等速、倍速、あるいは三倍速――サイドボードの戦略と戦術 その2

更新日 Making Magic on 2013年 9月 26日

By Mike Flores

Michael Flores is the author of Deckade and The Official Miser's Guide; the designer of numerous State, Regional, Grand Prix, National, and Pro Tour–winning decks; and the onetime editor-in-chief of The Magic Dojo. He'd claim allegiance to Dimir (if such a Guild existed)… but instead will just shrug "Simic."

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 突然ですが問題です。見たところ、点数で見たマナ・コストが同じ2枚のソーサリー。どちらもデメリットはありません。ひとつはカードを2枚引く。もうひとつはカードを4枚引く。

……大きな成功を収めたのはどちらのソーサリーだったと思いますか?

 その昔、《連絡》はスタンダードでは定番のソーサリーで、とりわけマナ基盤を攻める青赤の《猛烈に食うもの》デッキでよく使われていました……それでも、《物読み》には及びません。《物読み》は、マジック:ザ・ギャザリング史上最も攻撃的なデッキにおいて欠かせないものだったのです。

 その理由は単純に、《物読み》のコストが実際には(とても実用的とは言えない)5マナではなかったためです。確かにカードの右上に書かれたコストはですが、《物読み》を実際に唱えるときのコストはであり、《連絡》と比べるよりはむしろ2枚とも手札に入る《手練》と考えるべきものです。親和デッキでは、常に5マナかかる《連絡》より《物読み》が優先されたのです!

 ここに、今まで皆さんが詳しく知らされてこなかった秘密が隠れているかもしれません。

「先んじてカードを使用できるかどうか」というのは、多くのゲームを決める何よりの要因です。軽いマナ加速が危険視されるのはこのためです(たとえマナ加速にカードを使っても、より多くのカードが使えるようになるのです)。私たちがマナスクリュー(によってカードが使えない状況)を嫌がるのはこのためで……また、コストの重いカードより軽いものの方が使われているのも同じ理由なのです。史上最高の赤いカードである《稲妻》(1マナインスタント)と、一部のデッキに仕方なく入るレベルの《火山の鎚》(2マナソーサリー)の関係と言えばわかるでしょう。

 このように、《稲妻》と《火山の鎚》の差ははっきりとしているかもしれません。では、次の2枚はどうでしょう?

殺害死の印

 昨年の基本セットに収録された《殺害》……人気カードとはとても言えません。待望のほぼ無条件に「何でも除去できる」カードだというのに、プレイヤーたちはことごとく2マナの除去を好んだのです。《破滅の刃》と《喉首狙い》が使える間は、それらが大活躍しました。《流城の貴族》や《ゲラルフの伝書使》のような脅威が広く使われるようになっても、それでも《夜の犠牲》の方が選ばれました。

 一方《死の印》は?

 《殺害》と同じ除去ではあるものの、汎用性の低いカードのことを予想するのは簡単なことではないでしょう。《殺害》がほぼすべてを対象に取れる一方、《死の印》はだいたい40%くらいが対象に取れません。《殺害》はいつでも使えるインスタントですが、《死の印》は動きの遅いソーサリーです。

 それでも、《死の印》は幅広いフォーマットで様々なデッキに採用されてきました……親和デッキや《サイカトグ》デッキなど、緑か白のクリーチャーを効率良く除去したいデッキはこぞって採用していたのです。

 一体どういうことでしょうか? 対戦相手が緑か白を使っていることがわかれば、《死の印》はこの上ない解答になってくれるということです。「1マナで何でも除去できる」カードより軽く優れたカードはないでしょう。色を制するにはどうすればいいか、皆さんすでにご存知だと思います――そう、《死の印》は主に「サイドボードから入れるカード」なのです。

 前回の「サイドボードの戦略と戦術 その1」では、「特定の色に対するサイドボーディング」に入ろうかというところで終わりました。「特定の色に対するサイドボーディング」は最も堅実で基本的なサイドボーディング戦略であり、受け身なものに分類されます。またこの戦略には、はっきりとした根拠があります。


点数で見たマナ・コストは同じでも、ひとつは(使った側も含めて)すべての土地を破壊し、もうひとつは相手の土地だけを破壊する……しかもインスタント・タイミングで! 昔の開発部は、これをいともたやすくやってのけたのです。

 特定の色に対するサイド・カードは、様々な形や規模のものが登場しています。前述した《沸騰》のような……まるで《精神の願望》とそれに続く一連の流れのように、対戦相手を災難としか言い様のない状況に置き……勝負を決してしまうカードがあれば、《紅蓮破》や《青霊破》みたいに信じられないほど軽く柔軟なものもあります――《紅蓮破》や《青霊破》のようなカードは、勝負の鍵となる呪文(《沸騰》といったものを――しかもコスト効率をもって!)を止めたり、通ってしまった危険なパーマネントを破壊したりと、どんなマッチアップでも使いたくなるようなカードです。また、《赤の防御円》や《因果応報》、《憂鬱》といった、それ自体が強力なパーマネントもあります。赤と黒はとりわけエンチャントの除去が苦手で、戦場に出されたエンチャントを相手に勝ち筋を見出すのは容易なことではありませんでした。白にとって《憂鬱》は《解呪》で難なく対処できるのですが……その《解呪》が5マナもかかるというのはやはり痛手であり、効果的なサイドボードとはかけ離れていました。

 特定の色に対するサイド・カードには、対戦相手に先んじるためだけに役立つものもあります。

反論

反論》 アート:Clint Cearley

 世界で最も優れたデッキ・デザイナーのひとりがMagic Onlineのアカウント名として「反論/Gainsay」を使用するより以前、これは名実ともに「青が青を」自ら対策するカードでした。そして今回『テーロス』では、《反論》が帰ってきます!

 《反論》は見た目以上の力を秘めています。2マナというコストが、《取り消し》の流れを汲む3マナの打ち消し呪文をほんの少し上回り、有利な交換を取れるのです。これまでも、青いデッキは《否認》や《払拭》といったスペルを用いてスタンダード環境で同じことをしてきました。その2枚は青いデッキをいち早く動けるようにして、同じ青いデッキに対する干渉手段を増やしてくれます。《否認》は《記憶の熟達者、ジェイス》を止めることができ、1マナの《払拭》はXがいくつであろうと《スフィンクスの啓示》を対処できるのです。何とも素晴らしい!

……では、それらを《反論》と比べてみましょう。《否認》は《霊異種》を止められず、《払拭》は《ラル・ザレック》を抑えられません。青に狙いを定めている限り――そして皆さんも青ならば――、《反論》に勝るものはないでしょう。

闇の裏切り

闇の裏切り》 アート:Nils Hamm

「自身の色への対策」と「速度」をテーマに掲げつつ、《闇の裏切り》は次世代の《死の印》や《人間の脆さ》と言えるカードです。極めて狭い範囲ですが、わずか1マナでクリーチャーを除去できるのです。

 《反論》のようなカードには、3マナの打ち消し呪文より効率良く動けたり、対戦相手をパーミッションの海へ沈めたり、といった用途があります……では《闇の裏切り》はどうでしょう? 黒の単体除去でメインデッキに採用されるのは、《破滅の刃》のようなカードです。「《破滅の刃》で除去されるだけだよね」というのは必ず耳にする話題ですが……しかし、必ずしもその話の通りになるわけではありません。《泥沼煎じの魔女》も《ザスリッドの屍術師》も、《破滅の刃》で「除去されない」カードとして挙げられます。《破滅の刃》のようなタイプのカードは、黒いデッキが同じ黒いデッキと当たった場合、大抵は単なる重荷になるのです。

 そこで最高の入れ換え候補となるのが《闇の裏切り》で、これはふたつの利点を同時にもたらしてくれます。除去に費やすコストが軽くなり、デッキの速度も上がるのです(そのため、より早くカードを使えるようにもなります)……さらに《破滅の刃》のようなカードを入れ換えるということは、戦力を増しながら前のゲームにあった制限を取り除くということであり、これで3つめの利点があるとも言えるでしょう!

狩人狩り

狩人狩り》 アート:Ryan Barger

 このサイクルの中でも、《狩人狩り》は私のお気に入りの1枚です。これはインスタントでないため奇襲性はないものの(きっとデベロップ・チームにもそうするだけの理由があったのでしょう)、軽いカードです。さらに、《狩人狩り》はただ軽いというだけでなく、ひとつで多くの役割をこなします。

狩人狩り》は最軽量の強化呪文であること

(このカードでオーラをつけたクリーチャーを除去しない限り)2対1交換が取れるようなものではないですが、続く攻撃を強化してくれます。つまり、待ち受けるブロッカーを排除しつつ、打点を少し上乗せすることができるのです。《巨大化》の3分の2の修整値は、とりわけクリーチャーを退かせつつ攻撃を通せるなら効果を発揮するでしょう。

狩人狩り》は(実質的に)緑の除去呪文であること

 緑という色の持つ制限のひとつとして、通常《稲妻》や《破滅の刃》のようなカードを持たない、というものがあります。そのため緑が持つ除去は、戦闘に基づいたものばかりなのです。《うなる類人猿》や《獣の襲撃》といったカードは、向かってきた攻撃クリーチャーを討ち取りながら反撃もでき、「カード・アドバンテージを得られる」除去と言えるでしょう。しかしこの手のカードはコストが重いだけでなく、相手にばれやすいという問題を抱えています。「へえ……手札は十分あるのに5マナ立ててターンを渡すのか? うーん……攻撃をやめようかな?」という風に。一方《狩人狩り》はどちらの問題もクリアしていますが、このサイクルの黒や白のもののように無条件で使えるわけではありません。クリーチャーが必要で、それは緑でなくてはいけないのです。うまくいかないことも多々あるでしょう。それでもしっかり噛み合えば、盤面が大きく変わりますよ。

狩人狩り》は実に緑のカードであること

 私はこのカードの収録を心より歓迎していますが、単にゲームプレイの観点から(クリーチャー同士の膠着状態を見事に切り開いてくれるのは間違いないでしょう)だけでなく、フレーバーの観点からもそう思うのです。きっと皆さんにも、緑と緑の戦いがどれだけ苛烈なものかを感じさせてくれることでしょう。ファイト!

異端の輝き

異端の輝き》 アート:Raymond Swanland

 事ここに及んで、今回の話題が『テーロス』に収録される「自身の色への対策に特化した」サイド・カードのサイクルについてである、ということは明白でしょう。

 その点では、《反論》もほぼ完璧ですね。《闇の裏切り》は(今回のものに限らない)別のサイクルの続きのようなカードで、これまで「緑と白のクリーチャー」や「人間」を対象に取ってきた中、今度は「黒のクリーチャー」を除去できます。《狩人狩り》は使って楽しいだけでなく、フレーバー的にも大成功のカードです。そして《異端の輝き》は、そんな《闇の裏切り》と《狩人狩り》を合わせたようなカードです。白という色は、《剣を鍬に》や《流刑への道》、あるいは《存在の破棄》といったように、過去にも優れた追放除去の数々を有しています……《異端の輝き》はそのテーマを継承しつつ、異なる源流が複合したものなのです。

ボロスの精鋭テューンの大天使

 白には、軽くて速いクリーチャーと重く強力なクリーチャーがどちらもいます。《異端の輝き》はそのどちらでも除去することができ、猛攻を留め強打を防いでくれるのです。また白いコントロール・デッキにとっては、大抵は他のカードの援護を受ける)《鬼斬の聖騎士》の堅い防御を打ち破り、機先を制するカードとなるでしょう。

拘留の宝球

 《拘留の宝球》を追放できるというのは格別に嬉しいところです――皆さんの優秀なカードを取り戻せるのですから。また、他にも《天使の協定》や《ひるまぬ勇気》といったゲームの決め手となるエンチャントも同様に追放の対象になります。

正義の勇者ギデオン

 プレインズウォーカーですか。よく考えてみてください。「パーマネント」ですよ。

太陽の神、ヘリオッド

「破壊不能」とありますね。なるほど。「異端(の輝き)」に笑顔でウィンクを送る必要はあるものの、そうすれば「神」をも倒せるのです。

 これまで見てきた他のカードと同様、《異端の輝き》がスタンダード環境に大きな影響を与えることは間違いないでしょう。白いデッキがパーマネントを繰り出してくるならば、他のフォーマットにも影響するかもしれません。このカードは2マナという軽いコストでありながら――つまり守るデッキの速度を上げながらも――、対戦相手がマナを注ぎ込んで繰り出したものとの差を感じずに交換を取ることができます。《瞬唱の魔道士》との相性も良好で……レガシーでの《ガドック・ティーグ》や《スレイベンの守護者、サリア》といった厄介なパーマネントを打ち倒すかもしれません。優良なカードが揃った今回のサイクルの中でも、《異端の輝き》は「万能」に最も近いと言えるでしょう。

峰の噴火

峰の噴火》 アート:Adam Paquette

 今回のサイクルの中でも「変わり種」と言えるのが、この《峰の噴火》です。他の4枚は、それぞれ特定の色のクリーチャーやその他パーマネントを、打ち消したり、破壊したり、格闘したり、追放したりします。しかし、このカードには「赤の」という言葉がどこにもないのです!《峰の噴火》は「色」については何もしません――基本的には《氷結地獄》の調整版を念頭に置いたものなのです。

 《峰の噴火》は単にそれ自身の戦略を対策するカードとなるのでしょうか? 多くの場合はそうだと思います。しかしときに、別種の意図も持ち合わせていると考えられます。このカードは、現代のスタンダード環境では強力すぎる――あるいは少なくとも軽すぎる――と考えられている《石の雨》と同じコストです。それも「ただの」《石の雨》ではありません――同時に《稲妻》も叩き込むのです。私たちが赤の呪文の強さを測るために使うものさしのひとつは「どれだけのダメージを与えられるか」ということですが、《峰の噴火》の場合は同時にカード・アドバンテージにも関係し得るのです。《狩人狩り》のようなカードが同系でのにらみ合いを打破するものだというのは、皆さんも予想できるでしょう。あるいは、どのようにしてどちらかの終了ステップに《反論》の撃ち合いが起こるのか、というのも思いつくところがあるでしょう。では《峰の噴火》は? 《氷結地獄》と同じ使い方も考えられるのです!

 私としては、《峰の噴火》は赤白青コントロールの《蒸気孔》や《聖なる鋳造所》に狙いを定め、《若き紅蓮術士》に続いて3ターン目に撃つ、あるいは「ビッグ・レッド」のようなデッキが序盤を戦うカードである、と想像しています。

 《峰の噴火》は、(これが対象とするのは土地であり特定の色のカードではない、という事実を差し引いたとしても)「特定の色に対するサイドボーディング」という括りに当てはまらず、だからこそ、今回のサイクルについての話を締めくくるのにふさわしい興味深いカードです。このカードがデッキの速度を上げることはまずないでしょう(とはいえ、客観的に見て対戦相手の動きを遅らせることは間違いありません)。また、これは勝利に直結するカードでもありません(他に直接ダメージ源となるカードが8枚以上あるような場合を除いて)。さらに、対戦相手の動きが速い場合は、このカードで窮地を脱することはできないでしょう(対戦相手がすでにライフを17点失っている場合は別です)。

 他の4枚とは違い、「特定の何かに対しての解答」ではないのです。

 《峰の噴火》は、ジャンドかグリクシスといったミッドレンジやコントロールに対しては恐ろしく効く可能性を秘めています――対戦相手にプレッシャーをかけ続け、やがて追い詰めることでしょう。反面、赤の高速デッキや「ビッグ・レッド」の同系戦に必要かどうかは、特に環境初期ではわかりません。対戦相手が《ラクドスの哄笑者》、《稲妻のやっかいもの》、《ボロスの反攻者》と並べてくるゲームは、《石の雨》+3点のダメージではどうにもできないのです。とはいえ《峰の噴火》が頼りにならないと言うつもりではありません……ひとたび優位に立てば、《峰の噴火》は対戦相手がカードを使うことを阻害し続け、優位を維持するために役立つことでしょう。

 今回ご紹介した『テーロス』の新カードたちは(ああ、ひとつは再録ですね)、きっと5枚とも競技レベルでのプレイでその姿を見ることになるでしょう。良いサイド・カードがしてきた役割を担えます。これらはデッキの速度や精度を高め、戦場を制する助けとなります――何はともあれ、このうち4枚は間違いなく。


(Tr. Tetsuya Yabuki / TSV Yusuke Yoshikawa)

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