なかしゅー世界一周2012・第22回:Inside the CFB Part3by 中村 修平

前回と話が前後しますが、閑静な邸宅へと移動した我々チャネルファイアーボール勢。
ルイス・スコット=バルガス、パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ、ブライアン・キブラー、ジョシュ・ウッター=レイトン、ベン・スターク、デビット・オチョア、コンリー・ウッズ、エリック・フローリッヒ、マーティン・ジュザ。そして私に、今回のゲスト参加者、パトリック・チャピンの11名。
ここでやるのはもちろん、ゲームを装った血を血で洗う恐怖の運命逆転マネーゲーム、な時も極稀にありますが、目下我々が取り組まなければならないのはプロツアーに向けてモダンのデッキを探し、構築すること。
日曜日から週末のグランプリを挟んで翌週の水曜日まで、デッキを作っては壊し、作っては壊しの作業を延々と繰り広げることになるのです。
デッキを作る
と仰々しく言ってはみましたがモダンの範囲は広大なもの。かつてあったデッキ、そして今あるデッキをいちいち試していてはとても時間が足りません。
それは、デッキを作るという作業が、ただデッキを製作するということだけではなく、
「このデッキは強いのか、あるいは強くなる可能性があるのか、その為にはどのように研磨すれば良いのか」
という工程を自分達のデッキプールにあるデッキからの対戦によって調整していく作業だからです。
1つデッキを作るということは、これまでに作ったデッキほとんど全てと対戦調整をするということであり、どんどん作業量が累乗していきます。いくらチャネルファイアーボールが10人を超える大所帯チームといえども、それほど余剰時間に恵まれている訳ではありません。

ではどうするかというと、本番のプロツアーで使われるであろうデッキの絞り込みをした上で、対戦相手になるであろうデッキを考えつく限り用意するところからスタートします。
自分が使うデッキではありません。対戦相手が持ち込んでくるであろうデッキ、をです。要は目の前に座る対戦相手に勝てるデッキ、ベターであればそれで良いのです。
ベストなデッキがあるに越したことはありませんが、ベストでもベターでも勝ちは勝ち。芸術点が稼げそうなデッキはコンリーなり、チャピンに任せるに限りますし、そもそもそのデッキが本当にどうしようもなければ禁止されてしまいます。
ということで、合宿の前半はプロツアーにいそうなデッキを作るところから。
例えばプロツアー直近のモダン大会だったプレイヤー選手権のデッキ。ジャンドやZooや親和、青白中速コントロールは安定した強さがあるので継続して使ってくるプレイヤーがいそうですね。
プレイヤー選手権デッキについては明確に私達にアドバンテージがあります。
何せ、当の本人達が使ったデッキなのです。変更したいと思ったところを使用した当の本人から直接聞いて、あるいは本人が直接アップデートするのですからこれほど確かなことはありません。
こちらの方はそのまま使っていた本人がデッキを用意するという形でデッキプールに2セットずつ用意されました。
それともうつ、プロツアーに向けて試さなくてはいけないデッキがあります。
《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》デッキです。
プレイヤー選手権当時は使用禁止カードに指定されていたので全くの未知数。類似のリストを探そうにも、モダンが整備された時点からの禁止だったので、エクステンデッドにまで遡らなければ見つからない有り様です。
しかし7〜8枚の土地がある状態で《風景の変容》を打てば勝ってしまうというデッキが弱い訳がありません。とりあえず過去のリストから2種類、青緑型と赤緑型のレシピを持ちだし、それが調整デッキグループ入り。
それに加えてマジックオンライン上で常に一定勢力がいるデッキ達、ウルザトロン、白単ライフゲイン、赤バーン、出産の殻、毒殺といったものに加えて、各人の好みのデッキを投入。
例えばコンボ好きパウロは《ゴブリンの電術師》入りストームであったり、ジュザなら《詐欺師の総督》+《鏡割りのキキジキ》コンボ。ルイスコはヤソの薬瓶デッキ、私なら津村が送ってきた青赤のメイン《血染めの月》入りコントロールを回してみたりといった感じですね。
調整初期段階での印象は、ラヴニカへの回帰でデッキに入るレベルのカードはほとんどないという点でした。
ひとつには新キーワード能力がどれも弱いということがあります。単純に現時点ではリミテッドレベルの域を出ない留置、活用、居住。解鎖をしてもまだモダンの標準スペックには届かず、超過はコンセプト自体には魅力を感じるものの、これでなくてはと言えるほどの押しがありません。
《ミジウムの迫撃砲》が《稲妻》や《炎の斬りつけ》を押しのけてデッキに入るためには、こちらの方が決定的に優れているという理由付けが必要なのです。通常状態ではこれといった優位がつかず、6マナは遠すぎました。
これは当初期待されていた《突然の衰微》についても同じことが言えました。
確かに打ち消されない能力が役にたつ時もあるし、対象がクリーチャーに限らず非土地パーマネントであるというのも《頭蓋囲い》や《血染めの月》、《ヴィダルケンの枷》を破壊するときに便利なこともある。
しかし《終止》と違って《修復の天使》を屠ることはできず、スロット的に入れ替えとなる《大渦の脈動》で対処することができたカードが軒並み駄目になるのは問題ではないか、むしろそのことを見越して4マナ以降のカードをフィニッシャーとして採用されるのでは?
という議論にかなりの時間を費やしたのも覚えています。
全ての効果が同系統の呪文より1マナ重い《イゼットの魔除け》のみが、状況に応じての使い勝手の良さから評価された以外は、新カードの大体が変更前のカードに戻ったり、帰ってきたりを繰り返していました。
そんな中で今回ゲスト参加、何時も奇抜なデッキを持ち込んで来るパトリック・チャピンが今回もヘンテコデッキの仮組み、使用済みドラフトカードを代理カードにしてのオール代理デッキで持ち込んできました。
復讐蔦ドレッジです。
パトリック・チャピンの復讐蔦ドレッジ(初期型)
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かなりバージョンの改定が行われたのでうろ覚えですが、初期型はこんな感じだったと思います。ゼンディカーブロックがスタンダードにあった頃の復讐蔦デッキから、各時代のドレッジ御用達、そして新カード達を加えたもの。《墓所這い》の墓地からの登場が『唱える』なのに着目して、墓地に落とした《復讐蔦》共々、一挙に殴りかかっていく構成です。
元が多色なだけにカードの取捨選択の幅が大きく、チャピンが毎日少しずつ構成を変えては先手10本、後手10本の乱取りをやっていました。
調整初期段階は、各々がこんな感じで好きなデッキを回すか、誰かのリクエストで対戦したいデッキ、例えば「対ビートダウンとの相性を見たいのでZooとやってくれ」といったような形で推移しています。
私がその頃担当していたのはプレイヤー選手権で使っていたということもありスパーリング相手としてジャンド、青赤津村デッキ、そしてマジックオンラインで目についた緑黒タッチ青の毒デッキです。
ジャンドについてはもう少し後で大きな変化があったのでそこで言及するとして、他の2つのデッキについて少し話すとしましょう。

津村から教えてもらった青赤《血染めの月》入りコントロールですが、《瞬唱の魔道士》の自由度が大きいという点と、メインから《血染めの月》という点は大いに評価されたのですが、「クリーチャーを捌く能力に難ありでどっちつかず」という意見が多く聞かれました。
原型の青緑赤中速からより重い打ち消しカードの投入、代わりに除去が《稲妻》4枚と《ヴィダルケンの枷》が3枚というのはちょっと心許ないのではないのか、《タルモゴイフ》が担っていた壁兼直接的な脅威はやはり色を足してでも入れる価値があるのではないかという意見を受けて、緑を復活させ《タルモゴイフ》と追加の除去としても機能する《イゼットの魔除け》を採用したところで一端開発は終了しました。
毒殺デッキについては、今だからこそ言えるのですが、もう少し私が掘り進めておくべきだったと思います。
当時マジックオンライン上で主流だったのは、20体程度の感染持ちクリーチャー、同じくらいの《巨大化》系呪文、そして土地が20枚という非常に大雑把な構成でした。 私がコピーしたのもその構成だったのですが、この形は、デッキが廻る時は凄まじい強さを発揮するが、廻らない時は全く廻らない、という代物だったのです。

それもそのはず、非常に簡単にこのデッキの構造を分解すると、1体のクリーチャーと巨大化系呪文、《古きクローサの力》であれ《地うねり》であれ+4/+4修正を2発、そしてそれ以外の何かでもう1つ毒を与えれば勝ちというコンボデッキなのです。
それを成し遂げるのに20枚のクリーチャーと20枚の巨大化というかなり不釣り合いな数、更にかなり厳しい色マナ供給体制――クリーチャーを出すのには緑、黒、青と満遍なく必要なのに対して、いざ巨大化を打つ段になると緑マナが出る土地以外は必要とせず、むしろリスクとなる――となるとデッキが不安定になるのは当然の帰結です。
しかもこの形に拘る以上、ラヴニカへの回帰で入りうるカードは見つからないわけで、
「デッキとしては強力だけど、自分は使いたくない」
という意見を皆に出してしまいました。もしそこでもう1つの毒デッキ、たった1回だけデイリーイベントで入賞していた青緑型の毒デッキを試していれば結論は違ったものになっていたかもしれません。
デッキを選ぶ
この『強いとは思うけど使いたくない。』というのは、今回の調整中に最もよく言った言葉だと思います。
調整も中期に入り、ある程度デッキのアップデートが一巡すると、今度はその中で明確に強いデッキ探しです。この場合の強いというのは「使用率上位であろうデッキに対して相性が良いデッキ」ということで、そうしたデッキを見つけることになります。
その中で圧倒的に強いデッキというのは往々にして出てくるには出るのですが、やはりそういうデッキに対しての評価で二言目に出てくるのは、『強いとは思うけど使いたくない』なのです。
多くの理由はサイドボード後の致命的なまでの脆さです。
例えばパウロが調整していた《ゴブリンの電術師》入りストーム。メイン戦では圧倒的な勝率を誇りましたが、サイドボード後の戦いになると《炎の中の過去》用の墓地対策を入れられて、苦戦を強いられてしまいます。
これはストームだけの問題ではないのです。おおよそほとんどのコンボデッキが、この「2戦目以降はどうすれば良いのか」という問題に直面して、有効と思える解答が出せずにいました。
この段階で解答を出せないとして諦められていったデッキの中には、ストーム、サニーサイドアップ、そしてチャピンが延々と調整していたドレッジデッキ等も含まれていました。下のデッキはその中でコンボ担当のパウロが最後まで諦めずに調整を続けていたデッキ、グリセルシュートです。
チャピンのドレッジデッキや津村の《瞬唱の魔道士》を使いまわすという思想からインスパイアされたギミックが積まれていて、可能性はあるのではないかとも思いましたが、結局サイド後という壁は超えられなかったようです。
パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサのグリセルシュート
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同じように、ですがコンボデッキとは違う理由で『強いと思うけど使いたくない』という共通認識が出来上がっていたデッキがあります。
青緑型、赤緑型の2種類の《風景の変容》。ヴァラクートデッキです。
青緑型については打ち消しのサポートを受けつつマナが伸びるまで耐えてからの《風景の変容》、ただ土地を並べるだけの赤緑型と対戦して明らかに有利がつき、変容を撃ちさえすれば勝ち。しかも《ハリマーの深み》のお陰でかなり安定的に必要なターンに変容を用意することができるというかなり理想とも言えるデッキでした。
このデッキを『使いたくない』という評価にまで落としてしまった理由はただ1つ。
サイド後の《殺戮遊戯》をどうするのか、この点です。
主に打ち消しで土地が並ぶまで耐え忍ぶ青緑型にとって、《殺戮遊戯》はデッキそのものの否定です。
赤緑型と違い自力で《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》と《山》を揃えるのが不可能に近く、このデッキを使用するからには何らかの対策が絶対に必要となってしまいます。
《殺戮遊戯》がどれだけ使われているのについては未知数ですが、少なくともプロツアーで最も多く対戦するであろうジャンドに対してこの弱みを持っていることは大きなマイナスでした。
(参考)この当時、考えていたプロツアーでの使用数予想
ジャンド 20%
ヴァラクート 青緑、赤緑が各10%
親和、《出産の殻》、青白、ストーム、青緑赤、Zoo、殻 各5%
バーン、毒殺、トロン、ソウルシスターズ 各2%
そして赤緑型はというと、あまりに技術介入できる要素が少ない。ただ土地を増やして、ぶっ放すだけ。なので使いたくないという理由でした。
こうして使いたくないデッキだけが順調に増えていく中で、評価が変わらないという理由ゆえに気がつけばリストの上位に残ったデッキがありました。ジャンドです。

ジャンドについての私の印象は、これも一貫して「出来れば使いたくない」いうものでした。
というのも、前回のプレイヤー選手権で勝ったことでメタゲームの中心に居座るであろうというのは容易に想像がつくからです。
皆がメタゲームの中心にあると考えているということはそれだけ対策が、プレイングについてもカードについても用意されているということ。
手札破壊に優秀なクリーチャー達。そして豊富な除去と強固な構成のデッキであるだけに安定感は抜群ですが、一方で王道に頼らないマジックをするデッキ、例えばコンボデッキに対しては1本目で苦戦を強いられてしまいます。出来うることなら、ジャンドに対し1本目を先制し、2本目か3本目のどちらかを取る側に回りたいというのが私の考えでした。
その認識に変化の兆しが現れたのは、調整中期に入ったころ。
とりあえずの感触はこれくらいで充分だろうと、ジャンドのアップデートに入った私が、日本にいる時にお邪魔した行弘賢、山本明聖のホーム、マナソース岩出店で見かけた《死儀礼のシャーマン》を投入したことからです。
この1マナクリーチャーが、それまでジャンドの弱点だった初動がやや遅いという弱点を埋めてくれるばかりか、ゲームの決定打、そしてコンボデッキに対しても多少の耐性を与えてくれたのです。
他のデッキがどんどん使用デッキの候補から抜け落ちていく中で、ジャンドデッキだけは常に変わらないどころかプラス評価が付く。
そして週末が経過しデッキ調整も後期に突入。チャネルメンバー全員が信任を置くルイスが「ジャンドにしよう」と発言したことにより、ほとんどのチャネルメンバーがジャンドのメインデッキ、そしてサイドボードの討議に入る中、私はといえば残った期間についてジャンド以外の選択肢を模索するという道を選びました。
デッキを決める
ジャンドは使わないというのではありません。
というよりは、ジャンドを調整する人間が大幅に増えたので私が調整する必要がなくなり、その間にそれ以外の選択肢について突き詰めるだけ突き詰めれば良いか、と思えたからです。キブラーが調整していた「白ジャンド」、ジャンドから赤い部分を抜き取って《聖遺の騎士》と各種ユーティリティー土地、ジャンドに強い《未練ある魂》を投入したデッキに可能性を感じたというのもあります。
ですが、シアトルへと移動する飛行機の中で下した結論はやはりジャンドを使おうというものでした。
キブラーのデッキに対ジャンド以外の練り込み不足を感じたというのもありますが、白ジャンドが切ってしまった「2ターン目の《ヴェールのリリアナ》」というオプションが、手探りとも言えるプロツアーの戦いで非常に重宝だと思えたのです。
今回についてもう1つ心残りだった点がこの時でした。
最後の部分でジャンドの調整から外れてしまったことで、その間に起こった議論、
「《台所の嫌がらせ屋》or《ゲラルフの伝書使》という二択のどちらを使うか」
について、ジャンド以外のデッキにかまけていて自分で試せなかったのです。
もちろん議論については参加しましたし、その上で自分の中で論理的な整理は付けています。
対コントロールを見るか、対ビートダウンを見るか、あるいは自分達のジャンドを環境で最速のデッキだと捉えるか否か。最速であるならば必要なのはライフ回復ではなく、より攻撃的なライフ損失というのは理に適っているのです。
しかし、理論値と実測値には差があるというのはよくあること。最終的には自分が使うデッキだからこそ自分で確認をしておくべきでした。
アナログと言ってしまえばそれまでですが、その違和感のようなものが常にプロツアー中、ちらついてしまっていました。
中村 修平
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結果の方はそれとは関係ないところ、リミテッドラウンドを2回とも1勝2敗というここ数年でも記憶にない大負けで途中棄権、2日目に残っただけという結果でした。
2回のドラフトとも、本当に酷いデッキを組んでしまったので当然といえば当然の結果なのですが、もうちょっとなんとかなったのではないかと考えてしまうのはまあいつものことですね。
Cifka Savors Pro Tour Breakfast of Champions(英語イベントカバレージ)
プロツアー「ラヴニカへの回帰」イベントカバレージ(上記日本語翻訳・一部)
さてと、これを書いているのはフィラアデルフィアの一室。
時柄は10月もあとわずかといった頃なのですが、その間にまた色々とあったり、いやむしろ現在進行中であったりしています。
それについては次回ということにして、
それではまた世界の何処かでお会いしましょう。
