アクロスの怪物

更新日 Reconstructed on 2013年 11月 26日

By Gavin Verhey

When Gavin Verhey was eleven, he dreamt of a job making Magic cards—and now as a Magic designer, he's living his dream! Gavin has been writing about Magic since 2005.

原文を読む

 デッキ構築に関して言うなら、私は挑戦的な構築というものが大好きだ。

 《吹き荒れる潜在能力》コンボ?  よろしい、ご覧あれ。スタンダードで「スタックス」がやりたい? よし、形にしてみよう。《排水路の汚濁》ミッドレンジはどうかって?  探せばあるもんだ。ほら、よく言うだろう?「月を目指しなさい。でも失敗したら暗黒の宇宙をさまよって、酸欠で死んじゃうよ。」ってさ。

……そうだね、よく考えれば、こんな言葉じゃ向上心をかき立てられるはずがない。それはさておき、だ。今週が「怪物化」特集とくれば、私はどうしても目指したいものがある――できる限り最大の怪物で、攻撃したい。

アクロスの巨像》 アート:Zack Stella

 その通り、正解だ。今週は、待ちに待った《アクロスの巨像》をお披露目する。私がクリーチャー1体でパワー20を達成することにチャレンジし、見事成し遂げるのを楽しみにしてくれていたみんな、今週はそんな君たちに捧げよう。

 今回はクールな《アクロスの巨像》デッキをいくつも受け取った。そのうちのひとつが、私の心を強烈に惹き付けたのだ。「ReConstructed」をいつも読んでくれて、毎回のようにデッキを送ってくれるクォール/Qoarlが、緑単の器に《アクロスの巨像》を盛り付けてくれたぞ。見てみよう!

クォールの「コロッサル・ランプ」

Download Arena Decklist

その戦術とは

 《アクロスの巨像》を怪物化して、攻撃。おわり、でいいよね?

 ……オーケー、わかった。もう少し詳しく話そう。

 核となるのは、緑単色の信心デッキだ。《ニクスの祭殿、ニクソス》の効果を高めるために、盤面を強化する手段がいっぱいに詰め込まれている。他の同種のデッキと異なるのは、クリーチャーが大量に採用されていること、とりわけマナ加速役が多い点だ。《漁る軟泥》のようなカードの採用を避け、《ケイラメトラの侍祭》や《斧折りの守護者》のようなカードを優先することで、このデッキは莫大なマナを素早く生み出すことができるのだ。

 今回のデッキは間違いなく《アクロスの巨像》を早い段階で戦場へ出せて、また「怪物化」ボタンを押せる可能性も極めて高いけれど、それだけを見ているわけじゃない。《アクロスの巨像》にマナを注ぎ込むためには戦場にクリーチャーが必要で、それが自然と対戦相手にプレッシャーをかけ、相手のクリーチャーとも渡り合えるのだ。たとえこちらのクリーチャーたちが気休め程度の時間を稼ぐだけだとしても、それで十分だろう。

 今回のデッキは、複数の攻め手を持つことに成功している――よって、それぞれの攻め手をさらに磨き上げることが目標になるだろう。合わせて、マナ加速をするカードの合理化も進めていこう。さあ、始めるぞ!

デッキ詳細

 デッキに残るべき巨大な力を持ったものと、力不足なものはどれだろう? デッキを通して見て、確かめよう!


 ランプ系のデッキに一番欠かせないものは、やはりマナ加速をするカードだ。世界中の《アクロスの巨像》が集まったところで、これら小柄な緑の仲間たちがいなければ役に立たず、《霊異種》に殴り切られる方が早いだろう。

 マナ加速をするカードには、素早くマナが供給できること、それから戦場に残りやすいことが求められる。さてこれらを目標にすると、どうなるだろうか?

 素早くマナが供給できるというのは、もちろん望ましいことだ。《エルフの神秘家》は1ターン目から繰り出すことができ、1マナ域に求めるものとしてはぴったりだろう。《森の女人像》は除去に強くブロックもこなせて、さらに防衛を持つため、《斧折りの守護者》が一度により多くのマナを生み出せるようになる。《旅するサテュロス》は2マナ域のマナ加速役ということで特別早いわけでもなく、また《森の女人像》のように除去耐性があるわけでもない――しかしそれを補って余るほどの力を持っている。こいつは《ニクスの祭殿、ニクソス》をアンタップできるのだ。

 《ニクスの祭殿、ニクソス》は土地の枠に用意されたマナ加速用エンジンで、こいつは強烈な動力になってくれる。戦場にマナ・シンボルが4つあれば普通に土地を倒すより多くマナを得ることができ――そこから先はシンボルの数が増えるたびに更なるマナを生み出す。1マナより多くのマナを生み出す土地というのは、これまでも非常に強力なものばかりだった。《ニクスの祭殿、ニクソス》もまた、その例外ではないのだ。

 そんな《ニクスの祭殿、ニクソス》をアンタップできる《旅するサテュロス》がいれば、その動きはもう完全に常軌を逸したものになる。戦場に《旅するサテュロス》を合わせて緑マナ・シンボルが5つあれば、《ニクスの祭殿、ニクソス》は8マナも生み出すのだ!(普通に土地を倒すより4マナ多く得ていることになる。)《旅するサテュロス》自体はあまり魅力的に見えないかもしれないけれど、《ニクスの祭殿、ニクソス》との相互作用を考えれば、今回のデッキにおける最も大切なマナ加速役のひとつであることは間違いない。

 《斧折りの守護者》はさらに遅い3マナ域のマナ加速役だ。ただし、こいつは一度に2マナ以上を生み出すことが多い。特にこいつが複数並ぼうものなら呆れるほどの力を発揮し、あっという間に10マナ以上を得ることができるだろう。また、《森の女人像》も防衛持ちで、《斧折りの守護者》の効果を高めるということを覚えておいてくれ。

 最後に、《ケイラメトラの侍祭》だ。4マナ域と今回のマナ加速役の中で最もコストの重い《ケイラメトラの侍祭》だが、その分生み出すマナも大量だ――この4マナ域のクリーチャーを残して無事に次のターンを迎えられればの話だけどね。やや扱いにくいところがあるものの、マナ加速という点では文句なしの1枚と言えるだろう。

 さてこうしてマナ加速をするカードたちを見てきたが、その中のひとつである《ケイラメトラの侍祭》は、私の求めるものを十分に満たせていない。誤解しないで欲しいが、私は一気にマナを加速させることは大好きだ。けれど、4マナ注ぎ込むのであれば、もう少し除去に耐性があってマナ加速以外の仕事もできる方が良いな、と思う。

 うん、ちょうどぴったりなカードがあるんだ。

 《歓楽者ゼナゴス》は、私の立てた目標を見事に達成している。戦場へ出すのには4マナかかるものの、彼はそのコストに見合うだけのマナを生み出してくれる。それから、彼はトークンも生み出すことができて、《アクロスの巨像》での勝利にはまだ遠くても積極的に攻める必要がある場合に、貴重な攻め手となってくれるのだ。加えて《歓楽者ゼナゴス》のマナ能力は戦場に出てすぐ使うことができ、彼に注ぎ込んだコストを即回収できる、という点も素晴らしい。これにより手札の展開がより早くなるだろう。

歓楽者ゼナゴス

 さらに、最終奥義も狙う価値がある――マナ・コストを支払うことなく《アクロスの巨像》が戦場に出るかもしれないぞ!

 今回のデッキは緑単色だが、《歓楽者ゼナゴス》には赤マナが必要であることにはもうお気づきだと思う。その上で、彼をスムーズに繰り出したいところだ。《森の女人像》や《斧折りの守護者》、それから《踏み鳴らされる地》でも赤マナを生み出す助けになるけれど、私はあとひとつ加えたいと考えている。そして、幸運にも、今回のデッキにぜひとも採用したいと思えるようなカードがあった。《門を這う蔦》だ。

門を這う蔦

 《門を這う蔦》は防衛持ちで、《斧折りの守護者》の効果をさらに高めてくれる。また、必要なときに《》を持ってきてくれる。そのためデッキから土地を少し抜くことができて、土地でないパーマネントを引き込みやすくなる――つまり、信心を高めやすくなるということだ!

 よし、まとめよう。《歓楽者ゼナゴス》と《門を這う蔦》を新たに採用し、《ケイラメトラの侍祭》を抜くことにする。さてここからは、これらのマナ加速をするカードたちを用いて何をするのか見ていこう!

世界を喰らう者、ポルクラノス

 《世界を喰らう者、ポルクラノス》が『テーロス』の「怪物化」持ちの中でも最強の一角を占めるのは、疑いようがない。4マナで5/5というサイズは早い段階で対戦相手にプレッシャーをかけ、「怪物化」に伴う能力は信じられないほど強力だ……今回のデッキが生み出せるマナをすべて注ぎ込めば、さらに拍車がかかるだろう。

 こちらで大量のマナを用意してやれば、《世界を喰らう者、ポルクラノス》は大抵の盤面を一掃してくれる。こいつがどれだけの世界を喰らってきたのかわからないけれど、今回のデッキのポルクラノスはきっと、腹に収めた中から「苦痛の世界」を対戦相手に向けて吐き出すことだろう。

 《世界を喰らう者、ポルクラノス》は伝説のクリーチャーだが、それでも私は喜んで4枚すべて投入したい。こいつを除去しなければ対戦相手は問題を抱えることになるだろうし、2枚目があれば再び「怪物化」できるのも極めて強力だ。

 それから、「《アクロスの巨像》と比べて軽く、対戦相手に強烈なプレッシャーをかけられるクリーチャー」という枠にあと少しカードを加えたいと考えている。私が選んだのは、《高木の巨人》だ。こいつは5マナで6/6というサイズに加えてメリット持ちである(さらに「怪物化」もでき、「怪物化」特集にふさわしい!)、ということだけでなく、マナ・コストに緑マナ・シンボルを3つ含むため、信心を高めるのにも有効だ。さらに、《高木の巨人》は今回のデッキに「巨大な怪物たち」というテーマも添えてくれる。素晴らしい! 2枚採用しよう。

アクロスの巨像

 さあ、「巨像」の登場だ! あまりに巨大なサイズと破壊不能を持つこのカードは、間違いなくゲームを終わらせてくれる。環境には(《拘留の宝球》などの)解答があるけれど、いくつかのデッキにとってはほとんど対処不可能なはずだ。例えば黒単デッキを相手にこいつが着地すれば、その対処に相当な苦労を強いることができる。ゲーム序盤に《思考囲い》で落とすことは確かにできるものの――その後《獣の統率者、ガラク》の能力などで引き込めば、轟音と共に戦場へ降り立ち、目前に迫る破滅の恐怖を対戦相手に刻み付けることができるだろう。

 はっきり言って、今回のデッキで10マナを得るのは難しいことじゃない。その点については、マナ加速をするカードたちが実に見事な仕事ぶりを見せてくれるのだ。とはいえ、その力を活かすために10マナも必要な8マナ域のカードを、ひとつのデッキが扱える数には限りがある。そこで、私は《アクロスの巨像》を1枚減らして3枚の採用に留めようと思う。2枚目が欲しいことは滅多にないし、ゲーム序盤に2枚引いてしまうと手札が詰まってしまうのだ。それでも、こいつは今回のデッキ最大の魅力のひとつだ――《アクロスの巨像》で対戦相手を蹴散らしてやれ!

獣の統率者、ガラク

 《獣の統率者、ガラク》は、今回のようなデッキにおいてはこの上なく優れたカードだ。他にドロー手段がないデッキに莫大なカード・アドバンテージをもたらし、さらなるマナ加速をするカードや《アクロスの巨像》を掘り当てつつ、ゲームを終わらせる最終奥義へと向かう。対戦相手としては何としても対処すべき脅威であり、これより優先したい6マナ域はまずない。おまけに、彼は緑マナ・シンボルをふたつ持ち、信心を高めるのにも役立つのだ!

 やはり、《獣の統率者、ガラク》は4枚採用が良いだろう。1枚でも戦場に着地し[+1]能力を起動すればできることが一気に広がるはずだし、対戦相手が《獣の統率者、ガラク》を除去するなら、喜んでもう1枚唱えるだろう。最後の1枚を追加だ。

狩猟の神、ナイレア

 《狩猟の神、ナイレア》はマナ加速をするわけではないけれど、いくつか重要な役目を果たしてくれる。まず、4マナ6/6としての運用が難しくないこと――それだけでも彼女に注目する価値があるだろう。しかしそれ以上に魅力的なのは、今回のデッキが生み出すマナの受け皿としてぴったりなところだ。ランプ系のデッキが常に抱える危険とは、マナ加速役ばかり引いて次の行動が起こせないことであり、その逆もまたしかりだ。そういった引きによる差を埋め合わせるのに役立つカードこそ大切なのだ。

 《狩猟の神、ナイレア》はしっかりとその役目を果たしている。手札に《世界を喰らう者、ポルクラノス》しかなくても、彼女が力を貸してくれる。戦場にマナ・クリーチャーしかいなくても、彼女がいれば大量のダメージを通すことができる。どちらにしても、《狩猟の神、ナイレア》は大活躍だ。私としては3枚目を追加したい。

レインジャーの悪知恵

 この軽いインスタントは、大型の脅威を守れる心強い呪文だ。《アクロスの巨像》は破壊不能を持つので、それだけで多くのデッキが対処に困る。それを加味したとしても、《レインジャーの悪知恵》が戦場に影響を与えることには変わりがない。

 ところが、決して悪いカードではないものの、《レインジャーの悪知恵》はやや状況を選ぶ。覚えているだろうか――君たちがプレイするそのカードは、他のカードを差し置いて引いたものなのだ。《レインジャーの悪知恵》が活躍する場面はあるけれど、私は今回のデッキが持つ基本的なゲーム・プランに沿ったもの、つまり信心を高めるか、盤面に脅威を追加できるカードを引き込みたいと思う方が多いだろう。《レインジャーの悪知恵》は、少なくともメイン・デッキからは抜くべきだ――サイドボードの選択肢としては適しているかもしれないね。

ナイレアの弓

 用途によって選べる幅広い能力を持つほかに、《ナイレアの弓》には前のめりな能力が備わっている。攻撃クリーチャーへの接死付与という強烈なものだ。《世界を喰らう者、ポルクラノス》と組み合わせれば、攻撃後「怪物化」を起動することで対戦相手のクリーチャーをいともたやすく壊滅させることができる。こちらのクリーチャーたちが邪魔されず攻撃するのに、間違いなく役立つだろう。

 しかしながら、《ナイレアの弓》の能力で今回のデッキが本当に求めるものはひとつもない。3点のライフを得るのは時間稼ぎに悪くないものの、カード1枚を使って定期的にマナを支払ってまでやるほどのことではないだろう。《世界を喰らう者、ポルクラノス》や《狩猟の神、ナイレア》との相性は抜群だが、デッキへ残すにはもの足りないのだ。

 ここまでの変更をすべて加味すると、デッキリストは以下のようになる。

ガヴィン・ヴァーヘイの「オブ・モンスターズ・アンド・メン」

Download Arena Decklist

 このデッキの向かう方向を変えたいなら、とれるルートはいくつかある。より赤を濃くしたいなら《ドムリ・ラーデ》に目を向けて、プロツアー「テーロス」での三原槙仁のデッキに近づけるべきだろう。マナ加速のスピードを犠牲にしたくなかったから、私は《奔放の神殿》を採用しなかったし、《グルールのギルド門》の1枚挿しもしなかった。それでも、このデッキをよりグルールに寄せる道は確かにあるぞ。

 信心を稼ぐのにぴったりな《炎樹族の使者》のようなカードも、単体では力不足なため採用を見送ったが、《ケイラメトラの侍祭》も合わせてより信心に特化した形も試す価値があるかもしれない。

ドムリ・ラーデ
炎樹族の使者

 ともあれ、《アクロスの巨像》を使いたいなら私は今回のデッキをオススメする。20/20破壊不能で攻撃するような体験はなかなか得られないぞ――楽しんでくれ!

惜しくも選ばれなかったデッキたち

 他にどんな怪物的なデッキが私の目を引いただろうか? 見てみよう!

イトウ カズナリの「呼吸不全」

Download Arena Decklist

アンジェリカの「赤青緑竜英傑」

Download Arena Decklist

トニー・ユーセフの「刷毛履きセレズニア」

Download Arena Decklist

アンドリュー・カスパーの「赤緑防衛バーン」

Download Arena Decklist

ジョージ・ウルフの「モンスターハウス・ミッドレンジ」

Download Arena Decklist

イチマル・マサトの「アクロスの職工」

Download Arena Decklist

ショーン・カルヴォの「債務と戦術」

Download Arena Decklist

ナカノ アキノリの「古の怪物たち」

Download Arena Decklist


(以下のデッキ募集部分は、原文・本日(11月26日)掲載分の記事から抜粋・収録しております。 この節の文責・編集 吉川)


(Tr. Tetsuya Yabuki / TSV testing)

最新Reconstructed記事

RECONSTRUCTED

2016年 1月 18日

コジレックの帰還 by, Gavin Verhey

 コジレックの再登場は実に衝撃的なものだった。  ゼンディカー全土が救われると思われたそのとき、大地が鳴動し、地の底で眠る怪物が目覚めた――コジレックが再び地表へと姿を現した。  プレインズウォーカーたちが恐れていた最悪の事態が、現実のものとなったのだ。  君たちももう、コジレックの姿をその目で見たことだろう。その血族や彼のもたらした荒廃、そして無色マナを扱う様々なものを...

記事を読む

RECONSTRUCTED

2016年 1月 11日

ジョリーといっしょ by, Gavin Verhey

 『ゲートウォッチの誓い』プレビューにようこそ!  このセットでは、すごい試みがいくつも行われている。いくつか例を挙げると、キーワード能力の支援や怒濤もそうだし、それから、もちろん、無色マナ・シンボルもそうだ。私は『ゲートウォッチの誓い』のデベロップ・チームに参加していたので、それらがいかに作り上げられたかを思い出すと恍惚としてしまうよ。  とは言え、私たちはこのセッ...

記事を読む

記事

記事

Reconstructed Archive

過去の記事をお探しの場合 アーカイブのページをご覧ください。人気の著者による、数千にわたるマジックの記事が残されています。

一覧を見る