プロツアー「ラヴニカへの回帰」総括

更新日 Making Magic on 2012年 11月 16日

By 行弘 賢

皆さんこんにちは! 行弘です。

 今回は、10月の中旬に行われたプロツアー「ラヴニカへの回帰」の参戦記を絡めたモダン特集を書かせていただきます。

1. 準備編

 今回のプロツアーはいつもと違い、プロツアーの前の週に最寄りで開催されるグランプリから参加しました。参加したのはグランプリ・サンノゼ、フォーマットは近年では珍しいチーム戦のリミテッドでした。結果の方は残念ながら初日落ちでしたが、1日通してわいわい楽しくできたので、できたら日本でも開催して欲しいと思います。

 さて、そんなこんなで前の週よりアメリカに滞在することになったので、今回は和歌山勢ではなく、グランプリ・サンノゼに参加した日本勢の皆とモダンの練習をすることになりました。

 まず最初に手掛けたのは『ジャンド』です。

『ジャンド』

渡辺 雄也

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 事前の練習にて《死儀礼のシャーマン》入りのジャンドが強そうだということが判明していたのですが、他の日本勢の皆が半信半疑だったため、早速作ってテストプレイすることに。

 するとやはり事前の情報通り、実際に《死儀礼のシャーマン》入りのジャンドの方が、前の環境のジャンドより強そう、という結論が出ました。

死儀礼のシャーマン

 《死儀礼のシャーマン》は受ける時にはライフゲイン、攻める時にはライフルーズと攻守に優れ、更にジャンドの一番の負けパターンである「3マナ域以降のカードが手札に溜まり、テンポで負ける」パターンをマナ加速の能力である程度緩和してくれるので、非常にデッキに合ったカードですね。

 カードパワーが高く、選択として裏目が少ないジャンドはプロツアー本番でもある程度の数が多いだろうということで、これで仮想敵として想定できるデッキが一つ出来上がりました。

(実際にはこの段階では上記のレシピではなく、プロツアー直前までナベが念入りに調整した結果が上記のものです。)

 さて、ここで最強の仮想敵が生まれましたが、モダンにはまだまだ想定されうる強敵達がいます。

『ヴァラクート』

Lee Shi Tian

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溶鉄の尖峰、ヴァラクート風景の変容

 今回のプロツアー直前に解禁された《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を軸にしたコンボデッキですね。土地が7枚以上ある状態で《風景の変容》をプレイすることで対戦相手に大ダメージを与えるのを目的としたデッキです。

イゼットの魔除け

 《イゼットの魔除け》がクリーチャー除去、カウンター、ドローとコンボデッキが必要な要素を全てかね揃えているため、《イゼットの魔除け》入りヴァラクートはエクステンデッドの時よりも強力なデッキとしてモダンに帰ってきました。

『青白No-Caw』

Eduardo Sajgalik

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 2012マジック・プレイヤー選手権でフィンケルが使っていたデッキタイプですね。軽いカウンター、除去で盤面を捌き、《聖トラフトの霊》や《修復の天使》等のグッドスタッフで殴りきる、王者的なデッキです。

 基本的に隙が無く、不利なマッチアップが少ないだけあって人気が高いデッキです。このリストでは《至高の評決》がサイドボードに採用されているぐらいで、ラヴニカへの回帰による強化は基本的にされていないアーキタイプです。

 逆にジャンドに《死儀礼のシャーマン》という致命的なシステムクリーチャーが採用されたことにより、有利だった相性差が微有利ぐらいまでになっているので、環境的に少し向かい風かもしれません。

『親和』

Pedro Carvalho

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 親和はモダンの環境初期より常にメタの上位に存在するアーキタイプです。

 その初動の速さは環境最速で、圧倒的ブン回りのあるビートダウンです。親和もラヴニカへの回帰により特に強化されているアーキタイプではありませんが、そのポテンシャルの高さによりモダンを語る上では見過ごすことはできないアーキタイプです。

2. デッキ構築編

 これらのアーキタイプを仮想敵とし、調整が始まりました。

 僕が最初に組んだのは『緑白黒ローム』でした。

『緑白黒ローム』

『緑白黒ローム』

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壌土からの生命地盤の際

 このデッキは、「『ヴァラクート』が当日は一番多いだろうから、《地盤の際》によるランデスが強そう」と思ったのがきっかけです。更には軽い致命的なシステムクリーチャーを多く採用しているし、各種ハンデス、《壌土からの生命》による《地盤の際》によるランデス戦略は『青白NoCaw』にも強いだろう…

 と思っていたのですが、実際に回してみると、流石に『ヴァラクート』にはかなり有利だったのですが、『青白No-Caw』には「《修復の天使》が超えられない」という致命的欠陥が判明し、相性はむしろ不利という結論に。

 更には『ジャンド』の《死儀礼のシャーマン》がきつすぎるという、もはや欠陥だらけのデッキということが分かりました。

 このデッキはアメリカに行く前から温めていたものだったのですが、アメリカに来てから欠陥が判明したため、急遽別の道を模索することになります。この時点で残された調整時間はおおよそ1日。

 さてどうしたものかと途方に暮れていたら、このたび見事殿堂入りした津村さんが日本を発つ前に、『《血染めの月》+《ヴィダルケンの枷》』で対戦相手をはめるデッキがなかなか良いという情報をくれていたのを思い出し、これが駄目なら『ジャンド』か『ヴァラクート』かな…なんて思いながらとりあえずデッキを作ってみることに。

『Kogamoスペシャル』

行弘 賢

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ソーサリー (3)
3 手練
アーティファクト (5)
3 ヴィダルケンの枷 2 殴打頭蓋
エンチャント (4)
4 血染めの月
60 カード



 津村さんにもらった元のレシピを調整した結果、《イゼットの魔除け》、《殴打頭蓋》を採用することに。

イゼットの魔除け殴打頭蓋

 《イゼットの魔除け》は複数引いた《血染めの月》を新たなリソースに変えたり、除去+カウンターのモードも非常に頼もしいので、デッキのマスターピースとも言える存在です。

 《殴打頭蓋》はフィニッシャーとしての性能に申し分なく、『青白No-Caw』なんかとの長期戦にも強い攻守のバランスに優れたカードです。

 このデッキと色々なデッキでマッチアップしてみた結果、『青白No-Caw』、『ジャンド』、『ヴァラクート』にどうやら有利で、更に『親和』に対しても五分に近い相性があるということがわかり、ここにきて大逆転的なデッキが急に降ってきました。

 サイドボード後に《血染めの月》や《ヴィダルケンの枷》がそこまで信頼できないという欠点こそありますが、《不忠の糸》や追加の《ヴェンディリオン三人衆》を取ることで、除去の的を増やしたり、手札からエンチャントやアーティファクト対策を抜くことで対応しています。

 このデッキを使おうと思った最大の理由は、『分からん殺し』できるという点です。突如降ってくる《血染めの月》、《ヴィダルケンの枷》は非常に強力ですし、サイドボード後も対戦相手はこちらのデッキが一体どのような構成なのか分からないため、適切なサイドボードができるかは怪しいところです。

 そもそもどちらかと言えば苦手というか、いままであまり勝ててないフォーマットである『モダン』。今回は分かりやすいコンセプトのデッキを使おうと、このデッキをプロツアーで使用することに決めました。

3. 結果発表編

感染:負け

ヴァラクート:負け

トリコロール:勝ち

ジャンド:勝ち

ジャンド:勝ち

ジャンド:勝ち

青白No-Caw:負け

ジャンド:勝ち

ジャンド:勝ち

トロン:勝ち

 実際に当たったデッキ分布はこのようなものでした。

 ジャンドに5回も当たっていますが、実際に会場には予想を大幅に上回る、全体の3割程度の数で、これぐらい当たってもおかしくないほどの、まさにジャンドの海でした。

 《血染めの月》、《ヴィダルケンの枷》が刺さるマッチアップである『トリコロール』、『ジャンド』には順当に勝つことができました。というのも両者ともやはりこちらの構成が分からなかったのか、フェッチランドから基本土地をあまり持ってこなかった為に《血染めの月》による土地事故のハメパターンでの勝利がほとんどでした。

 青白No-Cawは2回連続土地が2枚で止まり負け、ヴァラクートは接戦の末ラストターンに《血染めの月》をバウンスされて負けと、相性の良いマッチアップを2本も落としてしまったのが悔やまれますね。感染は相性こそそこまで悪いとは思いませんでしたが、致命的なミスプレイが響いて負けてしまいました。

 構築ラウンドのトータルの結果は7勝3敗と、なかなか良い成績で締めることができました。

 これでドラフトを5勝1敗や4勝2敗ぐらいの成績ならば良かったのですが、実際には3勝3敗となんともお粗末な成績だったせいで、ぎりぎりマネーフィニッシュという成績(72位)で今回のプロツアーは終わりました。

4. 最後に立っていたのは…?

『サニーサイドアップ』

Stanislav Cifka

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 今回のプロツアー、優勝したのはこの『サニーサイドアップ』す。

 適当なアーティファクトを《作り直し》で《睡蓮の花》に変えて、そこから更に場に設置しておいたアーティファクトを次々に生け贄に捧げて大量のドローやマナに変えたら、《信仰の見返り》か《第二の日の出》で全て場に戻し、また同じように繰り返す…というなんとも手間がかかるコンボデッキです。

 最終的には上記のコンボで山札をほぼ引ききった状態で《妖術師のガラクタ》2枚で《黄鉄の呪文爆弾》と《信仰の見返り》を山札に戻し、それらをキャントリップで引いてプレイヤーに2点ダメージを撃ちつつ《信仰の見返り》でまた《妖術師のガラクタ》2枚を戻して…とループすることで「無限ダメージ」を実現して勝利します。

 今回のプロツアーでは、『ヴァラクート』が強烈に意識されており、そちらにサイドボードを回す都合上、墓地対策に割くスロットが薄くなったフィールドだったのも今回『サニーサイドアップ』が優勝した要因だと思います。

 なんにせよこれだけ複雑なデッキを決勝までプレイし続け、見事優勝したStanislav Cifkaさんは本当に優れたプレイヤーだと思います。


 『モダン』は常に新しい環境を求めます。それは禁止改定であったり、新たなエキスパンションの発売であったり。常に変わりゆく環境なので、今回の『サニーサイドアップ』のように様々なデッキにチャンスがあります。

 『モダン』をプレイする機会がありましたら、是非新たなデッキを手に取って大会に参加してみてくださいね!

 最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう! それでは!

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