ヨーロッパ横断、チーム戦、世界半周

更新日 Making Magic on 2013年 4月 18日

By 中村 修平

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 もし隣の都道府県に行こうとするとパスポートが必要だとしたらどう思います?
 とりあえず車道は検問で無駄な渋滞に悩まされるのは想像に難くありませんし、これは経験があるのですが、電車なら一時停車後にパスポートチェックが加わったりします。
 ああ、そういえば関税なんてものもありましたね。よく申告者の長い行列を見ますが、あれもまた面倒な手続きのようです。

 残念ながらではなく幸いなことに、そんな不便な事態というのにはほとんど直面することはありません。
 ちょっとあるにしてもアメリカの入管で虐められるくらい。
 もちろん私が善良優等な旅行者というのも3割くらいはあると思いますが、それ以上に日本国パスポートの威力たるや相当なもの。
 美点しかないだなんて言う気はありませんが、国際的な信用度という点では、日本人というステータスは世界に誇ってもよいものだとつくづく思います。

 ですが、かつてのヨーロッパではほんの20年程前まで、個々の事情など全く斟酌なしで恐ろしいくらいの審査が必要というのが普通だったのです。隣の都道府県へ行くくらいの距離で、です。
 イデオロギーの対立なんて遠い時代となっているので忘れがちですが、ほんの20年前までは今と違う全く別の論理がまかり通っていたのです。

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 そこから見れば、どう少なく見積もって好ましい方向に変化していると感じます。
 今はチェコ・ドイツの国境沿いでパスポートをチェックされることはありませんし、それに関わる諸々の不便もありません。
 何かと毀誉褒貶が激しいグローバリゼーションなるものも、少なくともここでは価値があるように思えます。

 ただよく短所として挙げられる、地域の特性が均一化で失われることについては......
 プラス面しか受け入れられないだなんて無い物ねだりをするつもりはないのですが、ちょっと悲しいですね。

 例えば食べ物。
 どこででも同じ物が食べられるということ自体は悪くないのですが、それが行き過ぎて、どこででも同じ物しか食べられないということになると話は別です。
 せっかくチェコに来たのだから名物のグラーシュや鴨料理、シュニッツェルを食べたいと思うのも人情というものでしょう。

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 となぜこんなことを連々と書き連ねているかというと、
『チェコの思い出に最後に国境でこの国最高のご馳走を食べさせてやるよ』
 と連れて行かれた先がご存知、私が以上のような理由で毛嫌いしている黄色いエム字だったからです...


 ということで1週間ほどのピルゼン・ジュザ宅での滞在も終わり。

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 ちょっと実弾射撃しに行ったり、

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 シーフードが食べられないジュザと何故か寿司を食べに行ったりした程度でチェコを離れ、今度は中央を横断してオランダ、ユトレヒトまで。
 帰りはアムステルダムから日本行きの便を取っているので片道切符の旅です。

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 イタリア行の時と同じくジュザ、シフカ、イワンの4人で、予定では8時間あまり、実際はフランクフルトで渋滞に捕まってしまい到着したのは深夜に届こうかというあたり。ここから電車でアムステルダムに向かい、滞在先となるジュザの友人宅にたどり着いた時にはすっかり日付が変わるくらい。
 ですが思い返せば、金曜日が一番マシとも言える日でした。

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グランプリ・ユトレヒト

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 気になる参加者はたったの660チーム、約2000人。
 2000人を『たった』と表現しているあたり、割といろいろなものが麻痺している気しかしませんが、ヘッドジャッジアナウンスですらそうだったことから推し量って下さい。
 ちなみに終了予定時間はこれまたたったの10ラウンド/午後11時。

初日・『ギルド門侵犯』3人チームシールド

 初めて開催されるギルド門侵犯チームリミテッドということで、2、3回練習で実際にパックを開封して3人分のデッキを組んでみたのですが、かなりの確率で

  • すごく強いボロス
  • かなり固いオルゾフ
  • その他

 の組み合わせになることが解りました。
 環境最強色である白が使われる可能性が高いのは言うまでも無いですが、攻撃的なカードのみを抜き出して赤と組み合わせてボロスを作った後に、まだ防御的なカードと黒でオルゾフを組めるだけの余裕があるのです。

果敢なスカイジェク聖堂の護衛

 問題は3つ目のデッキ。
 白、黒、赤と使っているわけですから、順当にいけば青緑のシミックとするのが普通ですが、シミックのカード、というより進化が付いているクリーチャーはかなりパックの出に左右されるので、このギルドが不動の3番手というわけにもいかないという印象。
 私達、中村/ジュザ/ジャコブスキーが受け取ったパックもそういうものでした。

 ほとんど赤単色で組めるほど潤沢な赤のカード。そこから多色と少しの白のカードを取ってボロスにするか、緑を足してグルールにするか。
 どちらを取るにせよほとんどの白のカードが受け身寄りだったのでそれを中心にしておそらくオルゾフ、あるいはディミーアの多色カードで有望なものが何枚かあるので3色にする、というのが2つ目。

 ここまではあっさり決まったのですが、3つ目については難航しました。
 まず緑がとても弱い。はっきり言って使い物にならないレベル。
 それに引きずられて、シミックも水準的な強さとは言いづらいくらいのものしか組めません。多色にしようにも大したものがない。

 悩んだ末出した結論は、オルゾフから黒いカードを譲ってもらってディミーアを作るというもの。

肉貪り死の接近

 これなら《肉貪り》や《死の接近》のような癖のある除去も使いきれるし、デッキの特性が環境の2強に対して有利なのです。
 ボロスに対して受けきれるだけの除去からのレア生物で逆転、オルゾフに対しては強請付きだけ除去してライブラリーアウトを狙うという攻め方ができます。

 問題は2番手デッキのオルゾフが、チーム戦では標準といったレベルから、力不足で唯一残ったレアである《無慈悲な追い立て》頼みにならざるを得ないレベルに落ちた点です。
 なんとか各デッキからの移籍を繰り返してバランス調整こそ図りますが、やはり絶対的な質で足りていないというのはあるわけです。

 最終的には「これ以上他のデッキから削るとお互い普通レベルに成り下がって共倒れになりかねない」「かと言って他の組み合わせにするのは現実的ではないからこの辺りにしておこう」ということでこの3つのデッキで登録。

 ボロス好きなジュザには結局白を足すことになったボロスを任せるとして、問題は私がどちらのデッキを使うかということになりましたが、オルゾフは使って上手くやれる気がしないので、わがままを言ってディミーアを使わせてもらうことになりました。
 そして、それだけの価値はありました。


 強いデッキを使わせてもらったこともあって、初日の個人成績は2バイ明けから8戦全勝。
 チームの方も、主にオルゾフを使ってくれたルーカスが踏ん張ってくれたこともあって通算2敗で凌ぎ切り、8勝2敗で2日目に進出。
 赤いカードを見て狂喜乱舞していたジュザは...まあルーカスと同じくらいのスコアということで。

 むしろ問題は、試合自体は23時に終わったものの、アムステルダム行きの切符を買いそびれた結果、3月とはいえ氷点下近くの屋外で1時間待ちぼうけという事態になったことですね。
 しかも日曜日はスケジュールが押しているので午前9時スタート、ユトレヒトからアムステルダムは電車で30分はかかるので都合1時間プラス1時間の引き算に引き算を重ねると睡眠時間が悲しいくらいの量、となったのは日曜日に影響があったと思います。

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アムステルダム中央駅

2日目・『ギルド門侵犯』3人チームブースタードラフト

 2日目のチームドラフト戦は、3人対抗のドラフトを3回。各2ラウンドを同じデッキ、対戦チーム内の他のプレイヤーと戦うのですが...

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 1回目のドラフトでかなり強いオルゾフを構築して隣を見ると、そこにいたのはカラカラと乾いた笑いを浮かべているマーティン・ジュザさん。
 デッキを見てみると、まあ、なんというかデッキではないですね。
 予想通りというか当然のジュザ2連敗。
 ついでにそれほど悪いデッキではなかったルーカスも2連敗。
 チームスコア1勝2敗×2でチーム成績は0勝2敗スタート、という最悪の滑り出しを迎えてしまって意気消沈モードのジュザ。
 この人もなかなかに豆腐メンタルなんでこうなったらもう立ち直れないし、その分私が勝たなきゃと思ったのも裏腹に、次のドラフトでは私が大失敗ドラフトをしでかして個人2連敗。チーム成績こそ1勝1敗でしたが、通算で1勝3敗。

 2日目に残った全50チームのうち入賞圏内は20位。初日をギリギリで通過した私達にとって勝ち越しがプロポイント獲得の最低条件だったので、またしてもプロポイントの見込みがなくなり、残りは消化試合となってしまいました。

 Swedes Sweep Grand Prix Utrecht!(英語イベントカバレージ)

 本当にあとプロポイント1点からが遠いです。
 そんな失意のうちに、オランダの文化施設は月曜日が休館日という事実を当日に知りつつ、ヨーロッパと今シーズンのグランプリ行は締めくくり......のはずだったのですが、急転直下。
 少し、というかかなりイレギュラーな事案が発生して、急遽翌週にアメリカのピッツバーグに行くことになってしまいました。

エクストラ・グランプリ

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 シーズンの区切りが例年5月に開催されるプロツアーと改定されたのが去年のこと。
 ということでもうシーズンも最終盤。物理的に出場できるグランプリもプロツアー直前週のグランプリ・ポートランドとグランプリ・北京、4月第2週のグランプリ・ストラスブール、そして翌週のグランプリ・ピッツバーグの3つです。

 アメリカのポートランドはおそらく行くにしても、ストラスブールは苦手なレガシーかつ周囲にイベントがない単独グランプリでは採算が全く合わないので論外、そしてピッツバーグはこれから日本に帰国、そして木曜日には齋藤友晴の結婚式というスケジュールでこれも不参加。
 の予定だったのですが、プロポイント確保に燃えている行弘賢が単独ででもアメリカに行く意思を固めたというではないですか。

 その心意気は良し。ですが猛烈に心配です。

 なんというのでしょうか、はじめてのお使いを見守る保護者の気持ちという感覚が一番近いでしょうね。
 一通りは旅券や宿の取り方、注意点等をスカイプ経由でレクチャーしたとはいえ、本人も自認するところの英語力などなどなど、不安点なところを挙げれば数知れず。

 そんなこんなでつい、
『今週(ユトレヒト)でプロポイント取れなかったら、ピッツバーグ付き合っても良いよ』
 なんてことを言ってしまったのです。
 そして、いま残念ながら現実となってしまったユトレヒトでのノーポイント。
 ここで言葉を違えるのは...無いですよね。

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 ということで、ようやくの休息も、トモハルの結婚式もそこそこに、気がつけば地球を東回りに1周してグランプリに参加。
 初日のシールド戦のパックをもらった時はあまりの微妙さ加減に気が遠くなってしまったり...(最終的に構築したデッキは3バージョン)

 かなりのラッキーで9勝1敗で2日目に進出したものの、1回目のドラフトで物凄く弱いデッキ相手に負けて1勝2敗。なんというか乱高下な試合履歴。
 その後2連勝するものの最終戦で負けてしまい16位入りはならず、プロポイント2点がもらえるラインにも4位足らずの36位。
 それでもなんとか目標であるプロポイント1点、今期48点目で去年の実績に並んだことでようやく肩の荷が降りました。

 Parker Makes Proud Return in Pittsburgh(英語イベントカバレージ)

 というのも束の間、グランプリ直後にちょっとした事実を聞かされてまた気が遠くなってしまうのですが......
 続きは次回に、それではまた世界の何処かでお会いしましょう。

中村修平

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