大きさの話

更新日 Latest Developments on 2012年 4月 27日

By Zac Hill

Zac is a former game designer/developer for Wizards of the Coast and was the lead developer for Dragon's Maze. His articles have appeared in The Huffington Post, The Believer, and on StarCityGames.com. Currently he serves as the chief operating officer of The Future Project, a nonprofit education initiative, and holds a position as a research affiliate in the MIT Game Lab.

「やあ、みんな!」

「ん?」

「アヴァシンのことは聞いたかい?」

「アヴァシンの何だって?」

「彼女は、そう、帰還したとか、そんな話」

「いいねぇ」

 見てくれ、俺は知らない。ただピンと来ただけだ。ひらめきって奴だ。

 ――さておき――

 Latest Deelopment風味のアヴァシンの帰還特集にようこそ。

プレリリースで解かれる封印4月28、29日

 読者のみんなは、カードリストを見て楽しんでくれていることと思う。あと数時間で、最寄りのアヴァシンの帰還・プレリリース・イベントに行って獄庫に挑むことになるのだろう。でも、今回ここで話したい内容は、ブースターパックから出てくるカード1枚1枚に書かれているルール・テキストのことじゃない。何種類のカードが存在しているのか、というところに焦点を当てたいと思う。

 まず、なぜアヴァシンの帰還は大型セットなのか、という話。

遠い遠い昔

 マジックのセットがまるで時計の音のように大・小・小と規則正しく発売されていたころのことはよく覚えている。その頃は、それがあまりに当たり前すぎて、誰もそれを疑問にすら思わなかった。オンスロート、レギオン、スカージ。ミラディン、ダークスティール、フィフス・ドーン。神河物語、神河謀叛、神河救済。ちく、たく、たく。10月の大型セットは新しいメカニズムがスポットライトを独占できる、社交界へのデビューであり、大お披露目会であり、赤絨毯に導かれた発表会だった。その後の2つの小型セットで、第1セットで導入されたメカニズムを掘り下げ、進化させ、拡張し、新しい姿を見せるのだ。

狂気堕ち》 アート: Anthony Francisco

 率直で、非常に単純な形式だろ?

 しかし、最近5年間のうちで4年、第3セットは通常よりも多くのカードを含むことになっていた。アラーラ再誕だけが例外で、シャドウムーア、エルドラージ覚醒、アヴァシンの帰還はどれも10月のセットと同じく大型セットである。新たなるファイレクシアは大型とは言わないが、「ファイレクシア・マナ」のためにアンコモンが20種類多くなっている。

 それはなぜだろう?

 そこに疑問を持ってくれたかな。

なぜ状況を複雑にしなければならなかったのか?

 現在、マジックが好調なのは何も隠すことではない。その理由がなぜなのかを探るために、私たちはかなりの時間を費やしてきた。当然のこととして、これは特別な質問であり、特定の変数を切り離そうという試みは、私たちの仲間のやってきた何かの仕事の価値を、ある意味で無視するということになる。しかし、どういう形で切り分けようと、一つの真実は残る。それは、誰もが聞き飽きているはずの、私たちがよく口にすることだった。

大衆への呼びかけ》 アート: Christopher Moeller

 マジックは、単純であるほど健全だ。

 これまで、複雑さを減らし、参入障壁を取り除き、マジックをより直感的にし、イカしたカードを中心にするためにできるだけのことをしてきた。これは、新しいプレイヤーだけのためのことではない。マジックは活動的で活発なゲームであり、マジックを楽しいものにしている相互作用性を取り除くことなどそう簡単にできはしないと、私たちは心から信じている。異論はあるだろうし、実際に異論があるのは知っている。つまり、「ゲームをばかばかしいものにしている」――マジックはクリーチャーを唱えて何も考えずに攻撃すれば良いというものになってしまっているというのだ。だが、この意見の問題点は、マジックの最良のプレイヤーが競技イベントで飛び抜けた成績を収め続けているというところにある。私は、あるトップ8の顔ぶれが「史上最高のものの1つ」であるかどうかということについて、自分が関わってきていた11年分以上に、ウィザーズに入ってから話し合ってきた。つまりマジック界では、どちらかと言えば、表面的な複雑さではなく内包されている複雑さを理解し、それを活かして有利を得るプレイヤーが讃えられるのだと私は信じている。

 それが小型セットとどう関係するのかって?

 マジックの歴史上よくあったブロック内の役割分担として、第1セットは環境を導入し、第2セットはそれを繰り返しつつ少々のメカニズムを追加し、そして第3セットではそれらをさらに進化させた上で何かを加えることになっていた。このモデルの問題点は、第3セットは最初の2つより複雑になるということだ。少ないスペースにより多くの素材を詰め込まなければならない。もっと言えば、最初の2つのセットで最も優雅なデザインは使い尽くされてしまいがちになるので、わざわざ複雑にしようと考えなかったとしても、第3セットではカードごとで見た場合により複雑になる傾向にある。少なくとも二正面作戦を余儀なくされるわけだ。

 私たちはその問題を解決すべく様々な方法を試してきた。レギオンのよい特徴はクリーチャーに注目し、それを満載にしたことで、スカージで使うべき呪文のデザイン空間を食い尽くさずにおくことができた。しかしながら、これをする場合、大抵はより多くの問題を引き起こすだけになる。(訳注:フィフス・ドーンの)烈日により多くのデザイン空間が得られたが、そのブロックのそれまでのゲーム・プレイとは相反するものになった。アラーラ再誕の多色テーマはそれまでの2つのセットと異なる目的でのデザインを可能にしたが、そのせいでブースターを開封する際の(特にドラフトで何をピックするか考えるときの)困惑をもたらしたのだ。

 新たなるファイレクシアでは20種の追加のアンコモンを導入することでより多くのスペースを作り、「少ないスペースに素材を詰め込む」問題を回避した。この方法は他のどれよりもずっとうまく働いた。そして、2つ目の大型セットを作ることにより、この問題を完全に回避できる。確かに、より多くのメカニズムをデビューさせる必要ができ、前の2つのセットの残したものを取り除かなければならなくなる。さらに我々はブロック全体を考慮することなく、その単一のセットのために特化した機能を作ることができる(例えば、ウラモグ系デザインをこれ以上増やすことなんてうんざりする話だ)。年初の大型セットというモデルは、本質的に複雑さを緩和し、手に負えなくなることを防げるようにする。

奇妙さに向き直れ

 マジックの訴求力の中心となるものの1つに、マジックの基礎的な部分を保ったままでおもしろさを保てるように変化し続けているということろがある。これには多くのバランス問題が含まれる。アルファ版を毎年毎年出し続けることはもちろんできないし、トランプルを持った7/7のユニコーン・トークンを出す打ち消し呪文を核にしたセットを作るなんてこともできない。

知恵比べ》 アート: Erica Yang

 しばらくの間は、大−小−小モデルは問題なく使うことができていた。マジック・オンラインはまだ存在せず、人々がドラフトをするのはせいぜいで週に一回。フォーマットの環境が完全に固まってしまうまでにはセットが入れ替わるようになっていた。しかし、今はそうではない。マジックのプレイヤー人口も増え、集まってドラフトをする機会も増えた。マジック・オンラインの存在により、同時に何千というプレイヤーが同じフォーマットで30も40ものドラフトを走らせられるようになった。この現実の中で、年に数回の追加によって環境の新鮮さ、おもしろさを保てるだろうか?

 私たちは、これまで以上の変化をドラフトにもたらさなければならないということを理解した。手始めに、最新のセットからドラフトするようにしたのもこの一環だ。この変更によって、ドラフトの最初の流れに新規性が発生するし、新しいアーキタイプができるよう、第2セットに「構築の中心」になるものを入れることができる。それでも、5月にはフォーマットは古びてくるものだが――完全に新しい大型セットを作って完全に新しいドラフト環境を作ることでその問題を回避するのだ。

 ドラフトの機構を変更することで、もう一つの問題、カードの存在比率の問題に取り組むこともできた。信じるかどうかはともかく、プレイヤーには使いたいカードに触れてもらいたいと私たちは思っている。大−小−小というシステムは、そのためのものだった。特にマジック・オンラインにおいて、開封されるブースターの多くはリミテッドで使われるものだ。つまり、構築のためのカードも、リミテッドで使われた比率によって存在することになる。問題は、通常のブロックの時系列において、環境は次のように変遷するということだ。

大/大/大

小(a)/大/大

小(b)/小(a)/大

 見ての通り、通常の環境においては、第3セットは大型セットの1/6しか開封されず、第2セットも1/3しか開封されない。これによって起こるのは、大型セットの供給過多と小型セット2つの供給不足である。一方、アヴァシンの帰還モデルではどうなるか。

大(a)/大(a)/大(a)

小(a)/大(a)/大(a)

大(b)/大(b)/大(b)

 やはり小型セットは供給不足ではあるが、いくつかの視点から見て、これは良い方向への一歩である。完璧ではないが、私たちは完璧を目指している。数字は一見で分かるよりもずっと複雑なものであり、ドラフト環境だけでなくセット内に含まれるカードの総数などによっても影響を及ぼすものなのだ。

急げ!

 すでに気付いているかもしれないが、マジックの構造において第3部の多くでは世界の有様を変えてしまうような大激変が起こっている。世界を善の側に変えること(アヴァシンが戻った!)もあれば、悪の側に変えること(ファイレクシアが戻った!)もある。いずれにせよ、そういった「巨大規模の変化」をするのが好きなのだ。そして、何かが実際に変化したのであれば、この計画を実行するのはずっと簡単になる。

希望の天使アヴァシン》 アート: Jason Chan

 さらに、ドラフトの固有性について語ったように、視覚的な、あるいは物語的な、固有性もセットの色づけには重要なものである。そして、「あいつを殺せ(あくび)」を三回繰り返しても飽きが来る。「黄昏に木の陰に潜む狼男を見ろ(あふぅ)」でも同じことだ。カードをセットに加えることなく、根本的な変化を表すことができないというわけではない。それでは、完全に自覚的な進化ではなく、後知恵に見えてしまうというだけのことだ。その種の変化によって、ゲームのメカニズム以上のものが活性化する。新しい環境、ストーリー、キャラクター、雰囲気、世界観。それによってマジックそのものもまた活性化されるのだ。

たで食う虫も

 これが、「5月の大型セット」の理由の大まかなところだ。大/小/小モデルが二度と作られない――なんていうことは言ってない。スタンダード環境のカード枚数を制御するなどの目的では、非常に重要なことだ。ここで説明したのは、多くの要素の中の1つに過ぎない。この議論から得られるものがあるとすれば、ブロックの構成を考えるにあたって、私たちはブロックの必要性についてよりよく考えるようになったということだろう。

 将来、大/小/小ブロックを使うことがあると思うかな?

 それは、ちょっと待っていればわかるんじゃない、かな。

Zac (@zdch)

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)


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