2013年6月版
第3週・コンボ+その他編

更新日 Making Magic on 2013年 6月 27日

By 行弘 賢

 皆さんこんにちは!

 今回で最終回となる特集記事、第3週目は「コンボ+その他」のデッキ紹介をさせていただきます。

 前々回のビートダウン特集から、前回のコントロール(ミッドレンジ含む)までをご覧になっていない方は、そちらを読んでいただいた後に今回の記事を読んでいただくと、より分かりやすいと思います。

 前回は目がくらむようなカードパワーを存分に振り回すコントロールやミッドレンジデッキを紹介させていただきましたが、今回はカードとカードの繋がり、「シナジー」を重視した「コンボ」デッキの紹介になります。それでは早速デッキの方を紹介させていただきます!

呪禁バント

Lister1991 (4-0)

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呪禁バントとは?

 デッキの目的は、呪禁を持つクリーチャーにクリーチャー強化のエンチャントを貼り付け、殴る。とても簡単で明確なコンセプトのデッキです。

 これだけ聞くと、ただのビートダウンデッキのようにも見えますが、実はそんなことはありません。

 デッキに採用されている呪禁持ちのクリーチャーは2種類で、《不可視の忍び寄り》、《聖トラフトの霊》がほとんどの場合4枚ずつ積まれています。

不可視の忍び寄り聖トラフトの霊

 これらに強化エンチャントである《天上の鎧》や《怨恨》、《幽体の飛行》等を纏わせるだけで、とんでもないクロックを瞬時に作ることができます。しかもそのクロックはほとんどの場合トランプルや飛行を持ってしまうので、ブロックすることで時間を稼ぐこともできません。

 そう、このデッキはビートダウンの枠を超えた爆発的に対処不可能なクロックを持つクリーチャーを作り出す「コンボ」デッキなのです。

天上の鎧怨恨

 呪禁持ち以外のクリーチャー達の役割として、《アヴァシンの巡礼者》は、序盤からマナを円滑に供給することで、素早く《聖トラフトの霊》に繋げたり、《不可視の忍び寄り》に複数のエンチャントを付けたりするのに役立ちます。

 《ロクソドンの強打者》は素のサイズが大きなことからビートダウン相手に強く、メインデッキでビートダウンが《ロクソドンの強打者》を除去するのは難しいため、エンチャントを付けて殴るだけで簡単に勝てることもあります。

 このデッキがドラゴンの迷路発売後のスタンダードで活躍し始めた理由として、《復活の声》、《ひるまぬ勇気》の2種類のカードがデッキを大幅に強化したことによるものが大きいです。

 《復活の声》は《ヴェールのリリアナ》のような生け贄を強要してくるカードに対して死亡時効果が非常に効果的で、呪禁クリーチャーがいない場合に自分のクリーチャーにエンチャントする際に対応して除去されたとしても、その能力でトークンが出るため損をすることがなく、非常にデッキに噛み合ったカードと言えます。

復活の声

 《ひるまぬ勇気》は元々あった《オルゾヴァの贈り物》を押しのけて採用されているほど、デッキに噛み合った強化エンチャントです。

 《オルゾヴァの贈り物》と大きく違うのは+2/+2という修整値で、《不可視の忍び寄り》にエンチャントした時にビートダウンに対して、殴り合いすることができるケースが多くなるという利点があります。

 修整値が大きくなるほど除去されなくなるというのも重要な点で、例えば《復活の声》にエンチャントした場合には《灼熱の槍》で除去されなくなります。こういった除去耐性の面で見ても《オルゾヴァの贈り物》よりも《ひるまぬ勇気》の方が優れていますね。

ひるまぬ勇気

『ドラゴンの迷路』により大幅強化されたこのアーキタイプは、今後も要注目ですね。


メタゲームにおける立ち位置

 基本的にビートダウン全般に対しては《ひるまぬ勇気》と呪禁クリーチャーが初手にあればダメージレースにならないためほぼ勝ちで、さらに《復活の声》や《ロクソドンの強打者》のようなビートダウンが手を焼くクリーチャーが多いため、有利です。

 さらに、「全体除去を持たないボードコントロール」に近いアーキタイプであるミッドレンジ系のデッキに対しても、ダメージレースになることもあまり無いため、非常に有利です。

 逆に《終末》や《至高の評決》等の全体除去に対しては非常に脆いため、トリコロールのようなコントロールとは相性が悪いです。

アリストクラッツ

kazuyamishima (4-1)

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アリストクラッツとは?

 プロツアー「ギルド門侵犯」にて優勝したデッキが元で、その後様々な変化があり現在の形になっています。

 大きく変化している点として、《教区の勇者》等の人間のシナジーが無くなり、《冒涜の行動》がメインデッキに採用され、アグロ寄りだった構成から、ミッドレンジに近い構成になっています。

 デッキの動きは、基本的には「生け贄」を重視したシナジーが多く、アリストクラッツ(=Aristocrat/貴種)のデッキ名の通り、《ファルケンラスの貴種》と《カルテルの貴種》の2枚がデッキの中心です。

ファルケンラスの貴種カルテルの貴種

 この生け贄と噛み合うカードとして、中心となるのは《血の芸術家》です。《宿命の旅人》や《未練ある魂》のようにクリーチャーの数が並びやすいカードが多いため、《血の芸術家》と各種貴種がいるだけで、ライフを一気に削りきることもできます。

血の芸術家

 さらに《スカースダグの高僧》や《悲劇的な過ち》のような「陰鬱」を持つカードも「生け贄」とのシナジーがあり、容易に陰鬱することができるため、任意のタイミングで陰鬱の効果を発動させることができます。

 そのため除去が薄い相手に対して《スカースダグの高僧》は2マナで実質毎ターン5/5飛行を生み出すことができることが多く、そういった相手には非常に活躍しますね。

スカースダグの高僧

 このデッキにはこの生け贄のシステムの他に、もう一つ大きなコンボがあります。それは《冒涜の行動》と《ボロスの反攻者》により13点のダメージを対戦相手に与えるコンボです。

冒涜の行動ボロスの反攻者

 一見派手なだけに見え、そこまで強くなさそうなコンボですが、クリーチャーが並べあうようなマッチアップでは《冒涜の行動》が軽くプレイすることもできるために、フルタップした相手にいきなり両方プレイすることで対戦相手に大ダメージを与えるケースも良くあります。

 《冒涜の行動》は《血の芸術家》とも相性が良く、《ボロスの反攻者》がいなくとも、お互いに数が並び合えばそれだけで大ダメージを与えることも可能です。

 このように、アリストクラッツは小さなシナジーから大きなシナジーまでたくさん詰め込まれたテクニカルなコンボデッキですが、《ファルケンラスの貴種》や《イニストラードの君主、ソリン》等単体で強いカードも入っており、普通にビートダウンすることもできます。


メタゲームにおける立ち位置

 基本的にクリーチャーのサイズが小さいので、グルールビートダウンのような序盤からサイズの大きなクリーチャーで殴りきるようなデッキに対しては不利がつきます。

 除去が薄いミッドレンジ系のデッキはシステムクリーチャーに触ることが難しく、《ファルケンラスの貴種》にも対処する手段が乏しいので、有利なデッキが多いと思います。

 コントロールに対してはこちらのシナジーが《至高の評決》により潰されてしまうので、若干不利ですね。

 最近では《反逆の印》をメインに採用することでビートダウンとダメージレースをすることを可能にしたタイプも活躍しています。

反逆の印

ジャンククラッツ

MagicLair (4-1)

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ジャンククラッツとは?

 アリストクラッツには《ファルケンラスの貴種》がいますが、ジャンククラッツには《復活の声》があります。《ファルケンラスの貴種》を諦めて《復活の声》を採用するほど、このデッキは《復活の声》を現スタンダードで一番上手く使えるデッキといえます。

復活の声

 アリストクラッツと同じで「生け贄」と「陰鬱」のシナジーを中心としたデッキですが、動きとして大きく違う点は、基本的に「ビートダウン」デッキという点です。各種シナジーは本家と同じなのですが、《ボロスの反攻者》と《冒涜の行動》のような大技が無いので、しっかりと殴りきるのが大筋です。

 デッキのほとんどのクリーチャーが除去耐性を持っているので、クリーチャーが横に多く並びやすく、《イニストラードの君主、ソリン》や《ガヴォニーの居住区》等の全体強化とも相性が良いですね。

イニストラードの君主、ソリンガヴォニーの居住区

 生け贄のシステムとして《ファルケンラスの貴種》の代わりに採用されているのが《縞痕のヴァロルズ》です。伝説であることや、デッキのクリーチャーが小さいために活用の能力を最大限に活かすのが難しかったりと、《ファルケンラスの貴種》ほどの活躍は見込めませんが、それでも生け贄のシステムが強いことと、粘り強い攻めをすることができるため、2〜3枚採用されています。

縞痕のヴァロルズ

 このデッキの中心は何と言っても《復活の声》です。横に並ぶデッキの性質上、《復活の声》から出るエレメンタル・トークンは凄まじい勢いでサイズが膨れ上がります。序盤に相討ちしてしまい、エレメンタル・トークンを放置しようものなら、すぐさま痛いしっぺ返しを喰らうことになります。

 さらにこのデッキは生け贄のシステムもあるため、任意のタイミングで《復活の声》をエレメンタルトークンへと変身させることができます。これにより一気にクロックアップすることもでき、対戦相手の意表を突く動きも可能です。

 細かなシナジーは基本的にアリストクラッツと同じなものの、全く違うデッキと思いながら対戦した方が良いですね。

メタゲームにおける立ち位置

 ビートダウンに対しては序盤のクロックをいなす除去耐性のあるクリーチャーが多いため、若干有利だと思います。

 デッキのほぼ全てのクリーチャーが除去耐性を持っているため、コントロールに対しては有利だと思います。

 細かく動くものの、序盤から強いプレッシャーをかける手段に乏しいため、ミッドレンジ系のデッキには若干不利だと思います。特に《未練ある魂》に依存する部分も大きいので、《雷口のヘルカイト》には手を焼くことが多いですね。除去手段が乏しいジャンクリアニメイトには有利だと思います。

ティムコントロール

 それでは最後に、これまでにご紹介した環境を踏まえて、オリジナルのデッキをご紹介したいと思います。

ティムコントロール

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ティムコントロールとは?

 このデッキは《イゼットの静電術師》や《高原の狩りの達人》を主軸としたシステムクリーチャーを用いてボードをコントロールするデッキです。

 《イゼットの静電術師》は現環境のビートダウンに対して非常に効果的です。グルール以外のほぼ全てのビートダウンにタフネス1のクリーチャーが2種類以上、8枚以上採用されていることが多いためです。

イゼットの静電術師

 その他のミッドレンジデッキに対しても、《アヴァシンの巡礼者》のようなマナクリーチャーが入っているケースが多いため、腐ることは少ないです。アリストクラッツ系のデッキには言わずもがなですね。

 以上の理由により現環境で《イゼットの静電術師》が強いことに注目し、組みあげたのがこのデッキです。

 プレインズウォーカーを多めに採用しているのは各種ミッドレンジやコントロール系に強くするためです。ミッドレンジやコントロールはクリーチャーでプレッシャーをかけるのが苦手な傾向にあり、プレインズウォーカーに弱い性質があります。

思考を築く者、ジェイスラル・ザレック

 《ラル・ザレック》に関しては、《イゼットの静電術師》をアンタップすることで2点ダメージを与えることができるというシナジーもあります。

メタゲームにおける立ち位置

 除去を多く採用しており、対処できなければそれだけで場を制圧できるシステムクリーチャーもあるため、ビートダウンには有利です。ただし、《イゼットの静電術師》がそこまで効果的に働かないグルール・ビートダウンには不利です。

 ミッドレンジ系のデッキには、《イゼットの静電術師》がそこまで効果的ではなく、こちらのカードパワーが若干不足しているので、やや不利だと思います。ただしジャンクリアニメイトのようなタフネス1を多く採用しているデッキには有利だと思います。

 コントロールに対してはメインデッキは腐るカードが多いため若干不利だと思います。

 アリストクラッツ系のデッキに対しては《イゼットの静電術師》が非常に効果的なので、有利ですね。

まとめ

 呪禁バントはビートダウンやミッドレンジに強いため、それらのデッキはサイド後に《天啓の光》のような対策をしっかり取っておくと良いですね。全体除去に弱いという点もあるので、全体除去を採用するのも良いかもしれません。

天啓の光至高の評決

 アリストクラッツはミッドレンジに強いものの、グルールビートや《至高の評決》を採用しているコントロールには苦手なので、それらが多い環境では構成を変えることも必要です。例えばよく見かけるのが《スカースダグの高僧》を抜いて《イニストラードの君主、ソリン》を増やしたり、《反逆の印》を採用したりですね。

 ジャンククラッツは除去耐性があるクリーチャーが多いのでコントロールには有利ですが、その反面ミッドレンジ系のデッキにはアリストクラッツと比べて少し不利です。こちらも構成を変えることが可能なデッキなので、細かい調整が必要ですね。


 さて、今回はコンボ+その他ということで、最後は僕のオリジナルデッキを紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか?

 3週にも渡る連載となりましたが、今回の記事で皆さんのスタンダードへの理解度がすこしでも深まってくれたら幸いです。

 『マジック基本セット2014』も発売が約1か月後と近づいており、新環境も楽しみですね!

 皆さんまたいつかお会いできる日を楽しみにしています。それではまた!

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