手頃に眺めるニクスの星空

更新日 Reconstructed on 2014年 3月 11日

By Gavin Verhey

When Gavin Verhey was eleven, he dreamt of a job making Magic cards—and now as a Magic designer, he's living his dream! Gavin has been writing about Magic since 2005.

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『テーロス』ブロックはシナジーに重点を置いたブロックだ。『ラヴニカへの回帰』ブロックのように《至高の評決》や《幽霊議員オブゼダート》といった強力な多色カードに溢れているわけではないものの、一見しただけでは強いとはわからないカードもある。

 私を含めデッキ・ビルダーというものは、そういうブロックが大好物だ。

『テーロス』ブロックのカードを用いて構築する際は、珠玉の多色カードを駆使しつつマナ基盤を固めるのではなく、もう少し掘り下げて考える必要がある。わかりやすい一級品を使うのもいいけれど、時計の歯車のように隠れたところから新たなデッキを動かすカードを見つけ出すのは、格別に心が躍るものだ。見た目のすぐ下にはもうひとつ大きな動きが控えていて、君たちに見つけられるのを待っているのだ。

 本日は、そんな隠れた名カードの発見に挑戦していく――おまけに予算も抑えるぞ! ナフ/Naf(たぶん《ナフス・アスプ》からとった名前かな)が送ってくれた白青「英雄的」エンチャント・デッキを見てみよう。

ナフの「エンチャント・アグロ」

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    低予算のルール

 今回は低予算構築の回だから、今回のデッキの動きを語る前に、まずは低予算デッキを取り扱う際の私の基準についてざっとおさらいしておこう。

  • 新しいレアや神話レアをデッキに加えない。むしろデッキに美味なレアを添えた追加料金を設定し、そのレアを調理するか、食べないかのいずれかを選んでもらう。
  • 上記の例外としてマナの安定がある。しっかりしたマナ基盤から得られる恩恵は多く、ほとんどのデッキに活かせる不可欠なものだ。せっかくのカードも、唱えることができなければ君たちの力になってくれないだろう!
  • 代用品は用いない。低予算が現在のデッキより悪いバージョンを意味する必要はない――低予算はより容易に入手可能なカード向きのアーキタイプを構築することをまさに意味する。《波使い》や《スフィンクスの啓示》のようなカードを必要とするデッキにおいてそれを単純に代用できるカードは無い。
  • 低予算は弱いデッキではない。私はこの過程において最善ではないと思うデッキを作ろうとはしていない。マジックの歴史上には、大成功を収めた多くの低レアリティ・デッキがあるし、それらの跡を継ぐ方法は確かに存在する。

 各項目のいずれかについて詳細な説明を望むなら、最初の低予算記事の冒頭を確認してほしい。

 さて確認が終わったら、次は今回のデッキの戦術を見ていくぞ!

    その戦術とは

 一見、今回のデッキは白青「英雄的」デッキがちょっと変わったカード選択を行っただけのようにも見える。だが勘違いしないでくれ、そこでは今回のデッキならではの独自の方針が推し進められているのだ。今回のデッキは、エンチャントを中心にしたアグレッシブなデッキだ!


 今回のデッキはできる限り早く対戦相手を倒すことを目指していて、それを実現するための爆発力も備えている。《イロアスの英雄》が(「授与」クリーチャーを含む)大量のオーラの素早い展開を助け、《万戦の幻霊》は強大なサイズへと成長できる。《希望の幻霊》はそれ単体で戦場に出すだけでは弱く見えるかもしれないが、それでも《万戦の幻霊》に+1/+1の修整を与え――そこからシナジーの流れが始まるのだ!

「授与」のおかげで、クリーチャーたちは除去耐性にも優れている。たとえ対戦相手が除去を差し向けてきても、戦場には別のクリーチャーが残るのだ。また、今回のデッキは猛烈な速さでゲームを進められる一方、同時に《希望の幻霊》のようなカードでコントロール寄りの方針を進めることもできる。高い柔軟性を持つため、ミッドレンジやコントロールに対してはアグレッシブに攻め込み、ビートダウンに対してはコントロール的な立ち回りができるのだ。

 今回のデッキを調整する上で鍵となるのは、各カードの枚数を最適化してやることと、それから元のリストが見落としているシナジーの塊を見つけ出すことだ。これらをすべて達成し――さらに予算も抑えるための準備はできたかな? それじゃあ始めよう!

    デッキ詳細

 このデッキにエンチャントし続けられるものと、星空の彼方へ送るべきものはどれだろう? デッキのカードを1枚ずつ通して見て、順番に変更を加えていこう。

 私にとって《イロアスの英雄》が愛着あるカードであるのは間違いない――こいつは『神々の軍勢』プレビュー期間に私が担当したカードのひとつなのだ。そして奇遇にも、今回のデッキを動かすカードのひとつでもある!《イロアスの英雄》は(「授与」を含めた)オーラのコストを軽減し、展開を助けてくれる――おまけに、それらのオーラの対象をこいつにすれば、こいつ自身のサイズも上がるのだ。

 オーラと「授与」クリーチャー満載の今回のデッキでは、《イロアスの英雄》はすべてを繋ぎ合わせる接着剤の役割を果たしてくれるだろう。絶対に4枚すべて残そう。

[card]メレティスの天文学者[/card]

 私はすべてを繋ぐのに役立つカードをもうひとつ追加したいと考えている。それは《メレティスの天文学者》だ。エンチャントで強化してやらないとアタッカーとしてはいまいちだが、こいつはオーラを中心にしたエンジンを稼働させ続け、《天上の鎧》のようなキー・カードを引き込む助けにもなる。さらに、こいつを対象にすることでオーラがオーラを呼ぶことにもなり得るのだ! そろそろ他のクリーチャーにエンチャントしたい頃になっても《メレティスの天文学者》がほとんどエンチャント・カードを持ってきてくれなかった、ということだってあるかもしれない……それでもこいつへのエンチャントを続ければ、その先にきらめくエンチャント・カードの大群が見つかるかもしれないのだ。今回のようなデッキで何か呪文を唱えるたびにカードが手に入るというなら、対戦相手を圧倒できるだろう。《メレティスの天文学者》ならきっとそれを実現してくれるはずだ。

 見た目の上では、《希望の幻霊》は実に慎ましいカードだ――リミテッド・プレイヤーでも最初はそう思ったものだが、しかし今では白で最も早くピックされるカードのひとつとなっている。そして今回のデッキでも、《希望の幻霊》は驚くべき活躍を見せてくれる。クリーチャー1体に+1/+1修整と絆魂を付与し、「英雄的」を誘発させ、《天上の鎧》の力を高めてくれるのだ。こいつもまた、4枚残したいカードだね。

[card]威名の英雄[/card]


 今回のデッキには、二段攻撃が強烈に噛み合う。二段攻撃持ちにエンチャントをつける動きは凶悪そのもので――それが《希望の幻霊》のような「授与」クリーチャーなら尚更だ。《希望の幻霊》をエンチャントした《威名の英雄》を除去できないアグレッシブなデッキにとっては、ただでさえ厄介な《威名の英雄》に対処しなければならないのに、その上8点ものライフを稼がれてはどうしようもないだろう。「試練」をエンチャントしても、あるいは単純に回避能力を与えるだけでも、二段攻撃は大活躍するのだ。

 しかしながら、《霊刃の幻霊》はエンチャントであるという利点はあるものの、私は3マナ域を多く採用したくない。ちょうど、その問題を解決してくれるカードがある――《剣術の名手》だ。私は《イロアスの英雄》と《メレティスの天文学者》のどちらも引けない場合に備えて、2マナ域をあと2枚採用したいと考えている。《剣術の名手》はその穴を埋めてくれるのだ。2枚という採用枚数はちょっと収まりが悪いけれど、大抵は他の2マナ域の方を使うだろう。


 もし今回のデッキをさらに安く済ませたいなら、《威名の英雄》を抜いて《剣術の名手》を増やすことを真面目に検討していいだろう。私としてはより爆発力のある《威名の英雄》の方が好ましいが、《剣術の名手》も頼りになる2マナ域であり――場合によっては《威名の英雄》より良いことだってあるのだ。

 《イロアスの英雄》のように他のカードを強化する「接着剤」の役割とは異なるものの、《万戦の幻霊》は今回のデッキに大きく貢献している。このクリーチャーは(オーラもクリーチャーもすべて参照して)いとも簡単にそのサイズを上げていくのだ。ああ、それからこいつを「授与」して他のクリーチャーのサイズを強化することもできるぞ。レアを加えないという約束があるため、大元のリストに従ってこいつは3枚に留めるけれど、4枚あるなら絶対に加えたいところだ。

 《聖なる力》自体は構築でお呼びがかかるものではないし、それは《聖所の猫》も同じだ。しかしそれらが合わさり今回のデッキに入るというなら、一考の余地が生まれる。

 1ターン目に《ニクス生まれの盾の仲間》を繰り出し、そこへ《天上の鎧》をエンチャントできれば、2ターン目にして3点で攻撃を始めることができる。また、こいつはクリーチャーでありながらオーラにもなることができるため、《万戦の幻霊》の強化を着実に進められる。

 ところが、賛否はあると思うけれど、私は《ニクス生まれの盾の仲間》が今回のデッキの完成版で活躍するとは思えない。たとえデッキが十全に機能しても、《ニクス生まれの盾の仲間》では物足りないのだ。《イロアスの英雄》によって2マナで《聖なる力》を「授与」できても、特筆すべきものではない。《万戦の幻霊》を強化できるのは悪くないが、それは他のエンチャントでも大差はないだろう。2ターン目に《天上の鎧》をまとって3点で攻撃できると言ったけれど、それはつまり除去耐性のないところへ多くの力を注ぐことであり、そしてそのターンに2マナ域を使えないということなのだ。

 もしいつでも自由に使えるなら、《ニクス生まれの盾の仲間》も優秀なカードだ。しかし使われるカードはすべて、他のカードの犠牲の上に採用されている。大抵の場合、私は他のものを引き込みたいと思うよ。

 《万戦の幻霊》同様、《天上の鎧》は今回のデッキがエンチャントを繰り出すことに大きな意味を与えている。わずか1マナでクリーチャーのサイズをしっかりと上げられるこいつは、複数枚引いても嬉しいと断言できる。4枚すべて採用だ。

[card]液態化[/card]


 この2枚が今回のデッキに仲間入りするのは、疑問が残るかな――よしいいだろう、私がこれらをうまく料理してみせよう。

 今回のようなシナジーに力を入れたデッキを手がける際に私がいつも心がけているのは、ふたつのカードをひとつにまとめることだ。シナジーを機能させるためのカードは多く採用する必要があるため、他のカードには柔軟性や選択肢の広さが求められるのだ。

 《液態化》は確かに優れたカードではある。しかし手札を1枚消費して(これはオーラ満載のデッキでは細心の注意を払うべきことなのだが)、それで得られるのはクリーチャー1体の攻撃を通すだけだ。《平和な心》は対戦相手のクリーチャー1体を押さえてくれるが、こちらの攻撃さえ通るなら押さえつける必要はない。

 そんな2枚を一緒にするとしたら、どうなるだろう?

 答えはこうだ。君たちの想像とちょっと違うかもしれないね。


 攻撃を通したい巨大なクリーチャーがあるなら、《層雲歩み》をつけて対戦相手の地上クリーチャーたちを飛び越えていける。相手のクリーチャーのサイズが大きく、こちらには小さいクリーチャーが複数ある場合は、相手のクリーチャーを《層雲歩み》で浮かせ、その下をくぐっていけばいい。さらに、《層雲歩み》は戦場へ出たときにカードを1枚もたらしてくれるため、実質的にカードを消費せず済むのだ。《液態化》よりコストは増えているけれど、より柔軟性が高く、そして占術がドローになることから、私は《層雲歩み》を推したい。

 《液態化》と《平和な心》はひとつにまとめて、《層雲歩み》を4枚採用しよう。対戦相手の攻勢に対して《平和な心》のような働きはできないけれど、《層雲歩み》の持つ利点はそれを補って余りある――《平和な心》がまったく役に立たないマッチアップでも腐ることはないし、それから自軍のクリーチャーの「英雄的」を誘発させられるのだ。とはいえ、《層雲歩み》に近い役割のカードをもう少し採用したいので、5枚目の《層雲歩み》として《平和な心》を1枚だけ残そう。

 手札の消費を抑えるということなら、《タッサの試練》は同時にクリーチャーの強化もできて実に好ましい。2マナ域のクリーチャーたちや《威名の英雄》といった、エンチャント先としてぴったりなカードもある。さらに「タッサの試練」を乗り越えれば2枚のカードが手に入り、戦線を推し進め続けることができるだろう。喜んで4枚すべて残そう。

 先ほど、私は汎用性の大切さを語ってきた。その最たる例がこの《神々の思し召し》だ。こいつはクリーチャーを除去から守り、「さらに」対戦相手の持つブロッカーの色のプロテクションを与えて攻撃を通すこともできるのだ。

 《神々の思し召し》は序盤に多く引き込みたいものではなく、また今回のデッキを円滑に機能させるためにはエンチャントが多く必要なので、こいつをメインから4枚採用するのは避けたいところだ。それでも、3枚は確保しておきたい。大量の除去を駆使するデッキに対しては、4ターン目にマナを余らせて《威名の英雄》を繰り出してそれを守れるようにしておけば、きっと有利に立ち回ることができるはずだ。

 ただし、《神々の思し召し》の使い方には気をつけてくれ。プロテクションが付くということは、その色のオーラがすべて剥がれてしまうということだから――《オレスコスの王、ブリマーズ》を突破しようと《天上の鎧》をエンチャントしたクリーチャーにプロテクション(白)を付与すれば、《天上の鎧》は剥がれ落ちてしまうのだ。それを忘れずにね。

 ここまでの変更をすべて受け、「授与」に必要なマナを確保するために土地をいくつか加えると、デッキリストは以下のようになる。

ガヴィン・ヴァーヘイの「ニクスの訪れを待つ英雄のために」

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 このデッキはまさに吹き荒れる暴風そのもので、強烈なブン回りをすることもできるだろう。単体では採用しにくいカードが多く含まれているけれど、それらは他のデッキを圧倒するほどのシナジーを秘めているのだ。

 予算を気にせず今回のデッキを組みたいなら、検討すべきカードがいくつかある。《迷宮の霊魂》はアグレッシブなクリーチャーとして優れていて、嬉しいことにエンチャントでもある。つまり《天上の鎧》の効果を高めてくれるのだ。また、除去の枠に《拘留の宝球》を検討するのも欠かせない。これもまたエンチャントとして戦場に残ってくれるぞ。

 それから、《都市国家の神、エファラ》を何枚か採用してもいいだろう。クリーチャーは十分にあるため、彼女が手札の消費を抑え、除去重視のデッキを相手にしても息切れを防ぐことができるはずだ。そして神話レアまで手を伸ばすなら、《オレスコスの王、ブリマーズ》は極めて強力であり、すんなりとデッキに入るだろう。おっと忘れていた。できることなら、4枚目の《万戦の幻霊》の採用はぜひ試してみて欲しい。

[card]迷宮の霊魂[/card]

 君たちもクリーチャーへのエンチャントを楽しんでくれ! その手で対戦相手を翻弄してやろう。

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