日和見ソリンとティボルトの拷問

更新日 Making Magic on 2013年 3月 13日

By Trick Jarrett

Patrick "Trick" Jarrett oversees web content and social media for Magic, and acts as the publisher of DailyMTG.com and Magic content on the web. He's an ardent Commander player and lover of the game he's played since Ice Age.

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 これらのデュエルデッキについて1つ言えることがあります。それはとても面白いということです。どちらのデッキを使ったかは関係ありませんし、幾度も負けはしましたが、私と対戦相手のどちらも素晴らしい時間を過ごしたからこそ断言できるのです。何故かは分かりませんし、理由も説明できませんが――確かに楽しかったのです。ソリンを使ってもティボルトを使っても常に負けていたのにです。

 2名のプレインズウォーカーというレンズを通してはっきり見ることでマジックの1つ前のブロックに注目する最後の機会となるため、年最初のデュエルデッキ(最初のヴェンセール vs. コスと今回のソリン vs ティボルト)は興味深い立ち位置にあります。年2番目のデュエルデッキ(イゼット vs ゴルガリと今年の秋となる未発表デッキ)はその次元内の2つのグループというレンズを通して現在のブロックについて注目するものです。

 今回、デュエルデッキ:ソリン vs ティボルトでは、私たちは2人の人物を思い起こすことになります。1人目は強力な吸血鬼のプレインズウォーカーで、彼はゼンディカーにおいてエルドラージとの対決を手助けし、そして彼の故郷であるイニストラード次元へと帰還したとき、彼が努力して保っていた均衡が崩されて人間が闇の勢力によってあっという間に蹂躙されようとしていることに気づきました。闇の勢力のうちの1つは、イニストラードの紛争における重要人物というわけではありませんが、ティボルトです。ティボルトは私にとって悪の権化です。彼は苦痛を与える魔道士で、他者を傷つけることにのみ――他者を殺すこと以上に――興味があるのです。

Art by Chase Stone

 私たちが先週公開した通り、彼ら2名はそれぞれのデュエルデッキで美麗に描かれています。しかし私は単なるカード表現以上のものをそれらから感じました。この2つのデッキが彼らの名を受け、その戦い方、用いる呪文、そして感情すら表現しているのだと感じさえすれば、これらのデッキはその2人のプレインズウォーカーを見事に映し出してくれるのです。


 私が対戦した最初の相手はこのデュエルデッキのリード・デザイナーであり、かつてのDailyMTG.com編集長ケリー・ディグス/Kelly Diggesでした。実のところ、この記事を執筆中だという話をすると、ケリーはデッキを直接見られるように自分の席に戻ろうと言ってくれました。これは彼が開発部に参加して以来初めてリード・デザイナーを務めた商品なのです。

 対戦している間に、私はデッキとそのデザインに関してケリーがどのような考えを持っていたかを聞き出していきました。リーダーを務めたのは彼ではありますが、最初のデッキリストは開発部で契約社員として働いているクリス・ミラー/Chris Millarが提出したものだそうです。クリスはデッキのコンセプトについてに説明を受けたのち、これら2つのデッキの初期案をまとめました。その後ケリーはそれらを開発部に持ち込み、デッキが良く動くものでありながらも、それらがどう動くべきかという個性付けにも沿うようにデッキを洗練させていきます。そしてまさにその個性の結果として、もしかすると私が一番好きかもしれないカードがデッキに投入されました。それは《怒鳴りつけ》です。

 そしてこのカードはケリーがデュエルデッキのリード・デザイナーとして享受した別の恩恵を私たちに気づかせます。どのカードを新イラストにするか決める権利です。そう、彼には望む全てのカードに新イラストを使えるほどの自由な権限はありませんでしたが、新イラストのための予算は与えられていましたし、《怒鳴りつけ》はティボルト・デッキに入れるカードとして素晴らしくテーマに合っていました(ヒント:ソリン側はほとんどの場合ティボルト側の手札を補充するよりは5点食らうほうを選ぶでしょう)。

ティボルト・デッキ

Download Arena Decklist

 ティボルト本人は赤単色ですが、彼のデッキは黒赤です。カードの色とは一致しませんが、ティボルトの性格は実際のところ黒赤の性質を持つので、クリエイティブ・チームもその提案を全面的に認めました。彼は痛みを引き起こし、対戦相手の全ての決断に――そしてそう、あなたの決断にも――苦痛を引き起こしかねないのです。本当に、本気の苦痛をです。

怒鳴りつけ》 アート:Chris Rahn

 とはいえそのうちに、私たちは対戦できなくなりました。ケリーには会議があったのです。私は別の対戦相手を見つけなければなりませんでした。そして私と対戦相手はデッキを入れ替えながら対戦し、私はそれらの対戦でもいい感じに負けました。

 そう、次の対戦相手はブライアンでした。

 ブライアンは私の同僚ですごいやつです。彼は明るく、活気に満ち、そしていつでも前向きです。彼は二束のわらじをはくマジックのブランド・マネージャーで、主に、Ultrapro(スリーブとデッキケース)やAraca(MTGMerch.com)というような提携相手との関係を監督しています。

 私たちはデッキを振り分け、私はソリン・デッキを使いました。

ソリン・デッキ

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 私は土地3枚、《屈辱》、《食餌の衝動》、《宿命の旅人》、そして《吸血鬼の一噛み》という初手をキープしました。


 私は予定通り《宿命の旅人》を出して、対戦を始めました。そしてほぼすぐに計画すべてが瓦解しました。ブライアンは何に対しても除去をうまい具合に持っていましたし、デッキをドロー・ディスカードで回転させるために2ターン目に《悪鬼の血脈、ティボルト》を出してきました。

 《悪鬼の血脈、ティボルト》に対してプレイヤーが感じる主な難点の1つは彼のディスカード効果が無作為だということです。赤の後先考えない性質をよく表現してはいますが、やはりゲーム上ではかなり大きな欠点と言えます。しかしながらケリーは、ティボルト・デッキでは、フラッシュバックや蘇生を通して、有用なカードを捨ててしまった場合にも安定して使えるようにしています。この場合、ブライアンにとって有用なカードを、ですね。

 そしてそれらの工夫は全てブライアンの助けとなりました。各ターンにおいて、私が圧倒されるまでずっとブライアンは呪文を唱えてはこちらのクリーチャーを除去してきました。

荒廃稲妻》 アート:Dan Scott

 別の視点から見ると私はソリン・デッキで果敢に戦っていたものの、あらゆる決断を下すことがまさにますます困難になっていきました。ブライアンは戦場に《溶岩生まれの詩神》を出していたので、つまり結局のところそれは「助けとなる呪文を唱えて手札を3枚未満に減らすか、それともダメージから身を守るか?」という決断でした。ひどい選択を迫ることで相手をじわじわ追い詰める――ティボルト・デッキは対戦相手にそうするのが大好きです。ケリーが親指締め具を置いたかのようでした。

 そしてその後、当然のことですが、私が死にかけている危機的なターンにブライアンは《荒廃稲妻》を唱えました。

 新イラストの《荒廃稲妻》をです。

 それにより私の手札は3枚から1枚に減り、また私のライフは4点にまで減りました。そしてそれら全てによってもたらされる厳しい現実とは、私が負けたということです。私は果敢に戦いましたがまったく何の足がかりも作れませんでした。

 私がこれらのデッキで対戦するたびにしくじるよう、ティボルトが呪いをかけたんだろうということを彼に証明するため、私たちはデッキを交換し、手元にはティボルトがやって来ました。

 私はティボルトが好きです。赤いカードが大好きです。しかし私が赤の愛好家であるにもかかわらず、ティボルトは私に不親切でした。ちょうどブライアンがやったように私も序盤にティボルトを展開しましたが、土地を引いては呪文を捨てる状態が続きました――さらに言えば墓地から使える呪文もありませんでした。そしてまた私がどうにかティボルトを守ろうとクリーチャーを出すと、ブライアンがそれを《屈辱》してくるのでした。

 とはいえこのゲームはとりわけ印象的でした。ソリン・デッキに負けたということだけではなく、1ターンにブライアンが5つものトークンを生み出してきた時のように、新イラストのカードを用いてきたという点でもそうでした。


 厳密に言えば、《未練ある魂》は新イラストではありません。このイラストはフライデー・ナイト・マジック用のプロモーション・カードとして元々使用されていました。しかしパッケージ商品として私たちが販売した中にはこのイラストは使われていません。したがってこれは新しいイラストみたいなものですね。

未練ある魂》 アート:John Stanko

 そしてあたかも5体の飛行トークンで攻撃するだけでは足りないとばかりに、致命的な3点のダメージとなる《死のわしづかみ》をもって対戦は締めくくられました。

 2マッチ行い、4ゲーム負けました。つまり2マッチ負けたのです。どちらのデッキでもです。

 負けが込んでいる状態の欲求不満は自然なものです。これらのデッキが互角だと感じるからこそ、私にとってはなんだか不公平に感じます。私はティボルトの拷問的行為とソリンの綿密な計画の被害者です。

 私はデッキに投入したカードについてケリーとさらにいくつか会話しました。彼が強調した1枚は《死のわしづかみ》で、これはおそらく良く合うだろうと思われる《ソリンの復讐》を押しのけました。それは普通に投入されそうに思えますし、テーマに関してもいい感じに合います。しかしここにリード・デザイナーが行わなければならない難しい選択の一例があります。元から適合するカードを選ぶべきでしょうか、新イラストの機会があるカードを選ぶべきでしょうか? 入れようかなと思った《ソリンの復讐》はなく、入れる必要があった《死のわしづかみ》が入ることになりました。

死のわしづかみ》 アート:Raymond Swanland

 私たちの会話の流れはケリーには何ができたのか、どんなカードを投入できたのか、ということについて進んでいきました。これらはどちらも主要な点ですが、彼がマジックの1セット全体のリード・デザイナーではなかったとしても、デュエルデッキにおいて考慮すべき変更要素や事態はまだまだたくさんあります。その取り組みはバランスを維持しながらも開発部が製品に見込む必要性、例えば新イラストの提供といった要素を満たしつつ、使って楽しいデッキを作り上げています。

 例えば、ティボルト・デッキがカードを捨てることと共にリソースとして墓地を用いるという事実を考えてみてください。ソリン・デッキには墓地対策として《腐朽》1枚のみがあります。しかしその《腐朽》の選択範囲は単発の呪文であるにもかかわらず、1つの狙いがあればとてつもない効果を発揮するため、墓地対策呪文が多いかのように用いることができます。さらに、やり過ぎないためにソーサリー呪文が選ばれていて、インスタント速度の墓地対策がティボルト・プレイヤーを妨害する要素は排除されています。

 ソリン・デッキにはさらに、なじみのあるプレイヤーはほとんどいないであろうポータルのカード、《古えの渇望》が入っています。これはデュエルデッキが何を意図して作られたかという一つの好例です。それらを新しいプレイヤーに紹介したり、あるいは知られていないか覚えていないようなカードを既存のプレイヤーにもう一度紹介することができます。

 4連敗という結果が目立ってはいますが、私はこれらのデッキをプレイする素晴らしい時間を過ごしたことを改めて述べたく思います。確かに、マジックのゲームでは時折いらいらする状況もありますが、それは人なら普通にあることです。4ゲームの体験では結論を出し切れるものではありませんが、私がこれらのデッキに太鼓判を押すには十分です。


(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)

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