ゲーマーらしく生きる

更新日 Making Magic on 2013年 12月 18日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

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 今年最後の私の記事になるので、いつもとは少しばかり違う、2013年のシメの記事を書くことにしよう。今年、友人にあるアドバイスを送ったのだが、これは諸君全てにとって有用なものだと気がついた。なぜなら、そのアドバイスというのが、人生のあり方、またゲーマーとしてあることに関するものだったからだ。諸君(少なくともそのほとんど――ゲーマーでない読者諸君もいるかもしれないな、ようこそ!)は人生を生きているゲーマーなので、この記事は諸君の琴線にも触れることだろう。

 一言で言うと、私が諸君に贈りたいのは、人生をより良いものにするためのアドバイスだ。今回のアドバイスは非常に単純なものだ。実際、あまりにも単純なので、タイトルにすることさえできてしまったほどだ。ゲーマーであることは素晴らしいことだ。それによって人生の大きな技術が得られる。しかし、私が見つけ出したのは、ゲーマーの多くはそのゲーム上の技術を人生に活かしていないということだった。この記事で私が言いたいことは、「それを止めよう。諸君はすばらしいゲーム上の技術を持っている。それを人生に応用すれば、もっと幸せになれるはずだ」ということなのだ。

神秘の神殿》 アート:Noah Bradley

 今日の記事では、ゲーム上の様々な経験を見て、そしてそれをどう人生に直接応用できるのかを説明していこう。興味がないなら、ここで読み止めてくれたまえ。2013年の最後を締める記事は残念ながら君向けではなかったということだ。さて、興味がある諸君。お待たせした、さっそく始めよう。

ゲームは現実だ

 これから紹介するのは、ゲームをプレイする上で諸君がゲーマーとしてわかっていることだ。私のアドバイスは単純で、それを人生でも使えというだけである。既にそうしているのなら、それはすばらしいことだ。読み進めることでよりうまく活用する方法に気付くかも。まだそうしていない諸君は、じっくり噛みしめてくれたまえ。

「解法は存在するものだ」

 ゲームに必要なことについて、私はずっと語ってきた(一番まとまっているのはこの記事だ)。まず第一に、ゲームはプレイヤーに目標を提示しなければならない。ゲームというのは、プレイヤーが目標に到達しようとすることだからだ。そのために、目標に到達するための解法が存在するということを受け入れなければ目標を達成できない、ということをゲーマーはすぐに理解するものだ。目標が提示されたら、ゲーマーは「あの目標に到達できるだろうか」ではなく、まず最初に「どうやってあの目標を達成できるだろうか」と考えるものである。

「対戦相手のキングを取るなんてことは可能なんだろうか」ということを考えてチェスをすることを考えていたら、正気の沙汰ではない。しかし、多くの人は実際の人生においてそう考えているのだ。目標を達成する手段があるはずだと考えるのではなく、なぜ達成できないのかの理由を見付けようとする。ゲーマーはゲームをするときに、勝てない理由を探すところから始めたりはしない。勝つ方法を探すことにエネルギーを注ぐのだ。

 映画『アポロ13』で私が好きなシーンは、地上の管制センターにいる科学者が、四角いフィルターを丸い穴にはめる方法を探さなければならないというシーンだ。彼らは宇宙飛行士が持っているあらゆるものを詰め込んだ箱をひっくり返した。定められた時間内に問題が解決できなければ宇宙飛行士は死んでしまうのだ。なぜこのシーンが気に入っているかというと、ゲームをするために卓についたときにやることそのままだからだ。条件と難問が与えられて、なんとかしてそれを解決するわけだ。

 これを人生に当てはめてみよう。全ての問題が解決できるものだとしたら、どうなる? さらなる問題を解決することができるようになる。重要なのは、正しい態度で臨むということなのだ。

「他のことを試してみる」

 この記事を書くきっかけになった、私が友人に送ったアドバイスのうちの最初のものがこれだ。彼女は、彼女のやりたいことが彼女の望む形で進まなかったこと、そしてそれでどれだけ落ち込んだかを私に語った。私の返事は、「1回目は失敗した。じゃあ次の作戦を考えなよ」というものだった。

凱旋の神殿》 アート:Jason Felix

 その時、私は、ゲームをしていて、何かがうまく行かなかったらどうするか、と指摘した。彼女は他のことを試すだろう。マジックのゲームでも、1つめの手段が失敗した後、なんとか切り抜けるために全力を尽くしたことはいい経験だ。ゲーマーというものは、「負けるまで負けてない」という精神を持っている。ゲームが終わっていなければ、他の解決手段を探して試す時間はあるのだ。

 これを実人生に適用する鍵は、失敗はするものだと受け入れることである。全ての計画が成功するわけではないが、ゲーマーは、問題を解決するために重要なのは解決策を探し続けることだと知っているのだ。そう、尽力したことが失敗に終わったなら失望するかもしれないが、重要なのは目標であり、目標を達成するためにどうすればいいか再検討すればいいのだ。

「失敗は学びの場」

 全戦全勝なんて人はいない。どれだけ強かろうと、どこかでは負けるものだ。そして、ゲーマーは、負けこそチャンスだということをすぐに学ぶものだ。まず、負けることで間違っていることを知ることができる。なぜゲームに負けたのか? どの行動が負けにつながったのか? 負けないようにするためには、何を変えれば良かったのか?

 ほぼ毎年、以下の点を取り上げたマジックの戦略記事がある。つまり、「マジックが上手くなりたければ、失敗を自分のものにせよ。全ての敗北が何か自分に関係ないものの結果だと思っている限りは、成長する機会を得ることはできない。自分の行動の結果が敗北なのだと考えれば、学ぶ機会を得て、強くなれる。」

 人生も同じである。失敗したら、自分に関係ない要素に文句を言うのではなく、自分の行動が影響したのだと考えるのだ。自分の行いの何のせいで望まぬ結果に至ったのかを見付けるのに時間をかけるのだ。そうすれば、将来同様の失敗を犯す可能性は低くなる。また、そうすれば、自分の行動が結果に直接影響を与えるということを理解できるので、権力意識も得ることができるだろう。

「何が最重要か識別せよ」

 ある年の感謝祭に、妻と私が子供を寝かしつけていると、家の火災報知器が鳴った。飛び起きて階段を駆け下りると、階下では感謝祭の飾り付けに使っていた蝋燭が焼け落ち、飾りに燃え移っていた。飾りについた炎は、1メートル以上の高さに燃え上がっていた。

 私は流し台に向かい、ピッチャーに水を汲んだ。蛇口を一杯に捻っても、ピッチャーを一杯にするには30秒はかかる。この30秒はまるで永遠のように長く感じられた。その間も、火災報知器は大音響で鳴り響く。ピッチャーが一杯になって、私は飾り物に駆け寄って水をぶっかける。火はほぼ鎮まった。

 後になって、妻はなぜピッチャーに水が溜まるまで30秒も冷静に待っていることができたのか不思議がっていた。そこで、私は自分の考え方について次のように説明した。危険なのは、火が天井に燃え移ることだ。火を止めるための最良の方法は水だ。私の行動は、すぐに問題を解決するための一番いい方法だ。水を得るために30秒待つことは、必要なことをしていることだから問題ない。もちろん他にも、子供たちを怯えさせている火災報知器を止める、などのやるべきことはあったが、それは火を止めることに比べれば些細なことだった。

マグマの噴流》 アート:Maciej Juciara

 ここでの教訓は、ゲーマーなら誰でも知っていることだ。問題をすぐに解決するための鍵は、何が最重要かを識別することである。邪魔なことはいくらでもあるので、集中することを学ぶ必要がある。これは別に火事のような生死に関わることだけではなく、ありふれた問題にも適用できる。直面している問題において、本当に重要なのは何なのか。集中すべき所を見付けることができれば、その問題は半分は解決できたようなものである。

「優先順位をつける」

 これが第1段階最後の教訓だ。問題の最重要部分を識別したら、他の要素について判断するのだ。これはゲーマーならゲーム中にやっていることだ。ゲームに勝利するための鍵は、すべきことに優先順位をつけることである。優先順位が重要なのは、それによって資源をよりうまく割り振ることができるようになるからである(すぐに詳述する)。

 ゲーマーが人生に向き直るとき、ゲーム中に使っている批判的な目を失ってしまうことがよくある。人生の問題も、ゲーム上の問題も同じなのだ。違いは、その重要性だけである。言い換えると、ゲームをしているときは失敗による危険性は低いので、安心して実験できる。起こりうる最悪の事態は、ゲームに負けることだけだ。これが人生になると、重要性は大きくなる。失敗による影響が生じるのだ。

 しかし、興味深いことには、ゲーム中の思考を使った方がいい結果になるものである。優先順位を理解することは、つまりいつどこに集中すべきかを理解することである。人生での問題が重要性が高いなら、成功の確率が高くなるような方法を使うべきなのだ。

「リソース管理をする」

 毎年、私はサンディエゴ・コミック・コンに行っている。4日間のとても短い旅行だ。ある年、私は荷造りをゲームとして考えてみることにした。目標は単純なものだ。「持っていく荷物をどれだけ減らせるか?」必要ないものを見付けるのではなく、持っていくものを決めるという方向でそれに挑むことにした。

 その途中で、私は面白いことに気付いた。私はTシャツの一大コレクションを持っていて(その1その2)その多くはマニア向けとかポップカルチャー関連のものだ。そういったシャツを買う一番の機会がサンディエゴ・コミック・コンなのだ。実際、毎年、私はそこで大量のTシャツを買っている。これは荷物を減らすチャンスだ。Tシャツを持っていくのを止めて、買った物を着ればいい。

 ゲーマーは、リソース管理の問題だと気付いてそう対応することに長けている。問題を解決するために必要なリソースは何か? この2つめの質問が重要なのは、リソースが多すぎても少なすぎても問題だ、というのはゲームにおける重要な教訓だからである。例えば、マジックにおいては、土地は必要だ。しかしデッキに必要以上の土地を入れてしまえば、土地が足りないのと同じように問題になるのだ。

 この教訓は単純である。人生における問題を、ゲームをプレイする時と同じリソース管理の目で見るのだ。今取り扱っているものがゲーム内のものであるかのように考えて自問するのだ。どのリソースが最重要なのか? どれが一番不要なのか? どれだけあれば充分で、どれだけあれば過剰なのか? ゲーム的に捉えることができれば、価値を見いだすことができるようになるだろう。

「ものの価値は変わるもの」

 このルールは前のルールから必然的に導かれるものだ。マジックに関して私の好きな言い回しに、「ライフ1点以外のものを残してゲームを終えたなら、リソースを無駄にしている」というものがある。マジックにおけるライフを勝敗の基準としてではなく、活用すべきリソースとして、まったく違う形で捉えているわけだ。ゲーマーは一般に、リソースを道具として見るものである。リソースというものは、目標を達成するために使うべきものだ。

ニクスの祭殿、ニクソス》 アート:Jung Park

 このことから、ゲーマーは、しばしば、よりよい結果のために価値あるものを犠牲にすることを受け入れることになる。目的地に向かうために、今いる地点まで来るために必要だった、そしてもう必要ない、ものを手放す必要があることもよくあることなのだ。

 人生においては、自分に影響することの再評価をしなければならないということになる。かつて重要だったということは、現時点でも重要であるということにはならない。未来に進むためには、過去の何かを手放す必要があることもあるのだ。

 人間というものは感情の生物なので、これを人生に適用するのは特に難しい。いい感情(幸せだ、好きだ、安心する、などなど)をもたらしてくれたものは、もうその感情をもたらしてくれなくなっていても、やはり必要だと感じるものだ。重要なのは、時折感情の目録を作り、人生においてさまざまなものの価値を判断し、過去でなく現在の状況に基づいて判断することである。

「計算を信じろ」

 多くの計算が存在するということをゲームにおいて学ぶ。計算の活用法の1つが、確率計算である。何かが起こる確率はどの程度あるだろうか? 計算が適用できる決定をする場合、ゲーマーというものはゲーム中は計算を信じることを学ぶものだ。ディーラーが2を1枚見せていて13という、計算上スタンドにすべき状況では、過去3回負けていてもやはりスタンドする。今回は確率を無視して行っちまおうと内心思っていても、スタンドするものだ。

 一言で言うと、ゲーマーは、直感を信じるべき時と計算を信じるべき時があることを学ぶかものだ。問題が数字の話であれば、計算を信じる。51%となれば、49%は無視するのだ。ゲーマーは、感情が常に何らかの意見を持っていることを学ぶが、それに耳を傾けるべき時がいつかを知らなければならない。

 この問題は、そのまま人生に適用できる。利害関係がはっきり見て取れると、人々は神経質になり、そしていざとなると感情に耳を傾けてしまうものだ。問題が感情的な話ならそれでいいのだが、計算が適用できるような話なら、ゲーマーの直感を優先しなければならない。どれだけ思っても、思いだけで確率は変わらないのだ。

「他人に価値を見いだせ」

 ゲームには様々なタイプがある。その中に、政治的ゲームと呼ばれるものがある。政治的ゲームとは、プレイヤー間の個人的な動きがゲームの結果に影響を与えるような相互作用があるプレイヤーが存在するゲームのことだ。マジックにおいては、ほとんどの多人数戦(3人以上のプレイヤーでおこなうゲーム)には政治的要素が存在する。

アナックスとサイミーディ》 アート:Willian Murai

 ゲーマーは、ゲームに政治的要素が含まれていると見分けることをすぐに学ぶ。政治的ゲームにおいてうまくやるために重要なのは、自分にとってのゲームが他のプレイヤーに依存しているということを理解することである。各プレイヤーの価値を認識し、その価値を理解しなければならない。他のプレイヤーが求めることを全く意識しなければ、すぐに負けてしまうことになる。

 人生は、まさに政治的であり、この話は非常にスムーズに当てはまる。全ての人に価値があり、あなたの人生に影響を与える能力を持つ。相手を軽んぜず、その価値を理解せよ。政治的ゲームにおいて最悪のことは、同盟者なしで戦うことだ。人生も同じである。

「相手が助けるに任せろ」

 政治的ゲームで学ぶことの1つに、成功のための鍵は他のプレイヤーとの同盟締結にある、ということがある。先に進むにあたっては、プレイヤーを敵でなく味方にしたいものだ。味方を作るためにはどうしたらいいか? 他の人に助けさせてあげるのだ。一見すると、これは逆向きにも聞こえる。他の人を助けるほうが、その相手の好感を得られるのではないだろうか?

 展開はこうなる。まず、人間は種として人助けをするのが好きだ。そうすると自分でいい気分になるものだ。目的感を与えることになる。次に、見返りを想像するので、助けた人のまわりに居続けたくなる。

 この教訓も、簡単に人生に適用できる。相手に協力してもらうことを惜しむなかれ。助けた側もいい気分になり、いい関係を築くことができ、そして――そして?――手助けを得られるのだ。

勝利のために

 最初に言ったとおり、この記事は普段のものとは少し異なるが、これも思考のための種になってくれていれば幸いである。ゲームは素晴らしい娯楽であり、人生にも適用できる価値ある技術を作り出すことができる。今日の記事のポイントは、それらの技術をただゲームに勝つためだけでなく、より良い人生を送るために使うことを推奨することである。私の示したことの多くを既にしている諸君には、まだそれ以上の機会が存在するのだということに着目してもらいたい。

 さて、これは私の本年最後の記事となる。今日の記事は少しばかり違うタイプのものなので、いつも以上に諸君のフィードバックが楽しみである。メール、掲示板、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+)で教えて欲しい。

 最後に、諸君に最高の年末年始が来ることをお祈りして、年末の挨拶に代えることにしよう。

 その日まで、今日の記事があなたの人生のゲームの助けになりますように。


(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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