ジェイスとヴラスカを使いこなそう

更新日 Making Magic on 2014年 3月 11日

By Sam Stoddard

Sam Stoddard came to Wizards of the Coast as an intern in May 2012. He is currently a game designer working on final design and development for Magic: The Gathering.

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『デュエルデッキ:ジェイス vs ヴラスカ』特集記事へようこそ! この製品は、私が『デュエルデッキ:英雄 vs 怪物』の制作を経てふたつ目に手がけたデュエルデッキです。ウィザーズ・オブ・コースト社が送るデュエルデッキという製品を受け取る側として毎回楽しみにしていた私ですが、今はこうして直接携わることになり、とても嬉しく思っています。私は『デュエルデッキ:ジェイス vs チャンドラ』をだいたい100ゲーム以上遊びました。そして、「ふたつのキャラクターが過去の様々なカードを駆使する、楽しく奥深いマッチアップを作り出そう」という試みにすっかり夢中になったのです。


 この春に発売するデュエルデッキでは、ひとつ前のブロックに収録されているプレインズウォーカーからふたりが主役に選ばれます。しかし『ラヴニカへの回帰』の前に『デュエルデッキ:イゼット vs ゴルガリ』(青赤 vs 黒緑)を手がけ、『テーロス』の前には『デュエルデッキ:英雄 vs 怪物』(白赤 vs 赤緑)に取り組んでいたため、私たちは壁にぶつかりました。最近の製品と色の被っていないプレインズウォーカーが、《思考を築く者、ジェイス》だけになってしまったのです。とはいえ、問題ばかりではありませんでした――おかげで『ラヴニカへの回帰』ブロックの物語の中心人物であり、ラヴニカ次元を象徴するキャラクターを再び取りあげる機会がやって来たのです。いずれにしても、デュエルデッキのシリーズ内で同じプレインズウォーカーを取りあげるというのは、そのうち起こることでした――私たちが紡ぐ物語には主役となるレギュラー出演のキャラクターたちがいて、彼らに見せ場を作ってやるのは至極当然のことなのです。

 そして残るプレインズウォーカーのうち、ジェイスと好対照なのがヴラスカでした。テーマ的にも構成的にも、彼女がぴったりだったのです。ヴラスカはその色こそゴルガリに分類されますが、彼女の持つキャラクター性はゴルガリ・デッキのスタイルとはそれほど噛み合いません。例えばラル・ザレックとイゼット・デッキ、ドムリ・ラーデとグルール・デッキのようにはいかないのです。また、ジェイスとヴラスカの戦いは「調査の達人であるジェイスと影に潜むヴラスカの対立」という構図に光を当てやすくなります。

 今回のデュエルデッキをジェイスとヴラスカに決めると、私はクリス・ミラー/Chris Millar(彼がデュエルデッキ・シリーズのデザインをすべて手がけています)に基本的な概要を伝えました。しばらくすると彼はデッキリストを送ってくれて、私のデベロップが始まったのです。

ヴラスカ・デッキの構築

ヴラスカ・デッキ

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 ヴラスカは地下世界の女王であり、暗殺者たちと契約を結び彼女の敵を排除します。彼女自身で暗殺する気やその能力がないわけではありません――ただ、すべてをひとりでやる必要がないと考えるだけです。彼女が手ずから命を奪おうと決めたなら、この広い多元宇宙にも彼女の視線から逃れることのできる場所は無いでしょう。

夜の囁き》 アート:John Severin Brassell

 ヴラスカ・デッキを手がける上で私が重視したのは、「ゴルガリ・デッキ」にならないようにすることでした。むしろ昔ながらの「The Rock」や消耗戦を仕掛けるデッキにするつもりでした。ヴラスカはアドバンテージを得るのに墓地を使うのではなく、手札破壊や2対1交換で優位に立つキャラクターです。ジェイス側と比べてはるかに強力な除去を持ち、「陰鬱」でアドバンテージを奪うのです。

 ヴラスカ・デッキにはライフを支払う効果が散見されます――《朽ちゆくヒル》や《夜の囁き》(これらには今回のデュエルデッキに合わせて新規イラストが用意されました)、そして《地下世界の人脈》は、ジェイスとのカード・アドバンテージの勝負で鍵となるカードですが――それには代償が伴うのです。ヴラスカ側は《最後の口づけ》や《石載りのクロコダイル》、《街道筋の強盗》でいくらかのライフは調達できますが、ジェイス側が積極的にプレッシャーをかけてライフを支払わせない、というのも難しいことではないでしょう。

朽ちゆくヒル
夜の囁き

ジェイス・デッキの構築

ジェイス・デッキ

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『ローウィン』で初めてその姿を見せて以来、ジェイスは大きな変化を遂げてきました。もうチャンドラ・ナラーとの敵対関係は終わり、彼はより良い結果を出すために他のプレインズウォーカーと協力することの大切さを学びました。彼は今「生けるギルドパクト」としての大きな責任を担っていて、ラヴニカ次元の内からも外からも襲い来る脅威から次元を守るという大切な役目があるのです。

ジェイスの幻》 アート:Johann Bodin

 ジェイスのようなキャラクターを再び取りあげる上で私が重視したことのひとつは、『デュエルデッキ:ジェイス vs チャンドラ』での彼のデッキから方向性を変え過ぎないようにすることでした。《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》や《遍歴のカゲロウ獣》といった「待機」クリーチャーのように、元となるデッキに含まれていた要素を残すように意識してきたのです。また、それと同時に、ジェイスのキャラクター的な変化をお見せすることも大切にしました――そこで「変異」を持つカードを抜き、イリュージョンの部族要素を少し加えました。

裂け目翼の雲間を泳ぐもの
遍歴のカゲロウ獣

 このデッキは開発初期の頃、もう少しライブラリーを削るカードやそれで利益を得られるカードが入っていました。ヴラスカのデッキが墓地を利用するものではなかったため、裏目にはならなかったのです。しかしながら、それにテストプレイヤーたちが物足りなさを感じていました。そこで私は、テンポと打ち消しを駆使する伝統的なコントロール・デッキ寄りの方針をとり、ヴラスカの強力な呪文を制する形にしました。《記憶の欠落》や《呪文ねじり》といったライブラリーを削る効果と面白い相互作用を起こすカードは残しつつ、《ジェイスの幻》と《都市内の急使》は枚数を減らしました。また、デッキ内の打ち消し呪文は、確定カウンターよりも一時的なものや状況を選ぶものを多く残すことにしました――《対抗呪文》ではなく《差し戻し》や《禁制》、《記憶の欠落》が採用されているのは、そのためです。これでジェイス・デッキはより狡猾さを増し、彼の捉えどころのないキャラクターは初めて彼を見たときからさらに洗練されることでしょう。

記憶の欠落
禁制

マッチアップ

 デュエルデッキを手がけるとき、私はふたつのデッキが序盤にも終盤にもそれぞれの戦略を持ち、それらの対決が戦略的に深いものとなるよう心がけて作っています。今回のマッチアップで用いるメカニズムを選ぶ際には、序盤にも終盤にも使える「キッカー」を両方のデッキに採用しました。私は大きなアドバンテージが生まれる7ターン目を迎えるまでに決着がつかないよう、強く配慮したのです。その代わり、両デッキともどこからでも巻き返せるようにしてあります。

霊気の想像体
オラン=リーフの出家蜘蛛

 私はジェイス側をガチガチのコントロール・デッキに仕上げるのではなく、極めてテンポ寄りに作り上げようと努力しました。ヴラスカのデッキに採用された呪文は、そのひとつひとつがジェイス側にとって対処しにくいものばかりです。そのためジェイス側は、除去と打ち消しを適切なタイミングで使わなければいけません。《記憶の欠落》や《差し戻し》は「陰鬱」による追加効果を防ぎ、これがジェイス側の勝利には欠かせないことのひとつなのです。

差し戻し
ただれ皮の猪

 一方ヴラスカ側にとって目指すべきは、ジェイス・デッキの厄介なカードたちに最大限の仕事をさせないことです。2ターン目《朽ちゆくヒル》はジェイス側に多大なプレッシャーをかけることができ、彼に大がかりな仕掛けを用意する余裕を与えません。さらに、ヴラスカ側はアグロ・デッキとのマッチアップではコントロール的な立ち回りもそつなくこなします。手札破壊と除去の組み合わせでジェイス側の速い動きにも対応することができますし、《荒野の収穫者》や《よだれ垂らしのグルーディオン》といったカードをジェイス側が対処するのは困難を極めるでしょう。

朽ちゆくヒル
よだれ垂らしのグルーディオン

 私が制作を楽しんだように、皆さんが今回のデュエルデッキを楽しんでいただけたら幸いです。皆さんからのフィードバックを心待ちにしています。

 ではまたの機会にお会いしましょう。

 サムより(@samstod)


(Tr. Tetsuya Yabuki / TSV Yusuke Yoshikawa)

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