再訪セットの課題

更新日 Latest Developments on 2015年 9月 11日

By Sam Stoddard

Sam Stoddard came to Wizards of the Coast as an intern in May 2012. He is currently a game designer working on final design and development for Magic: The Gathering.

 この記事が『戦乱のゼンディカー』プレビュー・ウィーク第1週の締めくくりとなりますが、今日、そして来週もまだまだ皆さんにお見せするものがあることを保証します。『戦乱のゼンディカー』は壮大なセットであり、いくつかの課題がデザインとデベロップの両チームに課せられました。このセットの目標は『エルドラージ覚醒』と『ゼンディカー』をすりあわせて何が起こったかを見ることだけではなく、両セットの優れた部分の多くを取り上げ、それらを組み合わせた特別で新しいダイナミックなプレイ環境を作り出すことです。

 『戦乱のゼンディカー』は、私が取り組む前に見た世界と全く同じところに戻った最初のセットです。私は『ドラゴンの迷路』に少し関わりましたが、『ラヴニカへの回帰』は1つもメカニズムの再利用をすることなく『ラヴニカ』へと戻りました――その世界の独自性の多くはギルドに基づいていたからです。我々が『ゼンディカー』へ戻ることを考えてみると、戻るためには上陸、エルドラージ、同盟者の全てが必要なのは分かっていましたが、それはつまりデザイン空間が限られた量しか残っていないメカニズムを再録しなければならないということを意味していました。これは、これらの再録メカニズムをどうやって懐かしさと新しさを感じさせるものにするかを考え出すときに実際に問題となりました。

 先に申し上げたとおり、これは2つの大きく異なるドラフト環境を組み合わせるということです。『ゼンディカー』は史上最速のドラフト環境の1つとして知られており、一方『エルドラージ覚醒』は最も遅いものの1つとして知られています。『エルドラージ覚醒』はいくつかの非常に独特な事柄が含まれていました。しょぼい《栄光の探求者》に限らず基本的に低マナ域がプレイに値せず、毎ターン攻撃を強制されて対戦相手にパーマネントを2つ生け贄に捧げさせる8マナ8/8を優遇する。そんな「大艦巨砲マジック」を作り出そうとしていたのです。この2つは単に混ぜただけでは機能せず、我々は『エルドラージ覚醒』の要素と『ゼンディカー』の要素を分析し、『戦乱のゼンディカー』を叙事詩の新章を感じさせるものにする方法を考え出さねばなりませんでした。

エルドラージの再構成

 エルドラージは『戦乱のゼンディカー』で最も難しい部分であると判明しました。その問題の一部は、それらが『エルドラージ覚醒』ではそのサイズによって定義されており、我々はそれらを大きくしたとしても簡単に別のセットを作れないと感じたことでした。他にも、我々はエルドラージとゼンディカー次元が実際に戦争していることを感じさせる必要があり、それはつまり落とし子によって支援されるエルドラージの巨人やその他の巨大エルドラージの他に兵隊が必要であるということでした。マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterはこの時すぐに「無色であること」によってエルドラージを定義することを思いつき、そして我々はそれで行くことに決め、例えエルドラージが得体の知れない者であっても集団としてのまとまりを感じさせる方法として欠色メカニズムを作りました。マナ・カーブの至るところに集団としてのエルドラージを作ることにより、我々はゼンディカーのデッキとは異なる方法で機能し、しかし対立するゼンディカー人のカードと混ぜることができるエルドラージ・コントロールやビートダウンを作ることができました。

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アート:James Zapata

 2つのセットを混ぜる上で大きかったのは、『エルドラージ覚醒』のエルドラージ・落とし子・トークンから『戦乱のゼンディカー』のエルドラージ・末裔・トークンに移行することでした。落とし子の課題の1つはそれらがプレイに値するようにたくさん供給しなければいけなかった一方で、実際にはチャンプブロックか巨大なエルドラージを唱えるしか使い道が無かったことでした。我々はエルドラージのデッキのプレイパターンを単にゼンディカーのデッキが息切れするまで待って、それから勝ち手段として巨大なエルドラージを唱えるだけにしたくはありませんでした。我々はエルドラージ・デッキに早いものも遅いものも全ての種類の戦略があるようにしたいと思ったのです。このセットを見てみると、緑ベースのエルドラージ・デッキがオリジナルの『ゼンディカー』ブロックの加速してデカブツを出すデッキに最も近いものです。しかしゼンディカー陣営の上陸顔負けの赤黒高速アグレッシブ戦略も持っています。さらに、我々は「コンボ」の空間に満足行く方法かつエルドラージらしさを感じさせる黒緑の生け贄デッキを用意しています。

 落とし子を1/1の末裔にするということは、複数でブロックして、そして大きなクリーチャーを倒すことに意味がありますが、またアグレッシブなデッキのアタッカーとして、そして昔ながらの方法である巨大なエルドラージを唱えることにも使えます。1/1にすることの他のアドバンテージは、エルドラージを唱えたときに大量にトークンを出さなくても良いことであり、我々はしばしば対戦相手の未来の盤面計画を妨害するだけの使えない餌を提供するのではなく、むしろゲームのあらゆる状況で強力なカードを作ることができます。

過去からの回収

 ゼンディカー陣営を考え出すことは挑戦といえど、かなり直球でした。我々は『ゼンディカー』といえば土地であり、そして上陸を再録する必要があるだろうということは分かっていました。しかし我々は上陸を最初の時と異なる雰囲気にしたかった一方で、スタンダードを18ヶ月間上陸が全てであるようにはしたくありませんでした。それを解決するために我々が『ゼンディカー』に戻ると分かったときにまず最初にしたことは、フェッチランドを『戦乱のゼンディカー』がスタンダードにある時期と全部重ならないよう十分に間隔を空けることでした。

 我々がわかっていたのは、最初の上陸が抑制されていたのはオリジナルの『ゼンディカー』発売時の除去の強さだけによるものであることでした。我々が『テーロス』ブロックの時よりも振り子を「強い除去」のほうへ少し振ろうとしているとはいえ、新しいこの環境を1ターン目《ステップのオオヤマネコ》、2ターン目《板金鎧の土百足》に対処するのに必要なカードで満たそうとはしませんでした――そして我々はスタンダードをどのようにするかを定義するような種類のゲームはないほうがよいと考えました。そのような時期がセットの寿命全体でなければ、ある程度の期間であっても問題はありません。

http://media.wizards.com/2015/images/daily/c4rd4r7_erDyfK4HqD.jpg

アート:Chris Rahn

 フェッチランドを『タルキール覇王譚』に収録することで、我々はそれらに上陸がなくても追加のカード・パワーを与える新たな道を切り開きました――『戦乱のゼンディカー』の2色土地です。基本土地タイプを持つ2色土地を『戦乱のゼンディカー』に入れると決まったときには誰もが驚いたでしょうが、私はそれらの土地について、単色デッキが存在できる一方で、上陸と『タルキール覇王譚』の楔のデッキが対等に近い条件で競う実際に強力な環境を作り出すことに素晴らしい役割を果たしたと考えています。私の考えではこれらの土地はかなり良いバランスであり、これからの6ヶ月間それらがどのようにプレイされるかを楽しみにしています。

上陸再訪

 最初の『ゼンディカー』にあった構築で使われた上陸カードを見てみると、圧倒的大多数が1〜2マナのカードです。6マナのカードよりも1マナのカードのほうが4〜5回は上陸を誘発させやすいので、これは驚くべきことではありません。しかしゼンディカーに帰ってきたとき、我々は上陸メカニズムにもう一工夫加えたいと思いました――具体的には完全に前のめりなデッキやランプ・デッキではない上陸デッキを作りたいと考えました。我々はクリーチャーを上陸以外の作戦を持ったデッキでも使う選択肢を持たせたいと思ったのです。カードの前面に強さが出ていて、毎ターン上陸しないとほとんど使い物にならない存在ではなく、上陸することで追加のボーナスを得るクリーチャーです。我々が『戦乱のゼンディカー』でどのようなカードを作りたいかという考えを示すために、《アクームの火の鳥》をご紹介しましょう。

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 このカードの目標はシンプルで、対戦相手が簡単に対処できない復活するダメージ・クロックを提供することです。初代『ゼンディカー』の《恐血鬼》のようなカードを思い起こさせるかもしれませんが、これは軽さを犠牲に回避能力を得ています。確かにスタンダードには3/3飛行を毎ターンブロックできるカードはあるかもしれませんがとても稀であり、《神々の憤怒》がスタンダードを去るので《アクームの火の鳥》に対する有効な対処手段は多くありません。私は《アクームの火の鳥》がアグレッシブなデッキの一番重いところにも、赤の濃い様々な除去の多いデッキ(マルドゥや赤黒など)のマナ・カーブの真ん中のどちらにも、手堅い選択肢になるのではないかと思っています。これはしばしば《雷破の執政》と枠を争うことになりますが、私は《アクームの火の鳥》がいくつかの対戦でプレイされるであろういくつかのアドバンテージを持っていると信じています。

ゼンディカーを旅する上でのさらなる冒険

 今週はここまでです。来週は(私の記事が掲載される同じ日にカード画像ギャラリーに全カードが掲載されるので)プレビュー・カードはありませんが、『戦乱のゼンディカー』がどのように作られたかについての詳細と、それがどのようにスタンダードに影響を与えることを我々が望んでいるかをお話しします。

 それではまた来週お会いしましょう。

サムより (@samstod)

(Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" kaoru)

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