ラヴニカがやって来る!ヤァ!ヤァ!ヤァ!

更新日 Making Magic on 2012年 9月 24日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

 街には八百万の物語がある。ラヴニカへの回帰に入っているカードはそれほど多くはないが、それでもいくつかの物語はあるものだ。今回はラヴニカへの回帰のカードのいくつかに関する考察と物語をお届けしよう。いつもやっていることなので、手順はもうおわかりの通りだ。それでは早速カードに入ろう。

対抗変転》 アート:Scott M. Fischer

 今回のコラムはカード個別のものだが、前回触れていなかったサイクルが1つあった。注目を集めているようなので、ここで一言触れておこう。

 「打ち消されない」サイクルが並ならぬ注目を集めている。デザイン・チームがそれをなぜ、どのようにしてファイルに入れたのか? その答えだが、我々は入れていない。実際の所、このサイクルはリード・デベロッパーのエリック・ラウアー/Erik Lauer率いるデベロップ・チームが考案し、作成したのだ。これが存在する理由は、エリックが、魅力的なサイクルを加えたい、また、エターナル・フォーマットに影響を及ぼすものを作りたいと考えていたからである。「打ち消されない」というのはこの両方の条件を満たすものだった。彼にとっての障害は、私だった。

 知っての通り、開発部における私の仕事の一つに、カラー・パイ・グルとしての働きがある。色から外れている何かがファイルにあったら、そこにメモを入れるのだ。「打ち消されない」は赤と緑の能力として位置づけられている。赤はインスタントやソーサリーに、緑はクリーチャーにその能力を持たせるのだ。青には、打ち消されない打ち消し呪文を持たせるために認めたことがあった。


 私はエリックに、「打ち消されない」という能力は全ての呪文にふさわしくはないので、サイクルとして成立するとは思えない、と告げた。そこで起こったのはいつもと同じような抵抗勢力との戦いだが、今回は私が抵抗する側だった。

エリック:わかった。赤の呪文には「打ち消されない」は着けられる。
私:そうとも。
エリック:緑のクリーチャーにも「打ち消されない」を着けられる。
私:そうだ。
エリック:青から見ると、かつて青単色のカードに持たせた以上、第3種の能力だ。
私:確かに。青の第3種として認めよう。
エリック:オッケー。《対抗変転》は赤のインスタントだから問題ないと。
私:そうだな。
エリック:《殺戮遊戯》は赤のソーサリーだからこれも問題ない。
私:そうなる。
エリック:《ロクソドンの強打者》は緑のクリーチャーだから問題ない。
私:ああ。
エリック:《至高の評決》は青で、第3種の能力は稀には存在できる。前に使ったのはダークスティールだから問題ない。
私:そうなるな。
エリック:つまり、カラー・パイに反しているのは《突然の衰微》だけ。これもそんなにひどい逸脱じゃない。緑のカードで、緑は「打ち消されない」を第1種として持っているんだ。クリーチャーでないというだけのことじゃないか。イカしたサイクルを作るために、緑に打ち消されない呪文を置くのを認められないものか?
私:わかった、わかった。じゃあサイクルで。


 この会話を踏まえて、「じゃあギルド門侵犯は?」という疑問を持つ諸君もいるだろう。オルゾフは「打ち消されない」と縁が無い2色なので、正当化するのは非常に困難だ。ここで、サイクル全てが持ち越されるとは限らない、ということを思い出して欲しい。「打ち消されない」は持ち越されないものの1つだ。ラヴニカへの回帰内のサイクルなのである。先週語った5種(魔除け、ギルド魔道士、ギルド門、「ショックランド」、ギルドの指導者)のような他の多くのサイクルはギルド門侵犯でも取り上げられる。

 このサイクルについて受けた質問のなかの最後の1つを紹介しよう。「『打ち消されない』と『呪文や能力によっては打ち消されない』が混じっているのはなぜですか?」 それは、その呪文が対象を取るかどうかによるものだ。対象を取る場合、対象不適正なときにゲームによって打ち消されることがあるのは明確にしなければならない。

Ash Zealot

 このカードがどうラヴニカへの回帰なのか、という質問を受けた。多少奇妙に思えるので、なぜこれがここにあるのかを説明しよう。

 デベロップメントの仕事の一つに、これまで作られたカードの効果を弱めるような反応的カードが環境に必要かどうかを見極めるということがある。この種の反応的カードはデベロッパーが可能な限り最新の情報を集められるよう、デベロップの後半に加えられるのが常である。

 しばしば、私はこの種のカードを見て、それがそのセットにそぐうかどうかと質問する。すでに印刷されているカードへの反応物なので、まったく違うブロックを参照していることはよくあることだ。しかし、たとえそのカードが現在のセットに注目していないものであっても、デザイナーとして、私は発売されるセット内でカードが意味をなすようにしているのだ。

 ある日、デベロップが私を訪ね、そしてこのカードをラヴニカへの回帰に入れるとしたらどう思うかと尋ねてきた。私は、このカードはイニストラード・ブロックでは素晴らしいが、ラヴニカへの回帰ではそれほどではない、と答えた。ゴルガリは墓地を使うが、このセットでの墓地関係といえばそれぐらいだ。そして、このカードはゴルガリのキーワードである活用には何も役に立たないのだ。

 我々はカードを調整したが、最終的に《灰の盲信者》に求められる働きをできるものは作れなかった。内部での整合性は重要だが、同時にバランスの取れた環境も重要だ。そこで、ラヴニカへの回帰では涙をのんで、マジック全体のためにセットにとって完璧とは言えないカードを入れることにしたのだった。

Collective Blessing

 デザインでよくある問題がある。デザイナーはイカしたカードを作ったものの、それが5色のどれにもぴったりはまらない、という場合だ。デザイナーはその場合、どうすればいいか? しばしば、そのデザイナーはそのカードを一番近い色に当てはまるように弄る。私の仕事は、ぴったりはまらないで弄りもしない場合をデザイナーに認識させることである。

 多色カードは非常に人気がある。何度も何度も使っていものであり、デザイン空間は多くの諸君が思うよりもずっと深い。従って、アイデアが単一の色にはまらなくても、心配するのを止めてそれをチャンスと理解する必要がある。多色カードにふさわしいアイデアというものは存在する。そういうものは、そうして扱うべきなのだ。

 《集団的祝福》はまさにその一例である。白はエンチャントと軍勢の色である。白は力を合わせることを好み、エンチャントを使って結集することを楽しむ。アルファ版の昔から《十字軍》があり、マジック2012には《清浄の名誉》があった。緑は成長と巨大クリーチャーの色である。緑の象徴的な呪文の1つが《踏み荒らし》は、自分の軍勢全てに+3/+3とトランプルを与えるのだ。

 さて、それでは《集団的祝福》はどこに置くべきか? エンチャントで、全体を強化する。ということは白。しかし+3/+3。ということは緑(白に許されたクリーチャー強化は+1/+1と+2/+2で、それよりも大きいのは緑の領域になっていることを思い出してくれたまえ)。このカードについて聞かれた私の答えはただ1つ、「それは白でも緑でもある」だった。

 幸いにして、作成中のセットは多色セットだったが、そうでなかったとしても私の答えは同じだった。《集団的祝福》は白緑のカードなのだ。作成中のセットで使えなければ、使えるセットまで待つ必要があっただろう。多色カード、多色効果は、多色でなければならないのだ。

Corpsejack Menace

 わかっていない諸君のために言うと、私は何かを倍増させるのが好きだ。好きだ。好きだ。好きなのだ。実際、マジックに可能な限りの倍増効果を入れるのは私の個人的な大作戦である。私が、倍増効果の数そのものを倍増させようとし続けていると言う者さえいる。テンプレート担当が「2倍にする」という言葉を他の言葉に置き換えることもあるが、実際の効果には関係ない。

 何にせよ、旧ラヴニカ・ブロックで、私は倍増カードの金字塔とも言えるカードを作り上げた。


 少しばかり狂おしいことが起こった。私はひとりじゃなかったのだ。マジックには倍増効果のファンがたくさんいたのだ。《倍増の季節》は大人気のカードとなったのだ。

 時は流れていまから数年前。ゼンディカーをデザインしていたとき、私は、ゼンディカーに自分のデザインの特徴というべきものがあることに気がついた。カウンターやトークン・クリーチャーが満載なのだ。《倍増の季節》はそれにぴったりだった。そこで、私はそれをセットに入れた。

 デベロップ中に、私は残念な知らせを聞いた。《倍増の季節》+プレインズウォーカー(旧ラヴニカ・ブロックには存在しなかったカード・タイプだ)=大惨事。デベロップは惜しみながら《倍増の季節》をセットから取り除いたのだった。私はデベロップがこのカードを愛するようになっていたので、悲しかった。


 そこで、開発部は《倍増の季節》の代わりになるものを作り始めた。最初は《似通った生命》で、これはイニストラードに投入された。当時、私は《倍増の季節》のバリエーションならラヴニカのカードへの回顧なのだからラヴニカへの回帰に入れるべきだと主張した。エリック・ラウアーは《似通った生命》がイニストラードで良い仕事をしたと言い、そして他にもバリエーションはいくらでもあると言ったのだ。

 ラヴニカへの回帰には、+1/+1カウンターをテーマにしたカードがある(ギルド門侵犯にはもっとあることだろう)ので、+1/+1カウンターを倍増させるカードはうまくはまると判断された。クリーチャーにつけたのは、以前はエンチャントにつけていたので、それをクリーチャーにすればイカすだろうと考えたのだ。それに、クリーチャーにすれば、他にクリーチャーがなくてもこの効果の利益を得られる。

 ということで、《屍体屋の脅威》が生まれたのだった。

Dreadbore

 このカードを見たら、2つの質問が浮かぶことだろう。

その1:ルール・テキストで「プレインズウォーカー」を直接書くことはないと言っていましたが、何があったんですか?

 マジックはルールを覆すゲームである。ルールを覆すためには、まずそのルールを作り、そしてそのルールが落ち着くまで待ってから、ルールを覆さなければならない。あらゆるルールを覆すのだとか、理由もなくルールを覆すのだとか言っているわけではないが、我々がこれほど多くのルールを作っている理由は、時に応じて破ることのできるルールを持っている必要があるからである。《戦慄掘り》は一つの実験なのだ。プレインズウォーカーを直接触れるカードについて、プレイヤーはどう思うかを知りたいのだ。フィードバックよろしく。

その2:この種のカードは色々ありますが、アンコモンです。なぜレアなのですか?

 プレイヤーが持っていない可能性のあるカードを参照する呪文を作ることには注意が必要である。プレインズウォーカーといえば神話レアだ。《戦慄掘り》をアンコモンに置いたら、プレインズウォーカーを見たこともないのにプレインズウォーカーを破壊するカードを持っているプレイヤーが増えてしまう。また、プレインズウォーカーを破壊する呪文、という発想そのものが一般的であるべきではない。これがレアなのは、レアだからなのだ。

Dryad Militant

 《ドライアドの闘士》に関して一番良く受ける質問は、「これは白緑の効果なんですか?」だ。

 その答えは、この効果が何色かを決めるほどの前例はない、ということになる。インスタントやソーサリーを含む呪文を追放する打ち消し呪文はいくらもあるし、《虚空の力線》はカードが墓地に行くことを妨げる。 結局の所、この効果は未定義なのでもっとも意味が通ると感じたところになら使えると判断されたのだ。この効果が白なのは、白は変更を防ぎ、追放する色だからであり、緑なのは、墓地に干渉する2色のうちの1色だからである。2色目は黒であるべきだという意見も判るが、未定義なので、カラー・パイ・グルとして《ドライアドの闘士》を受け入れることができたのだ。

Phantom General

 しばしば、セットのリード・デベロッパーが私を訪れ、セットの穴を埋める手助けを求めてくる。今回そうして訪れたのはエリックだった。彼はドラフトでセレズニアの助けとなる、既存のセレズニア戦略を強めるカードを求めていた。トークン・デッキを強化する方法はないかと尋ねてきたのだ。

 デザインの妙味を示す部分ではあるが、しばしば最善の答えは最も単純なものだ。トークンを強化したいのなら――「トークン用《十字軍》はどうだ?」と。クリーチャーに能力を持たせれば、他の単体強化や全体強化のメリットを受けることもできる。

 このカードはドラフトでセレズニアを強化することに成功したが、それだけでなく、構築でもイニストラードのスピリット・デッキにも投入された。エリックはそのデッキが強くなりすぎることを危惧し、これ以上のカードを与えたくはなかったので、このクリーチャーを4マナにし、この種のデッキで活躍しているカード《イニストラードの君主、ソリン》と被るようにしたのだった。

Rakdos, Lord of Riots

 前々回、私はラクドスのキーワード能力である解鎖のデザインについて語った。デザイン・チームが最初に作ったのは『痛み投げ』という全く異なるメカニズムだったと言ったが、その内容については《暴動の長、ラクドス》が公開されるまで説明できないと言った通りだ。そして、ついに《暴動の長、ラクドス》が公開されたので、『痛み投げ』について語ろう。

 ラクドスは痛み投げ能力を持っていない。彼は痛み投げ能力を他のクリーチャーに与えるのだ。痛み投げ能力は、そのターンにそのコントローラーが対戦相手にダメージを与えた分だけ呪文を軽くするというものだ。これはあまりにもゲームプレイをゆがめ、痛み投げデッキでしか使い物にならないカードを大量に作らなければならなくなる。また、いわば「富める者はますます富む」メカニズムであり、助けを必要としないプレイヤーを助けるような傾向にある。

 このメカニズムは非常にラクドスのフレイバーにふさわしいと考えたが、そのいらつかせようは並大抵のものでは無かったので他のメカニズムを探すことになった。そこで、解鎖の記事で示したとおり、ラクドスにも何か違うものを探さなければならないという圧力があったのだ。

 最終的に痛み投げ能力をラクドスに持たせられたのは幸いだと思っている。ギルドのメカニズムとしてはふさわしくなくても、ラクドスのプレイヤーにはこれを味わってもらいたいと思っていたからだ。また、この能力を持っているのは《暴動の長、ラクドス》なので、このメカニズムを使うにはそれだけの準備が必要となることは保証されているのだ。

Rootborn Defenses

 ある日、あるプレイヤーが地元の店に行き、マジック2013のパックを買った。その中には、《根生まれの防衛》が入っていた。マジックのブースター・パックには通常10枚のコモンが入っているが、それらのコモンは次の未発売のセットからのものであることはまずない!

 彼はインターネットにそのニュースを載せた。信じられないという声が多かった。誰もが抱いた疑問は、「一体どうしてそんなことが起こるのか」だった。最終的に、彼はウィザーズに連絡し、我々はそのカードを送ってもらって何が起こったのかを調べようとした。調査の後、そのカードに(デザインした)エリック・ラウアーのサインを入れ、ラヴニカへの回帰のデザイン・チームやデベロップ・チーム全員のサインを入れたセレズニアのバナーを付けて送り返したのだった。

 さて、こんなことが起こった理由は? 私の想像だが、我々は多くのカードを印刷している。従って、印刷が続けざまになることもよくある。あるマジックの商品を印刷したプリンターが、終わった直後に別のマジックの商品を印刷する準備を始めるということもあるのだ。問題のプリンターは、おそらくだが、マジック2013の印刷した後、他のプロジェクトに回っていたのだろう。そして、どこかの時点で、ラヴニカへの回帰のテスト版を印刷した直後に再びマジック2013の印刷に回ったのではないかと考えられる。

 印刷終了後、プリンターの排出口を綺麗にする(印刷されたカードをしばらく休ませる)。稀に、プリンターにあったカードが見失われる。しばしば、注文順に作られることもあるし、同じ商品の重版であることもあるので誰も気付かないのだ。マジック2013の重版が終わったとき、見失われていたカードも一緒に束ねられ、新しい印刷と一緒にパッケージに入った。

 これが(多分)数ヶ月早く、マジック2013のブースターにラヴニカへの回帰のカードが入った理由だろう。

Slime Molding

 私のお気に入りのことの一つは、単体で見ても完璧で、それがセットの中では巧く働くようなカードをデザインすることだ。《スライム成形》には私のデザイン上好きなことを詰め込んでいる。ウーズだし、クリーチャー・トークンを作るし、サイズも自在だ。

 そのどれも、どんなセットでも巧く働く。私がこれをラヴニカへの回帰に入れたい理由は、これとセレズニアのギルド能力である居住の相性の良さにある。前々回、居住のデザインがトリッキーだったと言ったのは、トークン作成効果という前提が必要だからであった。

 《スライム成形》の個人的な目標は、セレズニアに巨大クリーチャーを作る手段を与えることだった。《守護者の木立ち》で8/8が作れるが、8/8では足りないこともある(8で充分だ/Eight is Enough、というコメディもあるがね)。《スライム成形》なら、望む限りの巨大クリーチャーを作ることができるのだ(土地を増やすのは緑のお家芸だ)。

 単純なことなので、こんなに単純なカードで達成できた。どうだい!

Stab Wound

 デザインの再考の楽しみの一つに、プレイヤーがよく使っている効果の別の使わせ方を探すというものがある。《刺し傷》はまさにそれだ。どのセットにも弱体化効果、つまりクリーチャーのパワーとタフネスにマイナスの修整を与えるオーラは存在する。通常、それは小型クリーチャー相手の除去呪文として使われるものだ。

 《刺し傷》は、この基本的な考え方を否定する。−2/−2の修整を与えるオーラだが、そのクリーチャーを殺したくなくするのだ。もちろん小型クリーチャーを殺すこともできる、できるが、これを使えば厄介な相手を無力化し、その上で対戦相手を延々傷つけられるのだ。

 デザイナーとして、私は《刺し傷》のようなカードが好きだ。プレイヤーとして、諸君にも好きになってもらいたいものだ。

    信じらヴニカ

 今日のコラムはここまで。ラヴニカへの回帰のカードをつらつらと見てきたが、楽しんでもらえたなら幸いである。実際にカードを手にとって、諸君にもこうして楽しんでもらいたい。

 それではまた次回、もっとも柔らかなギルドを再訪する日にお会いしよう。

 その日まで、多くのマジックのカードにあなたのための物語がありますように。


Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

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