編まれし軍勢 その1

更新日 Making Magic on 2014年 2月 5日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

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 プレビューも終わり、いよいよセットが公開された。となると? となると、少しばかり細かな視点で見たデザインの物語、カードの話をする時間だ。毎セットおこなっていることなので、諸君もどういう手法かを知っていることだろう。では早速。

 よく、デザイン上のハイライトは何かと尋ねられる。「カードをデザインしていて一番楽しくなるのは何ですか?」 デザイン中には多くの楽しいところがあるので、答えは一つには絞れない。しかし、諸君が決して想像することのない楽しいところとなると、この《アクロスの空護衛》が挙げられるだろう。説明しよう。

 ブロックをデザインする上で一番の難関は、ブロック全体を通して使おうと思うメカニズムの資源を管理することである。英雄化もその一例である。最初のセットではその必要性を判断し、そしてカードを作る。場合によっては、そのデザインのうち一部だけを使い、残りを後のセットで使うために取っておくこともある(授与においてどのようにこの処理をしたか、来週見ていこう)。しかし、たいていの場合は最初のセットが必要なカードを作るので、そして第2第3セットは自分でデザインを見いださなければならないのだ。

 『神々の軍勢』の作業中、我々は単純な英雄化カードを探していた。白なので、軽くて小さいクリーチャーで対象となったときに+1/+1カウンターを1個載せるということになる。私は、『テーロス』に1/1で飛行と英雄化を持ったクリーチャーがいないと言うことに気がついた日のことを覚えている。『テーロス』のデザイン中にはデザインしていたのだが、数字を調整して2/2(《天馬の乗り手》)になっていたのだ。つまり、魅力的で単純なカードが空席になっていたのだ。必要な者がまだ存在していないということを見付けたからといって何だ、と感じるかも知れないが、何年ものデザインの経験を踏まえて、私にとってはお気に入りの瞬間なのだ。しかし、もっと素晴らしい瞬間がある。それは、第3セットでそういう隙間を見付けたときだ。まあ、それについては『ニクスへの旅』のカードの話をするときに取り上げるとしよう。

 覚えておかなければならないのは、ゲームとしてのマジックには影響力があり、プレイヤーはその影響を受けるものだということである。影響力の1つが、4枚制限を踏まえるとフォーマットに存在できるカードの枚数には上限があるということである。プレイヤーは自分にとって最善のカードを4枚ずつ入れようとするのだ。通常、あるカードが同じコストのカードの中で最強であれば、プレイヤーは他のカードを散らすのではなくそのカードを4枚入れようとするものである。

 これが、《胆汁病》のような、逆方向に少しばかり推すカードが存在する理由である。時折、我々は同じカードばかり入れるプレイヤーを罰するようなカードをデザインしてきた。いつもそのようなカードを作っているわけではないが、他のカードを入れる代わりに同じカードを4枚入れることが正解でない場合もあると検討させるに充分な頻度でそういうことをしてきたのだ。

 また、このカードはデベロップ上の問題への回答でもあるということもわかっている。たとえば、《胆汁病》は、同じカードから作られたトークンは全て同じ名前を持っているので、トークンへの素晴らしい対策カードになる。何にせよ、セットにおいて《胆汁病》のようなカードが印刷されるのは非常に喜ばしいことだ。

 おそらく諸君のほとんどは《突進するアナグマ》を見て同じ質問が浮かぶことだろう。1/1でトランプルを持っているというのはどういうことなのか? 冗談の類? いや、確かにユーモアもあるけれども、それだけではない。このカードがこのセットに存在する理由は、『テーロス』ブロックはクリーチャーの強化を主眼としているからである。つまり、トランプルのようなパワーに基づく能力を持った小型クリーチャーは、普通のセットに比べれば強くなるのだ。

 《突進するアナグマ》が『神々の軍勢』に存在する理由はそこにある。より一般化すれば、「初めて《突進するアナグマ》のようなカードを作るのはなぜか?」 そして答えは、探求のゲームにおいて、使いこなすための方法を見付けるためには組み合わせるカードを探さなければならないようなカードが存在するのはいいことなのだ。パワー1のクリーチャーが持つトランプルに意味はないので、プレイヤーはそれを活用するために頭を捻る。こういう頭を使うことが好きではないプレイヤーもいるが、好きなプレイヤーもいるので我々はこういうカードを毎セット作るのだ。

 デザイン中によくあることの1つが、2つのデザイン上の問題を一度に解決できるポイントを見付けることである。『神々の軍勢』に入っている《エレボスの催促》の類のカードは、その一例だ。最初、2つの問題があった。1つめが、オーラの新しい役目を探さなければならないということ。『テーロス』のオーラはかなり戦闘寄りだったが、このブロックはオーラをテーマとしていたので、オーラができる新しいことを探さなければならなかった。2つめが、神啓という、クリーチャーがアンタップしたときに誘発する新しいメカニズムを活かさなければならないということ。もちろん、攻撃するのはクリーチャーをタップするための方法の1つだが、他にもクリーチャーをタップするための方法を探していたのだ。

 我々は調査の結果、この2つのベン図の重なり部分を見いだした。タップを必要とする起動型能力を与えるオーラは、攻撃以外に使えて、そして神啓クリーチャーを活かすこともできるのだ。プレイテストの結果、これは両方の問題をたった1つで見事に解決していた。

 プレイヤーが2つ以上の選択肢を持つカードのことを、モードを持つカードと言う。モードを持つカードのなかには、対象のタイプを選ばせるものもあれば、複数の処理のうちどれをするかを選ばせるものもある。モードを持つカードをデザインするにあたっては(2つのモードを持つ場合。3つ以上あるとまた話は変わってくる)、それらのモードが関係していると思わせることが重要となる。

 対象のタイプを選ぶだけの場合、効果そのものは同じなので自動的にそう思わせることができる。処理を選ばせるものの場合はもう少し注意が必要となる。《日の出から日没》は、2つの効果が全く異なるという点で興味深いものである。この場合の関連性は、その処理そのものではなく、何に効果を及ぼすかにかかっている。どちらの効果もエンチャントに影響を及ぼすものであり、その1つは破壊するという否定的なもの、もう1つは墓地から戻すという肯定的なものである。このカードがさらに美しくなっているのは、エンチャントを墓地に送る効果と、墓地から戻す効果がお互いに鏡像になっているからである。

 このカードは『テーロス』のデザイン中に作られたが、居場所がなかった。そういうとき、私は第2セットのリード・デザイナー(第2セットのリード・デザイナーは必ず第1セットのデザイン・チームに所属しているのだ)に、「このカードをプレゼントするよ」と言うのだ。ケン/Ken Nagleはこのカードを気に入ったので、喜んで自分のセットに入れてくれた。私はケンに、もしこのカードを使わないなら、『ニクスへの旅』のリード・デザイナーのイーサン/Ethan Fleisherに渡してくれと言ったのだ。

 このようなカードを何とかしてブロックに入れようとした理由は、2つあった。まず、こういったフレイバーがにじみ出ていて目立つようなカードは一定数必要だと信じているということ。次に、(第1セットのリード・デザイナーとしてではなく)主席デザイナーとして、デザイン上の資源を管理しなければならないということ。そして《目抉り》は、まさに『テーロス』ブロックで輝き、そこにしか居場所がないカードそのものだからである。このカードのメカニズムはフレイバーから由来したものであり、そしてこのフレイバーは『テーロス』でしか使えない。従って、私はそこにしか居場所のない優れたカードを、居場所たるべきブロックに入れるべく尽力するのだ。これは、将来のデザイン空間を守るための多くの試みの1つなのである。

 カードの要素を分類するとき、どこがデザインやデベロップの支配下でどこがクリエイティブ・チームの支配下なのかは非常に明確である。デザインとデベロップはマナ・コスト、ルール・テキスト、パワー/タフネスを担当し、クリエイティブ・チームはカード名、アート、フレイバー・テキストを担当する。両者の重なりと言えるのは、カードのタイプ行、特にクリーチャー・タイプである。ミノタウルスはその好例と言える。

 デザインとデベロップは『テーロス』ブロックではあまり部族を扱う予定はなかったが、それでも部族はあるし、部族ファンのプレイヤーが一番興奮しているのが何かは明らかだった。そう、ミノタウルスだ。なぜ明らかかというと、ギリシャ神話を元にしたブロックを作っていると告知したとき、プレイヤーが『ホームランド』の《Didgeridoo》を探し求めたからである。


 私は、プレイヤーが弱いカードに注目したとき、そこに注意を払え、とよく言っている。《Didgeridoo》は弱いカードだが、多くのプレイヤーはこのカードを求めたのだ。なぜか? なぜなら、これはミノタウルスを使った部族デッキに需要があるからだ。それはつまり、このブロックで満たすべき需要がそこにあるのだ。

 しかし、1つ問題があった。デザインとデベロップがミノタウルスをメカニズム的に仕上げるには、クリエイティブ・チームが考えるミノタウルスのフレイバーとすりあわせなければならない。問題は、パワーやタフネスだった(これも重なり部分の問題だと言える)。デザインやデベロップはミノタウルスをカーブに沿って、つまりあらゆるマナ・コストに配置したいと考える一方で、クリエイティブはそんなに小さなミノタウルスを作りたくなかったのだ。『テーロス』のデザイン中、彼らは「ミノタウルスの5の規則」を提示した。曰く、ミノタウルスが充分頑強だと感じられるよう、パワーとタフネスは合計5以上でなければならないというのだ。

 ミノタウルス・デッキにはどうしても2マナのものが必要で、2マナで2/3や3/2のものを作るのは難しかった。『神々の軍勢』では、デベロップ・チームはクリエイティブの元に赴き、そして「5の規則」を数枚で破る方法はないかと尋ねたのだ。《悪魔の皮の喧嘩屋》はその結論の1つである。妥協点は、フレイバー的に妥当な形で小さな(そして軽い)ミノタウルスの存在が認められたということである。こうして、『神々の軍勢』には『テーロス』ブロック初となる2マナのミノタウルスが登場したのだ。

 私のブログ(Blogatog)の読者諸君は、カラー・パイにおける赤の役割に関する議論についてご存じのことだろう。赤の範囲を広くしようと、様々な提案がなされてきた。私の気に入ったものの1つが、赤は一時的なら他の色の範囲に踏み込むことができるというものだ。これは、例えば《紅蓮の達人チャンドラ》の2つめの能力の根拠である。

 《悪魔の皮の魂結び》も同じような範囲のものである。通常、クローンは青である(公正を期すために添えると、《鏡割りのキキジキ》に代表されるように赤にもずっとそういう能力はある)が、赤のコピーを1ターンだけ残すという形で試してみることにした。ちょうど、カードは引けるが即座に唱えなければならないというのと同じようなものである。赤の今後の展開に興味があるなら、ここに注目してくれたまえ。

 今回の記事の主題の1つが、『テーロス』のデザイン中にデザインされたがファイルに残らなかったものの多さである。その中の1つがミダス王であった。ミダス王は、その手に触れたものを全て黄金にする力を神々に授けられたが、その結果恐ろしい目に遭った男である。『テーロス』では、ミダス王を表す白のクリーチャーを作った(ただし印刷には至らなかった)が、《金箔付け》はその物語を別の麺から描いたものである。クリーチャー・カードではなく、金に変える能力を除去呪文として描いたのだ。やっかいなクリーチャーを止めたい? なら、金にしてしまえばいい。その後は、高価ではあってももはや実用的でないクリーチャーで何かを買えばいい。マジックにおける通貨はマナなので、マナにしてしまうことになる。

 能力の第1色・第2色という話はしばしばしているが、その逆、色の第1効果・第2効果という話はあまりしていない。第1効果とは、その色がいつでも使う、しばしば全てのセットですることである。白の第1効果は、エンチャント除去である。全てのセット(あるいはほとんど全てのセット)で、白には大抵コモンにエンチャントを破壊するカードが存在する。

 一方、エンチャントを再利用する(墓地から手札に戻す)のは、白の第2効果である。つまり、白にはその能力があるが、毎セット、毎ブロックでするわけではない、ということを意味する。必要に応じて白にはそういう能力が与えられるということだ。具体的には? 《グリフィンの夢掴み》を例に取ってみよう。『テーロス』はエンチャントをテーマとしているので、エンチャントは通常より大きな役割を占めることになる。セットにエンチャントを扱う方法が充分あるようにするため、デザイナーは第1効果・第2効果を問わずエンチャントを使うあらゆる能力を探すことになる(めったにやらないものを第3効果と呼ぶこともできる)。

 白のエンチャント関連のものを探し、エンチャントの再利用は第2効果である。興味深いことに、エンチャントの再利用を使う他の場合を考えると、墓地をテーマとしたセットということになる。

 第2、第3セットの役割の中には、前のセットを超える方法を探すということが含まれる場合がある。『テーロス』にはこんなカードが存在した。



 コモンの《信条の戦士》は、対象になったときに+1/+1カウンターを2個得る。アンコモンの《ケンタウルスの戦上手》は、対象になったときに+1/+1カウンターを3個得る。それを超えるには? 4個にしてもいいし、他の方法を見付けてもいい。それが《レイナ塔の英雄》のデザインにおいて下された判断である。

 数年前、デベロップは『デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ』のためにいくつかのデッキを作った。ただし、その中の2つは既存のどのプレインズウォーカーにも合わないものだった。後のクリエイティブ・ディレクターであるブレイディ・ドマーマス/Brady Dommermuthは、問題のデッキにフレイバー的に合うようなプレインズウォーカーを作って、人気が出たら居場所となるセットを探そうと提案した。

 キオーラは、水をテーマとした緑青デッキのために作られた。プレイヤーは彼女(や、同じく必要に応じて作られた《ラル・ザレック》)を気に入ったのか? もちろん。そこで我々はなるべく早く、キオーラとラルはいつ登場するのかを考えなければならなかった。

 ここに問題があった。人気が出るかどうかを待つということは、即座にセットに登場させられないということである。我々は数年先の仕事をしているのだ。結局、ラルやキオーラをセットに入れるのは骨だった。我々は、ただの顔見せではなく、ちゃんと存在意義があるセットに入れることに決めていたのだ。

 『ラヴニカへの回帰』は、ラル・ザレックを登場させるのに最適だと思えた。彼はラヴニカ出身のイゼット団の魔術師なのだ。キオーラはシミックと色が合うから『ギルド門侵犯』に入れようという議論もあったが、彼女はまったくシミックらしくはなかった。しかし、ギリシャ神話の世界をやると決まって、ようやく答えが手に入った。ギリシャ神話は海の怪物達の物語であり、彼女を登場させる次元に相応しい(キオーラはテーロス出身ではない)。

 あと必要なのは、プレイヤーがキオーラについて問い合わせてくるのに何年か耐えるだけだった。緑青のプレインズウォーカーを作っていなかったのは欲求を高めるためだったので、ついに彼女を『神々の軍勢』で登場させられたことを嬉しく思う。彼女は一躍私のお気に入りのプレインズウォーカーとなった(私はブログでもそんなことを言っていないけれどもね)。

 信心は拡大メカニズムとして知られている(デベロップのインターン、アダム・プロサック/Adam Prosakは昨年12月、これについて語っている)。信心をデザインするにあたって、どれだけ効果が拡大するかは必ず意識する。その色のマナ・シンボルが1個あれば1増え、2個あれば2増えていくのだ。ほとんどの場合、マナ・シンボルがあればあるほど効果は増えることができる。しかし、《湿原霧のタイタン》は、信心に他のありかたが存在することを示している。

 《湿原霧のタイタン》はいくつかの面で違っている。1つめに、効果は生成されない。信心は何かを作るためではなく、何かを減らす――この場合、唱えるために必要なマナを減らしている。2つめに、上限が存在する。あなたのパーマネント上に黒マナ・シンボルが6つあれば、それ以上は強化されない。そのため、黒単色デッキでなくても入れることができる(黒単色で働かないという話ではない)。

 デザイナーとしては、予想と反した形でメカニズムを使い、しかも捻っている、《湿原霧のタイタン》のようなカードは魅力的だ。

    語るべき話はまだまだ

 今日はここまで。まだ頭文字Mまでしか来ていないので、『神々の軍勢』のデザインについての話を終えるのは次回になる。いつも通り、今回の記事に関する諸君のコメントを待っている。メール、掲示板、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+)で聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回……あー、もう言ったな。

 その日まで、『神々の軍勢』のカードがあなたにも物語を紡ぎますように。


(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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