リミテッドを独特なものにする方法

更新日 Latest Developments on 2015年 8月 28日

By Sam Stoddard

Sam Stoddard came to Wizards of the Coast as an intern in May 2012. He is currently a game designer working on final design and development for Magic: The Gathering.

 マジックは絶えず変化するゲームであり、リミテッドは特にそうです。シールドやドラフトでやることは毎回その前と異なりますが、それは最終的にその環境がやり尽くされることがないという意味ではありません。最も熱心なマジックのファン達の多くは20、50、あるいは100回のドラフトを各リミテッドのフォーマットでやりますが、最終的に彼らはそれに飽きてしまします。

 幸運にも、我々はかなり早いペースで新しいリミテッド・フォーマットを追加しているので、プレイヤーの旺盛な意欲を維持できています――新しいセットが十分な新カードだけでなく、探求するべき新しいアイデアと戦略を持っている限り、ですが。これはリミテッド環境を独特なものにすることがなぜ重要なのかということの大きな部分を占めています。

 前にあったものと感じが似ていて、カード名だけが新しいリミテッド環境があったら、それは駄目でしょう。人々は飽き始めて、もう楽しめません。発見されるものが前にあったものと同じなので、新しいものを発見しようとする意欲は失われてしまいます。

 リミテッド環境がカードとメカニズムの動き、またそのセットの構造が他の環境と異なるようにすることは我々にとって重要です。今回はリミテッド環境を独特なものにするために我々が行っていることと、それぞれの機能をそのセットの本質とするために我々がしなければいけない手段についてお話しします。

マナ基盤

 これはおそらく最も基本的なことですが、また同時に最も見逃しやすいことです。マナのシステムはマジックに不可欠で、同じように色事故とマナの問題も必然で、しばしば大きな欠点と見られていますが、楽しいリミテッド環境を作り出す大きなリソースです。

 もしプレイヤーが全てのパックからその中で一番強いカードをピックできる場合、バランスを取ることは難しくなるでしょう。そうする代わりに、我々はどれだけのプレイヤーが使う色を除去、爆弾カード、回避持ちクリーチャーのために伸ばせるかを、その環境にあるマナ基盤によって規定するようにしました。

 これの最も分かりやすいバージョンは『タルキール覇王譚』のような多色ブロックです。このブロックは10枚のコモン土地、5枚のアンコモン土地、5枚のコモンのアーティファクトのサイクルを持ち、他にも全てのレアリティに様々なカードがあります。これらはパックの中身とデッキの中身、両方の空間の多くを占めています。遅くて一貫性のない5色デッキをプレイしたいならそれも可能です。また、マナの問題を無視して一貫性に向かった猛烈に速いデッキをプレイすることもできます。これはこのフォーマットにある大きな問いであり、多くの深みをもたらしました。

 『マジック・オリジン』はマナ基盤がほとんどないリミテッド環境です。これは『タルキール覇王譚』ブロックと違いをつけるための計画的な変更です。確かに5色デッキをやろうと思えばやれますが、そのための支援をほとんど見つけられないでしょう。確かに《進化する未開地》を4枚プレイすることも可能ですが、それでできることは多くないでしょう。このフォーマットは意図的に1~2色をするように仕向けられており、そのための方法として手軽なマナ基盤は存在していないのです。

http://media.wizards.com/2015/images/daily/cardart_ORI_Days-Undoing.jpg

一日のやり直し》 アート:Jonas De Ro

除去の数

 『アヴァシンの帰還』の最大の欠点の1つは除去の数が不十分だったことでした。このセットにはタフネスを-1するエンチャントが2つと、《火柱》、《死の風》、《骨の粉砕》がありました。条件付き除去の観点から言えば、クリーチャーのタフネスが3さえあればそれを除去することは非常に困難でした。そういう環境なので、結魂した《信頼厚き腕力魔道士》を除去するのはとても大変でした。

 クリーチャーにとって複数の「安全な」タフネスがあることは重要です。安全圏になるタフネスが存在しないなら、その環境の除去は恐らく重すぎて動きが鈍くなるでしょう。安全圏の数字が低すぎると、恐らくほとんどのデッキが爆弾カードに対処できなくなり、これもまた良いとは言えません。

 我々が基本的にやりたいことは、タフネス4か5が大事なフォーマットにして、コモンをそれに沿って作ることです。これにより我々は多種多様な除去呪文を作ることができ、プレイヤーにほとんど何でも殺せるものを与えることができます。

 例えば、『マジック・オリジン』の赤いコモンには1点、2点、3点のダメージを与える呪文があり、黒にはパワー3以下を殺せる呪文があります。緑の格闘は+2/+2の修正(つまりタフネス4や5を簡単に対処できるということです)があります。赤には5点のダメージを与える《焦熱の結末》がアンコモンにあります。黒には複数の小さいクリーチャーに対処できる《眼腐りの虐殺》があります。タフネス4には(パワーも4あればもっと大きな)カード・パワーの壁があり、《ロウクスのやっかいもの》のようなカードの対処を難しくしています。さらに、《ロウクスのやっかいもの》が攻撃を通してしまうと、突然《焦熱の結末》やほとんどの場合の《野性の本能》が除去として機能しなくなります。もしコモンの除去が別の空間にあったなら、我々は《ロウクスのやっかいもの》を同じ効果を持つ優良なコモンのクリーチャーにするために4/5にしなければならなかったかもしれません。同時に、我々が高いマナ・コストで影響力のあるクリーチャーを作ることができた理由のひとつは、軽い除去がそれらのクリーチャーに対処できないことにあったのです。

 高名状態になった《ロウクスのやっかいもの》や《永遠警備の歩哨》を殺せる除去はセットの中に存在しますが、基本的に重くなります――なので、それと一緒にデッキにたくさん入れることができません。このことは長期戦をしたいデッキに除去の多いデッキに対して、うまくいけばそれが盤面に出てきた全てのゲームが滅茶苦茶にならない程度に耐性のあるクリーチャーを与えます。白と青には優れた解答がありますが、このフォーマットにある《肉袋の匪賊》のようなカードなどいくつか弱点を持っています。

スピードラン

 『マジック・オリジン』が速いリミテッド環境であることに疑問の余地はありません。これは意図したものであり、このセットのフレーバーの多くが高名を元にしているので、メカニズムを意味あるものにすることは大事です。つまり高名をこのセットの鍵となるメカニズムになるようにするために、それを持ったクリーチャーをかなりアグレッシブなものにするということです。また『タルキール覇王譚』ブロックは多色カードやドラゴン、変異などのせいで環境はかなり遅くなっていたので、我々はペースを変えるためにこの環境を速くしたのです。

 あらゆるマジックのゲームにおける適正なスピードというものは存在しないというのは真実です。ある人は速いフォーマットが好きで、またある人は遅いフォーマットを好みます。それぞれに利点と欠点があり、健全な割合のフォーマットを提供し全てのフォーマットに速いデッキと遅いデッキがあるようにすることはデベロップの責任です。

 先程の『タルキール覇王譚』や、『アラーラの断片』、『ラヴニカ:ギルドの都』、『ラヴニカへの回帰』などのフォーマットを見てみると、全て多色なので少し遅めの傾向にあります。我々はプレイヤーに多色デッキのプレイを奨励し、彼らが態勢を整える時間を与える必要があるので、強力な軽量クリーチャーを少なめにする傾向にあります。我々は3色以上をプレイすることが常に正しいわけではないことを望んでいますが、それができるかどうかはフォーマット次第です。他のセット、例えば『シャドウムーア』、『マジック・オリジン』、『ゼンディカー』は速いフォーマットであり、これらはアグレッシブなメカニズムに基づいている傾向にあります。

http://media.wizards.com/2015/images/daily/cardart_ORI_Goblin-Glory-Chaser.jpg

ゴブリンの栄光追い》 アート:Greg Staples

 デベロップの主要な目的の1つはデザインがセットに込めた経験を提供することであり、リミテッドでそのフォーマットがその経験をできることを保証する適正なスピードにすることによって、その大部分を達成しています。デザインのプレイテストはとても有益ですが、デザイナーはしばしば彼らのゲームの問題点を適正にしようとして努力します――現実世界の人々がどんなデッキを作るかを反映しないデッキを作るか、もしくはリミテッドで何度も繰り返しプレイされて基本的に楽しいものよりも強い(そして大抵効果の大きな)カードにしてしまいます。デザイナーがセットで見せたいものをデベロッパーが楽しむものに変換する大きな部分は、そのフォーマットをトーナメント・プレイで機能するスピードにすることです。

 先程の『マジック・オリジン』の例では、そのフォーマットが高名クリーチャーを《層雲歩み》のようなカードやコンバット・トリックで通すようにすることを楽しくできるように少し速めにしましたが、2体目のクリーチャーを出さずにゲームを終わらないようにもできました。クリーチャーをもっと重くして攻撃を通しやすくするか、振れ幅を大きくすることもできましたが、私はデザイナーが高名になることに利益があることを好んでいたことを知りました――そしてクリーチャーが1体高名になっただけではゲームに勝てないようにしました。

 デベロップが現実世界で楽しく機能する物事を見つけることが、このフォーマットで時間をかけて強化することを可能にするための適正なバランスを見つける私のやり方です。

第2セットの将来

 私はこの計画の将来に深く入れるわけではないので、からかって言っているわけではありませんが、我々は過去に第2セットでやろうとしていたことよりも現在もっと良いアイデアを持っています。その理由の大部分は、第2セットがブロックの最終セットになったからです。昔はドラフト環境に新鮮さを感じさせる一方で第3セットにネタを十分残しておくため、新しい事柄を加えるのに繊細なバランス取りが必要でした――しばしば大幅なメカニズムの移動が行われました。

 温存の必要がない新しい世界では、我々はもっと自由に新しいメカニズムとそのブロックの環境でやりたいメカニズムの自然な限界を探求することができます。今我々が3セット制でなく2セット制で『テーロス』をやるなら、第1セットにもっと多くエンチャントを入れて、第2セットにより大きなエンチャントへの褒賞を入れるだろうと私は信じています。

 『戦乱のゼンディカー』ブロックの第2セットである『Sweat』の発売が近づくにつれて、我々の計画と『戦乱のゼンディカー』のメカニズムに基づいたより良い例についてもっとお話しできるようになるでしょう。

 今週はここまでです。来週のヴォーソス特集では、フレーバーについてお話ししようと思います。

 ではまた来週お会いしましょう。

サムより (@samstod)

(Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)

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