マリガン

更新日 Latest Developments on 2015年 8月 7日

By Sam Stoddard

Sam Stoddard came to Wizards of the Coast as an intern in May 2012. He is currently a game designer working on final design and development for Magic: The Gathering.

 マナ事故は多くのプレイヤーのマジック経験を台無しにしてきました。同時に、マナの問題に対処することはマジックをどんなものにするかにとって最重要事項の1つであり、そして私はそれが成功していると信じています。マナのシステムが多くの苛立ちを得ている一方で、それにより我々はカードのバランスを取る多くの方法と、プレイヤーにデッキを構築する上でアドバンテージを得させる方法を手にしています。プレイヤーは「もっと色を欲張ったデッキをプレイしてより頻繁に自分の土地にやられるか、より一貫性のあるデッキをプレイして色の多いデッキに回られた時に負けるリスクを負うべきなのか」という疑問を強いられています。

 これはマジックの全てのフォーマットの根源的な疑問の1つです。とはいえ、私は十分な土地を引けなかったり、引きすぎたり、違う色の土地を引いたりすることで最大級の苛立ちがゲーム前の手順で起こっていると確信しています。マリガンを改善することの目的は、色を欲張ったデッキのプレイを簡単にすることではなく、妥当なデッキ作成の決断をしているデッキが毎回シャッフルするたびに実際にマジックのゲームをできるようにする機会を増やすためです。

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コーシのペテン師》 アート:Igor Kieryluk

 初期のマジックの苛立ちの1つに、マリガンできるのは初手に土地が0枚か7枚の時だけだったので、呪文6枚と《Kjeldoran Outpost》の初手を引いたら「負け」と同義である、というものがありました。全く楽しくないゲーム前の手順です。最初のマリガン・ルールの変更はプロツアー・ロサンゼルス(リミテッド)で試されてプロツアー・パリで定着し、その名前がつけられました。これは大きな変更でしたが、必要なものでした。

 パリ・マリガンはプレイヤーに、プレイできない手札を戻して何かプレイできるようなものを得る機会を増やす能力を与えました。プレイヤーの勝率は依然として健全なままでしたが、上記のような例ではほぼ0だったものがはるかに高くなりました。これはとても大きな改善であり、競技マジックを成功に導いた事柄の1つであると私は思います。その成功の十分さは、18年間大きな変更が行われなかったほどでした。しかしながら、我々が変更をしなかったからといって、改善の余地がないわけではないのです。

質の改善を続ける

 現在のマリガン・ルールが上手く機能しているというだけでは、それが可能な限りの最善であるということにはなりません。開発部はときおり、我々がおこなっていることを取り上げて、新しいものを試して今より良くできなかったと確認することを好みます。マリガン・ルールも例外ではありません。マリガンとそれのもたらすものは、マジックにとって重要です。我々はプレイヤーが正しいマナ・カーブ、土地の枚数、そして呪文の比率のようなことを選ぶことによって報われることを望んでいます。そして、それをもたらすのが初手のランダム性です。アドバンテージを得るために高コストの呪文を多く入れすぎて土地を減らしすぎると、よりバランスの良い比率の対戦相手よりも多くマリガンをすることになるでしょう。

 マリガンのこの部分は良いのですが、引きの悪さによっていくつかのゲームで一方のプレイヤーにほとんど手段がなくなるという部分は問題です。我々の目的は、マリガン・ルールの改善を経ても良い比率のデッキがある程度の利益を得続け、その一方で片方のプレイヤーが基本的に何もできないゲームの数を減らすことです。マリガンをしたプレイヤーはアドバンテージを失うべきですが、そこで重要なのは適正な量です。

 意識されていないかもしれない第2の目的は、トーナメントの適度なペースを維持することです。シャッフル、特にゲーム前のものは長い時間がかかります。ゲームで常におこなわれるシャッフルの回数が増えていくと、時間のかかるゲームが増えることになります。我々が「一方のプレイヤーがもう一方のプレイヤーの宣言より先にキープするまでマリガンを行う」からルールを変更した理由の1つは、プレイの全体的なペースをスピードアップさせ、時間のかかるゲームとトーナメントの遅れを減らすことでした。このルールは発表された時にいくらか論争を巻き起こしましたが、振り返ってみると、私はそれが両方を明らかに改善したと信じています。

 現在のマリガン・ルールへの最も明らかな変更であり、我々が最もよく聞く提案は、「好きな枚数のカードを戻してシャッフルし、同じ枚数のカードを引く」です。これは多分片方のプレイヤーがつまづくゲームの数を素晴らしく減らすでしょうが、その代償としてフォーマットとマジックのデッキの組み方を歪めてしまうでしょう。多くのカジュアルなプレイヤーの経験にとっては素晴らしい改善であるとと私は確信していますが、トップレベルの競技はすぐに壊れてしまうでしょう。

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血清の粉末》 アート:Matt Thompson

 例えば、カードを戻せるようになるとコンボ・デッキはずっとに強力になり、《実物提示教育》を2枚引く必要すらないところまで行くかもしれません。コンボのパーツだけを残して残りを戻してしまいます。デッキはそれらが成し遂げようとするものに応じて土地の枚数が変化するでしょう。極限までアグレッシブなデッキは2枚目以降の土地を全て戻すことができ、コントロール・デッキは土地や序盤の除去を引くためにゲーム後半用のカードを全て戻すことができます。

 私が時々耳にした他のバージョンとしては「中抜き方式」がありました。プレイヤーは土地を1枚ライブラリーの一番上に置くか、土地が出るまでライブラリーのカードを追放することができます。これの問題点は「土地2枚デッキ」をこのルールに合わせて組むと、毎ターン呪文が引けてしまうことでした。

 これらの変更における我々の目標は、マジックの働きを完全に変えてしまうことではありません。その代わりに、ゲーム・プレイ全体の改善とゲームにならないゲームの数を減らすためにマリガンの方法をいくつか細かく変更しました。これはプレイヤーがマリガンをすることで不利になるべきではない、という意味ではありません。プレイヤーは妥当でない土地と呪文の比率によって自動的に負けてしまうよりも、良いプレイのゲームの過程でマリガンから回復する機会を持っているべきです。

マリガン・ルールの目的

  1. マリガンによるゲームにならないゲームの数の軽減
  2. プレイヤーのマリガンの頻度を増やさない
  3. マジックのデッキ構築の基本とゲーム・プレイを維持する
  4. 構築フォーマットとリミテッドで同じマリガン・ルールを用いる

 私は2と4にすぐにたどり着きたいと思いました。2の目的はどんなルールであってもプレイヤーのマリガンの頻度を増やさないように、今のルールよりもマリガンをしたほうが有利になるような強化をしないということです。最初のほうに出てきた「好きな枚数を1回だけマリガン」の例だと、少なくともいくらかのカードをマリガンしない人はかなり稀でしょう。これは当然2と3に違反しています。

 4に関しては、リミテッドのほうがゲームにならないゲームの数が多いと私は信じています。そして各フォーマットごとに異なるマリガン・ルールを作ることができるかもしれませんが、それは今回我々が特に興味を持っていることではありません。永遠に全く見込みがないとは言いませんが、高レベルの競技フォーマットで同じマリガン・ルールが使われるという事実は我々にとって大事です。

 それはさておき、我々が新しいマリガンの可能性を模索していたときのいくつかの実験についてお話ししようと思います。


7-7-ストップ

 これはプレイヤーが5枚までマリガンをする頻度と、その勝率に着目しています。プレイヤーが5枚までマリガンをするゲームの数は少ないのですが、それをしたプレイヤーの勝率もまた低いものでした。これらは多くのゲームにならないゲームを作り出してきました。可能性の1つとして(追加のカードをもたらすことによって)1度マリガンをしたプレイヤーの勝率を上げ、それは2度目の初手が悪かった場合に負けてしまう回数を埋め合わせるになり得ます。

良かったところ

 マリガンで傷つくプレイヤーの数を劇的に減少させました。とはいえ、その数は0にはなりません。良い7枚をキープするプレイヤーがいる一方で、選択の余地のない7枚を手にするプレイヤーもいるからです。しかしこれはどちらかのプレイヤーが確実に1回はマリガンするよりも大きな改善になりました。

良くなかったところ

 我々の目的の1つはゲームにならないゲームの数を減らすことです。これは1回マリガンしたプレイヤーのゲームを改善するのには役立ちますが、ゲームにならないゲームに対しては現在のシステムよりもはるかに酷いものになるでしょう。我々はそれを変更する手段なしにプレイヤーに最初のターンをパスすることを強制したくありません。全体として、かなり強力であったにもかかわらず、人々はこのシステムに対してかなり否定的な反応を示しました。これは興味深い実験でしたが、全体的にプレイヤーを満足させるものではありませんでした。


7-6-6-5-5

このマリガン・ルールの始まりは6枚にすることはアドバンテージを失っているが、しかし5枚よりは全然いいという考えからでした。プレイヤーに2回目の6枚の手札を与えることで、我々はプレイヤーにマリガンすることの不利益を与え続けますが、そこまで悪いものでもありません。また6枚でゲームに負ける人の多くは、それが悪い手札であっても基本的に5枚よりはマシだという理由だけでそれをキープします。土地1枚と2マナが2~3枚? まあ、多分5枚よりはマシでしょう。これはプレイヤーに、実際に勝負になる6枚の手札を期待して手札を戻すことを可能にします。

良かったところ

 これはマリガンをしたプレイヤーに勝負になる非常に大きなチャンスを与えることによって、ゲームにならないゲームの数を大きく減らしました。マリガンによるアドバンテージの存在は依然としてありますが、マナの問題でプレイヤーがすぐに負けてしまう可能性は少なくなりました。

良くなかったところ

 このルールはプレイヤーにリミテッドでの積極的なマリガンを奨励し、構築フォーマットとなればなおさらでした。分かったことは、プレイヤーが良い6枚が来る見込みが多いというだけでイマイチで駄目なマナ・カーブの7枚をマリガンする確率が高くなるということでした。構築では、これは特に手札に既に死にカードがあった場合に人々がすぐにマリガンする手札の範囲を意味していました。《衰滅》をノンクリーチャーのコントロール・デッキ相手に引いてしまった? 2回の6枚に賭けたほうが良いでしょう。古いフォーマットでは、サイドボードの答えを探してくることを大きく奨励します。「力線」のようなカードはマリガンのリスクが少ない場合はるかに強くなります。


7-7-7シャッフル

 これはプロツアー『マジック・オリジン』で行われた占術マリガンと似たような試みですが、ある意味もっと強力です。基本的に、マリガンするごとに7枚引き、その後使わないカードを取り除き、マリガンごとの適切な数まで減らします。その結果、妥当な手札が来る確率が上がります。

良かったところ

 リミテッドではかなり適正なパワー・レベルに近いように見えますが、いくつか問題があります。基本的に一番重いカードをシャッフルして戻すことになりますが、それが明確でない場合何を戻すかの選択はかなり難しくなります――そして普通のマリガンよりも時間がかかります。

良くないところ

 このマリガンは構築フォーマットでは強すぎ、デッキ構築の大きな変更を助長します。多分最も注目に値することはモダンやエターナル・フォーマットで、シャッフルして戻すことができるためにサイドボードの対策カードがとても強くなることです。同じように、コンボ・デッキも使えないカードをマリガンできるので巨大なアドバンテージを得ます。このマリガン・ルールが我々のマリガン変更のルールに違反している最大のものの1つは、明らかにデッキ構築のパラメーターを変えてしまい、古いフォーマットのプレイ方法に大規模な影響を与えることです。


占術マリガン

 我々が上記のマリガンを見ていたころ、パトリック・チャピン/Patrick Chapinが「占術マリガン」を提案しました。当然ながら彼は、我々が占術を常磐木能力にする計画を立てていることを知りませんでしたが、その変更に上手く並びました。

良かったところ

 このマリガンの最大のアドバンテージは、意味があって、しかし強すぎないところです。これは全体的に序盤に土地を引き当てるチャンスの増大に関して良い仕事をしますが、簡単に悪用されすぎることがありません。ゲームにならないゲームの多くが片方のプレイヤーの1~2ターン目に土地が詰まることによって起こり、そしてこれはその問題の解決を大いに助けるはずです。

懸念

 我々はこのマリガンが大好きですが、(これを書いている時点では)何か問題あるかどうか、プロツアーでどのようにプレイされているかを見る時間がまだありません。プロツアーで最初にこれを使った理由の一部は、何かミスがあった、もしくは悪用される傾向にあった場合、そこで明らかになるからです。願わくば全てがうまくいき、これを新しいルールとして施行したいと思っています。


 今週はここまでです。来週は、『マジック・オリジン』のフューチャー・フューチャー・リーグのデッキをご紹介します。

 それではまた来週お会いしましょう。

サムより (@samstod)

(Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)

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