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更新日 Latest Developments on 2014年 2月 3日

By Sam Stoddard

Sam Stoddard came to Wizards of the Coast as an intern in May 2012. He is currently a game designer working on final design and development for Magic: The Gathering.

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 今回のプレビュー・カードはメカニズム的には新境地を見いだすようなものではありません。授与クリーチャーであり、あなたは今までにたくさん見てきたはずです。別段変わった授与コストを持っているわけではないし、特徴的な授与能力があるわけでもありませんが、あなたが『テーロス』で得たことのない報酬をもたらしてくれます。いえ、このカードの重要なところはその処理をどのように行うかではなく、何故それを行うかなのです。とはいえ、このカードをあなたにご紹介する前にちょっとその成り立ちをお話ししようと思います。

 『テーロス』ブロックの最初期の段階では、授与は『テーロス』に収録されておらず、最初に姿を現すのは『神々の軍勢』でした。第1のセットでプレイヤーがエンチャントを使い、第2のセットで「命を得る」というのがこのブロックの自然な流れの一部として意図されていました。それは第2セットが毎回もたらしている新たな展開でした。『神々の軍勢』にとっての不幸な問題は、『テーロス』の通常のオーラ用の空間が十分な広さではなかったことでした。我々は《ドラゴンのマントル》や《災いの印》などを作ることができましたが、2対1交換を取られたり、オーラを全部引いてしまってクリーチャーが引けなかったりするというリスクに見合う十分なメリットを、全てのオーラに作ることはできませんでした。授与メカニズムはまさしく第1セットに求められていましたが、それは『神々の軍勢』のお株をいくつか奪うものでした。幸運にも神啓と貢納があるので、このセットには新しく興味深いものが十分あるようになりました。


 授与が『テーロス』に移った後で、『神々の軍勢』のリード・デザイナーであるケン・ネーグル/Ken Nagleにとって、彼のセットの授与を『テーロス』とは異なる感覚を与えるものにすることが重要になりました。異なるメカニズムのように感じるとまでは行きませんが、それら個々のカードは『テーロス』のカードとは違った感じの重要な役割を演じました。このアイデアを明らかにするために、今回のプレビュー・カード、《万戦の幻霊》をご覧ください。


 まずこいつに書いてあるテキストが長いことは認めますが、私はその長さに見合うだけの動きをすると思っています。また授与は本質的に複雑なメカニズムですが、その複雑さに見合うだけの成果を出すと思っています。授与は我々が新世界秩序に従いメカニズムを作り始めてから最も複雑な相互作用をもたらしますが、それでも我々が授与を採用したのは、その背景にある考えが把握できるものであり、そしてプレイして強いからです。とはいえ、我々はこのメカニズムに関する苦情を心に受け止め、社内でコモンのメカニズムの正しい限界について議論を行っています。

 我々が長年にわたってマジックのカードを作ってきて学んだ最大の教訓の1つは、デザイン空間をリソースとして使うということです。授与が『テーロス』でデビューしたとき、コモンではキーワード能力と正方な修正を与えるだけのかなりシンプルなものだけに止めました。もちろん、キーワード能力の種類はごく限られたものだけで、そしてクリーチャーとオーラの両方に有効であるもの――呪禁や再生のような――は避けようとしました。より高いレアリティで誘発型能力や起動型能力や正方でない修正をつけるにせよ、後のセットのために多くの事柄を残そうとしました。結局のところ、我々は当初から授与がどれだけ正しく機能するかどうかに多くの疑問があること、そしてプレイヤーに最もシンプルなバージョンを提供することが最良の方法であることは分かっていました。第2のセットが近づいてきた頃には、我々はほとんどのプレイヤーにこのメカニズムの動きを教え終わっていたので、基本的な説明の心配をすることなく、もう少しの多様性と複雑さを加えることができました。授与をサポートすることについて心配しなくてよいということは、セットをより良くするために他の事柄に集中できることを意味していました。


    若者よ、ワイドに行こう

 セットとしての『テーロス』は、大きくすることをとても重視しています。戦場で最も大きいものがほとんどのゲームにおいて焦点になる傾向にあります。怪物化はその効果を持っています。授与もその効果を持っています。多くの英雄達だってその効果を持っています。除去に対して弱くなる一方で、カードを合体させていくことは極めて実行しやすいリミテッド戦略です。それらの多くはマーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterのこのセットのデザインのビジョンによるものです。これは誰もが好む戦略ではないかも知れませんが、ブロックのメインとなるセットにこのような重要な戦略を持つことはそのブロックを他のものと区別する助けとなり、マジックのセットをそれぞれ違った雰囲気のものにします。これこそがマジックを過去20年に渡って素晴らしいものであり続けさせた事柄の1つであると、私は信じています。しかし1つだけのセットではなくブロックを作ることの中には、時とともにそれを変化させていく仕方が含まれています。

万戦の幻霊》 アート:Raymond Swanland

 『神々の軍勢』のリード・デベロッパーであるトム・ラピル/Tom LaPilleの目標の1つは、プレイヤーに横に並べることのメリットを与えることで、それは《万戦の幻霊》にピッタリです。デベロッパーが小型エキスパンションに取り組むときのコツは、彼らが取り組むセットを第1セットのリミテッド経験よりも良い方向に変えられると信じるものを考え出し、それを実行することです。これは『フィフス・ドーン』のように劇的に新しい方向へ向かうと言うことではありませんが、その代わりに最初のセットのどの戦略を拡大できるかを考え出します。今回の場合は、トムは横に並べようとするデッキと、それを支援する働きをするものをいくつか入れる決定を下しました。神啓はメカニズムとしてそれを支援します。強化した神啓クリーチャー1体だけでも恩恵を受けて片を付けてしまえますが、その場合、2体目の神啓クリーチャーは無駄になってしまいます。その代わりとなるトムの決定の狙いは、複数の神啓クリーチャーを横に並べる戦略を取り、それらの恩恵を最大限に受けることができるようにすることです。これはまた、1体を強化する戦略を取っている場合、対戦相手の、アンタップするごとに毎回効果を生み出す複数の神啓クリーチャーに対処することが困難であるという意味でもあります。

 単にメカニズム的なものだけを越えて、あなたはこのセットの個々のカードの多くが「大きくする代わりに横に並べる」ことに多くの利益を見いだすよう勧めていることを発見するでしょう。我々は何年か前にドラフトのフォーマットを新しいセットから始めるように変更したので、ドラフト環境を全体的に変更することなく、最新セットがより大きなインパクトを与えることができるようになりました。今やあなたは、最初のパックの後に横に並べるのに適した材料を持っているか、『テーロス』があなたに求める大きくする戦略に従うべきか、を知ることができます。

 以前ならこの手の変更は小型セットのリミテッドにおけるカードパワーを一段階上げなければ基本的に不可能でした。『ローウィン』と『モーニングタイド』はその間違いの良い例です。『モーニングタイド』の、クリーチャーを種族ではなく職業を中心としてドラフトするというアイデアは興味深いものでしたが、プレイヤーにそれをドラフトで行なわせる唯一の方法は、『モーニングタイド』のコモンのパワー・レベルを引き上げ、3パック目に優秀なカードがあることを期待して手探りでドラフトするリスクに見合うようにすることだけでした。我々がドラフトするパックの順番を逆にしていたならば、少なくともプレイヤーたちは種族と職業どちらに焦点を当てるかについて、1パック目が終わった後に十分な情報を得てから決定を行なうことができたでしょう。


 『神々の軍勢』は、我々が量が十分でないと感じた増加させたいテーマを強調することで、より巧妙にそれを行っています。例えばコモンの授与にキーワード能力を与えなかった理由は、それらはクリーチャーのサイズを上げることに関しては優秀でも、警戒や絆魂と回避能力を備えた大きなクリーチャーを作り上げることを難しくするためです。同時に、『神々の軍勢』を1パック加えて『テーロス』を1パック減らしたことで、それは(先ほど述べたテーマの変更と結びついた場合)急激な変化をすることなく『テーロス』3つのドラフトよりも進化した感じがするリミテッド環境を作る助けになっています。私の考えでは『神々の軍勢』は『テーロス』が進化した感じで、全く逸脱してはいません。

    スタンダードでの授与

 このセットのもう1つの目標は、授与を真剣勝負のスタンダードでも使われるようにもっと多くのデザインを提供することです。今のところ、《加護のサテュロス》と《夜の咆哮獣》はどちらも少しは構築フォーマットにおいて見かけられますが、その数は《嵐の息吹のドラゴン》のような怪物化や《アスフォデルの灰色商人》のような信心に比べるとはるかに劣ります。我々は授与を競技レベルのプレイで見たいとはっきり思っており、そして『神々の軍勢』のカードはそれを反映していると思います。我々は『テーロス』のカードでいくつかの良い試みをしたと思いますが、確かにその焦点の多くはリミテッドに当たっていました。低いレアリティの授与カードはかなり厳密にサイクル化されており、その動きは実際に構築には向いていませんでした。

 我々がクリーチャーに能力を付ける点で少し余裕を与えたのは、スタンダードとリミテッドの両方において優れたクリーチャーを作ることをより簡単にするためであり、その1つが《万戦の幻霊》なのです。このクリーチャーの《オドリックの十字軍》のような能力は基本的にはスタンダードで使われませんが、クリーチャー・エンチャントとして機能し、オーラの数も参照することはかなり大きな強化になっています。というのも、現在のスタンダードの構築範囲では多くのオーラがプレイされています。《ひるまぬ勇気》や《天上の鎧》のような明確なものもありますが、《岩への繋ぎ止め》、《地下世界の人脈》、《ナイレアの存在》のようなクリーチャーにつかないオーラも《万戦の幻霊》を強化することができます。

 我々はこのセットを入れたゲームをそのデベロップの時に多くプレイしましたが、結局このセットが発売される週の現実世界のプレイヤーには近づけませんでした。我々は『神々の軍勢』がどのようにスタンダードに影響を与えるかについての見解を持っていますが、そのようにプレイされるかは、時間だけが教えてくれるでしょう。私はこのセットが発売してから最初の数週のカバレージを見ること、そしてこのセットがどのような影響をもたらすかを楽しみにしています。

 ではまた来週お会いしましょう。

 サム( @samstod )より


(Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)

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