プロツアー『ニクスへの旅』
顛末と旅行とその後

更新日 Making Magic on 2014年 6月 5日

By 中村 修平

 プロツアー『ニクスへの旅』予告編調整編もお読みください。

 どうやらまだ大嵐の只中だったようです。

 最初のドラフト2戦中は片色の2枚目を延々と引かないなどかなり偏った引き、もしくは初手であったりと苦労していたのですがなんとか2連勝。

 苦労の末に待ち受けていたのは、フィーチャーマッチの舞台でジェイミー・パーク相手に手札に鎮座し続ける《トロモクラティス》と、6ターン目からは延々と引き続けるどうでも良い呪文達…

 《死呻きの略奪者》がパークの戦場にいるので出せさえすれば勝っているのになあ。

トロモクラティス
死呻きの略奪者

 そこから構築ラウンドに移ってからもルイス 相手にミラーマッチ。

 次ラウンドでは久しぶりのニコさん、ニコライ・ヘルツォグ にも敗れ、2連勝後3連敗は先週見たのと同じパターン。

 この3戦、7ゲームに至っては「マリガン回数>ゲーム数+2」の状態まで酷似していて、こういう時はこのゲームをやっていてほとほと嫌になってしまいます。それと3本目にダブルマリガンさせられるというのもですね。

 いつもの厄落とし的なスリーブ入れ替えにより、なんとか「ゲーム数>マリガン回数」まで引き下がって赤単相手に2連勝で初日通過を決めたのですが、
 そこで再びの今日を象徴するような最終戦。

 1本目後手で、《神秘の神殿》《森の女人像》《胆汁病》《悪夢の織り手、アショク》《英雄の破滅》《荒ぶる波濤、キオーラ》《クルフィックスの狩猟者》。

 環境にあるパワーカードを上から順番に入れていったような代わりにマナ基盤が壊滅的に悪いこのデッキで、これをキープできなければゲームができません。

 そしてキープしてゲームができませんでした。

 続く2本目を快勝して、3本目はダブルマリガン…

 2日目もだいたいこんな感じで気がつけば終わっていました。
 肝心なところで引かない、引けない。
 構築ラウンドに戻っての第12回戦、ダブルマリガンからの土地事故でゲームを落として3本目に再びダブルマリガンで、4戦を残して7敗目。

 最近の傾向から、参加賞の3点以外に追加プロポイントを獲得できるのは7敗のうち上位者のみ。
 この時点での7敗はおおよそ目無しなのですが、それでも今回の参加者数は例年より50人少ない。
 そして可能性があるなら続けるのが私の流儀なので、続行してみたらあっさり4連勝。
で、116位。

 スリーブを変えたご利益かもしれませんが虚しいです。
 そして今後のことを考えると色々とこれはもう、かなり大変すぎて憔悴状態。
 というのはもう一度翌週に同じくらいかそれ以上の機会が発生してしまったので一旦省略するとして。

 いつものやつ、旅先での変なエピソード的なものについて語っていきたいと思います。


蛇なのか猫なのかトークン

リミテッドディスカッション

 それは水曜日の昼下がり。
 そろそろ恒例のアレを始めようといそいそと準備するカースティン

 そう、ファンタジーチャネルプロツアー…
…は横のルイスが凄くやりたそうですがそれは今ではありません。ちょっと違います。
(編注:プロツアーで活躍する選手・カードをファンが予想する企画「ファンタジープロツアー」より)

 ドラフトピック・ディスカッションの時間です。

 月曜日にヨーロッパ組と合流して以来、構築デッキの練習に全力を費やしていて、恒例のドラフト理論のすり合わせはまだやっていなかったのです。
 ということで「ザ・リスト」、フランクカースティン作によるピックリストを叩き台に、各々の指針や差異について話し合おうというこの企画、

 ちなみにホワイトボードっぽいのは近くで見ると…

 実はゴミ箱。

 レンタル代金1日55ドルと聞いて、流石のゲーム大好き賭け事大好きチャネル勢も効率の悪さに回避した模様。

 こうやって議論していると意外とその人その人で嗜好の差というものが現れていて面白かったりします。


 ちなみに私が明確に違うなと感じたのは、赤の《双角の連続襲撃》と、青の《印章持ちのヒトデ》の位置ですね。

 《押し潰すヒル》は黒単だとしたらどの位置だ、みたいな話の途上で、順位をどうするか、みたいな話で紛糾するので、つい
「期待値的には《腐敗した大男》以下だよ」
 と私が突っ込みを入れてしまって
「そりゃシューヘーは3/5好きだからな」
 と返されるあたりまではお約束。

 3/5といっても白くて飛んでいる実質3/5(《補給線の鶴》)なのですが、白に関してはむしろいつも不人気な白をやらされていてバイアスがかかっていると思っていたので、議論をパスして聞き役に。

 自分の理論をしっかりと組み立てることも重要ですが、他人の理論を聞いてそれをオプションとして持つことも同じくらい重要です。
 別にオリジナリティを出すことに加点要素がある競技ではないのです。
 今回の練習ではやらされる白のポジションで勝率自体には文句はなかったのですが、状況が特殊すぎて、本番にはあまり意味がない。
 特定のシチュエーションでだけ勝てたところでまた意味がないのです。

 なんてことを考えていたら、うっかりしていて写真を撮ることも忘れてました。

 チームとしての結論は「青と緑が強くて青緑最強で、強いカードは強いから取っとけってことで概ね間違いない。」
 全くもってその通りだと思います。強いカードは強いのです。


プロツアー当日は先行で『基本セット2015』の土地が使用されました

裏切り者は誰だ?

 チャピン の優勝で幕を終えたプロツアー。

 ですが前半で最も話題をさらったのは、
「チャネルとチャネル・パンテオンが同じデッキを使っている」
 ではないでしょうか。

 一見すると何がおかしいのか解りづらいこの話題ですが、
「チーム・チャネルファイアーボール」と「チーム・チャネルファイアーボール・パンテオン」は全く別口のチーム。
 スポンサーこそ同じチャネルファイアーボールですが、その間にプロツアー調整については全く交流がない。それこそ往時のマジック界における関東 vs 関西みたいな間柄と言えばご理解いただけるでしょうか。

 そんなわけで、それはまあ下世話っぽい話が出てきますね。
 面白いのは、そういうのが決まって外縁部の、実際には関わりがあまりない人から出てくることです。

 実際には、全くの別口でたまたま同じデッキにたどり着いただけ。
 少なくとも私たち、チャネルファイアーボール内に関してはそれで終わりで、それ以上は何もありません。
 そもそもな話、情報を漏出して利益になる者がメンバーの中に誰もいませんからね。

 情報を漏らしてライバルに塩を送る、そんなに私たちは生優しくありませんし、金銭的な見返り、そんなものよりプロポイントが欲しいです。

 銀貨30枚になるものがない。
 内部の人にとっては当たり前の前提が欠けているうわさ話なら、本当に色々と十把一絡げに聞きました。

 で、それを主に日本人の間で、仲間とデッキを売ったユダは誰だろう…みたいな話として紹介していたのは私なのですが……

 ふむ、あなたの近くでプロツアー帰りの人からそんな話を聞いたのなら、もしかしたらそれは私からかもしれませんね。

 某KJさんは3日肉だったそうですが、それに負けず劣らず3/4日ステーキでした。

 食べ比べフィレ、

 だとか、

 肉厚16オンス、

 だとか、

 デザートは当店自慢のふぉんだんぶらうにーあいすすくーぷ掛けなるもの、
 いりょくはばつぐんだ。

 それは負けステーキが身にしみます。
 次は勝たねば。

 ちなみに残り1日はピザ。あとコーラ。

ベガス―アトランタ―ベガス―アトランタ?

 予定ではアトランタでのプロツアー『ニクスへの旅』から、翌週のアメリカ開催グランプリまでの滞在。
 そしてグランプリ開催地がアトランタということでこのままアトランタに…
 ではなく、ちょっとした理由でラスベガスまで戻って中日を過ごすことにしました。

 それはA.J.サッチャーがベガスに居を構えているから。
 アメリカ2ヶ月ふらり旅の時にずいぶんお世話になったAJ。
 去年の中頃から転居したというのは知っていて、いつか遊びに行くと約束していたままその機会が無かったのですが、これを機会におじゃますることにしました。

 現在、AJは彼女のメアリー、ルームメイトのルービンと3人でルームシェア中。
 転居直後に強盗にあったりと、だいぶ波乱な船出だったようですが、今はようやく落ち着いてきたとのことです。

 逗留中はいつもの通りですね、
 延々とマジックオンライン引きこもりをしているワタナベを放っておいて、そういえば今週公開だったなと日本原産のカイジュー映画を見に行ったり、寿司を食べに行ったり、


左がルービン、右がAJ

 ゆくひろとポーカー行ってきたり、ゆくひろが大負けしていたり。福本漫画の登場人物みたいになっているゆくひろを眺めていたり。

 あ、私はそれなりでしたよ。

そしてグランプリ・アトランタ

 終わり良ければまだ救われたのですが…


第14回戦終了時

…最終戦トップ8バブルマッチに負けて20位。

 これには本当に、とても参りました。
 正直、これを書いている今でも立ち直っているかどうか怪しい状態です。

 3敗で20位という順位にではありません。
 去年ならありえない話ですが、16位だろうが最下位だろうが今の私には関係がないのです。
「グランプリ・キャップ」(前々回参照)がトップ8以上で4つ、トップ16で1つが占められた状態では、2連勝から3連敗で沈んだミネアポリスであろうが、比喩抜きに対戦相手に1度も勝てなかったグランプリ・名古屋であろうが、そして今回のグランプリ・アトランタであろうが全て無価値。

 ですが賽の河原にしても、積み始めに崩されるよりは完成直前に崩される方が精神的打撃が大きいのは、ご想像いただけるでしょう。

 今回がまさにそれでした。
 ここで今期5度目のグランプリトップ8に入れなかったというその一点が。
 現状のキャップシステムで、プロツアーの不本意な結果を挽回できる唯一の機会を掴みとるチャンスを、あと一歩で取りこぼしたというショックは、私の中でとてつもなく大きなものなのです。

 38点、あと上乗せ4点。

 1点でも追加で取れれば、次のプロツアーで取るべき順位が「25位以内」から「50位以内」にまで、さらに1点ずつで「75位以内」「100位以内」まで下がります。

 そしてグランプリに置き換えると、トップ8に入った時のみ上乗せ1点、以降1勝するごとに1点ずつ加算されるので同じようにラインが下がり、優勝ならプラチナ到達という状況なのです。

 本当にせめてあと1点を取れるチャンスが手の届くところまでにあったのです。

 今年に入ってグランプリに価値がほとんど無いため、行くことに消極的でした。
 理由は説明のとおり、あまりに効率が悪いからです。
 ですがここからは、不毛なことと知りつつもそこしか残されていない可能性に向けて、挑戦せざるを得ない状況にまで追い込まれてしまいました。

 今、東京の我が家にてこの原稿を書きながら、6月下旬のアメリカ・グランプリ2連戦の航空券を検索しています。
 行って帰って、
 果たしてどちらが行くでどちらが帰るなのか……

 まったくもって皮肉なことです。
 かつてはグランプリホリックと言われても否定できなかったし、それを改善するという触れ込みで作られたキャップシステムだった気がしますが、このキャップによって全く行きたくもないグランプリに、やっぱり行きたくないのに行かねばならないとは……

 保険を求めたがるマジックプロの性と言われればそれまで、
 ですが精々プロツアーまでに足掻かせてもらいます。

 それではまた次回、それまでにトップ8に入っていれば良いのですけどね。

東京の自宅にて
中村修平

脚注:(プロツアー・プレイヤーズ・クラブ・レベルは2014年5月22日現在、世界ランキングは2014年6月5日現在)

ルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargas
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ニコライ・ヘルツォグ/Nicolai Herzog
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