない。それは色ごとにマナカーブに沿えばいいという単純なものではなく、それぞれの戦略ごとにマナカーブに沿う必要がある。もし (たとえば) 白黒人間生け贄デッキのコストのすべてのカードが6マナだったとすれば、私は単純にその戦略をほとんど選択しないだろう。それは他の選択に比べ、根本的に正常ではないからだ。 したがって、それらがこれらのラインに沿って適所に収まるように、私たちは、各戦略の多彩な方法でタネを散らせなければならない。

 だが、マナカーブ分配というのは重要な分配のうちのひとつにすぎない。たびたび、ある色の第1・第2戦略を分け合うときに、一方が早いとき、もう一方は分布の終盤までズルズルと遅くなるようになるものだ。これが何を意味するかというと、様々なアグロとコントロールの両方のカードをマナカーブ上に各点におく必要がある。あなたは異なるキーワード能力を持った2マナパワー2のクリーチャー4体を白のコモンに加えて仕事を終えることはできない。回避能力持ちも必要だし、コントロールデッキが生き延びるだけの時間をもたらすものも必要だし、アグロデッキにもカードが必要だ。加えて、レアリティによるパワー・タフネスの比率の微妙な差異により、フォーマットに複雑なことを入れずに深みと安定性を加えることができる。新たな言葉を加えずしてゲームプレイの価値を得ることができる。長い間、マジックにおいて3マナで2/3のクリーチャーはほぼ不可能だった。これはリソースとして有利すぎる――3マナのものを2マナのもので相打ちに取れない――その結果、1ゲーム当たりの構造的な相互作用の数が減少する。これはゲームプレイとしてよくなかった。それゆえに、我々は可能な限りたくさんのクリーチャーのパワー/タフネス・カーブについて、与えられたセットのキーワードとテーマメカニズムに沿って多様化することに挑戦した。

 もちろん、ここまでに話してきたカーブというのは(a)パーマネントと(b)それらのパーマネントの点数で見たマナコストに取り組んだものだ。現実はより繊細である。実際にはそうであるとはいえ、マナカーブによる基本的な価値付けはデッキがもっとも効率的な割合で盤面を構築できるようにするもので――そして、それゆえに、それらは確実に適切な土地を置くなりすぐに唱えることを目的としていない限り、それらの呪文は一般的にグラフ上にない。――それもまた重要で(たとえば)ある色のコンバットトリックすべてが同じ量のマナを消費するわけではない。どの種のカードゲームにおいても「防御を固めている」と「防御を捨てている」の瞬間は非常に重要で、それらの値が色を問わずに一定だとすると、必要以上にゲームの状態ははっきりと色分けられてしまう。

 同様に、ダブルシンボル呪文(マナコストがではなくといったもの)の配分もまた非常に重要で、選択には細心の注意が必要だ。もしある色に多く入れすぎると、 (a) プレイヤーはドラフトの後半でその色を選びがちとなり(b)8人のうちその色を選択するプレイヤーが少なくなり、そして(c)その色をプレイすると決めたデッキが極端にその色の比重を高めがちとなる。それほどではないにせよ、低マナ域のカーブにダブルシンボル呪文が多くあると、その色を含んだ2色のアグロデッキづくりが困難にする。逆にシングルシンボルの呪文を多くしすぎた場合――特に除去呪文――その色全体が弱くなる。その原因は、 (a)散らすことができる強力なカードが増え、そのことによりその色に特化したデッキをプレイヤーがプレイしなくなり (b)唱えやすい呪文をファーストピックしたくなり、プレイヤーを早々にその色へと引き込みその色のプールを薄くする。これが意味するのは、多くのセットで低マナ域のダブルシンボル"ごほうび"クリーチャーやダブルシンボルの除去呪文はその色を集中してドラフトしている人にごほうびを与えるもの、第1級のシングルシンボル除去呪文はファーストピックや散らす選択肢として駆り立てるものとして作られているということである。

 要約:我々がリミテッド環境をデザインするとき、各色の組み合わせについて少なくとも1つの追うべき特定の戦略があることが重要であるが――それは、ただ適当な呪文を宣言し、その呪文が何かをすることを望むだけではない。戦略が決まったら、カードやその相互作用を確認、強化して戦略が実行できるようにすることが重要である。そして、機能的なデッキで組み合わせて使えるようにするためには、デッキを構築するカードはそのカーブに従ったものでなければならない。

 もちろん、それは単に氷山の一角にすぎない。私は一目見て思う以上に大きな役割を果たすレアや神話レアに言及しさえしていない。さらに、我々が選んだ戦略を実際に機能するようにする上で、テストプレイの工程がどのような助けとなるかについてだけで数冊の本が書けるほどの話になるだろう。だが、私が述べたようにこれらは道具であり、どのようにこれらのパーツを集めて美しいものを組み立てるかは別だ。

 来週は不死クリーチャーが生まれてから死ぬまで、そして再び生を迎える点についての話題でお迎えしよう。

(Translated Shin'ichiro Tachibana / TSV. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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