伝来の軍勢

更新日 Making Magic on 2014年 1月 29日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

原文を読む

 『神々の軍勢』プレビュー第2週にようこそ。先週は、このセットのデザイン・チームと主要なメカニズム要素を紹介させてもらった。今回は、新しく加わった要素を取り上げ、それがなぜどのようにして作られたのかについて語ろうと思う。もちろん、今回も新しいプレビュー・カードを準備している。用意はいいかね? それでは始めよう。

貢納


 2週前、マジックのデザインの新しいステージ、先行デザインについて説明した。先行デザインとは、つまりデザイン・チームを組織する前からデザインを始めるというものである。カード・ファイルではなく、より大きな画に集中して、ブロック全体がどうなるのかを検討することができるのだ。

 ここで先行デザインの話をするのは、貢納が『神々の軍勢』デザイン・チームではなく先行デザイン・チームの手によって作られたものだからである。その成り行きについて説明しよう。先行デザインの記事でも書いたとおり、先行デザインは(第2回グレート・デザイナー・サーチの上位2名である)イーサン・フライシャー/Ethan Fleischerとショーン・メイン/Shawn Mainの技術を確かめるための実験として始まった。他の作業の邪魔をせずに自由に振る舞えるよう、私は彼らに『Huey』ブロック(2014年秋の大型セット)を割り当てたのだ。

 予想以上にうまく進んだので、私はもう少し実験を重ねることにした。その時点では、私は『テーロス』のデザインに取り組んでおり、いつもと同じ問題に頭を抱えていた。つまり、セットをまとめるのに忙しくてブロック全体を見る時間が足りなかったのだ。『Huey』ブロックで見事な成果を見せたチームに、『テーロス』ブロックのブロック・デザインをさせたらどうなるだろう?

 イーサンとショーンはすぐにデザイナーの人手不足に気づき、他のデザイナー(ケン・ネーグル/Ken Nagleとダン・エモンズ/Dan Emmons)やデザインをしたいデベロッパー(ビリー・モレノ/Billy Moreno)に声をかけた。私は、『テーロス』で何をするのかを説明し、ブロックの展望について語ったのだ。

 話題の1つはクリーチャー・エンチャントだった。元々の企画では、『テーロス』では5柱の神々を登場させ、ブロックが進むにつれて数がどんどん増えていくというものだった。私はチームに、クリーチャーらしくまたエンチャントらしいという条件を満たすクリーチャー・エンチャントの可能性について尋ねた。そして、授与メカニズムが生まれたのだった。

ニクス生まれの盾の仲間》 アート:Eric Deschamps

 ビリー・モレノのオーラでもあるクリーチャーというアイデアは、チームによってわずかに調整され、授与となった(この時点ではどちらで唱えてもコストが同じだった。オーラとして唱えたときに違うコストを持つという構想は、デベロップ段階で生まれたものである)。最初、授与は『神々の軍勢』での新メカニズムとして投入される予定だったが、『テーロス』のプレビュー記事でも書いたとおり、後に『テーロス』のデザイン上の構造的問題を解決するために授与は1セット早く世に出ることになったのだ。

 授与の成功を踏まえて、私はこのチームに新たな任務を与えた。私が「メカニズムの変遷」と呼んでいる問題を解決しなければならなかったのだ。ブロックは、まず大型セットから始まり、平均で4つか5つのメカニズムが使われる。その後、小型セットが作られ、最低でも1つ、普通は2つの新しいメカニズムが導入される。そして、3つめの小型セットのあるブロックでは(3つ目のセットが大型の場合、ドラフトはそれだけで行われ、この第3セットだけでプレイされることになる)、さらに最低もう1つ、大抵は2つの新しいメカニズムが必要となるのだ。

 メカニズムの変遷とは、もしこの全てのメカニズムをブロック全体で使った場合、最後のセットは小型セットであるにもかかわらず最大9つものメカニズムを扱わなければならないということである(『ドラゴンの迷路』はなお酷く、10個のメカニズムを扱わなければならなかった)。これは少しばかり多すぎるので、メカニズムを発展させるということにした。ほとんどの場合は、ブロックの中心でありデザインのメカニズム的中核となるメカニズムが発展するのだ。そうでないこともあるが。

 諦めるべきメカニズムがあるとしたら、それはどれだろうか? 授与はデザインの数学的問題を解決するものなので、残さなければならない。英雄的はリミテッドの主軸であり、デザイン空間にも余裕がある。つまり、選択肢は2つ、信心と怪物化だ。占術はデベロップの途中で加えられたので、ここでは存在していない。信心はフレイバー上重要な役割を果たしており、神々はこれからあと10柱追加されるので、信心も残す必要がある。あとは怪物化だ。

 私は怪物化が気に入っていて、デザイン空間も残されているが、怪物を表すメカニズムにはまだまだ選択肢がある。そこで、『神々の軍勢』ではまた異なったメカニズムで怪物を表すことにした。チームに与えた任務は、この新しいメカニズムを探すことだった。

 私の条件は次の通り。

  • 怪物を表すメカニズムであること。つまり大きさや形状が怪物であるカードに相応しい、クリーチャー・メカニズムであること。
  • 怪物化とは異なる雰囲気を持つこと。メカニズムを入れ替えるなら、その入れ替えに説得力があるように大きく変わったという感覚を与える必要がある。
  • +1/+1カウンターを使うこと。これについては『ニクスへの旅』まで説明できないが、ブロック計画上の構想がある(この構想はまだ結実していないが、私は結実すると信じている。これについては『ニクスへの旅』のプレビュー期間にお話ししよう)。

 これらの条件で、チームは検討を始めた。新しいメカニズムの基本的な構想は、今回もビリー・モレノが提示したと思う。それは貢納と呼ばれていて(そう、名前はずっと同じだったのだ)、先行企画チームが何度も練り直した結果、『神々の軍勢』に入ったのとかなり近いものが仕上がった。

 チームはそれを週例ミーティングの際に提出してきた。私はそれを気に入り、そして『神々の軍勢』に入れることにした。『神々の軍勢』の作業が始まると、私はリード・デザイナーのケン・ネーグルのところに行き、そして先行企画チームの成果について説明した。その工程の多くの期間ケンも先行企画チームに所属していたので、この打ち合わせはとても単純なものだった。その後私はケンに、これはただの提案であって、デザインの助けにするためのものだと説明した。ケンは先行企画チームが作ったメカニズムやカードを採用してもいいし、しなくてもいいのだ。

 ケンは貢納を気に入り、すぐに採用を決めた。このメカニズムは技術的に作られたものだが(フレイバー的にもふさわしく、プレイして楽しいというのは難しいものだ)、チームは自分たちの気に入る形の貢納カードを作り、そしてプレイしはじめた。カード1枚1枚は変更されることもあったが、メカニズムそのものはデザイン、デベロップの間ずっと順風満帆だったのだ。

神啓


 デザインの問題の1つは、我々が先陣を切っているということである。デザインが何かに取りかかるとき、誰もその対象物について考えたことすらないものだ。従って、我々は本来の担当者が手がけるまで、代わりのものを作らなければならないことがしばしばある。しかし、これはもう過去の話なのだ。我々は手順を改めることができた。先行デザインは開発部内の様々な部署に浸透し、そして開発部全体としてさらにさらに先のことを考えることができるようになった。ただし、これは『テーロス』のデザインが始まった時点ではまだ先の話だ。

 私はかつて、後にクリエイティブ・チームの首席となるブレイディ・ドマーマス/Brady Dommermuthと『テーロス』について語ったことがある。私にはなぜクリーチャー・エンチャントが神々と密接に関わっているのかについてのいいアイデアがあり、ブレイディはその多くを気に入っていた。当時の時点で大体形になっており、ブレイディは、私の物語の大枠を準備しておけば、クリエイティブ・チームは必要になったときにそのまま話を進めることになるだろう、と言ったのだ。

 私が元々作った物語は、闇堕ちしたジェイスが自分の夢のために世界に攻撃してくるというものだった。この夢の構想が重要だったので、それを示すためのメカニズム的な方法を探した。タップ状態のクリーチャーは休んでおり、夢を見ることができるのだ。我々は様々な呪文を作った。例えば、フレイバー的に眠りを意味する呪文は、クリーチャーをタップしてそのまま封じてしまうというものだった。

 そして、私の本来の話の中で、その世界の存在は後に攻撃することができるクリーチャーを夢見る方法が必要になった。タップを睡眠になぞらえているので、クリーチャーがタップ状態の時にのみ使える起動型能力という発想に行き着いた。クリーチャーのコントローラーが、そのクリーチャーを眠らせ、そしてその後でそのクリーチャーは夢の力に目覚めるのだ。

 これは、クリエイティブ・チームが参加してストーリーをきちんと磨き上げることが前提のたたき台だということに留意して欲しい。無駄なことをしているわけではなく、ちゃんと全部繋がっているから信じてくれたまえ。

 さて、ケンが『神々の軍勢』に取りかかるにあたって、私は彼に「夢」メカニズムを手渡した。チームはそれを使ったカードを作り上げた。そして我々が最初に気付いたのは、タップの制限なしの能力は、プレイヤーが望めば何度でも使えるということだ。それを防ぐために、その能力を使うのにそのクリーチャーをアンタップする必要があるようにしてみた。

絹縛りのフェアリー
光らせの子

 その結果、我々はアンタップ・シンボルを使わずに アンタップ・シンボルを持つ能力を作っているだけだということに思い至った。よく知らない諸君のために説明すると、アンタップ・シンボルとは、『シャドウムーア』ブロックで使われていたメカニズムで、クリーチャーをアンタップすることをコストとするものだった。この能力は一見充分単純に見えるが、多くのプレイヤーにとって難しすぎるということは証明されていた。


 加えて、アンタップはしばしば有利な副次効果であり、その能力は効果を求めてではなくアンタップするために使われることがよくあったのだ。さらに、タップの制限は、その能力が攻撃クリーチャーによって使われることが多いということにもなった。攻撃に伴うメカニズムを作るつもりではなかったので、製作意図と大きく反するプレイスタイルを生んでいたのだ。

 メカニズムが違う形の効果を生むのは悪いことではないし、それでそのメカニズムに新しい改革が生まれることもある。しかし、時には、神啓のように、メカニズムが望まない方向に変遷してしまうこともあるのだ。

 何が必要なのかと考えて行き着いたのは、こんな結論だった。クリーチャーをタップさせてそのターンの間生き延びさせれば、自分の次のターンの開始時に有利な結果が生まれることになる。ここでチームは、この能力の誘発条件に気がついた。つまり、クリーチャーがアンタップ状態になったときに誘発すればいい。ほんの数回のプレイテストを経て、これこそが必要なものだったとわかったのだった。

 一方、私はもう一つ別の問題に取り組んでいた。何がクリーチャー・エンチャントとして相応しいのかという議論はずっと繰り広げられていた。私は、クリーチャー・エンチャントはエンチャントとクリーチャーの両方の要素を持たなければならないと強く感じていた。では、バニラのクリーチャー・エンチャントを戦場に出す方法はないだろうか? しばらく考えて、私は1つの妥協案にたどり着いた。トークン・クリーチャーなら、バニラのクリーチャー・エンチャントになれるんじゃないか?

 我々はいつでも、トークンを可能な限り単純なものにしようとしている。エンチャントであるということそのものが充分な付け足しの情報なので、私はバニラのクリーチャー・エンチャント・トークンの存在を認めることにした。神啓はこの能力を使うのに相応しい場所に思えた。非常に気に入ったので、我々は神啓によってバニラ・クリーチャー・エンチャント・トークンを作るクリーチャーのサイクルを作ることにしたのだった。

 神啓は、まったく違う形で始まったのにも関わらずデザイン上の重要な役割を果たすようになったメカニズムの好例と言える。

クリーチャー・全体エンチャント

 『未来予知』のこのカードを覚えているだろうか?

輝く透光

 これは、私が初めて試みたクリーチャー・エンチャントであった。私がデザインしたときは、全体エンチャントの効果を持っていたのだが、あまりにも複雑だったためデベロップ中に取り除かれてしまった。『未来予知』を少しでも単純にしなければならないということには私も同意した(余談だが、この観点では完全に失敗していた)。私は、全体エンチャントの効果を取り除いたことで《輝く透光》は台無しになったと感じていた。私がこの議論に敗れたのは明らかだったが、『テーロス』ブロックでは同じ過ちを繰り返すまいと思ったのだ。

 つまるところ、クリーチャー・全体エンチャントは、『テーロス』のデザインが始まった時点で私が作りたかったクリーチャー・エンチャントなのだ。興味深いことに、私は『テーロス』では導入しないように言った。なぜなら、クリーチャー・エンチャントの導入を出し惜しみしたかったからである。神々はクリーチャー・エンチャントだが、人々はおそらく、ただの、奇妙な神々だと捉えることだろう。『神々の軍勢』の大サプライズは、神でない普通のクリーチャー・エンチャントの導入になる予定だったのだ。

 後に授与を『テーロス』に前倒しにすることになり、クリーチャー・全体エンチャントは『神々の軍勢』のために温存されることになった。さらに、クリーチャー・全体エンチャントのデザイン空間を温存できるよう、デベロップは『テーロス』に残されていた数枚のクリーチャー・全体エンチャントを取り除いた。

 さて、おしゃべりはこれくらいにして、成果の一例をお見せしよう。今日のプレビュー・カードはクリーチャー・全体エンチャントだ。それでは、《迷宮の霊魂》をご覧あれ。


 クリーチャー・全体エンチャントに関する最大の議論は、通常のクリーチャーも全体エンチャント的な効果を持つことができるということだった。違いをどうやって出せばいいのか? 私の答えは、エンチャント性の有利さを示す方法がある、というものだった。また、クリーチャー・エンチャントはクリーチャー除去でもエンチャント除去でも破壊されるので、デベロップはこれらを少し強化することができた。

 これから諸君も目にする通り、『神々の軍勢』で、それらのクリーチャーはよりエンチャントらしく感じられるようにしている。中には、1つではなく、フレイバー的あるいはシナジー的に関連する2つの全体効果を持つものもあるのだ。

自由な軍勢

 本日はここまで。是非、諸君のこの新セットの印象を聞かせて欲しい。このセットに関する賛否のフィードバックを、メール、掲示板、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+)で聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、カードごとの物語を紡ぐ日にお会いしよう。

 その日まで、あなたの夢があなたによいものを運んできますように。


(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

最新Making Magic記事

MAKING MAGIC

2020年 7月 25日

セット・ブースター by, Mark Rosewater

今日は、『ゼンディカーの夜明け』で初登場するもの、新型ブースターについて語っていく。それが、今回のタイトルにもなっている、セット・ブースターと呼ばれるものである。今日の記事ではそれについて話そう。 詳しい話に入る前に、少し伝えておきたいことがある。これは、我々がマジックに新しく導入するものだ。何もなくなるわけではなく、現在の製品は何ひとつ変わらないままである。これまでの...

記事を読む

MAKING MAGIC

2019年 9月 24日

プロジェクト・ブースター・ファン by, Mark Rosewater

(編訳注 7/24:一部の用語を修正いたしました。「枠なしプレインズウォーカー」→「拡張アート版プレインズウォーカー」)  私が、誰もが話題にするようなマジックについての新情報がたっぷり詰まった記事を時々書いていることにお気づきだろうか。今日の記事は、そういった記事の中の1本だ。これからさまざまな情報を話していくので、まずはこの記事で何を語るかについて説明することにしよ...

記事を読む

記事

記事

Making Magic Archive

過去の記事をお探しの場合 アーカイブのページをご覧ください。人気の著者による、数千にわたるマジックの記事が残されています。

一覧を見る