戦乱のゼンディカード その1

更新日 Making Magic on 2015年 9月 21日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

 プレビュー期間も終わり、いよいよカード個別、サイクル個別のデザインの話をする番だ。語る内容はいくらでもあるので、早速始めよう。

逆境

 アルファベット順で最初の欠色カードなので、ここで欠色のデザインについて少々語らせてもらうことにしよう。プレビューの時にも語った通り、エルドラージに共通の性質を何か1つ作りたかった。そして、無色がもっともふさわしいと思われた。私は常々カラー・パイを酷くもてあそぶようなことは避けたいと考えているので、欠色は、エルドラージ全てを無色にしつつ色を重視できる解決策なのだ。ここまで話してこなかった問題は、エルドラージにふさわしいと感じられるカードを作るために踏み越えなければならない境界線は何か、ということである。

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 言い換えると、セットの適当なカードを選んで欠色をつければ完成、というわけではないのだ。欠色を持つカードは、エルドラージらしいものでなければならない。何ならいいか、ということについて、いくつかの基本的なルールを使った。

#1-クリーチャーなら、「エルドラージ」のクリーチャー・タイプを持たなければならない。

 この選択は単純である。ただのエルドラージ、エルドラージ・ドローン、エルドラージ・昇華者、エルドラージ・末裔。昇華者は追放領域にあるカードを消費するもので、末裔はクリーチャー・トークン(1/1で、自身を生け贄に捧げてを出せる)。ここで重要なのは、エルドラージであれば、カードのタイプ行にそう書かれている、ということだ。

#2-何かを追放できる。

 エルドラージの飢えを伝えるために、エルドラージには様々なものを追放させるようにした。欠色呪文を「エルドラージ」っぽく感じさせるようにするための簡単な方法の1つが、何かを追放させるというものだったのだ。追放を使う方法に色々と工夫を凝らしていることはご理解いただけることだろう。クリーチャーの場合、嚥下キーワードを持つことでこの条件を満たしていることも多い。

#3-末裔を作れる。

 エルドラージ・呪文は、唱えることの副次効果として末裔・クリーチャー・トークンを出せばほとんど何でもできる。

#4-何らかの形で無色のものを助けられる。

 エルドラージは必ず無色なので、「エルドラージ」らしさを出すための簡単な方法は無色のパーマネントや呪文を助けることである。見ていく通り、異なる色の組み合わせごとに違うものを助けることになる。

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コジレックの伝令》 アート:Johannes Voss

#5-対戦相手がオーナーである、追放領域のカードを使うことができる。

 エルドラージの特徴の1つが、対戦相手がオーナーである、追放領域のカードを消費することである。呪文の中にもそうするものがあるが、「昇華者」のクリーチャー・タイプを持つクリーチャーによることがほとんどである。

#6-侵略的に感じられる。

 この最後の分類に当てはまるのは、ほとんどがクリーチャーである。上記のどの規則にも従わないエルドラージは存在するが、全体的に恐ろしい雰囲気を持つのだ。これは、単純で冗長でないエルドラージ・クリーチャーを作ろうとしたときによくあることである。

 これが、欠色を持つために守るべきものを定めた規定である。

アクームの石覚まし

 ゼンディカーに戻るということで、旧『ゼンディカー』ブロックで最も人気の高かったメカニズムの上陸を再録すべきだということがわかっていた。とはいえ目標の1つとして、それでできる新しいものを捜すというものがあった。その解決策は、一連の興味深い出来事から生まれた。

 『ワールドウェイク』で、《予見者の日時計》という上陸カードを作った。これは、土地が戦場に出るたびにカードを引けるというアーティファクトである。これを重くしたのは、カードを引くことはかなり有効な効果だとわかっていたからである。プレイされなかったので、誘発したときにカードを引くために2マナを支払う必要があるように調整し、カードを軽く、戦場に出しやすくすることができたのだ。

 『戦乱のゼンディカー』の作業にかかったとき、《予見者の日時計》を思い出し、そこには掘り下げるデザイン空間が残されていると気がついた。上陸で誘発したときにマナを支払うようにすることで、より強力で魅力的なことができるようになる。我々はそれを実験し、そして最初の感覚が正しかったとわかった。新しいデザイン空間が開けたのだ。それを踏まえて、我々はマナを追加のコストとする上陸を持つ垂直サイクルを作ったのだった。

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連結面晶体構造

 このカードは完全にトップダウン・デザインによるものだ。ゼンディカーに戻ったので、ゼンディカーの最も象徴的な建造物の1つである面晶体を表すカードが必要だと感じていた。そこで浮かんだ疑問が、面晶体は一体何をするのか、である。わかっていることは1つだけあって、面晶体はウギン、ソリン、ナヒリがエルドラージを捕らえるために使ったということである。それなら、それをどう再現すれば良いだろうか?

 いくつかのバージョンを試してみたが、どれも面晶体が大型クリーチャーを無力化するというものだった。最終的に現在のバージョンに落ち着いたのは、《忘却の輪》型の効果はクリーチャーを捕らえているというイメージに最適だったからである。サリアが獄庫を破ったのと同じように、これが破壊されるとクリーチャーが戦場に戻るのだ。

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バーラ・ゲドを滅ぼすもの

 このカードはデザインとデベロップの期間にあらゆる問題を引き起こしてくれた。プレビュー期間中に言った通り、滅殺は前回うまく行かなかった。人気もなければゲームプレイもつまらないもので、しかも軽量クリーチャーに持たせることもできなかった。エルドラージをデザインするにあたって、我々は最終的にこれに行き着いた。当時は、なぜこのカードが滅殺を持たないのかと疑問視されたのだ。

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 ルール的な違いを言えば、このカードはプレイヤーにパーマネントを生け贄に捧げさせるのではなく追放させるという違いはあるが、懸念があることはわかった。滅殺を使わないことにしたのだから、同じ分類に入るように見えるカードも忌避すべきだろうか。我々はデザイン中にこの点について議論し、残すことに決めた。同じ問題がデベロップ中にも持ち上がり、よく似た議論の結果、やはり残すことに決めたのだ。

 今回この話をしたのは、諸君がこのカードを見たら、諸君からも、滅殺がそれだけ酷いなら、なぜこのほぼ滅殺のようなカードを作るのか、という同じ疑問が届けられるからである。答えは、カード1枚が何かをする、というのと、メカニズムが全部何かをする、ということの間には大きな差があるから、となる。こういうカードが1枚あるのは許容できることであり、また、このカードは滅殺ファンへのちょっとした贈り物でもあるのだ。

「荒廃した」サイクル(《荒廃した瀑布》《荒廃した湿原》《荒廃した山峡》《荒廃した草原》《荒廃した森林》)

 このサイクルは、土地の新たな使い方を探るために作られたものだ。旧『ゼンディカー』ブロックには、タップ状態で戦場に出る、戦場に出たときの誘発型能力を持つ土地のサイクルがあった。これを繰り返すことにしたが、同時に、土地から出る「呪文」効果の新しい方法を試すことにしたのだ。

 前回は戦場に出たときを扱ったので、今度は土地が墓地に置かれたときを扱うというのはどうか。そのためには土地を生け贄に捧げる効果が必要だが、歴史的に見てそれが楽しく仕上がったことはない。それでは、その土地自身を生け贄にすることで効果を発生させる起動型能力を持たせるのはどうか。そのサイクルを作って、各色の起動コストを持たせれば、呪文効果も各色に対応したものが使えることになる。

 これらの土地が無色マナを出すようになったのは、これらのカードが既に冗長であり、一方で色マナを出せるようにするならタップ状態で戦場に出るか、あるいはライフのような追加のコストを支払うようにしなければならなかったからだ。どちらも文章を1行増やすことになり、可能な効果が縛られることになる。そこで、無色のマナだけを出せるようにしたのだ。それを受けてクリエイティブ・チームが仕上げたのが、エルドラージに打撃を受けた場所を表す土地だった。

末裔の呼び出し

 『戦乱のゼンディカー』に関して私が受けた質問の中で最も多いものの1つが、末裔について、また末裔をどの色が生み出せるのかというものだ。『エルドラージ覚醒』では、エルドラージは黒、赤、緑と関連していた。つまり末裔生成もこの3色になる。ただし、異なるセットでは必要性も異なるので、少しばかり変更を加えることにした。

 前提なしで見ると、緑と青が一番筋が通っていると思われた。大量のトークン・クリーチャーを作ると言えば緑、マナを出すといえば緑である。青にもトークン生成は存在するし(全ての色に存在する)、無色マナを生み出すのは青のお家芸だ。最終的に、緑は複数の末裔を出すことが最も多い色になった。青の末裔は、クリーチャーの戦場に出たときの効果であることが多い。色の役割を精査して、数枚だけもう1色に必要だという決定がなされた。最もふさわしいとされたのが、黒だった。

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謎めいた巡行者

 プレビュー記事の中でも触れた通り、デザインの作ったバージョンでは昇華者は対戦相手が追放領域に持っているカードの種類や枚数を参照するものだった。デベロップもそれを試したが、拡大効果のバランスを取ることが難しいと判明した。このセットのリード・デベロッパーのエリック・ラウアー/Erik Lauerは、昇華者が追放領域にあるカードをただ参照するのではな消費するようにしようと思いついたのだった。

 エリック率いるデベロップ・チームは何枚ものカードを作り、プレイテストをした。エリックは、このメカニズムの新バージョンについて私の意見を聞くべく、私をそのプレイテストに招いた。そこで見せられたのが《謎めいた巡行者》だった。私が引いたそれ以外の昇華者はどれも戦場に出たときに一度だけ働く効果で、常に追放コストを支払うことができるとわかっていた。しかし、《謎めいた巡行者》を引いたとき、その何度も使える効果を見て、私はこの能力を毎ターン使いたいと思っていた。しかし、対戦相手は追放領域に充分なカードを持っていなかったので、私はいつどうやって対戦相手の追放されているカードを使うか熟考することになった。このやりとりが非常に楽しかったのだ。

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 プレイテストが終わって、私はエリックに、この新しい昇華者への賛意を伝えた。私からの要求は、《謎めいた巡行者》のようなカードをもっと作ってほしいということだけだった。

不死のビヒモス

 末裔を作るカードを大量に作ったが(正確に言えば、デザイン中は落とし子だった)、デザインの目標の1つは、末裔の他の使い方を可能にするカードを作ることだった。問題は、そのためにどうするのが最善なのか、だった。浮かんだ使い方の1つが、コストとして末裔を生け贄に捧げるカードだった。そうすれば、エルドラージを出すために末裔を使うだけでなく、そのあとでさらなる末裔を出した場合、それを使って効果を発生させることができるのだ。

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 《不死のビヒモス》は、末裔でできることを探っている間に作られたものだ。末裔を生け贄に捧げてクリーチャーに呪禁や再生といった防御的能力を与えるものを実験していた。しかし、その起動にマナが必要にはしたくなかった。ただ末裔を生け贄に捧げるだけにしたかったので、最終的には強すぎることになった。このことから、末裔を使ってクリーチャーを手札に戻すという発想に到った。手札に戻すことで、防御的能力でしたいことの多くが可能になる一方で、唱え直す必要があるのでマナの消費をこっそり求めることができるのだ。

竜使いののけ者

 新しい2セット・ブロック構造をどう構築すべきなのか、かなりの時間を割いて語ってきたが、基本セットの消滅の影響についてはあまり時間を割いていなかった。我々は毎年同じ数のカードを作っているが、ある種のものが減っている。それは、再録である。基本セットは、歴史的にほとんどの期間で再録カードのみのセットだった。『基本セット2010』で見直しがおこなわれてからでさえ、新作はカードの半数程度だったのだ。

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 この変更について話し合い、今後も再録が必要なら、通常の拡張セットでの再録についてもう少し寛大になる必要があるとわかった。《竜使いののけ者》はその好例である。基本セットがあったころは、レアや神話レアを再録することはほとんどなかった。新システムでは、もう少し意識的に再録することになる。一例として、《竜使いののけ者》は、『ゼンディカー』当時、カジュアル・プレイヤーに大人気だった。そして、『戦乱のゼンディカー』で再録すると楽しいカードになると感じられたのだ。

塵の中を忍び寄るもの

 無色テーマを扱うと決めたら、次の問題はそれらの能力を持たせる色をどうするかだった。エルドラージを白以外に絞っていたので、白は最初から選択肢にない。緑は末裔を作ることに特化しており、無色に関わる行動と言えば普通は破壊することである。あとは青か黒か赤だ。

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 プレイテストの結果、扱うことができる分野は2つあることがわかった。呪文とパーマネントである。前者は、無色のパーマネントが戦場に出ることを扱うもの、後者は、無色の呪文がプレイされることを扱うものである。テーマを必要とするアーキタイプを探したところ、黒赤と青赤が目に付いた。青も赤もクリーチャーが少ない色であり、青赤は通常呪文を基調としている。つまり、青赤が無色の呪文を扱う方が自然だということになる。

 黒赤はクリーチャーを使うことにアグレッシブなので、無色のパーマネントを扱うほうが筋が通っている。プレイテストの結果、無色のパーマネントというテーマは閾値が高すぎなければうまく行くということがわかった。そこで、黒や赤は、他の無色のパーマネントが戦場にあればボーナスを得られるようにしたのだ。

取り囲む地割れ

 覚醒はトリッキーなメカニズムである。おまけとして、土地を永続的にクリーチャー化するのだ。問題は、おまけをつけるなら、メカニズム的に本体部分と何らかの繋がりを持たせたい、ということである。土地をクリーチャー化することと組み合わせてうまく働くのは一体何だろうか。想像する以上にあるものだ。

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 《取り囲む地割れ》は、覚醒の良いデザインの好例である。これは《濃霧》の亜種で、対戦相手1人を対象とし、そのクリーチャーの与えるダメージを軽減するものだ。なぜこれが土地をクリーチャー化することと噛み合うのかというと、この《濃霧》は一方的なもので、つまりクリーチャーでブロックしていれば自分のクリーチャーを失う危惧なくクリーチャーを止める(そしておそらくは倒す)ことができる。覚醒で、ブロックに使うクリーチャーがいるようにすることができるのだ。

 また、覚醒カードのほとんどをソーサリーにしているのは、奇襲的なカードにしたくはなかったからである。その例外が1枚、白に存在する。そのかわり、その白の覚醒効果は小さなものになっているのだ。

果てしなきもの

 なぜかはわからないが、マナ・コストとして{X}を持つクリーチャーをデザインするのは楽しいものだ。マジック史上最初の存在が『ビジョンズ』の《ファイレクシアの略奪機》である。

 これは不格好で非常に弱かったが、作ったことに満足したのを覚えている。その1年後の『ストロングホールド』で、我々はまた{X}を含むクリーチャーを作った。今度は壁だった。{X}で単純にX/Xのクリーチャーを作りたかったのだが、当時はそれでは強すぎると考えられていたのだ。

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 それから時間はかかったが、ついに{X}でX/Xのクリーチャーを作ることができた。重要だったのは、もちろん、{X}でX/Xが妥当になるまで待つ、ということだったのだ。

AからEまで

 今日の枠を一杯に使ってしまったが、まだEまでしか進めていない。つまり、少なくともあと1週は続けなければならないということである。それはそれとしていつもの通り、この記事について、あるいは『戦乱のゼンディカー』について、諸君からの反響を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、さらなるカード個別のデザインの話をする日にお会いしよう。

 その日まで、我々が『戦乱のゼンディカー』を作ったのと同じような、プレイする楽しみがあなたとともにありますように。

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ニッサの探検》 アート:Dan Scott

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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