当惑の選択

更新日 Latest Developments on 2005年 9月 16日

By Aaron Forsythe

Translated by Yoshiya Shindo

微妙な重複

 いわゆる“友好色”である青と黒は、実はそれほど共通点がない。もう他の友好色の組み合わせを見ればわかるだろう。青と白は飛行に秀で、タフネスは高く、膠着させる戦術が得意で、システムクリーチャーが優れている。白と緑はどちらも優良なウィニー系がいて、ライフ獲得能力を持ち、エンチャントを破壊し、パワータフネス強化呪文を使い、トークンを生み出す。緑と赤は中型の強力クリーチャーや、アーティファクト破壊や土地は会を共有する。赤と黒はクリーチャー破壊に優れ、反動を持つ攻撃型クリーチャーがいる。

 それじゃ、青と黒は? 確かに組み合わせると強いが、共通点は少ししかない。青は手札に戻し、打消し、相手から奪う。黒はこれらをどれも行わない。黒はクリーチャーを殺し、手札を捨てさせ、死から蘇らせる――どれも絶対に青の役割にはなりえない。黒は時にはライフを支払うことで青のカードドローを真似るし、どちらも中堅クラスの飛行クリーチャーを召喚するが、明確な“共有空間”はまったく存在しない。

 この“共有点の欠落”は、ディミーア家――ラヴニカの青黒ギルドは――のアイデンティティを見つけることをいささか難しくしている。それぞれの色のできることをホワイトボードに片っ端から書いた後で、デザインチームは両方を繋ぎ合わせるものをやっと見つけることができたんだ。

 青は、《心の傷跡/Traumatize》や《思考の鈍化/Dampen Thought》に代表されるように、相手の“ライブラリーを削る”ことが得意だ。黒は最近になって、《頭蓋の摘出/Cranial Extraction》のような“《道化の帽子/Jester's Cap》”能力を獲得した――これは過去においては青黒(《ロボトミー/Lobotomy》)や青(《摘出/Extract》や《ルートウォーターの泥棒/Rootwater Thief》)が持っていた能力だ。また、黒は伝統的に“教示者”の色であり、《Demonic Tutor》や《吸血の教示者/Vampiric Tutor》や《魔性の教示者/Diabolic Tutor》はどれもしばしば用いられてきた。青も教示者部門においてはやり手で、《長期計画/Long-Term Plans》や《けちな贈り物/Gifts Ungiven》がそれを示してくれている。これらのカードやメカニズムに共通しているのは何か? すべて何らかの形でライブラリーに関わっていることだ。場のカードやライフには関係していない。これこそが我々が求めていたものだ――ディミーア家は“ライブラリー”ギルドなんだ。

メカニズムの作成

 このギルドには、相手のライブラリーをどうにかする強力な“ライブラリー削り”テーマがある。なので、メカニズムを考える段階で、私は自分のライブラリーをどうにかするものを作りたいと思っていた。以下はメカニズムの提案の段階で私が作ったカードだ。

[当惑]

呪文1つを対象とする。それのコントローラーが自分の手札を捨てないかぎり、その呪文を打ち消す。
変成 , このカードをあなたの手札から公開する:このカードをあなたのライブラリーの一番上に置き、その後あなたのライブラリーから点数で見たマナ・コストが3のカードを1枚探し、それをあなたの手札に加え、あなたのライブラリーを切り直す。)

 私の提案したメカニズム――変成――は、少ないコストで変成を持つ手札のカードを同じマナ・コストのカードと交換するものだ。君はで[当惑]を他の3マナ呪文に変えることができる。青カードがこのメカニズムを持つ場合、変成のコストはで、黒カードの場合はだ。デザインチームはこれを採用し、いくつかのカードに乗せる事にした。

調べてみると

 調整チームがこのメカニズムに対して盛り上がるなんてことはまったくなかった。教示者メカニズムは、歴史的にゲームにおける最強メカニズムの一つであり、多くの教示者カードが各種フォーマットで制限されたり禁止されたりしている。教示者行為は、調整側からすれば二つの禁断行為をフォローしている――同じことの繰り返しになるゲームと、強力すぎるコンボデッキだ。このメカニズムをセットから完全に排除して最初からやり直す話が出てきた。

 私はそれに抗議し、これは実際調整可能なものであると主張した。この手の教示者を興味深いものとするものとしてコストがあるが、今回の場合コストがまともであり、このカードは面白い中堅級のカードであると反論した。教示者カードが強い理由は二つある。一つは安定性を最大化する。例えば、君のデッキは序盤に《ファイレクシアの闘技場/Phyrexian Arena》を出せればほとんどのゲームに勝てるとしよう。[当惑]のようなカードがあれば、《ファイレクシアの闘技場/Phyrexian Arena》を引けなくても、それを変成させて4ターン目に出すことで、キーカードがインパクトを与えるゲームの確率を大幅に上げることができる。教示者が行えるもう一つのこと、ある意味安定性とは対極にあるものだ――それは柔軟性を与えてくれる。[当惑]のような変成持ちのカードが何種類かデッキに入っていれば、《殺戮/Slay》や《不忠の糸/Threads of Disloyalty》や《遥か忘れられし御幣/Long-Forgotten Gohei》といった状況限定のカードを1枚だけ刺しておくこともできるだろう。私もこれまでの教示者の陥った落とし穴を見ているが、私は後者の考えが非常に好きだったので、何としてもこのメカニズムを試してみたかったのだ。もちろん、トーナメントプレイヤーがこのメカニズムを“悪用”して、危険なレベルで安定したデッキを作ろうとするであろうことには疑いはない。が、多くの利口なプレイヤーがこのカードをちょっとした“工具箱”戦略の道具として楽しんでいるのが、私には目に浮かぶようだった。

 このメカニズムは、ある意味サイクリングに似ている――それぞれのカードには“メイン” の機能があり、さらに“メイン”の使い道がないときの選択肢として“サブ”の能力を持っている。多くのサイクリングカードは基本的にはメインデッキにも入りえる“サイドボード”のカードである――サイクリングが無いとしたら、《敵意の信奉者/Disciple of Malice》や《スクラップ/Scrap》や《金粉の光/Gilded Light》を使う人なんかいないだろう。セット内に変成カードが入るスペースがちょっとしか無いとしたら、私はその手のカードには興味がわかない。代わりに、《誤算/Miscalculation》や《不毛化/Lay Waste》の血脈のカードを採用しただろう――カードそれ自身が、タイミングよく引けばほとんどの場合において有益なカードだ。もちろんその使い勝手は、ゲーム後半や愛称の悪い相手に対しては下がってしまうから、それを変成してもう少し良いカードに変えるんだ。

 [当惑]はそんなカードだ。ゲーム序盤では、それは相手にとっては強烈な働きをする。言ってみれば“どっちを選んでもダメ”な状況だ。もちろん、相手のカードはゲームが進むにつれてどんどん少なくなっていくだろうから、手札を捨てることは痛くなくなってくる。その時、[当惑]は教示者としてのほうが使えるカードとなるんだ。

 調整はしぶしぶそのメカニズムを試した。当初は興味深いことが証明されたが、それはあまりにも強すぎた。私が提出したバージョンはインスタントが使えるときならいつでも使えたので、コントロールデッキなら相手のターンエンドに使うのが一番楽だろうし、あるいは相手の呪文に対応して適切な打ち消し呪文を持ってくることもできた。それに、変成カードがライブラリーに戻ることから、後にそれを再び引いて再びカードが探せるのも強みだった。何よりも、金枠カードはコストも安く、そもそも変成も2マナしか使わなかったんだ。

何かを起こす

 幸いなことに、この手の問題は修正が可能だった。ライブラリーに戻してシャフルする代わりに、カードはコストの一部として捨て札となった。これは強さのレベルではごく小さい変更だけど、メカニズムをより“直感的”にする役に立ってくれた――プレイテストに参加した誰もがカードをライブラリーに戻すのを忘れていて、代わりにサイクリングか呪文のプレイよろしくカードを捨てていたのさ。この変更で変成の使用は単純になったけど、“イメージ的”にはちょっと落ちたかもしれない。さらに、最近の教示者に合わせる形で、変成はソーサリーのプレイ時に制限された。能力のマナ・コストも若干上がり、青と黒と金枠のそれぞれにとなった。変成は生き残ったんだ!

 そのカードがこれだ!

 調整担当としては、メカニズムが製作に値していてなおかつ使い勝手が良いことが伝えられて、私は非常に喜んでいる。しかしデザイナーとしては、クリエイティブチームが私の当初のメカニズム名を採用してくれたことだけでなく、カードそのものを生かしてくれたことに対して、なんともくすぐったい思いをしているよ!

 変成を構築で使う場合でも、精神的にそんなに負担はかからないだろう――デッキを組む段階で、どの教示者がどのカードを持ってこれるかをわかっているはずだからね。でも、このメカニズムをリミテッドで活用するには、もう少し事前の計画がいる。シールドやドラフトで変成カードを使うなら、デッキ内の他のカードのマナ・コストに気を配ることが必須だ。これはすべてのカードがよくわからないプレリリースでは大変だけど、変成カードの“対象”を知ることで、勝ちと負けとの差が出てくることもあるだろう。変成能力を起動して見つけるべきカードが無かったら、単純にカードを損するんだ! 気をつけろ! 柔軟性にはリスクが付き物なんだ!

 青黒はゲームで最も人気のある色の組み合わせの一つで、変成はこの色の組み合わせのエッセンスをエレガントに捕らえていると思う。願わくば、《サイカトグ/Psychatog》や《はね返り/Recoil》や《終末の死霊/Doomsday Specter》のファンの皆さんが、ラヴニカでのちょっとした能力のカードと、邪悪なるディミーアのカードと出会わんことを。プレリリースでお会いしよう!

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