ア・ラ・モード

更新日 Making Magic on 2014年 3月 5日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

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 貢納特集にようこそ。今週は、『神々の軍勢』の新メカニズム貢納を取り上げる。メカニズム特集にはよくあることだが、どうやってデザインされたかについてはプレビューの間に取り上げている(まだ読んでいない諸君はこちらを)。そこで、代わりに今回は貢納メカニズムの中核となるデザイン上の内容である「選択」について語ろう。ここでは意図的に「選択」という単語を使っている。マジックのデザインにおける決定についての記事を読んでいない諸君は、今回の話題に深く関わることなので、是非読んでみてもらいたい(その1(リンク先は英語)、その2(リンク先は英語))。これから取り上げる呪文はどれも唱えたプレイヤーに2つあるいはそれ以上の効果の中から1つを選ばせるものである。今日の記事では、選択を含むカードを作るさまざまな形を通して、デザイン中の知見を語っていこう。

    モードを持つ呪文

 まず最初に、モードを持つ呪文と呼ばれる選択カードのもっともわかりやすい例を紹介しよう。マジックにおいて「モードを持つ呪文」とは、「〜から1つを選ぶ」「〜から2つを選ぶ」「〜から1つまたは2つを選ぶ」と書かれている呪文である。その選択肢のことを「モード」と呼び、『基本セット2014』の《補強》はモードを持つ呪文の最新のものの1つである。

 モードを持つ呪文は、プレイヤーに、どちらか一方だけを使うことができる複数の呪文をもたらすようなものである(どちらか一方でないものもある、それについてはこれから触れる)。通常、その選択肢のどちらも呪文のコストに比べると弱いものだが、その呪文の汎用性はそのデメリットを補って余りあるものだ。選択があることによって呪文は強化されているのだ。

 モードを持つ呪文がもたらす選択肢2つは、何らかの形で関連していることが多い。美学上の理由で、その呪文が2つのばらばらの呪文に感じられるのではなく、1つの呪文でできることの幅があると感じられることは重要である。2つの効果が大きくかけ離れている場合、デザイナーはその2つの効果に共通の要素を与えようとする。たとえば、上記の《補強》を見てみよう。1つめの能力は攻撃的な能力で、2つめの能力は防御的な能力である。強化の幅を同じにして、自分のクリーチャーすべてに+2することで、この呪文の2つのモードは関連していることになり、呪文全体が2つの呪文ではなく1つの呪文だと感じられるようになっている。《補強》は2つの呪文を対照的なものにした(一方がパワーを、他方がタフネスを修整するようにした)ことによってコインの裏表であるかのように感じられるようになっている。

 この種の選択呪文でもう一つ重要なのは、いや、すべての選択呪文で重要なのは、呪文を唱えるプレイヤーに取ってその選択が興味深いものであることである。ほとんどいつでも同じ側を選択するようであれば、その選択カードは潜在能力を発揮することはないだろう。

 《補強》は基本的なモードを持つ呪文の一例だが、他にもさまざまなバリエーションが存在する。

魔除け


 バリエーションの1つめが、魔除けだ。魔除けは2つではなく3つの選択肢から選べるカードである。魔除けが初めて登場したのは『ミラージュ』で、単色だった。それから、さまざまな多色の魔除けが登場してきた。その最新作が『ラヴニカへの回帰』ブロックに存在する。魔除けは3つの効果から選ぶので、効果はどれもそう強力なものではない。そのため、少しばかり違う感覚になっている。

 魔除けはカード1枚として見ると弱すぎる効果を持つことが多いが、3つの中から選べるという汎用性のおかげでその弱い効果もカード1枚の価値を持つ。小さな効果の寄せ集めというフレイバーがあるので、効果が小さいことそのものが美学的に関連性をもたらしており、デザイナーは効果をメカニズム的に繋ごうとしないことも多い。

 魔除けのデザイン上で興味深いことは、2色の場合に起こる。1色の魔除けは、全ての効果をその色から出せばいい。3色なら各色から1つずつだ。しかし2色となると、3つの効果を均等に出すことができない。そこで選ばれた手段が、1つめを1色めから、2つめを2色めから、3つめを両方の色の重なる部分から出すというものだった。

命令


 命令は『ローウィン』に存在したサイクルで、4つの選択肢から2つを選ぶというものだ。ここで項目を立てて取り上げるのは、命令サイクルは一度しか存在していないが、非常に人気が高く、新しい命令サイクルはまだかと常々尋ねられるからである。命令をデザインする上での鍵は、どの2つを選んでも組み合わさるような4つの能力を必要とすることである。魔除けも命令もどちらもそうたくさん作れないのは、各色の持つ能力に限りがあるからなのだ。

双呪


 双呪は『ミラディン』ブロックのメカニズムで、モードを持つカードに追加でマナを支払うことにより療法の効果を唱えることができるという追加の能力を与えるものである。双呪で使う効果をデザインする上での鍵は、組み合わさったときにシナジーが発生するようにすることである。例えば、《歯と爪》の1つめの能力はライブラリーからクリーチャー・カードを手札に入れられるというものであり、2つめの能力はクリーチャー・カードを手札から戦場に出せるというものである。どちらも単体で有効だが、組み合わさるとクリーチャーをライブラリーから直接戦場に出せるというさらに強力な能力になる。

 各色内で組み合わせてシナジーを持つ効果の組み合わせが限られているので、双呪カードのデザイン空間も限られたものになる。

分割カード


 分割カードは『インベイジョン』ブロックで初登場した、「どちらか1つを選ぶ」というモードを視覚的に2枚の小型カードとして表現したカードである。(マナ・コストを共有していないため)「どちらか1つを選ぶ」という文章は書かれていないので、分割カードはルール上モードを持つカードではないのでこうして別項目を立てることになった。とはいえ、分割カードは2つの選択肢を提示する、一種のモードを持つカードである。

 レイアウト上、分割カードは効果にさらなる多様性を含むことができる。また、美学的な重なりもそれほど重要ではない。これは、このカードのフレイバーが「2枚のカード」だからである。関連があるとすれば、分割カードは「○○と○○」というように呼ばれるので、両側を繋いでいるのは名前である。分割カードをデザインする際は、我々はまず一番難しい部分である名前を決める。その後、その名前に従ってデザインするのだ。


 『ドラゴンの迷路』で導入された融合メカニズムは、分割カードにあわせた双呪メカニズムである(デザイン中は「双分割/splitwine」と呼ばれていた)。通常の分割カード同様、融合を持つ分割カードもルール的には分割カードではないが、デザイン上、双呪カードに課せられるのと同じ条件が課せられていた。ルール文章に課せられた制限から、作るのはさらに難しくなっている。

対象のタイプの選択


 次の選択カードは、分割カードのように、モードを持つ呪文と全く異なるものではない。ただし、文章には「1つを選ぶ」という表記はない。これらのカードは2種類の効果を持ち、それぞれが異なるタイプのカードに影響を及ぼす。その一例が上記の《帰化》で、アーティファクト1個かエンチャント1個を破壊するという除去カードである。書きようによっては、《帰化》は次のように書くこともできる。

「アーティファクト1個を対象とし、それを破壊する。」または「エンチャント1個を対象とし、それを破壊する。」

 ここでのポイントは、モードを持つカードとそれ以外の選択カードの間には文章の書き方1つで変わってしまう細い線があるだけだということである。ルール上、「1つを選ぶ」と書かないことによって実際のプレイに影響することはないわけではない(例えば、アーティファクトを対象にした《帰化》の対象をエンチャントに変更することはできるが、モードを持つカードでモードを変更することはできない)が、ほとんどの場合にはほとんど影響しない。

 この種の選択カードはもっとも一般的で、低いレアリティでももっとも簡単に使うことができる。《帰化》はモードを持つ呪文と同じように2つの選択肢を提示しているが、2つの呪文のどちらを使うか選んでいるという感覚もなく単一の呪文らしく受け取られている。この種のカードで「1つを選ぶ」を使わない理由の1つだろう。

 この種のカードをデザインする上での鍵は、異なる種類の対象に影響を及ぼすことのできる効果を選ぶことである。もっとも一般的な選択は、2種類のパーマネント・タイプに影響を及ぼす呪文や、1つのパーマネント・タイプ(多くはクリーチャー)とプレイヤーに影響を及ぼす呪文である。2種類の異なる対象から選ぶ場合に重要なのは、呪文が異なる種類のものに影響を及ぼすことができることが自然かどうかというメカニズム的美学ではなく、フレイバーである。異なる対象を組み合わせる場合、フレイバー的にその呪文が一体何なのかを定義するのが難しいことがある(例えば、クリーチャーかエンチャントを破壊できるもの、とは何だろう?)。

    可変呪文

 次なる選択カードは、基本の効果と、追加のコスト(大抵はマナ)を支払うことによって何らかの形でその呪文を拡張するか、あるいはその最初の能力とシナジーを持つことが多い追加の能力を得るというものである。これは新しいメカニズムを作る上で非常に一般的な方法なので、これまでに登場した様々なものを見ていこう。

キッカー


 この種の呪文の最長老と言えば、キッカー・メカニズムだ。上記の『アライアンス』の《Taste of Paradise》のようにキッカーが登場する前から存在するカードも何枚かあったが、キッカーこそがこの位置に相応しい。キッカーが初めて登場したのは『インベイジョン』で、唱える時に追加のマナを支払って呪文を何らかの形で強化し、大抵はより大きな効果を得ることになる。つまり、分割カード同様、効果ごとにコストが違うのだ。

 よいキッカー呪文をデザインする鍵は、ゲームのどの時期に使うかによって価値の異なる効果を見付けることにある。例えば、《カヴーのタイタン》はそのときに支払えるコストで唱えられることが多い。私がフューチャー・フューチャー・リーグでプレイしていたときに、開発部でよく話題になった話がある。ランディ・ビューラーが私に緑単色のデッキを渡し、私はそれで4-0した。その後、ランディは私に、そのデッキの中の《灰色熊》は本当は《カヴーのタイタン》だったんだ、と伝えた。翌週、私は2-2だった。ここで重要なのは、2マナしかないなら《カヴーのタイタン》を《灰色熊》だと思って、5マナあるなら5/5トランプル持ちだとして扱えば良かったんだってことだ。

 キッカーのデザインでは、どちらのコストでも価値があるようにするのが最高だ。モードを持つ呪文と同様、それぞれが単一の効果だとしたら重すぎるというのでも問題はない。例えば、で2/2の完全上位互換は多くのセットで作っているが、ゲームの後半で5/5のトランプル持ちとして使える《灰色熊》なら大歓迎だ。

多重キッカー


 多重キッカーは『ワールドウェイク』で導入されたキッカーの亜種であり、キッカー・コストを望む回数支払うことができるというものである。多重キッカー・カードはキッカー・カードとは少し異なり、より拡大性を持つので、通常の増加で唱えることができる。通常は、より効率は悪いが汎用性に富んでいる。

複製


 複製は旧『ラヴニカ』ブロック、『ギルドパクト』で登場したイゼットのメカニズムである。これは、コストを支払ってその呪文をコピーできるというもので、多重キッカー同様、この追加コストを何度でも支払うことができ、また新しい対象を選ぶことができる。もう1つ多重キッカーと同じく、複製の効果もまた拡大性を持つ。一般に、複製呪文は複製コストを使いやすいよう、比較的小さな効果であることが多い。

共謀


 『シャドウムーア』で登場した共謀は基本的には複製のバリエーションで、アンタップ状態のクリーチャーを2体タップするとその呪文のコピーが得られるというものである。複製と異なり、共謀は呪文ごとに1度しか使うことができない。この制限から、比較的強力な効果でデザインすることができたが、小さな効果でもうまく働く。

想起


 想起は『ローウィン』で登場した、逆向きのキッカー・クリーチャーのようなものである。さらに支払って戦場に出たときの効果をクリーチャーに与えるのではなく、想起は支払いを減らしてクリーチャーを諦め、ただ戦場に出たときの効果だけを得るのだ。ルール上はいずれにせよクリーチャーが戦場に出るのだが、この代用コストを支払っていた場合にはそのクリーチャーは戦場に出ると即座に生け贄に捧げられるのだ。

 想起カードをデザインする上での鍵は、良いキッカー・カードを作るのと同様で、「呪文だけ」あるいは「呪文とクリーチャー」という選択のどちらも、このカードを唱えるゲームの局面において有用であるようにすることである。想起の最大の制限は、クリーチャーに限定されるということである。

バイバック


 『テンペスト』ブロックのバイバックを選択カードに入れるべきかどうかは難しいところだ。確かに選択はするが、この選択によって効果が変わるわけではない。単にそのカードを唱えた後も手札に残すかどうかだけである。バイバック・カードをデザインするのは非常に難しい。というのは、毎ターン唱えられるというだけで、もとがどんなに弱かろうともどんな呪文もとても強烈になってしまうからである。

連繋


 『神河物語』の連繋は、選択がその呪文を再び唱えるかどうかにだけ関わるという点でバイバックと似ている。連繋は効果を他の呪文に与えるものなので、バイバック呪文よりも制約が厳しい。また、他の呪文を唱えた後に唱えなければならないので、連繋効果はかなり小さいものになる。

    拡大効果を持つ呪文

 このグループを前のグループの一部とすべきかどうかは難しいところだが、これを別項目にすることにした。このグループは、2つの選択肢から選ぶのではなく、マナに限らない何らかのコストを通して拡大効果を持つものである。

X呪文


 この分類に入る呪文のもっとも基本形はX呪文、つまり任意の量の無色マナを選び、そして呪文の効果を定義するために用いる呪文である。X呪文は『アルファ版』から存在し、それからほとんど全てのセットで登場している。

 X呪文をデザインする上での鍵は、どんな数でも存在できる変数を見付けるところにある。この変数は、呪文の様々なところで使うことができる。また、上記の《火の玉》のように、複数の変数を用いることもある。

増幅


 増幅は『レギオン』で登場した、特定のクリーチャー・タイプのカードを手札から公開した枚数と同じ数の+1/+1カウンターをクリーチャーに載せるというクリーチャー・メカニズムである。増幅とX呪文との違いは、変数を定めるためのリソースがマナではないということである。増幅クリーチャーをデザインする上での鍵は、パワーが重要なクリーチャーを作ることである。トランプルや飛行のようなクリーチャー・キーワードを与えるということもありうる。上記の《ダールのとげ刺し》のように、クリーチャーに置かれている+1/+1カウンターの数に基づく能力を与えるということもある。増幅のデザイン空間は限られており、また、強い部族テーマを持つセットでのみ有用である。

貪食


 貪食は『アラーラの断片』ブロックのジャンド断片に登場したクリーチャー・メカニズムである。このメカニズムは、貪食クリーチャーが戦場に出たときに好きな数のクリーチャーを生け贄に捧げ、特定量の+1/+1カウンターを載せるというものである。これもまた、戦場にあるクリーチャーという異なる種類のリソースを用いた、異なる種類の拡大効果である。貪食メカニズムは、クリーチャーを+1/+1カウンターにするというだけで面白いゲーム・プレイができるので、デザインにはそれほど難点はない。

掃引


 掃引は『神河救済』で登場した、インスタントやソーサリーの持つ能力語であり、特定タイプの基本土地を手札に戻してその呪文の効果の大きさを決定するものである。『神河救済』には「手札枚数テーマ」が存在し、掃引は手札を増やす助けになる。これはもう一つ、拡大効果の例でもある。掃引がそれほど濃いメカニズムでないという証拠に、4枚しか存在していないのだ(掃引を能力語にしたのは間違いだと考える理由の1つである)。

    手札の他の選択肢

 この種の選択カードは、カードが手札にある間に使える2つめの能力を提示するものである。

サイクリング


 『ウルザズ・サーガ』ブロックで初登場したサイクリング・メカニズムは、手札にあるカードを捨てて一定量のマナを支払うと、ライブラリーの一番上からカードを手に入れられるというものである。このメカニズムの特徴的なところは、選択肢の1つ、カードを引くということがどのカードでも同じということである。良いサイクリング・カードをデザインする鍵は、ときどきだけサイクリングしたくなるような効果を選ぶことである。そうすることで、そのカードをサイクリングするかどうかという選択が常に存在することになる。常にサイクリングしたくなる、あるいは逆にサイクリングなんてしないようなカードであれば、選択を与えるという意味の役には立たないのだ。


 『オンスロート』ブロックでは、サイクリングしたときに別の効果を得られるサイクリング・カードが登場した。いろいろな意味で、これによってサイクリングでキッカー・カードができるようになった。通常、このサイクリング効果はその呪文が「キャントリップ」つきで弱くなったものである。これらの呪文は数を伴う効果を持つことで、その効果に大小をつけることができるようになっている。

タイプサイクリング


 『オンスロート』ブロック第3セット『スカージ』では、サイクリングのバリエーションとして「基本土地サイクリング」と呼ばれるものを導入した。これはマナを使ってそのカードを捨てると、カードを引く代わりに特定の基本土地をライブラリーから探して手に入れられるというものだ。その後『未来予知』ではこのタイプ・サイクリングを次のように発展させた。


 《ヴィダルケンの霊気魔道士》は、基本土地以外を求めてのサイクリングもできるということを示した。《ヴィダルケンの霊気魔道士》以来、基本土地以外のタイプサイクリングは作られていないが、ルール上はできるようになっているのだ。

 タイプサイクリングはサイクリングと違い、教示者のような性質を持っている。これらのカードを働かせるためには、タイプサイクリングは必要とするものを得るためにサイクリングしたいカードに持たせなければならない。つまり、基本土地サイクリングは序盤に使い道のない重いカードにつけて、基本土地を求めて捨てやすいようにしなければならない。タイプサイクリングはサイクリングと同様、サイクリングされやすいよう、状況によって実用的になるようなカードに持たせるべきである。

補強


 『モーニングタイド』でこのメカニズムをデザインした時、私はこれをサイクリングのバリエーションとして提示していた。違いは、手札にあるこのカードを捨ててカードを手に入れるのではなく、いくつかの+1/+1カウンターを手に入れるということだけだった。+1/+1カウンターを得ることと自然に繋がる呪文の効果やクリーチャーはずっと少ないので、このメカニズムのデザイン空間はサイクリングよりもずっと限られている。

魂力


 『神河救済』の間に、我々は手札からマナを払って生け贄に捧げることで効果を得られるカードを作ることにした。その効果はそのカードの本来の効果と何らかの形でテーマ的に関連しているものだ。それらのカードを関連づけるため、それらのカードに「魂力」という能力語を与えることにした。その後、我々はそれを間違いだと判断した。手札から捨てて効果を得られるカードを作っても、それを魂力とは呼んでいない。この種のカードをデザインする上での鍵は、手札から捨てる効果がそのカードとメカニズム的に関連することで、カードの本質的な部分だと感じさせるようにすることである。

変成


 旧『ラヴニカ』ブロックのディミーアのメカニズムである変成は、カードを捨てて、それと点数で見たマナ・コストを持つカードをライブラリーから探すというものである。サイクリングやその亜種と同様、このメカニズムをデザインする上での鍵は、状況によってこのカードを交換したいようにすることであり、それはつまり変成持ちのカードを状況によって働くものにすることである。

予見


 『ディセンション』のアゾリウスのメカニズムである予見は、少しばかり違うひねりが加えられている。その呪文を普通に唱えることもできるが、手札にある間に起動してより小さな効果を得るという選択肢もあるのだ。この2つの効果は、同じターンに使うことができればシナジーが生じるようにデザインされている。シナジーのある2つの効果を持つカードの例に漏れず、このメカニズムのデザイン空間は限られている。

    選択に基づくクリーチャー

 この分類に入るのは、唱えたプレイヤーが望む形になるクリーチャーである。

選択肢のあるクリーチャー


 この種のカードの最長老は、唱えたプレイヤーが3つの選択肢の中から選ぶという『アンティキティー』の《原初の土》である。近年のこの種のカードの多くは追加のコストが発生するものであり、上記の「可変呪文」の枠で紹介されている。

変異


 最初『オンスロート』ブロックで登場した変異メカニズムは、変異状態で裏向きで、2/2のバニラとしてクリーチャーをプレイできるというものである。その後特定のコスト(たいていはマナ)を支払うことで、そのカードを表向きにして表側に書かれているクリーチャーにすることができるのだ。変異はデザインについて語るだけで記事を1本丸々書けるような深いメカニズムだが、この記事は既にかなり長くなってしまっているので、変異クリーチャーをデザインする鍵としてカードの謎の値を理解することが非常に重要であるとだけ言っておこう。変異カードの面白いところは、裏向きのカードがどの変異クリーチャーかわからないということであり、対戦相手はそれが何なのか判断しなければならないのだ。

解鎖


 解鎖は『ラヴニカへの回帰』のラクドスのメカニズムであり、そのクリーチャーを唱えたプレイヤーは+1/+1カウンターを1個置くかどうかを選ぶことができる。置いた場合、そのクリーチャーではブロックできなくなる。このメカニズムは、バニラあるいはフレンチ・バニラなクリーチャーと相性がいい。鍵は、ブロックを諦めることが選択肢になるようにすることである。+1/+1カウンターを置きたいと思っても、躊躇することがあるようにするのだ。

    刻印

 このメカニズムをどう分類するか悩んだので、独立した項目を立てることにした。刻印は『ミラディン』ブロック(後に『ミラディンの傷跡』ブロック)のメカニズムであり、呪文を唱えたときに(他の場所から)カードを追放して、その後でそれをその呪文に関する何かを定めるマーカーとして使うのだ。このメカニズムは本来、アーティファクトだけで使われていた。

 刻印カードのデザインは、かなりの汎用性をもたらすように開放したデザインにしなければならないので、非常に難しい。また同時に、(色やカード・タイプといった)単一の選択をすることで繰り返されることもないようにしなければならない。刻印カードのデザイン空間は非常に狭いので、作る時には枚数を絞って魅力的なものにすることになるだろう。

    対戦相手が選択するカード

 この最後の分類は、今週のテーマに沿ったものである。

懲罰者


 『オデッセイ』ブロックで初登場したこのメカニズムは、対戦相手が選択をする呪文である。どちらの選択肢も悪いもので、マナ・コスト相当よりも少しばかり強力なものであることが多い。懲罰者カードはどれもダメージを直接与えるという効果を選択肢の1つとしている。『オデッセイ』ブロックでは、呪文を唱えた側が選択肢を選べないということによって、通常赤のカラー・パイに存在しないような選択肢を持たせることができていた。

貢納


 そして最後に、貢納カードを紹介して締めにしよう。貢納カードは懲罰者カードの末裔だが、いくつかの点で違いがある。まず、貢納カードはどれもクリーチャーである(フレイバー的には怪物だ)。2つめに、貢納カード全てに共通した選択肢は、指示された個数の+1/+1カウンターをそのクリーチャー自身に置くことである。もう一つの効果は大抵、対戦相手に良くない結果をもたらすか、唱えた側にいい結果をもたらす呪文効果である。

 貢納カードの鍵は、対戦相手が選びたくないと思う様な選択である。一方の選択肢が明らかに正しければ、貢納カードはその価値の大半を失ってしまう。そこで、トム・ラピル/Tom LaPille率いるデベロップ・チームはこの2つの選択肢のバランスを取るために尽力した。デザインは、各カードの選択肢がゲーム・プレイに影響をもたらすことが多くなるように協力したのだ。

 クリーチャーの大きさに多様性を持たせたかったので、貢納の枚数には限りがあった。これは複数のセットという話ではなく、このセット内で、という話である。

    もう少しの選択

 はあ! 見ての通り、デザイナーは選択カードをたくさん選択して、さらに多く作っている。これはプレイヤーが選択を好むからなのだ。今日のコラムが、何年もに渡って作り上げられてきた様々な選択カードのデザインについての一考をもたらしていれば幸いである。

 いつも通り、選択カードについての諸君の意見を聞きたいと思う。メール、掲示板、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、基本根本の話をする日にお会いしよう。

 その日まで、あなたの選ぶべき選択があなたとともにありますように。


(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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