大事なもの探し その2

更新日 Making Magic on 2013年 12月 4日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

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 先週、私の個人的な生活とプロとしての生活とを絡めた「ローズウォーター・ファイル」の中の新記事を始めた。今回は、自分がリーダーを務めたセットでのメカニズムの発見と、妻のローラ/Loraとのなれそめの話を絡めている。いつもの通り、 その1を読んだことを前提にしているので、読んでいない諸君にはまずそちらを読んでくれたまえ。


 私のデートの日に関する欠点についての記事(リンク先は英語)を読んだ諸君は、私が女性について少しばかり無知だということをご存じだろう。ローラと私は6ヶ月毎日話していたのに、父の友人であるドン/Donがローラが私に気があると伝えてくれるまで、ローラが私に惹かれているという可能性に気付かなかったのだ。

 ローラは午後からの夜シフトなので、私は午後によくロビーに立ち寄って挨拶を交わし、少し会話していた。ドンからの情報を踏まえて、私はドンの言っていたことについて意識を向けるようになった。ローラは興味があるのだろうか? 私はあらゆる振る舞いを分析していた。彼女が私の腕に触った。彼女は興味があるようだ。前の晩に起こったことについて言おうとしない。彼女は興味が無いのかも。1ヶ月の間、私は苦労してそれらのサインを読み取ろうとしたが、その結果わかったのは私にはそういう能力がないということだった。

 ところで、デート時代の話をするといつも、タイムマシンに飛び乗って当時の自分を見付け、脳天を殴ってやりたくなる。振り返ってみると、ローラは毎日受付机の上でメガホンを手に「私はあなたが気になってるわ!」と叫んでいるのに、私は「……え、どういうこと?」と呟いているようなものだったのだ。

 何にせよ、1ヶ月後、私はようやく彼女が興味を示してくれる機会だと判断した。彼女の手を取ってどこかに行こうかと尋ねるのだ。映画を調べると、『この森で、天使はバスを降りた/The Spitfire Grill』という映画が公開されていた。いかにもデート向けだ。よしよし。私は彼女に映画に行こうかと尋ねたのだった。

 デートに誘った以外の何物だろうか? 私はデートとは言わなかった。ただ映画に行くだけだ。とはいえ間違いなくデートだ。デートという要素はあった。彼女が私に気があるなら、彼女はそう示してくれるだろう。よしよし。私は計画を実行に移した。

 彼女が金曜日シフトに入った直後に、私は受付に立ち寄った。土曜日は彼女の休みなので、映画に行けるということはわかっていた。いつものとおり軽く会話を交わし、そして、私は――怖じ気づいた。私はほとんどの場合において自信家だが、デートというものは私のアキレス腱だった。高校時代にデートをしたことはない(しようとはしたんだ、それについてはデートの日の記事を読んでくれ)し、大学時代にも1人だけ(何人もの女性とデートをしようとはしたよ。うん。これも記事に書いた)。気のある女の子に尋ねることは、それだけ恐いことだったのだ。

 ところで、上で私はローラが私に気があるかどうかを知るための方法について語ったが、私がローラに気があることに気付いた方法については語っていなかった。ドンが教えてくれたとき、私は自分がローラに惹かれているとは気付いていなかったのだ。デート時代、怯えたことに対しては関係を壊さないようにすることが必要だと思っていた。失敗してもいいように、わざと大穴を狙っていたのだ。もちろん、失敗した。大穴狙いなのだから、当たるわけがない。

 ローラが私に気があるということを知って、私は自分が彼女のことを好きかどうかを考えることになった。映画の中の話なら、ローラと私が興味を示すシーンでBGMが変わるところだ。私達は話し、笑い、ともにゲームをしていた。そして私は気付いたのだ。「ああっ……私は、彼女が好きなんだ!」


 数時間後、私はもう一度彼女の席に舞い戻った。1日の間に何回か立ち寄るのはよくあることで、別に珍しいことではない。私は自分に檄を飛ばし、そして覚悟を決めた。その時のやりとりはこんなものだった。

:やあ、ああ、今夜「この森で、天使はバスを降りた」って映画が封切りになるんだけど。
ローラ:ええ、それは知ってるわ。
:明日の夜、見に行こうかと思ってるんだ。
ローラ:面白かったら教えてちょうだい。
:明日、一緒に来たいんじゃないかと思って。
ローラ:映画を見に?
:うん、映画を見に。興味ある?
ローラ:ないわ。


 第3セットを作るに関しては多くの問題がある。まず、それまで8ヶ月ほどにわたって続いてきたことを続けなければならない。ブロックの流れを守り、その一方で飽きが来ないように充分な新しいものを入れなければならない。また、ブロック・デザインが始まるまでは、思いついたアイデアが次々に使われてしまっていたために第3セットではそれほど残っていないことがあった。デザイン空間はかなり掘られてしまっていたのだ。

 『フィフス・ドーン』では、それ以上に問題があった。『ミラディン』と『ダークスティール』は、ぶっ壊していたのだ。『ミラディン』ブロックの第3セットが登場するまで、なにもかもが規格外だった。親和(アーティファクト)カードを作っていたが、それを強くするわけにはいかなかった。装備品を作っていたが、これも強すぎるものにはしたくなかった(そんな制約の中でも《頭蓋囲い》はキツかった)。双呪呪文はよかったが、それのデザイン空間はほとんど使い切っていた。開発部は刻印呪文を作らせたくもないと言ったが、私は少なくとも1つは必要だと説得した。それらにもまして、アーティファクトだけを使うデッキをこれ以上推さないようにと言われた。「アーティファクト・テーマ」のブロックだったが、「アーティファクト・テーマに寄りすぎないように」というメモが残されているほどだ。

 『フィフス・ドーン』の初期のデザインは会議ではなくメールで行われた。なぜなら、メンバーの1人はウィザーズの社員ではなかった(後には社員になった)し、シアトルに住んでもいなかったからである。最初のメールで、私は、ミラディンの金属世界とアーティファクト・ブロックという性質を守って、かつ『ミラディン』や『ダークスティール』の繰り返しにならない方法を探さなければならない、と書いている。

 当時、アーロン・フォーサイス/Aaron Forsythe(当時はウェブサイトの管理をしていた)がある構想を持って奈落を訪れたのを覚えている。「もし、『フィフス・ドーン』が色を扱うとしたら?」 彼はそう言ったのだ。マジックのデザインを何年もやってきて、私は、一見狂ったようなことを誰かに言われたときの正しい対応を学んでいた。つまり、「もっと詳しく言ってくれ」。

 大問題を解決するための鍵は、大構想に基づく大変化だ。何もかもが巧く行くというわけではないが、乱暴なことを試した結果新しく魅力的なデザインの世界にたどり着くことはよくあることだ。アーロンの投げかけは単純だった。唱えるのに使った色マナを考慮するアーティファクトを作ったらどうなるか? より多ければ、より強くなるのだ。『ミラディン』の問題点は、強いアーティファクト全てが同じデッキに入ったので、誰もが同じデッキを使う結果になったということだった。アーロンはその逆にする方法を考えたのだ。無色を推奨するのではなく、5色を推奨するというわけだ。

 この構想は烈日に繋がり、そしてデザインのバックボーンになった。興味深いことに、『ミラディン』と『ダークスティール』での失敗によって追い詰められていなかったらこの成果は得られなかっただろう。


 私はこの拒絶を非常に重く受け止めた。考えに考えた末、私は、きっと私に気があるに違いないと確信していた相手のことが好きだということ、そしてそれが間違っているという結論に達した。女性に拒絶されたことは何度もあるが、これはその中でも一番の衝撃だった。今回は大穴狙いではなかったからだ。絶対に巧く行くと思っていた相手にアタックし、そして失敗したのだ。

 拒絶されたときに狙いを変える人もいるが、私はローラとの交際を心から楽しんでいたし、それに私達はただ仕事だけでなく社内のスポーツ・チームにも所属していた。ソフトボールとバレーボールだ。何週間か過ぎていくうちに、私はあることに気がついた。何も変わっていない。私は根本的に関係を変えてしまうようなことをしでかしたと思っていたが、ローラは気付いてすらいないようだった。

 私はローラに聞いてみた。まあ、聞いてみた感じだ。直接ではなかったかもしれないが、いや、うん、私は間抜けだった。彼女は、私がまあ尋ねたとは思っていなかったかもしれない。私には調査が必要だった。ある日、私は映画の話をした。ローラはその感想を尋ねてきた。私は、まあ悪くはなかったけど褒め立てるようなところもなかったと答えた。彼女の予想通りで、彼女はそういう恋愛ものの映画には興味が無かったのだ。

 キキッ(突然レコードが止まる音。レコードを知らない? アナログ時代の音響機器だ)。彼女はその映画に興味が無かったのだ。その映画を見たくなかったのだ。彼女が拒絶したのはその映画だったのだ!


 そのあとすぐに、彼女の誕生日がやってきた。彼女は豚が大好きだったので、彼女に豚の剥製を買っていった。あまり押しつけがましくない、一方で個人的な贈り物を探すのに苦労したが、彼女は気に入ってくれた。今度こそチャンスだ、という気配を感じた私は、次の週、彼女に言ったのだ。開発部で映画を見に行くんだけど、一緒に行かないか? 今度はコメディだ。

 「ええ、喜んで」

 彼女はそう答えたのだった。


 『ラヴニカ』のデザインのメカニズム的な中心を見付けるのにはしばらくの時間がかかったが、やがて、後にクリエイティブ・ディレクターになるブレイディ・ドマーマス/Brady Dommermuthの助けを得て、ギルドを中心にするということに落ち着いた。つまり、各ギルドにもメカニズムが必要だということである。アーロンはディミーアの変形を提案して、それはライブラリーに焦点を当てたこのギルドに相応しいものに思えた。リチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldはボロス向けに召集を提案してきたが、私はそれはセレズニアにより相応しいと彼を説得した。その後、マイク・エリオット/Mike Elliottがボロス向けに光輝を提案してくれたので、あとの残りはゴルガリ(ギルドの色を知らない諸君のために一応言っておくと、黒緑だ)


 黒と緑に共通しているのが墓地だということはわかっていたので、チームは墓地のメカニズムを探すことから始めた。次々と試しては却下していった。5個、10個、20個、40個。やがて私は心配になってきた。目に見えた構想は全て試してきた。他に墓地でできることは何があるだろう?

 状況はどんどん悪化して、私は墓地の他にまで目を向け始めた。黒緑の共通点で墓地以外に使えるものはないだろうか? 問題は、墓地という共通点が理念上あまりに完璧で、そして他のどのギルドも墓地には触れていないということだった。よし、それならより深く掘り進んでみよう、私はそう呟いた。

 脳の働きにおいては、ニューロンの経路が存在する。ある刺激を受けたら、それが同じ刺激であれば同じ経路をたどることが多い。これが、問題解決にあたって同じ答えを得てしまう理由である。問題についてまったく異なる方向から考えてみれば、脳みそは別の経路を使うことになる。疑問に新しい光を当て、脳に別の問題だと思わせるのだ。あるいは他の条件を考えなければならないように新しい条件を加えてもいい。何か脳に別の働きをさせるようなことをするのだ。

 どんなメカニズムが墓地で働くかを考えるのではなく、私はこんな質問に切り替えてみた。「墓地に何かをさせることができるとしたら、私は、何かをさせるために何ができるだろうか?」 墓地を受け身で捉えるのではなく、墓地が何かをすると考えたのだ。墓地が――攻撃できる、ブロックできる。戦場の一部として扱える。手札の一部として扱える。ん? 手札?

 もし、墓地が手札の一部だとしたら? 墓地からカードを唱えるのは既にある。人気もあった。フラッシュバックだ。ああ、それじゃ、墓地が手札にあるのではなく――墓地からカードを引けるというのは? 墓地からカードを引くという能力を持ったパーマネントを考えてみた。壊れてた。

 能力を外部に持たせるのではなく、引かせるカードに持たせるのは? これは前人未踏の話だった。墓地から引けるカード。面白そうだ。プレイテストと修正を経て、発掘メカニズムができあがった。私が元々作った版では、他のドローの代わりにそれを墓地から引けるというだけだった。ライブラリーを削るという追加のコストはデベロップが後に追加したものだ(そして、興味深いことに、そのコストでこのメカニズムは強化されることになったのかもしれない)。


 私はメカニズムについて行き詰まったとき、必ずこの発掘に戻ることにしている。これはブロックでもっとも人気のあるメカニズムになった(ああ、強さのおかげだという部分はかなりある)。私はミケランジェロの、彫刻は大理石の中に埋まっているものが見えるように、そうでない部分を削り取ることだという考え方が好きだ。デザイン空間を探すときは、デザイン空間というのは既に存在していて、そこから邪魔なものを取り去らなければならないのだと私は考えている。


 8人で出かけて、映画を見た。ローラは館内で私の隣に座り、そして私達は楽しい時間を過ごした。映画が終わってから、私はローラに食事をどうするか聞いた、他のメンバーは空腹ではなかったので、ローラと私だけが食事に出かけることになった。その夜は最初はデートではなかったが、いつの間にかデートになっていたのだ。

 その後、食事中に、ローラは話があると言ってきた。彼女には、私がデートを意識しているということが伝わっていたのだ。彼女は私のことを友人として好きだが、今はデートというつもりはない、と言ってきた。実際、お互いに自分の分を支払う、というほうが彼女にとって快適だったのだ。

 この時、私とローラは偶然同じアパートに住んでいた。彼女の住まいと私の住まいはほんの数フロア、ドア数枚離れているだけだったので、食事終了後、私は彼女を車に乗せて帰った。ローラは私の部屋に来ると言ったので、私達は同じ部屋にいることになった。私がこらえがたいキスの衝動に襲われるまで、二人で話をしていたのだ。

 流れとして、まずこの6ヶ月前に起こったことを話そう。先週、ローラと私が最初に友人になったとき、私は開発部で働いていたフリーランスのライターとデートしようとしていたという話をした。最初のデートは巧く行った、少なくとも私はそう思っていた。しかし彼女は私に恋愛感情はないと言ってきた。私と楽しい時間を過ごしたしこれからもそうしたいが、恋愛感情ではないと。私は彼女にかなり惹かれていたので、いつか心変わりしてくれるかも知れないと考えていた。

 その後、2ヶ月ほど経ったある夜、私たちは私の部屋で二人きりだった。私達は一緒に色々と出かけ、そして私は彼女にキスできると感じるようになった。彼女はそういうつもりはないと明言していたが、私はキスすべきだと感じていたのだ。そして、キスをした。結果は最悪、本当に最悪だった。彼女は、私がまだ彼女のことを好きで、そして彼女の言ったことを聞いてすらいなかったと感じたのだ。それで交友関係も終わりになった。

 そして今回、私は女性と二人きりで私の部屋にいる。彼女ははっきりとデートに興味は無いと言った。でも私はキスすべきだと感じていた。私の中ではこんな葛藤があったのだ。

理性:前回失敗しただろう。それは間違いだ。
感情:心の中じゃ正解だってわかってるんだろう?
理性:それは前回もそうだった。そして失敗した。
感情:彼女はお前のことが好きなんだ。本当に好きなんだ。
理性:彼女は優君だ。そこをはき違えるな。
感情:彼女の身体に聞いてみろよ。
理性:聞くべきは彼女の言葉だ。
感情:理性の言うことはわかる。だが心に従うべきときもある。ああ、悪い結果になるかもしれないが、素晴らしい結果が待っているかも知れない。やって見ろよ。

 まあ、感情が勝ったわけだ。そして、私は彼女にキスをした。

 彼女は――私にキスを返してきた。



 『未来予知』は、未来についてのセットだった。カードの一部、いわゆる「ミライシフト」カードは、マジックの未来の可能性からやってきた、それまでに存在しなかった新しい能力を持つカードだった。それ以外のカードも未来についてのセットのカードだが、未来からやってきたカードというわけではなかった。それらは見たことのない新しい能力を持つわけではない、となれば一体どうやって、予想外のことをせずにそれらのカードを未来らしくできるだろうか?

 いくつもの方法が採られた。その方法の中の1つ、『未来予知』のデザインが始まる何年も前に始まったものを紹介しよう。興味深いことに、これは私の妻との話でも重要になる場所、リオ・デ・ジャネイロで始まったのだ。

 第2回のデュエリスト・インビテーショナル(後にマジック・インビテーショナルと改名される)のため、私はリオ・デ・ジャネイロを訪れていた。インビテーショナルは15回戦の総当たりによるイベントで、参加者は16名だった。(香港で開催された最初の年を除いて)毎年、5つの異なったフォーマットを各3回戦ずつおこなっていた。

 紙によるインビテーショナルで毎回おこなっていたのが、デュプリケート・シールドと呼ばれるフォーマットだった。各プレイヤーはそれぞれシールドデッキのプールを受け取る。ここで重要なのは、全員がまったく同じカードプールを手にするということだった。つまり、デッキ作成にあたってはただ最高のデッキを作ればいいのではなく、全員が同じカードプールを手にしているこの環境での最高のデッキを作る必要があった。香港では、デュプリケート・シールドで使われていたカードは全てが実際のマジックのカードだった。

 リオ・デ・ジャネイロでは、私は状況を変化させようとした。実際のマジックのカードに加えて、このイベントのために作られた新しいカードを入れたいと考えたのだ。そのためには、私は首席デザイナーであったジョエル・ミック/Joel Mickの許可を得る必要があった。ジョエルは、通常のマジックのセットで使えないようなカードであれば作ってもいい、と言ってくれたのだ。

 私はこの問題に取り組み、そしてやがて解決した。1つではなく2つ、異なったブロックからのメカニズムを持つカードを作ったのだ。私はそれを「ごちゃ混ぜ」カードと呼んだ。これによって、それまで作り得なかったような形で組み合わせられる新しいカードを作ることができるようになる。当時、メカニズムの再録はあったが、同じブロックから2つというものだった。ジョエルは私の構想を気に入り、そして私はこのイベントのためにカードを作ったのだった。


 時計の針を『未来予知』に戻そう。私は、この問題はジョエルが私に課したものと似ていると感じた。古い道具だけを使って新しいものを作るにはどうすればいいか? 答えは「ごちゃ混ぜ」だ。そう、どのメカニズムも過去に存在したが、未来では組み合わせられる可能性があるのだ。私はかつて解決した問題に立ち戻ることで問題を解決し、現在の問題に適応できる答えを見付けたのだ。


 ローラと私はそれからデートを始めた。ローラはやがて私の思いを理解してくれたが、それでも彼女は恐れていた。前の出会いで酷く傷ついていた彼女は、デートというものをためらっていたのだ。彼女は、私が彼女の口にしないことを読み取ることを喜んでいた。

 私達はお互いに知り合うために充分な時間を費やしていたので、そこからの進展は早かった。最初から一緒に歩んでいたようなものだ。このあたりのことは全て(1996年の)11月の1ヶ月で起こったことだ。クリスマスの数日後に友人が結婚することになって、私は年末が来る前に旧友に会うためロサンゼルスに向かうことにしていた。ローラは実家に帰る余裕がないからクリスマスはシアトルで過ごす予定だということを知って、私は計画を変更して彼女とクリスマスを過ごすことにした。

 私のほうが部屋が広かったので、私達はクリスマス・ツリーを私の部屋に準備したが、私は友人の結婚式のためにすぐに発たねばならなかった。そこでローラと私はそのツリーを彼女の部屋に移し、彼女が年末を楽しめるようにしようとした。彼女の部屋は近かったので、オーナメントをつけたままで運んだ。確か、ツリーのオーナメントが全部壊れてしまって、ローラの部屋に運んだときには大笑いしたものだ。ツリーについていたものが全部壊れていたのだ。このとき、私はローラとの未来がある、初めて気がついたのだと思う。

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 それから5ヶ月後。ある週末、ウェザーライト・サーガの物語に関する仕事をするために友人のマイケル/Michaelと私がウィザーズにやってきていた。マイケルは休憩にしようと言い、そして私達は従業員用のラウンジに向かった。ドアを開けて――なんと! そこにはローラがサプライズ・パーティを準備してくれていた。ただちょっとしたことといううわけではなく、ライブDJや私の友人達を集めてくれていたのだ。

 ここで意識してもらいたいのは、当時、ローラにはお金がなかったということだ。後に知ることだが、このパーティのために、彼女は食事を何ヶ月も切り詰めてお金を貯めていた。この時初めて、私は彼女が私達の関係をどう思っているかを知ったのだ。そしてもう一つ改めて知った、ローラはやっぱり特別だ、と。


 『ローウィン』のデザインを始めた時、デザイン・チームはマジックで出てくる通常の次元よりも危険の少ない世界が欲しいと考えていた。(魔法の戦いを描いたゲームなのだから)散兵は存在するけれども、戦闘に巻き込まれて殺されるような世界よりは安寧な次元だった。私は−1/−1カウンターを使うことを提案した。殺すのではなく、無力化するのだ。

 プレイテストの結果、想像していたのとはまったく違うということがわかった。マジックでは通常、クリーチャーは毎ターンの終わりに回復する。しかし−1/−1カウンターを使うと回復しない。暴力的でないようにするつもりが、通常以上に暴力的になってしまっていたのだ。「うーん、−1/−1カウンターは『シャドウムーア』で使うことにしよう」私は言った。

 『シャドウムーア』のデザインが始まって、−1/−1カウンターを使うということはわかっていた。普段はしないことだが(+1/+1カウンターを使うブロックも−1/−1カウンターを使うブロックもあっていいが、両方を使うブロックは作らないというルールがある)、−1/−1カウンターを使うメカニズムを作りたかった。頑強は、『ローウィン』で−1/−1カウンターを使う予定だった短い期間の間に、『ローウィン』のデザイン・チームのネイト・ヘイス/Nate Heissによって作られていた。いいメカニズムだったので、−1/−1カウンターとともに『シャドウムーア』に移動させた。

 しかし私はもう1つ−1/−1のメカニズムが欲しかった。この難問を解決したのは、こんな質問だった。「−1/−1カウンターで、この世界で何を表したいのか?」 答えは、『シャドウムーア』は『ローウィン』の暗い鏡面だと示すというものだ。『ローウィン』のあらゆるものが普通よりも安全なら、『シャドウムーア』 のあらゆるものは普通よりも危険にしたい。つまり、クリーチャーに与える能力が欲しい。

 萎縮の最初のコンセプトは、卑劣さだった。この能力を持つクリーチャーは汚い戦い方をする。もしそれと戦うなら、何か後遺症が残るのだ。最初は数字がついていて、そのクリーチャーがブロックされると、ブロックしているクリーチャーにダメージを与える代わりにその数の−1/−1カウンターを置くというものだった。萎縮持ちのクリーチャーのダメージが−1/−1カウンターの形で与えられる、という構想を示したのは、マーク・ゴットリーブ/Mark Gottliebだった。


 『シャドウムーア』のメカニズムが『ローウィン』の逆を探すことによって見つかったというのは面白い話だと思う。


 物事はうまく進んでいった。どれほどかというと、私がローラを第2回デュエリスト・インビテーショナルのおこなわれるリオ・デ・ジャネイロに同行させることができたほどだ。自己分析を踏まえて(これについては私の人生観に関する記事のその2(リンク先は英語)を読んでもらいたい)、私はリオでの休暇中にローラに結婚を申し込もうと決めた。イベントの終了後に、観光のために1週間の滞在日程を準備していた。リチャード・ガーフィールドと家族、それにスカッフ・エイリアス/Skaff Eliasも1週間追加で滞在していた。

 私はイベントの準備のため、ローラの数日前に到着していた。ある夜、私は街に出て、プラスチックの指輪を見付けた。私の父は母にプラスチックの指輪を使って結婚を申し込んだので、私もその伝統に倣おうと考えていた。後に、本当の指輪にすることもできる。指輪をポケットに入れて、あとは機会を待つだけだった。何回かの機会はあったが、大勢でいたので、ローラと2人きりの時間が取れる機会はなかった。

 ある日、ローラ、リチャード、スカッフ、それに私は浜辺にいた。スカッフが水着を忘れたと言って、彼とリチャードは水着を買いに向かった。つまり、ローラと私の2人だけだ。私達は海に入った。これ以上ドラマチックな状況はそうないと気付いた私は、ローラに近づき、そして水の中で跪いた。

「幸せ?」

 私はそう尋ねた。

「とっても」

 彼女は答えた。

 私は水着の中からプラスチックの指輪を取りだした。

「結婚してください」

 この話をするとき、私は、ローラがすぐに答えたものだから言い直すことができなかった、と言うことにしている。



 『ゼンディカー』は最初「土地テーマ」ブロックとして始まったので、私は最初の日に、最初にやるべきことは素晴らしい土地のメカニズムを見付けることだ、とチームのメンバーに告げた。我々は2ヶ月、ただ様々な土地のメカニズムを試すことに費やした。土地が持つメカニズムに注目し、土地に関連するメカニズムに注目し、土地を置くことをリソースとして使うメカニズムに注目し、呪文としても使える土地に注目し、クリーチャーである(クリーチャーになる)土地に注目した。思いつく限りあらゆる面を掘り下げたのだ。

 中でもかなり考えたメカニズムが、ターンに1つの土地を出す行動を消費して起動するメカニズムだった。この能力を使ったら、そのターン土地をプレイできないのだ。既に土地をプレイしたターンには、この能力を使うことはできない。『スカージ』の《岩乗り》の能力が本質的にそれである。


 チームはこのメカニズムについて議論し、必要なことと全く逆を向いているということが明らかになった。土地をプレイしないことによって利益を得るのではなく、土地をプレイすることによって利益を得るようにすれば? そうすれば、プレイヤーはカードが示すことをしながら必要な土地を出すことができる。こうして、失敗したメカニズムの逆を探すことで、上陸が生まれたのだった。


 ローラと私は結婚15周年を迎えた(結婚についてはその1(リンク先は英語)、その2(リンク先は英語)で読むことができる)。私達には3人の子供がいて(レイチェル/Rachel、アダム/Adam、サラ/Sarah)、郊外にある夢のお家で住んでいる。まあ、これは「めでたしめでたし」というところだ。

 ローラに求婚したことと様々なデザインとを振り返ってみると、有効なことを探すのは大変だということがわかる。どれにせよ、必要なことを理解すること、そして結果を問わず調査を続ける意志の問題なのだ。機会を掴み、そして信念に任せることも必要だった。しかしその全てを踏まえて、得られた見返りは大きかったのだ。

 2週にわたる話につきあってくれてありがとう。いつも返事を待っているが、こういった個人的コラムに関する返事は本当に楽しみだ。メール、掲示板、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+)でメッセージを送って欲しい。

 それではまた次回、ちょっとした信心を示す日にお会いしよう。

 その日まで、あなたの調査が私のように成功裏に終わりますように。


(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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