新規+進化

更新日 Making Magic on 2013年 5月 15日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

原文を読む

 融合特集へようこそ。融合メカニズムの来し方については「ドラゴンの迷路」プレビューの第2回で既にやっているので、今回はメカニズムを再録するときにどう拡張するのかということに焦点を当てることにしよう。融合特集にふさわしく、今回は2つの小記事を書いてみた。

 1つめの小記事は「新規」で、既存のメカニズムを進化させるときに探すものについてメカニズム的に表現している。「新規」を読みたい諸君はこちらへ

 2つめの小記事は「進化」で、こちらでは私がキーワード・メカニズムを初めて再録したときのこと、そして切り開いたデザイン空間について説明している。「進化」を読みたい諸君はこちらへ

 そして、諸君のお望みの通り、融合して読むこともできる。「新規+進化」を読みたい諸君は、こちらへ

 かつて、開発部はメカニズムをどのセットでも再録できて実際に再録される常磐木メカニズム(飛行、先制攻撃など)と、1セット(後にブロックが作られるようになってからは1ブロック)でしか使わず、二度と使うことのない使い捨てメカニズムの2種類に分類していた。

 時を経て、開発部は考え方を改めた。開発部はデザイン空間が有限のリソースであり、アイデアを使い捨てにするような余裕はないのだと理解したのだった。また、開発部は、古いメカニズムを再録することが興奮をそそるものであるということも認識した。新しいセットへのヒキになりうるのだと。しかし、この認識は一夜にして得られたわけではなく、開発部がそれまでおいていた仮定を見直さなければならないような問題を引き起こしたセットが実際に存在したのだ。


 開発部が古いメカニズムを再録すると決めると、最初に我々が取り組むべき課題はどのデザイン空間に広げる余地があるかだった。新しい空間をどうやって見付けるのか? そして、その見付けたものを使うべきかどうかをどうやって判断するのか? 今日のコラムはこの課題について話していくことにしよう。

 タイムマシーンに飛び乗り、オンスロートのデザイン当時に戻ってみよう。デベロップが始まろうとしているのに、このセットにはまだメカニズムが足りていなかった。オンスロートの部族テーマと変異は既に決まっていたが、この2つは非常にクリーチャー寄りなので呪文メカニズムが必要だということはわかっていた。現在の開発担当副社長で、当時は首席デザイナーだったビル・ローズ/Bill Roseが私にどうすべきか尋ねてきた。しばらく考えてから、私は「サイクリングのようなメカニズムがいい」と答えた。つまり、私は呪文につく、カードの回転をよくするメカニズムが欲しいと考えていたのだ。

 通常、私は何かについて考えるとき、アイデアが浮かんでからしばらくそれについて考えを巡らせる。その夜、仕事をしている間も、私の脳の一部はその「サイクリングのようなメカニズム」について考えていた。翌日、私はビルの部屋に飛び込み、そして言った。「そうだ。すごいサイクリングのようなメカニズムがあるじゃないか。サイクリングだよ」

 この時点で、名前の付いていないメカニズムなら既に再録したことがあった。いわゆる「ピッチスペル」と呼ばれるもので、アライアンス(有名なのは《Force of Will》だ)で初登場し、後にメルカディアン・マスクスで再録されている。キャントリップもいくつものブロックで再録している。しかし、名前の付いた、かつ常磐木でないキーワード・メカニズムを再録したことはなかった。サイクリングを再録するというのは賛否両論だったのだ。

 私は開発部の他の面々に説いてまわり、ある合意を得た。それは、充分なひねりを新しく加えるのならサイクリングを再録してもいい、というものだった。ただ戻すのはダメで、改革が必要だったのだ。

 メカニズムを再録するにあたって新しいデザイン空間を探すときに最初に考えるのは、可能性をどれだけ残しているかである。資金繰りメーターを想像してもらいたい。最初は0%、目標値は100%だ。このメーターがメカニズムのデザイン空間の総合計を示しているとしたら、その何パーセントが使われているだろうか? メーターのうちで赤く塗りつぶされているのはどれだけだろうか?

 常々言うとおり、新しいデザインを探すための最良の足場は、もっともわかっているところである。お菓子屋さんで金槌を探すのは独創的なことだが、金槌を探すならまずは工具屋だろう。「箱の外を探すのは、箱の中にあるものでできないと確信してからにせよ」という奴である。

 サイクリングが初の再録キーワード・メカニズムとして理想的だと感じた最大の理由は、最初に使ったときにその可能性を充分に使っていたとは言えないということだった。実際、このメカニズムをウルザズ・サーガ・ブロック以降に使おうともしなかったことを考えると、少しばかり奇妙なことをしていたと言える。このキーワードを作ったときに、コストを示す数字をつけていた。ブロック内の全てのサイクリング・カードは「サイクリング 」だったのだ。

 もちろん、新しいデザイン空間を探すにあたってはそこを最初に考えた。以外のコストを持つカードを作ることはできた。色マナを使うサイクリングもできた。この変更の魅力を最初に表したのは、オンスロートに入ることになったコモンのサイクリング土地だった。

 ビルの反応は、「これはすごい。他のサイクリング・コストも作るとして、もう少し大胆な変更があってもいいんじゃないか」というものだった。

 メカニズムのデザイン空間を追求していく次の一手は、一歩引いてメカニズムの狙いを見付けることだ。通常、カードをデザインするにあたっては、メカニズムが何をするのかカード単位で微視的に見なければならない。しかし、埋まっているデザイン空間を調べるには、より情緒的、巨視的にメカニズムを見られるように距離を取らなければならないのだ。デザイン空間を広げるための鍵となるのは、そのメカニズムの核が何なのかを理解することなのである。

 その夜、家に帰り、私はサイクリングの本質が何なのか考えを巡らせていた。考え抜いた末、はっきりした答えが得られた。サイクリングは選択、選択肢のメカニズムである。基本的なサイクリングで、そのカードを残すべきかそれとも使って別のカードを引くべきかという選択ができるようになる。しかし、その選択の無いようそのものはこの枠組みほど重要ではない。そのカードでAができるし、手札にある間にマナを使って別の効果、すなわちBをすることもできる。

 メカニズムについて過去にした決定に縛られる必要はない、ということも重要だ。これが、大きな目で見る必要がある理由である。そのメカニズムが何をするかではなく、そのメカニズムに何が出来るかを考えるのだ。メカニズムを再録したいと考えたのは、それがセットに役立つからだということを忘れてはならない。セットが上なのだ。再録メカニズムが、新しいデザインの足を引っ張ってはならないのだ。

 サイクリングが選択のメカニズムだと気がついたら、次にするのはプレイヤーにさせる別の選択を探すことだった。一旦カードを引くということから離れてみたが、カードを引くということがこのメカニズムの象徴的な部分だと判断した。カードを引く部分を変更するのではなく、それに何かを付け加えることにしたのだ。

 メカニズムはクリーチャーと同じように象徴的なものだということを心に留めておくこと。メカニズムについて、受け手の受け取り方を決める何かが必ず存在するものだ。メカニズムの新しいデザイン空間を探るにあたっては、そのメカニズムを決定づけている核となる部分から離れないように注意が必要なのである。

 加えて、新しいデザイン空間を探す目標は、そのメカニズムの元のバージョンの延長線上にあると感じさせるようにすることだということも忘れてはならない。物理的にメカニズムで何かができるということは、それをするための充分な理由にはならないのだ。

「よし」
 私は自問した。
「カードと引き替えにしたいと思う、次に明確なものは何だ?」

 興味深いことに、カードを引くということが私の頭から離れなかった。このメカニズムを定義づけているものなのだから残さなければならないのはわかっていても、どうすればカードを引くことと繋がりを感じさせる効果は見付けられるだろうか? 答えはいくつものセットで使ってきた単純なメカニズムにあった。そう、キャントリップだ。開発部用語に詳しくない諸君のために一応言っておくと、「キャントリップ」はプレイした時にカードを1枚引ける、小さな効果を持つカードのことだ。

 呪文と引き替えに、それより弱いキャントリップつき効果を得られるのはどうだろう?

 新しいデザイン空間がその強化するメカニズムと充分繋がっているかどうか自信がないとき、私はラベルなしでマジック・プレイヤーに提示することにしている。そのプレイヤーがそのメカニズムを延長だと感じるか、それともまったく新しいメカニズムだと感じるかを見るのだ。

 「キャントリップ・サイクリング」サイクルをビルに見せると、彼は「いい方向性だ。他にはないかね?」と答えてきたのだった。

 もう1つ、新しいデザイン空間を探すにあたって有効なのは、その手段をぐるっと反転させることだ。そのメカニズムで何ができるかを考えるのではなく、他のカードがそのメカニズムに何をできるかを考えるのだ。キーワードにすることの利点の1つに、他のカードがメカニズム的にそれを参照できるということがある。一方、能力語(キーワードと似ているが、ダッシュで区切った後に内容が通常のルール文章で書かれているもの。最近の例を挙げるなら大隊などがこれに当たる)を参照することはできない。それがルールなのだ。

 次の一歩は、こんな自問自答から始まった。
「サイクリング・デッキって、どんな形になる?」

 我々が使っている、「主軸的/linear」と「部品的/modular」という言葉について説明したことがある。主軸的カード、あるいは主軸的メカニズムとは、他の特定のカード群を使うと有利になるカードのことである。この一例が、基本セット2013に入っている《真珠三叉矛の達人》である。これを活かすためには、デッキに他のマーフォークを入れなければならない。部品的カード、あるいは部品的メカニズムとは、それ自体だけで存在でき、他のカードを組み合わせる必要がないものである。

 サイクリングは部品的メカニズムである。適当なサイクリング・カードを入れたければ、ただそれをデッキに放り込むだけでいい。入れるなら他のカードと組み合わせなければならないということはない。他のサイクリング・カードもなくても大丈夫だ。新しいデザイン空間を探す中で、私は主軸的なサイクリング・デッキがどんなものなのかを考えることにした。プレイヤーがサイクリング・カードを大量にデッキに入れたくなるにはどうしたらいいか?

 この考えからできたのが、このカードである。

 通常、面白い方向に拡張していることのいい目印は、その新しいカードを見たプレイヤーがそのメカニズムを使って元のカードでやったのと違う種類のデッキを作りたくなることである。これは、メカニズムの使われ方を拡張し、同時に、メカニズムが根本から変わっていることの理解を助けるのだ。

 《稲妻の裂け目》を見て、ビルはようやくオンスロートにサイクリングを入れることに賛成してくれたが、私の仕事はそれで終わりではなかった。新しいサイクリング・コストや小さなサイクリング効果、そしてサイクリングを参照するカード。それら全てがオンスロートに入ることになった。私はサイクリングがその後の2セットでどういう形を取るか考えなければならなかった。幸いにして、サイクリングやその関連についてかなりの考えを巡らした結果、いくつかの考えが閃いたのだ。

 デザインを拡張する方向を探すにあたっては、同じセットやブロックに存在する他のメカニズムがいい手がかりになる。しばしば、デザインにおいては、複数のメカニズムが統合されるデザイン空間や、それらのメカニズムが独立して巧く働く空間を探す。上で言ったとおり、メカニズムを持っているカードだけで考えるのではなく、セット全体におけるそのメカニズムのインパクトについて考えることが必要なのだ。

 私の考えの1つは、サイクリングをこのブロックのメカニズム的大テーマである部族と組み合わせるというものだった。気付いていない諸君のために添えると、オンスロートは開発部が部族と呼ぶクリーチャー・タイプ(ビースト、クレリック、エルフ、ゴブリン、兵士、ウィザード、ゾンビ)に強く注目した初めてのブロックである。サイクリングはどんなカード・タイプにも持たせられる、つまり、クリーチャーにも簡単に持たせられるのだ。

 上で「キャントリップ・サイクリング」と呼んだカードを真似るという発想はあったが、サイクリングを呪文に持たせてその呪文の弱いバージョンをサイクリング誘発として持たせるのではなく、今回のサイクルはクリーチャーであり、そのカードのクリーチャー・タイプに関連した部族効果を生成するものになった。これによって部族デッキはクリーチャーとしても呪文としても部族をサポートするカードを手に入れることになったのだ。

 レギオンで登場したこのサイクルは次のものである(このサイクルに関しては、レギオンのリード・デザイナーであったマイク・エリオット/Mike Elliottの助けを受けた)。

 2つの異なったメカニズムを組み合わせるために重要なのは、それぞれの本質が何なのかを理解し、ベン図におけるその重なりを見付けることである。

 このサイクルは、「選択肢を与える」「カード1枚を他の何かと引き替えにする」というサイクリングの本質を捕らえていて、かつ、「同種のクリーチャーをデッキに入れたいというフレイバーに満ちた情動をメカニズム的に支える」という部族の本質を捕らえているからこそ巧く働いた。サイクリングのおかげで、このカードはそのタイプのクリーチャーとしても働き、またそのタイプがプレイされていることを参照する呪文としても働くという事実が両メカニズムの強みを活かしているのだ。

 最後に触れておきたい技は、まだデザインされていないものでなくデザインされたものを見る必要についてである。しばしば、新しいデザイン空間を見つけ出すための鍵となるのは、それまでにやってきたことの中にまだ探してすらいない新しい空間を見つけられるかどうかを考えることである。

 オンスロート・ブロックでなされたサイクリングの進化の最後の1つは、スカージのリード・デザイナーであったブライアン・ティンスマン/Brian Tinsmanが全く違う問題を解決しようとして見つけたものである。ブライアンはマナを安定化させる優美な方法を探していて、特定タイプの基本土地と交換できる重いカードがあったらどうだろう、という考えに思い至ったのだ。そうすれば、そのクリーチャーを唱えられないような序盤にはマナに交換してしまうことができるし、後半にマナが充分有るようになればその大型クリーチャーを唱えられるのだ。

 ブライアンの元々のアイデアは、クリーチャーを追放して基本土地をゲームの外部から持ってくるというもので、これにはデベロップ側からイベント規定との齟齬が出るのではないかという指摘が出た。そこで、ブライアンは最終的に、緑に普通にある土地を探す効果と同じようにデッキから基本土地を探せるだけにすることにした。

 ここが注目すべき所だ。私はこのメカニズムが好きだったが、よく見ると、問題はあった。このメカニズムは2マナを使って手札からカードを1枚捨て、そしてライブラリーから追加で1枚のカードを得る。私から見れば、これはサイクリングの亜種に過ぎなかった。そこで私はブライアンに、このメカニズムを基本土地サイクリング(沼サイクリング、山サイクリングなど)にすればもっとこのブロックらしくできると説得したのだ。このブロックには《稲妻の裂け目》のようなサイクリングを参照するカードがあったことも話を早くした。

 ブライアンの仕上げたのが、これである。

 他のメカニズムを取り上げ、それを拡張したいメカニズムの中に取り込んでしまうべきもう一つの理由は、それによってセットやブロック全体を濃縮し、単純化するからである。新世界秩序について語ったとおり、手順を単純化する中には複数のものを綴じ合わせ、プレイヤーが考えることを減らすという方法があるのだ。

 ビルがサイクリングを再録するための新しい探求が足りないと言って何度も差し戻したのには苛立ったが、その経験からは既存のメカニズムの新しいメカニズム空間を探すためにどうしたらいいか多くの教訓を得た。それから何年も、いくつものメカニズムを再録して拡張する役に立ったのだ。

 私が示してきた教訓を踏まえれば、諸君もまた自分のメカニズムを拡張できることだろう。

 今日はここまで。私のサイクリングの拡張に関して走り回ったことが諸君の楽しみになれば幸いである。

 いつもの通り、諸君のコメントを心待ちにしている。メール、掲示板、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+)で伝えて欲しい。

 それではまた次回、全く新しい光の中で「ドラゴンの迷路」を見る日にお会いしよう。

 それではまた次回、存在しないものを考察する日にお会いしよう。

 その日まで、あなたが何か新しいものを見張りますように。

 その日まで、違う視点からの物語があなたとともにありますように。


(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

導入ページに戻る


最新Making Magic記事

MAKING MAGIC

2020年 7月 25日

セット・ブースター by, Mark Rosewater

今日は、『ゼンディカーの夜明け』で初登場するもの、新型ブースターについて語っていく。それが、今回のタイトルにもなっている、セット・ブースターと呼ばれるものである。今日の記事ではそれについて話そう。 詳しい話に入る前に、少し伝えておきたいことがある。これは、我々がマジックに新しく導入するものだ。何もなくなるわけではなく、現在の製品は何ひとつ変わらないままである。これまでの...

記事を読む

MAKING MAGIC

2019年 9月 24日

プロジェクト・ブースター・ファン by, Mark Rosewater

(編訳注 7/24:一部の用語を修正いたしました。「枠なしプレインズウォーカー」→「拡張アート版プレインズウォーカー」)  私が、誰もが話題にするようなマジックについての新情報がたっぷり詰まった記事を時々書いていることにお気づきだろうか。今日の記事は、そういった記事の中の1本だ。これからさまざまな情報を話していくので、まずはこの記事で何を語るかについて説明することにしよ...

記事を読む

記事

記事

Making Magic Archive

過去の記事をお探しの場合 アーカイブのページをご覧ください。人気の著者による、数千にわたるマジックの記事が残されています。

一覧を見る