制度変更、今年と今後と

更新日 Making Magic on 2013年 5月 2日

By 中村 修平

編集よりお知らせ

 本記事は、さきに発表いたしました「2013~14年シーズンのプレミア・プレイの概要」に関する内容です。
 世界のイベントを旅し、その成績により生計を立てるプロプレイヤーとしてのライフスタイルを紹介するという本記事の趣旨に則り、著者の個人的な見解と感想を掲載いたします。

 やってしまいました。
 この連載を読んでいただいてる方なら薄々お気づきかとは思いますが、どちらかと問われれば、間違い無く粗忽者気質。なかなかに認めたくはないですが、年に1度くらいは必ず何かしらやらかしてしまう自信?、何か日本語が大幅に違う気がしますね。確信と言った方が良いのでしょうか、そのようなものすら残念ながらあります。
 一方で、帳尻合わせも割と得意な気がしないでもないですが...

 でも、注意していれば何も問題は無かったところに、多大な労力を払って無理やり元の軌道に乗せていると言い換えれば、これもまたなんだかむなしい限り、
 効率という点では恐ろしく割に合いません。

 なぜあの時、グランプリ・ピッツバーグで、
 せめて合意の上引き分けを選択してプロポイント2点を取りに行かなかったのだろう...

今年、「トップ16」の舞台へ上がるために

/

 

 事の発端は、グランプリ後にアメリカで休暇中に、ツイッター上にてウィザーズの偉い人に世界選手権個人戦の招待基準を聞いてみたところからです。
 もらった返答は予想と全く違うものでした。

 参考までに昨年の招待基準を箇条書きしてみると、

【昨年のマジック・プレイヤー選手権招待基準】(筆者抜粋)
  • 世界選手権、プロツアー優勝者(4人)
  • プレイヤー・オブ・ザ・イヤー、Magic Online プレイヤー・オブ・ザ・イヤー(2人)
  • 上記のプレイヤーを除く各地域(北アメリカ、南アメリカ、ヨーロッパ、アジア、日本)の最上位プロポイント保持者(5人)
  • 上記を除いた上でのプロポイント上位者(5人)

 ちなみにプロポイント上位と書いておきながら同点だった時の規定について全く白紙、想定されていないという、いかにもいつものウィザーズさんといった内容だったのですが、そこについて今年はちゃんと規定が追加されていたことについては評価せざるは得ませんね。私にとってはマイナスの内容でしたが...
 それはおいおい話すとして、とりあえずもらった返答はこんなものでした。

『あらゆる繰り下がりはプロポイント上位枠を除いて、ない。』

 これだけでは何がなんだかさっぱりわかりませんね。
 私もこの時点でかなり嫌な予感はしましたが、もうちょっと詳しく説明して欲しいとツイートしてみると、こんな回答がやってきました。

『詳しくは既に発表されているプレミアイベント招待ポリシーを見てね』

 なるほど、既に発表されていたのか。
 そのことについて知らなかった人が当事者を含めても大多数だったのですが、それならばそれを見てみようと行ってみると。

【2013年のマジック:ザ・ギャザリング世界選手権の招待基準】(マジック:ザ・ギャザリング・プレミア・イベント招待ポリシーより)

  • 2012年マジック:ザ・ギャザリング・プレイヤー選手権優勝者
  • 2012-2013年最優秀選手賞受賞者
  • 2012年マジック・オンライン王者
  • 2013年マジック:ザ・ギャザリング世界選手権直前の3つのプロツアーの優勝者
  • 2012-2013年プロ・ポイント・シーズン終了時の各地域(アジア太平洋、ヨーロッパ、日本、中南米、北米)におけるプロ・ポイント最上位プレイヤー。2人以上のプレイヤーが同点だった場合、以下のタイブレーカーに従う。
  • 2012-2013年プロ・ポイント・シーズン内のプロツアーでトップ8に多く入賞している
  • 2012-2013年プロ・ポイント・シーズン内のグランプリでトップ8に多く入賞している
  • 2012-2013年プロ・ポイント・シーズン内のプロツアーでの最高成績が高い
  • 2013年年間ポイント・シーズン終了時の年間ポイントが高い
  • 上記の基準に当てはまらないプレイヤーのうち、2013年プロ・ポイント・シーズン終了時の全世界におけるプロ・ポイント最上位プレイヤーを、招待選手が合計16人になるまで。2人以上のプレイヤーが同点だった場合、上記のタイブレーカーに従う。

【現在のプロポイント順位】

順位 氏名 所属国 プロポイント
1 渡辺 雄也 日本 62
2 Ben Stark アメリカ 56
3 Josh Utter-Leyton アメリカ 53
4 Tom Martell アメリカ 52
5 Eric Froehlich アメリカ 50
5 Shahar Shenhar イスラエル 50
7 Willy Edel ブラジル 49
7 David Ochoa アメリカ 49
9 Stanislav Cifka チェコ 48
9 中村 修平 日本 48
11 Owen Turtenwald アメリカ 45
12 Martin Juza チェコ 44
12 Brian Kibler アメリカ 44
14 Tzu-Ching Kuo 台湾 39
14 Shi Tian Lee 香港 39
16 Gerry Thompson アメリカ 38
17 Reid Duke アメリカ 37
17 Conley Woods アメリカ 37
19 Samuele Estratti イタリア 35
20 Joel Larsson スウェーデン 34
21 Jon Stern カナダ 33
22 Ivan Floch スロバキア 32
22 Luis Scott-Vargas アメリカ 32
24 Christian Calcano アメリカ 31
24 Kelvin Chew シンガポール 31
24 Matthew Costa アメリカ 31
24 八十岡 翔太 日本 31

Player of the Year Standings: 2012-13 より、2013年4月25日現在)

旧基準の立ち位置だと

 現時点で私のプロポイント数は48点。
 地域別枠で渡辺雄也に続く2位で、彼が世界選手権王者の資格で既に招待権を持っているので繰り下がりで権利獲得。
 私のプロツアー「ドラゴンの迷路」の順位次第ですが、3位のヤソ、八十岡翔太がプロツアー「ドラゴンの迷路」で優勝以外のトップ8入賞をした場合のみ逆転されるという条件。
 もしそれが取れないにしても、プロポイント上位枠でジョシュ・ウッター=レイトン、エリック・フローレッシュ、ディビット・オチョアに続く4位で、後ろに2人分余裕があるという状況でした。

現在の基準では

 しかし、地域別の繰り下がりがないとすると、プロポイント上位枠7人中現在4位という状況になってしまっていたのです。
 ボーダーからのリードはわずかに3~4点。
 しかもブライアン・キブラー、オーウェン・ターテンヴァルド、マーティン・ジュザといった手練達に加え、去年の傾向から考えるとプロツアー「ドラゴンの迷路」の上位入賞者が1~2人、この枠に入ってきます。

 そして私の今期プロツアー最高順位は、プロツアー「ギルド門侵犯」での100位。
 捲られたら=私のプロツアー「ドラゴンの迷路」の成績が振るわないという仮定なので、同点規定は不利にしか働きません。
 つまり他のプレイヤーより1点多く獲得していておかないといけないのです。

 今年は余裕があると思っていたのに全然そんなことなかった、
 むしろ1点でも欲しい状況だったという。

 まあ、いくら悔やんでもなってしまったものは仕方はありません。
 ということで、今回もいつものように最後で帳尻合わせすることに労力を傾けようと思っていたところにそれ以上の激震がやってきました。

 掛け値無しに、私のライフスタイルに突然の終わりを告げられてしまったのです。

来年度のプロ・プレイヤーズ・クラブ規定

 2013~14年シーズンのプレミア・プレイの概要

 薄々は解ってました。
 あのウィザーズ・オブ・ザ・コーストさんがプロツアーをタダで増やしてくれるだなんて大盤振る舞いをするはずはないとは。
 間違いなくプロレベル、特に最高レベルであるプラチナ・レベルへのポイント基準は5点は上がると思ってましたし、事実そうなりました。

 継続参戦ができるゴールド・レベルへの処遇についてもだいたいは予測の範疇。
 年に30点というのはかなり厳しいハードルです。それを35点にするのであれば、下位にあたるシルバー・レベルにプロツアーの招待権を付与しなければプロツアー参加からの継続プロツアー参戦という道筋に合理性がなくなってしまいます。

 いささか必要点数は増えましたが、実質的にはゴールドはかつてあった8段階のプロレベルにおけるレベル6のダウングレード版、シルバーはレベル3に相当し、プラチナはレベル8と見立てると、かつてのレベルシステムに完全に回帰したという言い方もできますね。
 そういえば、半年かけて夏に移動した世界選手権も再び冬の12月へと戻りました。

グランプリについて、これから

 ところがそれ以外の要素、特にグランプリについての各種変更は予想外過ぎました。

  • 初日9回戦、2日目6回戦へと固定。それに伴う救済規定
  • 不戦勝規定を見直し
  • グランプリに年5回までのキャップ制を導入(編注:「プレイヤーの年間プロ・ポイント合計に加えられるのは、グランプリの中で成績がよかった5つだけ」の制度を指します。以下、本文中では同様です)

 皮肉にも、全世界規模で盛り上がっているマジック人気によって、その受け皿としてのグランプリが許容量を超えてしまっていることは、兼ねてから問題視されていたことでもありますし、近いうちに手を加えなければならない部分でもありました。
 また、プロポイント復活以降、プロにとってはほとんどその下位互換でしかなかったプレインズウォーカー・ポイントについても、独自性を打ち出すことができました。
 プレインズウォーカー・ポイントを貯めることが3バイへの最も近道、というのはとても理にかなっていると思います。

 グランプリを通して2敗以内であればプロツアーに招待されるという救済規定も、もっともな変更点です。
 1000人程度までを想定して組まれているであろうグランプリのシステムに立ち返ると、これだけ参加者か多ければ、どうしても「2敗で初日を通過して、2日目は全勝したのにプロツアーの参加権すらもらえない」という事態が頻発してしまいます。
 これから先、かなりのグランプリでトップ8のボーダーラインが1敗1分けとなってしまうだろうということを考えれば、これまではそういう最終的に人員の予測をしづらい部分については決定をしなかったウィザーズが珍しく英断をした、という風にすら評価していいかもしれません。
 何よりもこれで週末に日付が変わるまでに初日が終わるかを心配してマジックすることがなくなりました。
 今回の変更についてほとんどのプレイヤー、そして主催者やジャッジといったマジックに関わる人全てにとって良い変化と言えるでしょう。

グランプリとプロポイント、そしてライフスタイル

 ですがグランプリのキャップ制については...

 これについては私は冷静な評価を下すことはできません。
 記事に書かれていることだけで疑問点を出すとすれば、「各プロツアーで平均8点」という部分のまやかしがあります。「8点」というポイントをもらえる順位は存在せず、25位までの「10点」とそれ以降の「6点」に大きな差があるのです。

 また、プラチナ・レベルに到達したプレイヤーを、ちゃんと傾向ごとに「プロツアーでただ1回のトップ8入賞によって1年だけのプラチナ保持」と「継続してプラチナを維持している」に分けたのか、あるいは彼らがグランプリで年何回くらいの入賞をしているかを分析しているのか、などなど、指で数えられないぐらいはすぐに挙げられそうです。

 一つ確実に言えるのは、私がこれまでやってきたライフスタイル、
「グランプリを廻ることでプロポイントを確保する」という方式は終了してしまったということです。

 シーズン途中で5つトップ16を取ってしまうと、後に残されたプロポイントを獲得できるチャンスはトップ8入賞のみ。
 それですらようやく1点の追加、という事態になるのです。
 トップ8でようやく1点。これでは「プロポイントにいくらコストをかけられるか」というテーマそのものが立ち行きません。
 もっと深刻なのは、カウントされる5つ目のグランプリが32位内、プロポイント2点であった場合です。
 1敗1分けがトップ8というところから逆算して、これから16位を狙うならば2敗、あるいは2敗1分けでの成績を収めてようやくの1点追加です。
 金銭以上に、精神的にも肉体的にもとてもやりきれるとは思えません。

 6月のアメリカグランプリ5連戦の予定を既に立ててしまったので、現実としては今回が、これまでのシステム下でやる最後のグランプリ行となるでしょう。

 問題はそれから先のことです。

 果たしてこの新システムにプロプレイヤーとしての私が適応できるか、それこそが私の、いえ私達プロプレイヤーにとっての関心事です。

 かつての私は、どちらかというと好調不調の波が激しく、「トップ8か初日落ち」という両極端の成績が多かったプレイヤーでした。
 それを、自分の求めるライフスタイルに沿って少しずつ安定的な成績へと変えていったのです。

 私としては例年以上に好成績だった今年は、グランプリ優勝2回、トップ16入賞3回で25点。プロツアーで8点、プレイヤー選手権で7点を得ています。
 48点からこれらを差し引いた部分が8点です。

 スラッガーだったのをバッティングフォームを改造して、 求められる役割に応じてのアベレージヒッターに変えたうえで得たのがこの8点であり、私にとって、これから先は失われてしまう8点です。
 そしてグランプリに行かないという選択肢によって失うであろう期待値上での損失もあります。

 それを再びバッティングフォームを改造してスラッガーに戻す。
 たぶんトップ16×5回の15点あたりが現実的に計算可能なところでしょうか。
 残りの35点を4回のプロツアーで得るとすると、平均9点。
 これから先プラチナ・レベルを維持し続けること、私にとってはそれがゴール地点ではなく「16人トーナメント」=世界選手権こそが目標であったのですが、そのためには毎回のプロツアーで25位以内に入り続けなければいけません。

【プロツアーでの獲得プロポイント】

順位 得点
1 30
2 24
3-4 22
5-8 20
9-16 15
17-25 10
26-50 6
51-75 5
76-100 4
101- 3

 これが出来なければ終わり、というのは別に今回に限ったことではありません。
 結果を残さなければどんな努力も意味がないというのは、当然のこと。
 ですが、「できること」と「できないこと」、その間に挟まる「理論上はできること」、それらには大きな開きがあります。

 これまで42.195キロを2時間20分で走れれば可とされていたものが、ラインを2時間10分にされたとしても、もちろん不平不満はあるでしょうが挑戦するでしょうし、実際そうやって生き残ってきました。
 去年から今年に跨ぐ際には給水ポイントでの給水制限までされましたが、それでもこうして来期のことを考えるくらいの余裕はあったのです。
 ですがいきなり100メートルを10秒で走れ、実際に走れる人がいるのだからできるだろう、と言われても、それは無理です。

 キャップ制の導入を自分の記事で提案していたキブラーにしても、あまりの大きな変化に寝耳に水と驚いて抗議しているのは、これがそんな無茶な基準に見えるからです。

 おおよそ全てのプロ・マジックプレイヤーの生活というのは、1年をかけて引き算をし続けるようなものです。
 今週のグランプリは16位だったのでマイナス3点、先々週のプロツアーは2日目には残れたけどそれなりの成績しか残せなかったので5点。
 そうやってこつこつと残りポイントを減らして、最高レベルの待遇に向けて走っているのです。
 例え目標まで残り4点だとしても、プロツアーに参加すれば3点もらえるのだから、君はわずか上乗せ1点で済むじゃないか。ではなく、まだ1点もの上乗せが必要じゃないかと考えてしまうのが私達プロプレイヤーの思考です。

 実際に三原や行弘は、その1点や2点を稼ぐためにプロツアーの調整時間すら削って、前週開催のグランプリ・北京やポートランドへと向かうのです。

 プロツアーへの比重を高めたいというのは理解できますが、プロプレイヤーとしての視点で見ると、集計するグランプリが年にわずか5回というこの変更は、あまりにも厳しく、意欲を削いでしまうもの。
 特にシーズン後半へのグランプリ参加を減退させるだけで、企図された「プロにとって良いもの」のようには思えません。

 私としては、せめてプロツアーごとに1年を4つの期に分けて、各期上位2~3つを集計、というように変更した方が良いと思うのですが、いずれにせよ賽は投げられてしまっています。

 このシステムが果たしてどう作用するのか、
 案外長距離走者でも100mを10秒で走れるかもしれませんしね。

 何よりも私にとってはこれはまだ来シーズンの話、
 目前にはシーズン最後のプロツアー、今シーズンの16人トーナメント、世界選手権を賭けた戦いがあるのです。

 搭乗時間も近づいて来たことですし、今回はここまでにしたいと思います。

 それではまた次回、世界の何処かでお会いしましょう。

成田空港、出発ゲート前にて
中村修平

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