モダンばなし その1

更新日 Making Magic on 2013年 6月 26日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

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 モダン特集へようこそ。今週は、モダン・フォーマットについて話させてもらおう。モダン・フォーマットに関して書こうと思ったらいろいろなコラムが書けるだろうが、どれもデザインをテーマとしたこのコラムに相応しいものではない気がする。そこで、そのフォーマットに含まれているブロックもまたモダンだということを踏まえ、全てのブロックに深く関与している私は今週と来週の2回に渡ってその辺の話をさせてもらうことにしよう。


 方針はこうだ。現在、モダンには10個のブロックが存在している。それらの各ブロックから、1つずつ話題を取り上げていく。これまでこのコラムで紹介したことのない話を選ぶことにしよう。多様性のために、いろいろな種類の話を取り混ぜて語るが、どれもそのブロックを作ることに関する話だ。この2つのコラムでの話を通して、モダンに現存する10個のブロックの裏事情を伝えられたなら幸いである。

ミラディン・ブロック

 ミラディン・ブロックは、私がアーティファクトをテーマとしたブロックを作りたくてどうしようもなかったのがそもそもの話だ。インベイジョン・ブロックで多色を、オデッセイ・ブロックで墓地を、オンスロート・ブロックで部族を、と大テーマをやってきたので、まだ触れていない大テーマはとなるとアーティファクトだった。このことはこれまでも何度も語ってきたが、『ミラディン』のデザイン・チームの一員にして後にクリエイティブ・チームの代表になったテイラー・ビールマン/Tyler Bielmanと私が、最初はミラディンを3つのブロックからなる物語の一部として提案していた、ということはこれまで語ったことがない。

 インベイジョン・ブロックで終わりを迎えたウェザーライト・サーガは私(ミカエル・ライアン/Michael Ryanという男と私がウェザーライト・サーガをそもそも提案したのだが、これはまた別の話)の思っていたのとは違う形に流れていたので、私はまた別の複数ブロックに渡る物語に挑みたいと熱望していた。同じように大きな物語に情熱を持っていたタイラーとともに、私は3ブロックの計画を立てたのだった。

 第1ブロックは、「飼育係/Zookeeper」と名付けられたプレインズウォーカーの作った金属の世界、人工の世界である。飼育係は金属のクリーチャーを作ってこの世界に解き放った。その後、何らかの道具を使って他の次元からクリーチャーを奪い、この金属の世界に捕らえたのだ。新しい住人は生きるために金属のクリーチャーと戦わなければならない。物語の主役は、他の世界から連れてこられた戦士で、この世界が人工物だと気付くのだ。彼女はこの狂った実験を終わらせるため、飼育係の住処へと挑む。彼女がたどり着いた先で、飼育係はこううそぶくのだ。「誰が最初にここに来るかと思っていた。さあ、来たまえ。やることはいくらでもある」――そして、戦士とともに飼育係は姿を消すのだった。


 第2ブロックは、地下の牢獄世界だった(これはスコット・ファン・エッセンがグレート・デザイナー・サーチ2でそのアイデアを示す何年も前のことだ)。囚人の他に、この地下世界の元々の住人たちも多くいたが、やはり囚われていた。「守部/Warden」は闘技場のようなやり方で全ての囚人同士を戦わせる、無慈悲な男だ。この物語の主役は、不正に投獄されている。脱出しようとしたところ、同じように不正に囚われている囚人が多くいることを知り、守部が何かを企んでいるということに気付く。やがて闘技場で戦うことになり、勝利を収めた後に守部に対面した主人公は守部にそれを告げるが、守部は、お前はただ表面をなぞっているだけだ、と答えるのだった。

 第3ブロックは、暴力と嵐の世界だ。第1ブロックの飼育係と第2ブロックの守部(そう、彼もプレインズウォーカーだったのだ)の軍勢が戦う、中立の次元である。このブロックは金属のクリーチャーや連れ去られたクリーチャーからなる第1ブロック勢と、囚人や地下のクリーチャーからなる第2ブロック勢の全面戦争である。この神話級の戦いの勝者は、多元宇宙全体の脅威となるような宇宙的褒賞を手に入れられるのだ(その中身は具体的には決めていなかった)。

 第1ブロックの設定の一部が残っているのは見て取れるだろう。人工のアーティファクトの世界で、他の次元からのクリーチャーを捕らえている。ミラディンの世界設定担当のブレイディ・ドマーマス/Brady Dommermuthは、他の次元からのクリーチャーが時を経て順応し、金属次元の生態系の一部になっているというように話を展開させた。「金属世界の中で生きるために戦う」という要素は削られたわけだ。

 結局どうなったか? ウェザーライト・サーガが巧く行かなかったので、複数ブロックに渡る物語というのは作られなくなった。1年で、プレイヤーが気に入らないとわかったらどうすればいい? 望まれないかもしれないブロックを作り続けなければならなくなってしまう。

 これが、実際には世に出なかった3ブロックの物語と、そしてその物語から生まれたマジック史上もっとも人気のある世界の話だ。

神河ブロック

 私はこのコラムを通じて自分の成功についてよく語るが、この話は私の最大の失敗の1つだ。面白いことに、これはモダンの10ブロックの中で唯一、デザイン・チームに私が1つも所属していなかったブロックの間に起こったことである(連繋などこのブロックで使われたいろいろなものをデザインしていたのでクレジットには名前があるが、デザイン・チームには所属していなかったのだ)。私は神河物語のデベロップ・チームに所属していた。そして、そのときに事件は起こったのだ。

 『神河物語』はトップダウンでデザインされた初のエキスパンションであった(大型セットについては。おそらく、最初に作られたトップダウンのエキスパンションとなると『Arabian Nights』だろう)。このセットは、日本、そして日本の神話の雰囲気を再現しようとして作られたのだ。話の筋となるのは、人間と世界の精霊である神との対立だった。

 いくつものデベロップ会議の中で、私は、このセットには焦点がないと感じていると主張した。日本の神話から触発された要素が存在する。人間と精霊との戦が存在する。伝説のパーマネントというテーマが存在する。このセットはいろいろなことをしているが、広がりすぎているのだ。1つの要素を取り上げ、それをセットの中心に据えるべきだ。その要素が何であるにせよ、何か1つを選ばなければならないと私は主張した。


 長い議論の後、デベロップ・チームは伝説のパーマネントという一面に焦点を当てることにした。「オーケー。それなら、それが焦点だとわかるように充分強調する必要があるな」私は言ったのだ。そのために、私はいくつかのことを提案した。アンコモンの伝説のクリーチャーを作ること、伝説のパーマネントのデザイン範囲を広げること(バニラの伝説のクリーチャーを作れる、という例として《今田家の猟犬、勇丸》を作った)、レアについてはさらにそれ以上。そこで私は言ったのだ、レアのクリーチャーは全て伝説のクリーチャーにすべきだ、と。

 後で見ると、これは酷い判断だった。この判断の結果、我々は平均以下の伝説のクリーチャーを量産するしかないという状況に陥ったのだ。全てのレアのクリーチャーを強くしたり、魅力的にしたりすることはできないので、綺羅星のようには輝かない伝説のクリーチャーを作らざるを得なくなり、価値を落とすことになったのだ。

 さらに、レアでのそれ以上というのは、全体としてはほとんど意味を持たなかった。先週言ったとおり、テーマの重要性は開封比で評価されるが、伝説のクリーチャーのあまりにも多くがレアだったので開封比は非常に低い値になった。これが私のよく言う、「テーマがコモンになければ、それはテーマではない」という教訓の元になったのだ。

 結果として非常に価値の高い教訓を得ることができたにせよ、全てのレア・クリーチャーを伝説に、というのは大きな誤りだった。

ラヴニカ・ブロック

 ラヴニカ・ブロックについて語る時、いつも「ラヴニカ」とだけ言うが、正式な名前はそうではない。エキスパンション「ラヴニカ」の正式な名前は『ラヴニカ:ギルドの都』である。なぜ他のセットにはないサブタイトルがこのセットにはついているのか、気になった諸君はいるだろうか? よろしい、それでは説明しよう。

 この話は、ラヴニカのデザイン中盤に遡る。目標の1つに、「(それまで唯一の多色ブロックだった)インベイジョンと違うものにする」というものがあったので、可能な限り多くの色を使うことを推奨するのではなく、なるべく少ない色(ただし多色)を使うことを推奨するブロックにすることにしていた。インベイジョンは敵対色よりも友好色を重視していたので、今回は10種すべての2色組み合わせを重視することにしていた。友好色だ敵対色だというのがほとんど意味を持たない環境にするといいのではないかと考えていたのだ。この発想から、ブレイディが思いついたのがギルドであった。

 ギルドというものが気に入った私は、それを中心にブロック計画を立てることにした(正確に言えば、混成をセットから排除した方が先だ。その辺についての詳しい話は、「City Planning Part 1」「Part 2」「Part 3」参照・リンク先は英語)。そこから、4/3/3計画が生まれた。つまり、第1セットである大型セットにはギルド4つ、2個目の小型セットには3つ、3つめの小型セットには残りの3つ。これはあまりに急進的な計画だった(1つのセットで出てきたギルドは他の2つのセットで出てこないのだ)ので、開発部内で同意を得るのも大変だった。

 デザイン・チーム(テイラー・ビールマン、マイク・エリオット/Mike Elliott、アーロン・フォーサイス/Aaron Forsythe、リチャード・ガーフィールド/Richard Garfiedl)と後のマジック開発部ディレクターであるランディ・ビューラー/Randy Buehlerの協力を得て、私は自分の計画を貫いたが、疑いの目を向けるものはいた。最大の論点となったのは、人々はギルド構造を理解できないのではないかというものだった。この4/3/3構造は理解してしまえばわかりやすいが、理解できなかったらどうだろうか?

 ブレイディと私は、ギルドの特徴を定めるのにクリエイティブが助けになると主張したが。しかし人々はまだ納得しなかった。ギルドのすかしというものを思いついて、私はこれでギルドを区別しやすくなると主張した。さらに、多色カードはそれ自身が区別できるようになる。ギルド魔道士のような大量のサイクルを作れば、対照性もはっきりするし、巧く行く、と。


 我々は巧く行くように調整し、やがてプレイテスター・グループからのフィードバックが届いた。カード1枚1枚、メカニズム1つ1つは気に入ったが、全体として何が起こっているのかがわからないというものだった。なぜ存在しない色の組み合わせがあるのか? セット全体でプレイテストをしているのではないのか?

 再び、議論が再燃した。批判者は「そらみたことか」と言い続けていた。我々は、カードに貼られたステッカーにはクリエイティブの成果物もなく、すかしも入っておらず、ギルドを識別する方法がほとんどないと反論した。クリエイティブ・チームの手を借りよう。彼らならギルドのコンセプトを光らせてくれるはずだ。

 このとき、ブレイディと私はそれぞれ休暇に入った。そして戻ってきて、セットの名前が変わっていることに気がついた。ここで「ラヴニカ:ギルドの都」というタイトルになったのだ。セット名を使ってギルドであると告げるのは、1つの妥結点だった。ブレイディも私も必要ないと主張したが、しぶしぶ妥協して同意したのだった。

 これが、このセットが『ラヴニカ:ギルドの都』という名前になった由来である。旧ラヴニカが実際に世に出た時にどうなったか知らない諸君のために添えるなら、結局は誰もがギルドをよく「理解」したのだった。

時のらせん・ブロック

 時のらせんは最初、時間をリソースとして使うメカニズムを軸に置いた「時間の混沌」ブロックとして始まった。待機持ちの呪文は、何ターンか費やすことでより軽く唱えることができる。刹那持ちのカードは、唱えると時間が歪んで誰も対応できない。そうやっているうちに、我々は偶然にも郷愁というものの強さに気がついた。私は3つのセットを過去、現在、未来に分けた。そして過去を見せる方法を探しているうちにとても懐かしい気分になっている自分自身に気がついたのだ。

 我々の好きなデザイン手法の1つに、これまでのマジックのカードを2枚選び、それを組み合わせるというものがある。例えば、『Legends』の《殺人蜂》と『ミラージュ』の《ウンヤロ蜂の一刺し》を選んだ結果できたのが《ウンヤロ蜂》なのだ。


 時のらせん・ブロックにはこういったカードが満載だが、それでも全てがセットに入ったわけではない。入らなかった理由は、昔の規定では作れても今の規定は作れなくなっていて、このブロックだけのために規定を元に戻したくはないから、あるいはクリエイティブ的にふさわしくないから、あるいはファイルに入れるべきカードが多すぎたから、などと多岐に渡る。

 どのセットにも、私が気に入ったけれども印刷に至らなかったカードが何枚かある。場合によっては後に再利用することができる(何年もかけて、何回も機会を窺って、ようやくセットに入ったカードもいくらかある。それについてはまたコラムで書くこともあるだろう)が、ここで紹介するのは『時のらせん』でしかありえなかったものだ。受け入れられる世界が存在しないことを本当に残念に思うカードは、これだ。


〈幽霊海賊船〉

クリーチャー ― 人間・海賊・船
飛行
:再生

防御プレイヤーが島をコントロールしていない限り、幽霊海賊船では攻撃できない。

:クリーチャー1体またはプレイヤー1人を対象とする。幽霊海賊船はそれに1点のダメージを与える。

あなたが島をコントロールしていないとき、幽霊海賊船を生け贄に捧げる。


 アーロンもまたこれが再録されなかったことを残念に思い、せめてもの記念に《幽霊船》と《海賊船》を時のらせんのタイムシフト枠に入れたのだった。

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ローウィン=シャドウムーア・ブロック

 本日最後の話は、触れたことはあるが詳細について語ったことのない話になる。なぜ私が『イーヴンタイド』のリード・デザイナーになったか、だ。流れを把握してもらうために、『ローウィン』のデザインの話に話を戻そう。現在、デザイナーは6人が在籍しているが、いつでもそうだったわけではない。ローウィン=シャドウムーアのデザインの時には、フルタイムのデザイナーはアーロン・フォーサイスと私の2人しかいなかった。そう、当時アーロンは私の弟子で、次世代を担うマジックのデザイナーになるために修行していたのだ。

 開発部には他にもデザイナーがいたが、それぞれに他のゲームに関連した優先すべきことがあり、時間が充分あるわけではない(マジックのセット1つのリードを務めるには、全ての時間のうち半分以上費やさなければならない)彼らにリード・デザイナーをやらせるのは難しかった。アーロンに大型セットのリード・デザイナーを務めさせたかったので、ローウィンのリード・デザイナーを任せた。このとき、アーロンには首席デベロッパー職(私がデザインで務めている役職のデベロップ版)の誘いがあり、彼がそれを受けたので、フルタイムのデザイナーはついに私1人になってしまったのだ。

 こうなると、開発部には私の他にマジックの大型セットのリード・デザイナー経験者がいなくなった(ビル・ローズ/Bill Roseは開発担当副社長で忙しく、ブライアン・ティンスマン/Brian Tinsmanは新ビジネスの首席デザイナーで忙しかった)ので、シャドウムーアのリード・デザイナーは自分で務めるしかなくなった。実際の所、小型セットのリード・デザイナーを務めたことのある人物すら手が空いていなかったのだ。

 『モーニングタイド』のリード・デザイナーを、それまでのマジックのデザインチームや他のウィザーズのゲームで実績のあるポール・ソトサンティ/Paul Sottosantiというデザイナーに任せることにした。イーヴンタイドについては、いくつものデザインチームで働いたが、まだリード・デザイナーを務めたことのないある人物を選んだ。この人物のことを、仮にデザイナーXと呼ぶことにしよう。


 デザイナーXはデザインチームで良い実績を残しており、私は、デザイナーXにならリード・デザイナーを任せられると感じた。通常通り、新人リード・デザイナーは小型セットから始める(ちなみに今はサプリメントから始める)ので、私は『イーヴンタイド』のリード・デザイナーとして彼を指名した。彼は受諾し、そして巧く行っていたのだ。

 『イーヴンタイド』の開始が近づくと、デザイナーXはナーバスになっていった。はたして自分に『イーヴンタイド』のリード・デザイナーが勤まるのか、不安になっていた。私は彼の不安を鎮めようとしたが、結局、彼はまだ任を果たせないと判断した。リード・デザイナーとして選ばれた人物が降板したのは、私の首席デザイナーとしての10年の中で唯一のことだ。

 他に選択肢がなくなって、私は自分でリード・デザイナーを務めることになった。振り返ってみると、これまでに私が手がけた16個のデザインの中で『イーヴンタイド』は一番楽しくなかった(ローズウォーター・トーナメントで16位にしたのがその一例だ)。これが非常に難しいことに気付いて、デザイナーXは正しい判断をしたのかも知れない。振り返ってみると、彼の判断は正しかった。ともあれ、これが私がミニブロック内の両セットのリード・デザイナーを務めることになった経緯である。

モダン・タイムス

 今日はここまで。諸君がこれらの物語を楽しんでくれて、そして来週アラーラ・ブロック、ゼンディカー・ブロック、ミラディンの傷跡・ブロック、イニストラード・ブロック、ラヴニカへの回帰・ブロックの話を聞きに戻って来てくれたなら幸いである。

 その日まで、あなたの糸車を繰る音が響きますように。


(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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