マッドネスの懐かしい思い出

更新日 Latest Developments on 2016年 4月 1日

By Sam Stoddard

Sam Stoddard came to Wizards of the Coast as an intern in May 2012. He is currently a game designer working on final design and development for Magic: The Gathering.

 『イニストラードを覆う影』の先行デザインのほとんどは、対戦相手を狂気に追いやるというアイデアに基いて彼らのライブラリーを削ることに焦点を当てていましたが、その計画から生じて、デザイン初期の間に固まったもうひとつの主要な事柄があります――マッドネスです。

 確かにほとんどはその名前によるものですが、しかしそれだけでなく、このメカニズムには楽しい事柄が多くありました。特筆すべきは、すでに私たちがやったとおり、スタンダードとリミテッドの両方でうまくいくことが分かっている、楽しく強力なたくさんの相互作用を可能にしていることです。

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 デベロップが「マッドネス」と聞いて最初に思い浮かべたものは、最も有名なマッドネス・デッキ――緑青マッドネスでした。デイブ・ハンフリー/Dave Humpherysはいくらか詳しいかもしれませんが(リンク先は英語)、我々はマッドネスが青黒《サイカトグ》デッキでどのようにプレイされたかについても考えました。これら2つのデッキはマッドネスが異なる骨組みの中で機能する多彩な用途のいくつかを示しましたが、またそのフォーマットに適正な量の支援を入れた場合、このメカニズムを使ったトップクラスの構築向けカードを作ることができることも証明しました。

 デベロップは長い間、マッドネスが安全かどうかという懸念を持っていましたが、多くの利点が存在することもわかっていました。つまり、異なる支援の方法と我々が現在印刷しているカードでどのようにバランスを取るかを見つける、そのために時間をかける価値があるということでした。今回の記事では、我々がマッドネスをリミテッドと構築フォーマットの両方で機能するようにするために行ったこと、そして……厄介な問題にも触れようと思います。

『イニストラードを覆う影』リミテッドでのマッドネス

 マッドネスをリミテッドで機能させるのは、皆さんが考えているほど簡単ではありません。問題はマッドネスが非常に「A+B」のメカニズムであり、そしてこのセットどころか、皆さんのデッキの中で適正なバランスを得ることも容易ではないということです。

 このセットに取り組んでいるときに我々が発見したことは、コモンの繰り返し使えるディスカード手段を多く作れば簡単すぎるようになり、そしてそのディスカード手段を殺せるかどうかにかかりすぎるということでした。我々が最終的に《厳格な巡邏官》を残したのは、白がマッドネスの主色ではなかったからでした。

 その代わり、我々がリミテッド向けに焦点を当てたのは、2対1交換の可能性を持った使い捨ての効果をもっと多く作ることでした。《苦しめる声》で《マウアー地所の双子》をマッドネスで唱えることは大変ではありませんが、楽しく強力なコンボです。

 アンコモンでは、十分な数があるならそれらでデッキを埋めることができる、繰り返し使える効果が多くなっています。しかし毎回のドラフトで十分な数が得られるわけではなく、時々しか得られません。初代『イニストラード』について考えてみると、多くの場合、自分のライブラリーを削るデッキが機能しましたが、常に機能するわけではありませんでした。

 また我々は、より激しいコンボを、毎回のゲームで起こるものではないと仮定して容認していました。超強力なスタートを切って《ファルケンラスの後継者》からの3ターン目《手に負えない若輩》がプレイできるかもしれませんが、毎回のドラフトでそれが起こるわけではありません。同じように《ギサの召集》のような2対1や3対1交換の取れるマッドネスはアンコモンに限られるので、3マナとマッドネスするための装置があるだけで攻撃できなくなります。重要なのは、これらのようなやり取りは時々発生してもかまわないのですが、イライラするほど頻繁には起らないということです。

 スタンダードの話をすれば、我々はインスピレーションのために『オデッセイ』ブロックと少しだけあった『時のらせん』ブロックで元々何をしたかを見直してみました。そこには何かがありましたが、我々は新しい特徴を与えるために少しその色を変えたいと考えました。『オデッセイ』のマッドネスには2つのデッキがありました――コントロール・アグロの緑青マッドネスと、コントロールの青黒《サイカトグ》です。同じように我々は複数のマッドネス・デッキがあるようにしたいと考えましたが、それらのデッキがもう少し異なるプレイをされることを求めました。

『イニストラードを覆う影』入りスタンダードのマッドネス――アグロ編

 マッドネスを部族の1つの中心にすることが、我々にとって最も有用でした。初代『イニストラード』の吸血鬼の多くがスリス的な(プレイヤーに戦闘ダメージを与えると+1/+1カウンターが置かれる)メカニズムの特徴を持っていたように、今回は吸血鬼を基本的に「マッドネス」部族にしようと考えました。グリクシスがマッドネスの色であることは、我々は異なるデッキをスタンダードに推すいくつかの選択肢を得ました。

 スタンダードでプレイする吸血鬼が大量にあるわけではありませんが、推すために良い方法だと感じた赤黒アグロデッキのためにローテーションすることができる十分なカードがありました。加えて、ほとんどのスタンダード・フォーマットではとても退屈になりうるデッキを取り上げて、それに新しさを感じさせるメカニズム的な特徴を与えることは常によいことです。

 あなたは吸血鬼マッドネス・デッキのカードの多くが、緑青マッドネスのそれにとても良く似ていることに気づいたかもしれません。《堂々巡り》のような妨害手段こそありませんが、その代わりに《癇しゃく》のような除去があります。《野生の雑種犬》の代わりはいませんが、《貪欲な求血者》と《ファルケンラスの後継者》はマナ・カーブ上である種の代替になっています。これと《手に負えない若輩》が《尊大なワーム》より強いかどうかは難しいところですが、遅いデッキに対する3ターン目においてはかなり互角だと思います――そしてそれは10年前からのものではありません。

 アグレッシブなマッドネス・デッキは、もっとまっすぐでコンボ要素の少ないデッキと比べた場合いくらかアドバンテージを失っていますが、私はそれらが(基本的に)より楽しく多くのプレイヤーに共感されるだろうと思っています。またそれらは簡単に妨害されてしまうとしても、より強力な引きをする傾向にあります。このアグロ・デッキはマナをごまかすことにマッドネスを使い、大きなカード・アドバンテージを得ることには使いません。

『イニストラードを覆う影』入りスタンダードのマッドネス――コントロール編

 コントロール・デッキはマッドネスの展開方法を考えるともう少し多い選択肢がありますが、吸血鬼デッキよりもずっと軽いタッチになるでしょう。明らかに《ヴリンの神童、ジェイス》は昔の《サイカトグ》の立ち位置にあり、実際に黒に寄せるデッキを考えるなら《ゾンビの横行》の立ち位置にある《血統の呼び出し》のような選択肢もあります。もしくは青赤をしたいなら《炎呼び、チャンドラ》、《ゲラルフの傑作》、《苦しめる声》のようなものだけに頼ることもできます。

 デベロップの期間中、我々は《氷の中の存在》を最終的な勝ち手段にした青赤マッドネス・デッキをよくプレイしていました。その発想は吸血鬼デッキのような(マナをごまかす)動きをするのではなく、マッドネスを大量の普通のカード・ドローよりも少し多く《マーフォークの物あさり》効果と一緒に使ってカード・アドバンテージを得ようとするものです。《苦しめる声》はこれに合っていないように見えますが、《氷の中の存在》がある状態で3ターン目にこれを唱え、クリーチャーを殺すためにマッドネスで《癇しゃく》を唱えたら、ゲームの序盤でいくらかの深刻なダメージを与えることになります。

 また《血統の呼び出し》でチャンプブロッカーを出すか、じわじわと相手を倒すアタッカーを出すために《集中破り》や《収まらぬ思い》を捨てて、ゆっくりとアドバンテージを積み重ねていく、もっと低速の青黒デッキもあります。遅いゲームになれば、1~2枚の《床下から》を、実際に相手にとどめを刺すのに十分な数でターン終了時に唱えることができます。このデッキは爆発的なカード・ドローを多く持ってはいませんが、このフォーマットの他のあらゆるデッキと同じようにゆっくりとしたコントロールの動きをして、そして多くのデッキがインスタント速度でマッドネスをプレイするかもしれないので、打ち消し呪文を最大限に活用することが可能です。

見たくない大問題

 さて、《ヴリンの神童、ジェイス》……ええ。本当に正直に打ち明けます。ジェイスは『イニストラードを覆う影』以前もとても強力で、マッドネスを得て彼の有用性はさらに上がりました。さて、フェッチランドがなくなり彼を変身させるのには時間がかかるようになり信頼性も低下したので、彼が強くなったのか弱くなったのかは難しいところですが、私は彼が『イニストラードを覆う影』期のスタンダードの大きな要素になると想定しています。私は彼がこのフォーマットで強すぎるとは考えていませんし、そしてフェッチ/バトルランドのないマナベースでは彼だけをタッチすることはかなり難しくなったので使われるデッキはかなり減るかもしれませんが、私は彼がすぐに人気を失うことはないと想定しています。

 私が『マジック・オリジン』に取り組んでいた時、『イニストラードを覆う影』のデザイン・チームにも所属していました。私は『マジック・オリジン』と『イニストラードを覆う影』が同時にスタンダードに存在することはわかっていました。とはいえ、私は確かにこのバージョンのジェイスが最終的にセットに入ることは知りませんでした――デベロップ中にメカニズムは頻繁に変更されていたのです。

 ゾンビ向けの《ナントゥーコの鞘虫》、昂揚や一般的な墓地シナジー向けの《群れの結集》、人間部族向けの《アクロスの英雄、キテオン》のような、『イニストラードを覆う影』ブロックを支援するカードが必要なのはわかっていました。私はジェイス単体についてもっとよく考えましたが、マッドネスがものになれば彼が強くなることには気づいていました。結局、私は『イニストラードを覆う影』以外に何枚か強力なカードを捨てる装置があることには喜んでいますが、ジェイスがもう少し弱かったらもっと満足していたでしょう。

 これは我々に、ブロックの怪物が発生することなく強力なマッドネス・デッキを作ることができるという確信を与えてくれましたが、青のマッドネスのカードにいくらか強さの制限を与えました。幸運なことに、このフォーマットには《死の重み》のようなカードがあるので、あらゆる種類のデッキにジェイスに対処するカードが十分あり、そしてこのフォーマットは彼が全てにはならないだろうと思います。彼がこのセットの顔であるため、それはフレーバー的かもしれませんが、私は彼が主に彼を唱えたいデッキに入っていて、スタンダードで唱えられる最も良いものとして座っていないことに満足しています。

 今週はここまでです。来週はみなさんの大好きなMファイル『イニストラードを覆う影』編をお送りします。

 それではまた来週お会いしまよう。

サムより (@samstod)

(Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)

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