引き寄せよう

更新日 Making Magic on 2013年 10月 23日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

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 今回のコラムは面白いことから始まった。まもなく発売される『統率者(2013年版)』のプレビュー・カードを紹介するように提示されて、それについて何を語ろうかと考えていたときに、コラムのネタが浮かんできたのだ。ただし、それは『統率者(2013年版)』とは何の関係もない。そのカードを見ていたら、何年も書こうと思っていたことを思い出したのだ。

 そこで、まずカードを公開して、それから発展させて話を進めていこうと思う。今週と来週は統率者特集なので、『統率者(2013年版)』のデザインについて、そしてそのデザイン・チームについては来週紹介させてもらう。それではさっそくプレビュー・カードをご紹介しよう。

 刮目せよ、これが〈悪意の力〉だ!

 さて、このプレビュー・カードを見て閃いた話題とは何かわかるかね? もっとも基礎となるメカニズム――カードを引くこと、だ。マジックにおいてカードを引くことにどのような意味があるのか、そしてそれをデザインでどう使っているのかについて掘り下げていこう。カラー・ホイールにおいてどこに位置しているのか、そしてそれがデザインにもたらす利点と欠点について語っていく。このコラムを読破した諸君は、カードを引くことについてそれまでと違った視点から見ることがで切るようになっていることだろう。


    引き運

 本質的に、マジックはリソースのゲームであり、最初に持っているリソースは「ライフ」と「カード」の2種類である。ライフは最初に渡されるものだが、カードはゲームを進めているうちに少しずつ渡されていくものである。なぜか? なぜライフは全て一度に渡される一方でカードはそうでないのか? これを理解することが、マジックにおいてカードが果たす役割を掴む上での鍵となるのだ。

#1:カードはマジックの血液だ


 ライフとカードにはそれぞれ異なった役割がある。ライフはゲームの勝利条件なので、それが存在することによってプレイヤーに目的が発生する(目的が必要な理由については「ゲームに必要な10のこと1、2」を参照)。一方、カードはというと、マジックに存在する他のリソースへのアクセス手段である。カードは土地となり、土地はマナを出し、マナはコストとなる。またカードは呪文であり、呪文は目的を達成するための手段である。

 カードがマジックの血液なので、毎ターン何か新しいことが起こるようにするために少しずつ渡されるのだ。ターンの早期にカードを引くのは、その得た情報を使ってそのターンに最大限のことができるようにするためなのである。

#2:選択肢は管理されるべきだ


 しばしば、なぜゲーム開始時の手札が7枚なのかという質問を受けることがある。何年も前、私もそれをリチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldに尋ねたことがあった。リチャードは、決定を無意味にしないように情報を絞った上でゲーム上の有意義な決定を下せるようにする枚数を決めるのは難しいことだ、と答えたのだ。

 選択肢が少ない状態でゲームを始めると、最初の数ターンは決まった手順になってそれからゲームの分岐が始まることになる。7枚というのは、カードゲームの初期手札の枚数としてよくある枚数であり、論理的な数なのだ。リチャードは、それまでに他の枚数も試してみたが、7枚が一番いいと感じたのだという。

 そこから、次の疑問が浮かんだ。なぜマジックでは毎ターン1枚ずつ引くのか? これもリチャードに聞いたことがある。答えは2つだった。1つめが、ほとんどのカードゲームが毎ターンに1枚カードを引くものなので、そうするものだと予想されているから。2つめが、それで与えられるカードの枚数が妥当だと感じるから。初期手札と同じように、複雑になりすぎない中で毎ターン、ゲームに影響を与えるだけの新しいものを手に入れたいものなのだ。

#3:ターンを定義する助けとなる


 私は、人間の脳の働きについて語るのが好きだ。脳は情報を小さく分け、そしてそれを関連づけるものである。その結果、人間は、あらゆる手順が細かくて同質の大量のものに分けられれば満足するのだ。創造のやりかたについて学ぶと、ユーザーを安心させるための構造が存在することを知るだろう。ゲームにおいては、それはターンと呼ばれる。

 カードを引くことは、ターンを定義づけ、各ターンを全体の部分だと感じさせるようにする上で大きな役割を果たす。実際、ゲームを教えるときには、信心プレイヤーは集中すべき秩序であるターンの流れを掴みたがるものだ。ここで重要なのは、ターンの開始時(ああ、ルール上はこの前にいくつか手順は存在する)がカードを引くことだということである。これは1人のターンが終わり、次のプレイヤーのターンが始まるということをはっきりと示す行動なのだ。

#4:絶え間ない驚きの流れを保つ


 コミュニケーション理論についての私のコラムの中で、人々が「安心」と「驚き」と「完成」を求めているということを書いた。これは、ゲームにおいては、プレイヤーは馴染みのあるものを持ち、勝利のための条件を知ること、そして同時に、気付いていない情報が必要だということである(なお、「ゲームに必要な10のこと1、2)」の中でも、「驚き」を挙げている)。

 非公開の情報が存在するようにするための方法として、新しいカードを常時供給し続けるというものがある。これは2つの意味で重要なことだ。1つめに、それによってプレイヤーは新しい選択肢を得、ゲームを別の方向に動かすことができるようになる。2つめに、プレイヤーは何を引くかわかっていないので、次に引くカードを予想しなければならず、ゲーム・プレイが予定調和でなくなり、クールな瞬間が生まれる。

#5:エキサイティングになる


 未知なるものにはあらゆる可能性があり、エキサイティングだ。楽しさを作る(それこそがゲーム・デザイナーの最終的な目標である。ゲームを、プレイする人に楽しめるようにするのだ)上で重要なのは、感情的な高ぶりや落ち込みを導くようにすることだ。カードを引くことは、まさにこれを凝縮したものである。何かが必要で、カードを引くと何か素晴らしいものが来る気がする。そして引ければハッピーだ。引けなかったら同じぐらいに感情が高ぶる。こうして毎ターン、ドラマチックな瞬間が生じるのだ。

    ああカラー・パイ

 さて、カードを引くことがなぜマジックにおいてそれほど重要なのかという説明が終わったところで、カードを引くというメカニズムがどう使われているのかを検討していこう。マジックの中心にあるのはカラー・パイなので、各色がどのようにカードを引くというメカニズムを使っているかを検討するのが最適だろう。

全色

 マジックの根幹だからと、どの色でも使えるようになっているものも存在する。全ての色が使える道具としては、キャントリップと呼ばれるものがある。最初に導入されたのは『Ice Age』のときで(ただしこの時はカードを引くのは次のターンの最初だった)、キャントリップとは呪文効果にカードを引くことを付け加えるものだ。大抵、キャントリップはカードに書くには弱すぎる効果に与えられる付加価値として用いられるが、他にもいろいろな使い道がある。例えば、そのセットで唱えられる呪文を増やしたい、あるいは墓地にカードを増やしたいなどでカードを回転させる方法が欲しい場合などである。キャントリップは、必要に応じて、色や量を問わず使うことができるのだ。


 青から始めるのは、青こそがカードを引く効果の王様だからである。手札とライブラリーは知識の隠喩であり(前者は現在の思考、後者は知識そのものだ)、従ってカードを引くことはまさに青に相応しい。青に与えられているカードを引く効果は、以下のようなものがある。

カードを引く効果: そのままだ。ある枚数のカードをライブラリーから取り、自分の手札に入れること。

カード・フィルタリング: カードを引くことの一形態で、より多い枚数を引いて、その中の一部だけを残すというものである。残さなかったカードはたいていの場合墓地に置かれるか、ライブラリーの一番下に置かれる。

「ルーター」効果: ある枚数(大抵は1枚)のカードを引き、そして引いたのと同数のカードを捨てること。このカードはほとんどの場合墓地に置かれる。

「好奇心」効果: これはクリーチャーが他のプレイヤーに戦闘ダメージを与えたときにカードを引くというクリーチャーの能力である。より高いレアリティで用いられるバリエーションとして、与えた戦闘ダメージ1点につき1枚カードを引くというものもある。

死亡誘発によるドロー: そのクリーチャーが死亡したときにカードを引くというクリーチャーの能力。

「教示者」効果: ライブラリーを見て、そこから特定のカードを得るという効果。カードの選択に制限がある場合もある。より多くのカードを選び、そして最終的に得られるカードをその中から対戦相手に選ばせるというバリエーションもある。

「新たな芽吹き」効果: 墓地から手札にカードを戻す効果。青においては、この効果で戻せるのはインスタントと、場合によってはソーサリーである。


 次にカードを引くことに長けている色は、緑である。緑にとってカードを引くことは成長の隠喩である。通常、緑がカードを引くことはクリーチャーに関連づけられる。緑が使うカードを引く効果には、以下のようなものがある。

「好奇心」効果: この能力は青が第1種で、緑が第2種である。

カードを引く効果: 緑でカードを引く能力のほとんどは、クリーチャーに直接関連づけられている。引く枚数がクリーチャーのパワーやタフネスに基づいていたり、クリーチャーの総数、あるいはある種のクリーチャーの数に基づいていたりする。

土地探し: 緑はライブラリーから土地を探してくることができる。手札に入ることもあれば、戦場に出ることもある。

クリーチャーのキャントリップ: どの色にもキャントリップは存在し、クリーチャーのキャントリップも全ての色に存在しうるが、他の色よりも緑にずっと多いのだ。

「新たな芽吹き」効果: 緑はこの能力の第1種であり、あらゆるタイプのカードを墓地から戻すことができる。これはより高いレアリティで用いられることが多いが、ときおりアンコモンにも存在する。

クリーチャー用「教示者」効果: (上記の通り)土地を除いては、緑はクリーチャー・カードだけを探すことができる。この能力のバリエーションとして、クリーチャーを手札に入れるのではなく直接戦場に出すものもある。


 黒はカードを引くことにかけて第3位だ。黒のカードの引き方にも様々ある。

カードを引く効果: 黒がカードを引く場合、マナだけではなく他の代償を必要とする。もっとも多いのはライフであるが、それ以外にも何かを生け贄に捧げることもある。

「教示者」効果: 黒は、青と並んで、どんなカードでもライブラリーから探すことができる色である。

「新たな芽吹き」効果: 黒は、クリーチャー・カードを墓地から手札に戻すことができる。クリーチャーを墓地から戦場に戻すこともある。後者の能力は「リアニメイト」と呼ばれる。また、黒のクリーチャーの中には自分を墓地から戦場に戻す能力を持っているものもある。

死亡誘発によるドロー: この能力は青が第1種だが、黒にも時折存在することがある。


 赤はこの分野では第4位だが、そう多くはない。

「ルーター」効果

 開発部は「赤のルーター」と呼び、プレイヤーは「かき回し」と呼んでいる、赤のルーターは独特であり、カードを引く前に捨てる。これらのカードは、手札がないときに使うとカードを引いてカード・アドバンテージを得られるような文章になっていることがある。

「瞬間的ドロー」効果: これは最近赤で使い始めた能力であり、カードを引き(実際には追放し)、そしてそれをそのターンの間唱えることができるようにするというものである。唱えられなかったカードは追放領域に置かれたままになる。開発部はこれをこの能力を持つ《エルキンの壷》や《エルキンの住処》にちなんで「エルキン能力」と呼ぶことがある。

「新たな芽生え」効果: 赤が墓地から戻せるカードは3種類ある。1つめが、ソーサリー。これはそう多くはなく、墓地やソーサリーをテーマとしたセットでしか見受けられない。2つめが、直接火力呪文の中には墓地から回収できるものが存在する。3つめに、赤には、しばしばマナを払って、墓地から戻すことができるフェニックスが存在する。 フェニックスの中には手札に戻るものもあれば戦場に戻るものもある


 白はカードを引くことにかけては劣った色である。赤よりもなお少ないのだ。

「新たな芽生え」効果: 白は、アーティファクトやエンチャントを墓地から手札に戻すことができる。稀に、戦場に戻すものもある。点数で見たマナ・コストが2以下などの条件で、小型クリーチャーを戻せることもあるが、いずれにせよカード・パワーは弱くなっている。

「教示者」効果: 白は時折エンチャントを、稀にアーティファクト、大抵は装備品、を探すことができる。

 ここから、疑問が浮かぶだろう。なぜ白はカードを引くことが苦手なのか? 答えは、白は対策手段が多い色であり、白の弱点はカードを充分に引けないことだから、である。白が簡単にカードを引けてしまえば、どんな問題にも対策できるようになってしまう。敵対する側が白に打ち勝つ方法が、カード・アドバンテージなのだ。

    ドローの上で

 さて、カードを引くことはマジックで有利であり、我々はそれをカラー・パイ全体に配置した。ではなぜ開発部はそれを可能な限りばらまかないのか? その質問に答えるために、ここでヴィンテージの制限カード・リストを見ていただこう。(アンティとかサブゲームとか物理的行動とかで面倒なカードを除いて)マジックのあらゆるカードが使えるヴィンテージで問題になるカードである。

Ancestral RecallLotus PetalStrip Mine
BalanceMana CryptThirst for Knowledge
Black LotusMana VaultTime Vault
BrainstormMemory JarTime Walk
ChannelMerchant ScrollTimetwister
Demonic ConsultationMind's DesireTinker
Demonic TutorMox EmeraldTolarian Academy
FastbondMox JetTrinisphere
FlashMox PearlVampiric Tutor
Gifts UngivenMox RubyWheel of Fortune
Imperial SealMox SapphireWindfall
Library of AlexandriaMystical TutorYawgmoth's Bargain
Lion's Eye DiamondNecropotenceYawgmoth's Will
PonderSol Ring

 ここから、マナを素早く出せるカード(15枚)を取り除こう。

Ancestral RecallPonder
BalanceStrip Mine
BrainstormThirst for Knowledge
Demonic ConsultationTime Vault
Demonic TutorTime Walk
FlashTimetwister
Gifts UngivenTinker
Imperial SealTrinisphere
Library of AlexandriaVampiric Tutor
Memory JarWheel of Fortune
Merchant ScrollWindfall
Mind's DesireYawgmoth's Bargain
NecropotenceYawgmoth's Will

 残りは27枚。その中の23枚が、本質的に、カードを引くものだ。それが問題なのだ。カードを引くことはマジックの本質過ぎて、少し多く引きすぎるだけでゲームが壊れてしまうのだ。実際、私が「デヴァイン」(デザインとデベロップの重なる期間)中にもっともよく受け取るコメントの1つが「カードの引きすぎ」である。

 それはつまり、カードを引くことは配分を考えなければならないリソースなので、デザインで使う方法には注意が必要だということである。ただし、カードを引くことなら何でも同じというわけではない。全体としてカード・アドバンテージにならない、カードを引くカード(つまり最初に比べてカードの枚数が増えないカード)なら全く危険ではないのでより自由に使うことができる。

 デザインにおける、カードを引くことの取り扱いの鍵は、2つある。

 1つめに、我々は何がカードを引くことで何がそうでないのかをより意識することを学んだ。上で示したとおり、実質的にはカードを引くことであっても、一見してそうとは見えないものも多いのだ。2つめに、我々はカードを引くということを広く広げている。色についてもそうだし、機能についてもそうだ。あまりに多くの色を使うことはマナの関係で難しいことから色を広げたのであり、様々なデッキに入れられる、様々な機能を持つカードを作ることによって機能を広げたのである。

 我々がデザインにおいてもう1つ学んだのは、現在のデザインにおけるカードを引くことの役割である。カードを引くことがいつでも有用なのは当然だが、実際はブロックごとに役割が異なっている。例えば、『イニストラード』では、ライブラリー破壊という小テーマが存在していたので、カードを引くカードで、対戦相手にトドメを刺す、あるいは自分の墓地を肥えさせる道具としても使うことができると意識する必要があった。

 それとは対照的に、『テーロス』は合体ロボを小テーマとしており、クリーチャーをより強力な存在に組み上げることを推奨している。多くのシナジーを準備したが、合体が成立するようにするためにはカードが充分に必要になる。シナジーが働くために必要なものを引けるようにするため、この環境に占術が導入されたのだ。

 この話題を取り上げたのは、18年間のこの仕事を通してもなお、デザインにおけるカードを引くことの理解はなお完全とは言えないからである。上で挙げた占術は、デザイン中に行われたことではなく、デベロップ中に加えられたのだ。カードを引くことは複雑で、そして魅力的な話題なのである。

    幕を引く

 今日のコラムを楽しんでいただけたなら幸いである。何かがどう働くかを理解するために、それを掘り下げ、そのもっとも細かな部分を凝視する必要があることがある。今回の話題について何か語りたいことがある諸君は、メール、掲示板、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+)で教えて欲しい。

 それではまた次回、英雄的な話でお会いしよう。

 その日まで、あなたがいくらでもある学ぶべきことに気付きますように。


(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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