玉石混交 その1

更新日 Latest Developments on 2012年 5月 4日

By Zac Hill

Zac is a former game designer/developer for Wizards of the Coast and was the lead developer for Dragon's Maze. His articles have appeared in The Huffington Post, The Believer, and on StarCityGames.com. Currently he serves as the chief operating officer of The Future Project, a nonprofit education initiative, and holds a position as a research affiliate in the MIT Game Lab.

 やあ、みんな。

 みんながアヴァシンの帰還プレリリースを楽しんでくれて、《獄庫》限定のクールなものをうまく持ち帰ってくれたことを願っているよ。私は久しぶりにシアトル以外ではスペルスリンガーをしなかったのだけれど、私はその日の後半、(編注:社内の)ドラフトで多くの《連携攻撃》をピックして、結魂の持つ爆発的な可能性を最大化できるようにした。私たちが「内にこもっている」のが長ければ長いほどマジックは悪化してしまう、と開発部のほぼ全員が(中でも私が真っ先に)見極めたので、私が今現在取れる勝利は多少は取らなければならない。例えば:

連携攻撃》 アート: | Art by Raymond Swanland

 こんなコンバット・トリックは見たことがないし、これはもう使うしかないだろう?

連携攻撃
 

ズギューーーーーーーーーーーン

 人生においてはささいなことさ。

 最近、私のコラムは、ゲーム・プレイの環境やドラフトの分野、その他諸々についての話を全て含む、非常に専門的で「デベロップ的」なものだった。君たちがそれら全てを十分に議論した場合、マジックの凄さの大部分は、ただ全体的に愛されるカードたちで構成されていることなのだ、ということを忘れてしまいがちになる。だから私は、今日は一歩下がってアヴァシンの帰還のスターたちについて話すだけに留めたい。そのカード自体の話をね。長年にわたって、マーク・ローズウォーターはカードひとつひとつにデザイン的な観点から話をしているので、私はデベロップ的な観点を添えることにした。

 壮大な計画といったものは何もないので、単純に白青黒赤緑の順番で分析し、何が思い浮かんだのか、ということを考えていこう。どのセットもストーリー性にあふれ、そのカードたちはまるで子供の頃の写真のように物語との橋渡しとなる。私は多くのプレイテストや議論に関わっていたけれど、実はアヴァシンの帰還のデベロップ・チームにはいなかった、ということを心に留めておいてくれ。つまり、私は逸話や所見といった観点からこの記事を書いているのだ。これらのカードの多くが作られた時、私はその場にいなかった。だから君たちは、必ずしも完成したものではなく、その過程におけるひとりのデベロッパーの意見を得ることになるだろう。願わくは、これが君たちに私たちがデベロップの間に考えていることや、カードの問題に取り組むためにどのようにデザインしているのか、ということについて少しだけ発見を与えますように。

 あるプレイテストでこのカードを――アンコモンの枠にあるのを――初めて見たとき、目が飛び出したよ。でもそれは正しく意図された結果であると、私は信頼している。アヴァシンの帰還をデザインする上での難題のひとつは、全てのレアリティにおいて、私たちのウェブサイトでスポイラー・リストを読んだ人だけではなく全てのプレイヤーに、それが天使のセットであることを伝えなければならなかったことだ。つまり天使を低いレアリティに置き、それによって単にリミテッドで必殺技として存在しているだけよりも、より頻繁に天使をゲーム環境に組み込む必要があった。さらに、ただ3/3を複数印刷してそれに天使の皮をかぶせることはできない。天使をクールなものにしなければ、焦点がぼけてしまうことになるのだ。

 このカードはその課題を見事に成し遂げ、レアから「降格」させたことはアヴァシンの帰還チームの素晴らしい選択だった。

 トム・ラピル/Tom Lapilleは2枚の別々のカードを合わせることにより《ゾンビの黙示録》を作り、そうすることで闇の隆盛で最も象徴的な呪文のひとつを作り上げた。それはアヴァシンが遺した衰弱したものへの圧倒的な勝利と、イニストラードの人間の絶望的な壊滅を表した。

 そうなると、根本的な状況の変化を知らせるために、その呪文をひっくり返すよりも良い方法はあるだろうか?

 私たちはこの手法を何度も使い、たびたび議論の的になった。例えば、《荒廃鋼の巨像》などは非常に意見の分かれるカードだが――それでも、ミラディンで最も象徴的な勢力のひとつが「変化した」ことをしっかりと伝えた。これと似た動機が《栄光の目覚めの天使》のデザインも促したのだ。

 おお、奇跡メカニズムじゃないか。適正な奇跡を見つける努力には、私がこれまで3年間ウィザーズ社で見てきたどんなメカニズムよりも、多くのデベロップの時間とエネルギーを費やした――大義名分を持って! 奇跡は変化が大きく、リスクが大きく、見返りが大きいメカニズムだ。いい加減にすると、全てのゲームをトップデッキ・コンテストにしてしまう。小さく見積もりすぎてしまうと、ドロー・ステップがもっと面白くなるように、と想定したことが失敗する。だから、私たちはその適正なバランスを見つけることに多くの時間をつぎ込まなくてはならず、同時にこのカードたちの「感触」が今まで通りに期待され感情に訴えるような見返りを運ぶことを、確実にしなければならなかった。

 デイブ・ハンフリー/Dave Humpherysが根気のある紳士で良かったと思う。私は多くの時間を奇跡メカニズムの初期段階に対する泣きごとを言うのに使ったのだから。もし私が彼の立場にあったら、いくつかの段階で文字通り耳に指をつっこみ「やだ、やだ、やだ!」と悲鳴を上げ始めただろうと、半分本気で思っている。私たちは初期段階で奇跡の様々なコストと効果を実験し、私はそれら全ての問題を掘り起こした。そう、私は確かに「当事者」だったのだ。くらいのコストを要する非常に強力な効果があったとしても「奇跡を起こした」時の大部分でとてもそのコストを支払えないだろう。それはとてつもない不満だ。「オーケー、それならコストを安くすればいいじゃないか?」と、君たちはそう考えるかもしれない。私たちはいくつかの効果でその通りにしたが、それしかできないのなら、奇跡は7ターン目か8ターン目かそのくらいのターンで、心躍るものであることをやめてしまう。「よし、《神聖なる埋葬》のために5マナを残したぞ! さあ、君のターンだ」

 アヴァシンの帰還デベロップ・チームの一員が出したすばらしい解答は、Xを含むマナコストを用いて奇跡のデザインをすることだった。それは奇跡カードたちをゲームの形勢次第で調整することを可能にし、ゲームの後半に壮大な物語を生みながらも中盤に関わることを演出した。私は《天使への願い》のようなカードたちが生まれた経緯に、本当に満足しているよ。

 私は「重い起動型能力」への盲目的な愛ゆえに開発部で少しだけ有名になったことがある。デベロッパーとしては何度もそういうことになるのを望まないが、これらふたつのように適切なコストを付けられたクリーチャーに「価値ある選択肢」を与えることによって、リミテッドに一層の深みを加えると私は考えている。大抵は4マナも余分に遊ばせはしないので、その能力を考慮することに多くの時間を使う必要はない。それでも、後になって少しだけマナが溢れた時、追加のアドバンテージを生むことができるが、それはゲームを完全にひっくり返すほどのものではない。

 また一方で、この傾向に関しては賢明でなくてはならない。舞台を台無しにしてしまう危険があるからだ。マジックが、憶えておかなければならないことのために戦場を理解しようという質問が飛び交う「場外乱闘」のゲームになることは望まない。それでも、ある程度の数なら健全だ。

 先ほど述べたように、「天使のセット」を作ろうという場合は、低いレアリティで天使に触る手段を用意しなければならない。特に、《暁の熾天使》は優秀すぎるコモンだ――おそらく目的のないセットには収録しないであろうものだ。しかし時には、特別な感触を込めたものを届けるために、少し限界を押し進むことが大切だ。しっかりと考えている限り、全てのセットはそれを取り巻く環境をある雰囲気に定着させる、いくつかの効果を持ちうるのだ。

 闇の隆盛に本格的に着手するにあたって、私たちは「物あさり能力」を青に加えて赤へと広げようと試みた。今後もそういった赤の能力について話していくつもりだが、するとひとつの疑問が湧き上がる。「オーケー――それじゃあ、青はどうするのさ?」

 「青の物あさり能力」と「赤の物あさり能力」に違いを出す方法については何度も話し合った。私たちは、物あさり能力が本当に赤を感じさせる理由のひとつは衝動的でひたむきなところだ、ということで合意した。赤は今すぐに欲しいものを分かっていて、それに関係しないものを投げ出すことを厭わない。

 その点において、青がカードを墓地に投げ捨てるというのは少し違和感がある。私たちがそのことについて考えれば考えるほど、青は、そうだな、本を本棚(か何か)に戻して後々まで保存する、というような方向に向かっていくように感じた。だから、私たちはカードと完全に切り離されてしまう墓地に直接置くよりも、ライブラリーの一番下に置くことを含めた実験をしたかった。そう、少なくとも《堀葬の儀式》を引き込むまではね。

 青から伝統的なルーター能力を排除しよう、と言っている訳ではない。その境界は曖昧だ。私たちが一貫してこだわっている取り決めのひとつは、赤は手札を捨てることから入り、対して青は先に引くということだ。赤はいらないものが分かっていて、青は捜しているものを知っているのだ。

 私たちが現行のデザインを手がけている時かなりの熱を入れることになったのは、全ての色の組み合わせがそれぞれ取るべき戦略、特徴を持つ、ということを確保することだった。その一部はリミテッドでのプレイに、一部はカジュアル構築のために、一部はセットにただの別個のカードの束以上のものを感じさせることを保証するために。

 何度かのプレイテストの中で、アヴァシンの帰還チームは青黒の組み合わせが独自性に欠けているように感じられる、と気がついた。デイブ・ハンフリーは「単騎」メカニズムに、このセットにおける青黒ではもう君たちを侵略するのに怪物の群れは寄り集まったりせず、召喚しにくいクリーチャーは確実に強力なものでなる、というのを強調することを採り入れた。社内のプレリリースで、私は二度も《捕食者の計略》のトップデッキにしてやられたので、このメカニズムの力で見た目には無害なカードでもゲームをひっくり返すのだ、ということを証言できるよ。

 デベロップの初期段階では「朧げなフクロウグリフ」と呼ばれていたこのカードは、 プロツアー・ロサンゼルスのファイナリスト、ビリー・モレノ/Billy Morenoによってデザインされた最初の神話レア、ということで注目すべきものだ。

 後になって完全にそのコンセプトが変わったが、梟とグリフィンの混血体をトップダウンでデザインするとどうなる?

 どうやら、こうなるらしい。

 私の知る限りでは、このカードはデザイン・ファイルからそのまま印刷にいったものだ。ただひとつ変わったところは?

 プレイテストでの名前は「ビジネス・クラス」だったということだ。

「デベロップに信じられないほど多くの時間を使った奇跡というものは・・・」という話。

 アヴァシンの帰還のデベロップに使った時間のだいだい10%は、このカードのコストとして想定されたものを決定するのに使われた。アヴァシンの帰還チームは奇跡カードたちには大当たりしてもらいたいと思い、そうするための方法のひとつが潜在的なパワー・レベルをひと目で、本能的にわかるように見せることだと知っていた。手始めに、このカードは自然に追放されることが決まった。なぜなら――そう、《有毒の蘇生》と《瞬唱の魔道士》のためだ。次に、正確な機会費用の計算が行われた。可能ならば、私たちはこのカードに《Time Walk》のコストと同じ奇跡コストを持つようにしたかった。これは、君たちが2ターン目にこれを引いてしまった時、奇跡コストを払える場合の「有利」を得る平均的なカードが持つ価値と比較して「不利」であることを、確実にしなければならなかったことを意味する。

 私たちが正しい選択をしたと、願っているよ!

 こいつに関しては、このセットの中でお気に入りのアートだということを除いて、強烈に建設的な話は持ち合わせていない。

 こいつは実に多くの働きをしてくれる――このアートを見ると、実際に「守るもの」というより「歩くもの」と呼んでいたことを思い出すよ!

 イニストラードの早い段階で私たちが気づいたことのひとつは、ゾンビ・デッキに強力な2マナ域のクリーチャーが不足している、ということだった。しかしながら、《戦墓のグール》とやがて来たる《墓所這い》、《ゲラルフの伝書使》、(《幻影の像》と共にある)《戦墓の隊長》の明らかなパワー・レベルを考えると、ゾンビ・デッキだけに必要な燃料をまんべんなく与えるわけにはいかない。その代わり、デッキ・ビルダーたちには残りのスロットに有意義な選択をして欲しかった。

墓所を歩くもの》と《グールの解体人》のふたつは、ゾンビ・デッキの確実性を高める役だ。《墓所を歩くもの》は、対戦相手の不死クリーチャーや《瞬唱の魔道士》への対策としての意味を持ち、《グールの解体人》はスタンダードにあふれる生け贄効果(《出産の殻》で《ゲラルフの伝書使》か何かにする? さらに《ファイレクシアの変形者》まで繋げるかい??)に使うとさらに安定するとともに繰り返し使えるというアドバンテージが得られる。これがフォーマットそのものを規定するほどのものか、と言われればそうではないが、これらは役割を果たすことのできるものなのだ。

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 おふざけで作った訳じゃない。これについてはどこか別のところで時間をかけてお話しようと思うので、ここでは重要な点は取っておこう。でも私が受け続けている、ある大きな疑問にはお答えしようと思う。

 うん、私たちは7マナのこいつもテストしたと断言しよう:)

 プレイテストでは「殺人」と呼ばれていたこのカードは、エリック・ラウアー/Erik Lauerが《教区の勇者》とみんなが大好きな人間・昆虫である《秘密を掘り下げる者》/《昆虫の逸脱者》への解答としてデザインしたものだった。また、《高原の狩りの達人》へのちょっとした対策にもなって欲しかったし、早期に《アヴァシンの巡礼者》を仕留める良い選択肢になってくれればと思った。これは確かに《悲劇的な過ち》と似通ったものだが、引きさえすれば《悲劇的な過ち》よりもいつでも使えるカードだ。

 そして、最高に見事なDavey Pのアートもね。

 なんらかの理由で、これら黒のカードたちの多くが、デザインの見通す一部よりもはるかに多くの名言を生み出している。

 各セットは発売から9か月くらい前に、マジック・チームが一堂に会する中で、全てのカードのほぼ最終版を精査するためにスライドショーを見ることになっている。その目的のひとつは後期段階の欠陥や間違いを探すことだが、もうひとつはただ純粋に、ほぼ18か月に渡って必死に働いて作り上げたその製品を鑑賞する機会を全員に与えるものだ。

 この話に触れたのは、《殺戮の波》のフレイバー・テキストが、私が見て憶えている中でどのカードよりも大きな反応を引き出したからだ。それはまさにシビれる台詞で、リリアナらしいものだ。

「天使なんて大嫌い」、とだけ書かれたTシャツが欲しいな。

 

......おっと。

 セット全体の半分をちょっと越えたところで、字数制限を超えてしまった。私たちが作ったものたちについて、言うことはまだまだ沢山あるのに!

 ここで切り上げて次に回そうと思うけれど、ぜひこのまま、その2を楽しんでくれ。再来週、そちらでは赤、緑、アーティファクト、そして金色カードたちを取り挙げる。君たちはこのセットでのお気に入りのカードは何だい? 特に、私が取り挙げていなくてその背景を知りたいものはないかな? ぜひ教えてくれれば、また戻ってきた時にできる限り調べて、それに取り組むことにしよう!

 最後まで読んでくれてありがとう。

Zac

(Tr. Tetsuya Yabuki / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)

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