プロツアー『ニクスへの旅』予告編

更新日 Making Magic on 2014年 5月 15日

By 中村 修平

 日本は春の陽気に包まれている頃だと思いますが、こちらは目が眩むまでの熱光線日和。

 季節というよりは、日が出ていて暑いか、日が落ちていて寒いか、のどちらかしかないのではないかと思えてしまいます。

 ただいまラスベガスの午後を過ぎたあたり、
 プロツアーへのデッキ調整はいったん中断してこれからミネアポリスへ、
 週末のグランプリに向かおうとしているところです。

 ふむ、ミネアポリス。
 いや、別に土地がどうこうというわけではありませんよ。
 というか某航空会社のハブがあったりするのでどちらかというと馴染みのある場所ですし、プロツアーと接続する形で航空券を取得できたので費用という意味でもかなり低減されています。

 ですが、マジックが好きかどうかなんて問題を差し置いて、諸般の事情により行く価値が限りなくゼロに近いのです。
 まずは行くことになった経緯を説明しようとすると、発端はいつものチャネル面々による直前合宿ロケーション会談からでした。

「前週にグランプリがあるけどどうする?」

  • 私:「合宿には参加したいからアメリカに早入りできるけど、グランプリはモダンだし行きたくない」
  • ジョシュ キブラー パット :「プロポイント欲しい」
  • オチョア ルイス :「友達のジャッジの結婚式があるから参加で」
  • パウロ :「こないだパリで同じようなのに参加してトップ8ですし行き得ですし」
  • シャハーラ :「以下略」

 喧々諤々でもない議論の結果、アメリカ在住チャネルご一行様の圧倒的賛成多数により5月10-11日のグランプリ・ミネアポリスへと参加することに決定。

 この決議を受けてヨーロッパ在住のジュザ カースティン はチェコで別口に調整後、こちらはプロツアーと同じ環境のリミテッド戦、グランプリ・ワルシャワに参加後にアトランタで合流。

 私の最後の抵抗、プロツアー航空券でなんとかチェコ経由を追加できないかという試みは当然失敗に終わり、晴れてミネアポリスするか、アメリカでぼっちな週末マジックオンライン漬けになるかの問題にならない二択の結果、こうやって空港に向かっているわけです。

 しかし、実際チャネルの面々もどこまでモダンに対してやる気があるかは疑わしいところです。
 なにせ今ここにいる6人併せてモダンに費やした練習時間はゼロ。
 そして後に再合流するメンバーを併せて9人が取っているアトランタ行きの飛行機は日曜日19:30発。

 トップ8に入る気もゼロと言われても仕方ありませんね。

 あ、既に来期のプラチナを確定しているベン・スターク はグランプリのスキップはおろかベガスにも現れず、
「アトランタから参加するんで待ってるわ」
 という連絡を寄越したっきり…

 なんというかいつものチャネルと言われればそんな気もしてきました。


ドラフト練習中の一コマ

グランプリ、そしてプロツアー

 前回からそれなりに時間が経過しましたが、私の近況としては相変わらずのらりくらり…というではなく、むしろ毎年の最低ノルマであるプラチナ・レベルを維持できるかで焦燥感に駆られている毎日を過ごしています。

 マジックというゲームは良くも悪くもアナログな要素、自分の力ではどうしようもない負けというものが存在します。

 それはプロプレイヤーであればなんとかなるというものでもありません。

 どんなに好調であろうとも事故死は突然やってくるかもしれないのです。
 むしろプロと名乗っている者としては、それを受け入れた上でマジックのアナログな要素とどのように付き合っていくかというのが重要だと考えています。

 自分は強かったりするから常に勝ち続ける。問題ない。
 なんて自己暗示をかけるのも1つの手ではありますが、ほとんどのプロが土台に置いているのは「保険」でしょうね。

 いつ何時に突然勝てなくなっても、今期のレベルは確保できている状態にまでポイントを持っておきたい。
 年間で45点が必要ならばそれに至るまではかき集める。

 極端な例を出すと、プロにとってシーズン最初のプロツアーで準優勝したところで楽な位置とは言えないのです。
 このままの状態では世界選手権はおろか、プラチナにすら未だ到達していません。
 安心できるのは最低でも追加で10点を取ってから。

 とことんポイントに拘る姿は、見る側、そして運営側からも不思議に思われるかもしれませんが、当事者たちにとっては必死のこと。プロツアー『ドラゴンの迷路』の前に、ゴールド・レベルのための上乗せ1点を取りに北京に行った去年の三原槙仁 を結果とその後のみを見て笑うことはしませんし、それ以上に去年1点足りずにゴールドになれなかったリー・シー・タン は笑えません。

 私の現状は、今期獲得しているプロポイントが39点。

 残るプロツアーは『ニクスへの旅』を含めて2つ、それぞれ最低3点は保障されているので45点。

 今期のプラチナ・レベルの設定値は45点なので、これだけ見れば既に到達しているように見えますが、今年からグランプリには「キャップ制度」、シーズンで最も成績の良い「5つのみ」がプロ・レベルの判定に適用されるというルールがあるのです。

 この基準で私の獲得プロポイントを出してみると、

2013年世界選手権8位※※
プロツアー『テーロス』141位
プロツアー『神々の軍勢』141位
グランプリ・香港優勝
グランプリ・プロヴィデンストップ4
グランプリ・ヒューストントップ8
グランプリ・北京トップ8
グランプリ・オクラホマシティトップ16
グランプリ・リミニトップ32
グランプリ・ラスベガストップ64
グランプリ・バルセロナトップ32

(※はチーム戦、※※の世界選手権は順位ではなくマッチ1勝につき1点)

 トップ8以上が4回、トップ16が1回で5つ。
 トップ32のリミニ以下の4点が除外されて、35点となります。

 まだ4点足りていないのです。

 グランプリでプロポイントを加算するにはオクラホマシティ・トップ16の3点を押しのけなければならない、つまりトップ16以下に意味はなく、トップ8入賞でようやく1点の加算。
 一気に4点を稼ごうとすると優勝しかなく、打ち損じればやはりどのみちほぼ優勝が必要という悪夢のような状況。

 これが行く価値が限りなくゼロの事情であり、焦燥感の源です。

 事実上プロツアーで結果を残すしかない。
 保険的な志向とは真逆の状態で宙吊りにされている状況にされているのは、精神的に非常に厳しいものがあります。

 そんな状況は何も私だけではありません。
ウィリアム・ジェンセン に至っては今期トップ8が6回でトップ8が既に1つ消失!)
 キャップの残り具合は各人差があれど、現時点でプロポイント30〜39点のプレイヤーは皆同じように思っているでしょう。

 プロツアー終盤のトップ8を賭けた戦いというのも白熱するでしょうが、この「対岸まであと少し」というプレイヤーたちに注目してみるのも良いかもしれません。
 既に上位戦線とはいえない状況でも真剣勝負、来年の地位を求めて戦っているのかもしれないのですから。

 プロ・ポイント ランキング(プレインズウォーカー・ポイントページ内、DCI番号とパスワードによるサインインが必要です)

チーム事情

(この節の写真:過去のイベントカバレージおよびDailyMTG.comより)

 まずはプロツアー『神々の軍勢』で1、2位を独占したカナダ勢。


プロツアー『神々の軍勢』準優勝 ジェイコブ・ウィルソン

 現地にいる時は、ジョシュの弟子でカリフォルニア在住のはずだったジェイコブ・ウィルソン の所属がカナダになっているのか疑問だったのですが、後でジョシュに聞いたところ、高校を卒業して次の進学先がカナダだったからという答えが。
 そういえば彼、まだまだ全然若いのでした。
 ウィルソンはチーム・カナダというよりはアメリカの若手グループでという繋がりで調整をしているようです。
 調整チーム内にそれなりの権利獲得者を確保しているようなので、引き続き要注目の存在になりそうです。

 前回リー・シー・タンがトップ8を果たしたチーム・オールアジア勢。

 今回はグランプリ・メルボルンチャンピオンのナム・サンオク/Nam Sung-Wook、グランプリ・クアラルンプール3位のパク・ジュンヨン/Park, Jun Youngといった韓国勢が合流して総計10人で木曜日からアメリカ入り、ミネアポリスに参加してからアトランタに向かうようです。


その後、グランプリ・ミネアポリスを優勝したパク・ジュンヨン

 一方でヨーロッパ勢は、グランプリ・ワルシャワに参加するだろうというので早めにアトランタ入りしたという情報も聞かず、詳細は伝わってきていません。
 今期圧倒的なパフォーマンスを発揮しているデザーニ が所属するフランス中心のチーム・エヴォリューションの動向は気になりますが、それは乞うご期待といったところでしょうか。


プロツアー『テーロス』優勝、世界ランキング1位に君臨するジェレミー・デザーニ

 あ、そういえば某所に移籍していったコンリー ですが、気がつけばすっかり…、ダーウィン・キャッスル?みたいな風貌になってました。
 意外と童顔キャラからナイスミドル路線へなのでしょうか……

 プロツアー『神々の軍勢』ではなりを潜めていたビッグチーム、チャネル・ファイアーボール、チャネル・パンテオンですが、このままでは終わらない、というか終わってしまうと私やヒューイが失業してしまうので終わらせない。


ジョン・フィンケル、カイ・ブッディら殿堂顕彰者多数が名を連ねる
「チャネル・ファイアーボール・パンテオン」

 といきたいところですが…

 なおパンテオンの方は5日からアトランタ近郊の家を借りて調整合宿を行っているようです。
 そういえばパンテオン所属だったポール・リーツェル がひょっこりとこちらに来ましたね。

 まあそのあたりは、聞けたら本編にでも挿入しようかなと思います。

 っと、つらつらと書いている間にまもなくミネアポリスへと飛行機が到着するようです。それでは今回はこれくらいにして、続きは本編でということで……

脚注:(プロツアー・プレイヤーズ・クラブ・レベル、および世界ランキングは2014年5月15日現在)

ジョシュ・アター=レイトン/Josh Utter-Leyton
世界ランキング11位、プラチナ・プロ、2013年プレイヤー・オブ・ザ・イヤー (戻る)

ブライアン・キブラー/Brian Kibler
プラチナ・プロ、プロツアー殿堂顕彰者 (戻る)

パット・コックス/Patrick Cox
ゴールド・プロ、プロツアー・名古屋2011トップ8 (戻る)

デイヴィッド・オチョア/David Ochoa
プラチナ・プロ、世界ランキング20位 (戻る)

ルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargas
プラチナ・プロ、プロツアー殿堂顕彰者、チーム・チャネル・ファイアーボール・リーダー (戻る)

パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosa
プロツアー殿堂顕彰者、プロツアー・サンファン2010優勝 (戻る)

シャハーラ・シェンハー/Shahar Shenhar
世界ランキング6位、プラチナ・プロ、2013年世界選手権優勝、「マジックより若い世界王者」 (戻る)

マーティン・ジュザ/Martin Juza
プラチナ・プロ、2011年グランプリ・広島優勝、日本の牛丼とカルピスをこよなく愛する (戻る)

フランク・カースティン/Frank Karsten
プロツアー殿堂顕彰者、世界選手権2005(日本開催)トップ4 (戻る)

ベン・スターク/Ben Stark
世界ランキング4位、プラチナ・プロ、プロツアー殿堂顕彰者、「(ドラフトが上手いプレイヤーを問われ)まず俺」 (戻る)

三原 槙仁
世界ランキング18位、プラチナ・プロ、プロツアー『テーロス』トップ4、「魔王」 (戻る)

リー・シー・タン/Lee Shi Tian
世界ランキング10位、ゴールド・プロ、プロツアー『神々の軍勢』トップ8 (戻る)

ウィリアム・ジェンセン/William Jensen
プロツアー殿堂顕彰者、愛称は「ヒューイ」 (戻る)

ジェイコブ・ウィルソン/Jacob Wilson
世界ランキング16位、ゴールド・プロ、プロツアー『神々の軍勢』準優勝 (戻る)

ジェレミー・デザーニ/Jeremy Dezani
世界ランキング1位、プラチナ・プロ、プロツアー『テーロス』優勝 (戻る)

コンリー・ウッズ/Conley Woods
ゴールド・プロ、特異なデッキ構築で知られる (戻る)

ポール・リーツェル/Paul Rietzl
ゴールド・プロ、プロツアー・アムステルダム2011優勝 (戻る)

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