秘術師が愛した戦場

更新日 Reconstructed on 2014年 4月 29日

By Gavin Verhey

When Gavin Verhey was eleven, he dreamt of a job making Magic cards—and now as a Magic designer, he's living his dream! Gavin has been writing about Magic since 2005.

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 今日のプレビュー・カードは実に奥が深いものだ。

 あなたはどれくらいの奥深さを望むだろうか。見た目から分かりやすいものがいいかな? よくある手法の、もう少し先を行きたいって? もしかして奇想天外なコンボの波にまっすぐ飛び込みたいだろうか?

 うん、どれであってもあなた向きとなるカードがある。

アート:Mike Sass

 秘術師[ひ-じゅつ-し]
 定義:奥の手として秘匿されている、奇跡的な技を使う者。

 奇跡的な技の使い手? ああ、確かにそう言えるね……

 このカードが持っている、甘くてとろけるチョコレートのごとく美味しい能力に触れる前に、それ以外の部分を見ておこう。

 そうだな、2マナ2/1は特筆すべきサイズじゃない。とはいえ、それほど無意味でもない。《瞬唱の魔道士》は、時に戦闘もこなしてくれる逸材だった。2/1の魔道士が勝利に貢献する対戦は、それこそ伝えきれないほど見てきたよ!

 同じく、その英雄的能力が有用であることも間違いない。「エンジン」カードは、他のカードをより良いものにしてくれる。が、そのエンジンが破壊された場合、エンジンで回すことが前提のカード群があっという間に魅力を失ってしまうという問題が付き物だ。だが《戦場の秘術師》には自己を守るための手段が内蔵されているから、エンジンを長期的に活用できる見込みが立つのも素晴らしい点だろう。

 だがそれらはこのカードの偉大さを説明する要素ではない。

 このカードの偉大な部分とはつまりコスト軽減に関する能力だ。多数のクリーチャーを対象とするインスタントやソーサリー呪文ならコストが減る。例えば、そう、奮励を持つ呪文などだ。

信者の沈黙
船団の出航

 《戦場の秘術師》がいれば、《船団の出航》のようなカードで全味方クリーチャーを対象に取るために必要なマナはたった1マナだ! しかも奮励呪文の効果を得られるだけじゃなく、さらに全ての英雄的能力が誘発するんだ! 味方全体を強化してさらに英雄的まで? 決まりだな。

 《戦場の秘術師》にはさらにいくつかのイカレた相互作用もあるが……ああ、まあ、後に取っておこう。今話したものからやっていこうじゃないか。秘儀学院の集中講義を受講する準備をしてくれたまえ。

秘儀入門1:奮励

 このようなエンジンカードを活用する最良の手段とは? そう、そのエンジンでできる限りアドバンテージを取ることだ! 唱える呪文のコストが1マナ減るのは良いことだが、《戦場の秘術師》が実際に光るのは大量のコストを軽減したときだ。活用して大量のコストを軽減することで価値を証明しなければ、エンジンカードを使う意味が無い。

 また、その利用価値を倍増させる、より良い手法とは何だろうか? コストを大幅軽減した呪文で自軍すべての英雄的能力持ちを対象に取れれば、間違いなく素晴らしいコスト対効果となる。《戦場の秘術師》が元々2マナ2/1であり、なおかつ多くのクリーチャーが欲しいとなれば、デッキはより攻撃的な構成になるのが極めて自然だろう。

 次の動きを想像してみて欲しい。

 1ターン目、《恩寵の重装歩兵》。2ターン目、《密集軍の指揮者》。3ターン目、《威名の英雄》。圧倒的な布陣というわけではない……次のターンが来るまではね。《戦場の秘術師》を出して、《船団の出航》を自軍全体に使おう。突如、4/4の《威名の英雄》、3/4の《恩寵の重装歩兵》、そして2/2の《密集軍の指揮者》、さらに3体の兵士トークンが一斉に殴りかかる。

 そうそう、自軍全体を対象に取れる別の1マナ呪文があれば、容易に決着をつけられるだろう。とりわけ、対戦相手のクリーチャーを全てタップさせることができればね。その攻撃は26点ものダメージに達する!(《威名の英雄》が6/6、《恩寵の重装歩兵》が5/6、《密集軍の指揮者》が3/3、さらに3体の兵士トークンが2/2になって26点だ。)

 1マナでクリーチャーを全てタップして、英雄的も誘発させる呪文だって? ひどすぎる。ありえない。まともじゃないね。

 そうそう、我々が神々の軍勢で作ったちょっとしたカードを(もう一度)紹介するよ。《太陽神の一瞥》だ!

太陽神の一瞥

 マナを費やすことで、その分だけクリーチャーをタップする。でも待ってくれ、《戦場の秘術師》には対象としたクリーチャー1体につき、コストを1マナ軽くする能力がある! したがってどれほどの数のクリーチャーがいようとも、1マナだけですべて対象にとってタップすることが可能だ。そして攻撃クリーチャー指定ステップの後に呪文や能力を使えるタイミングがあることで、攻撃したあと、対戦相手がブロック指定できるようになる前に唱えることができる――それはつまりありがたいことに、タップ状態のクリーチャーを攻撃状態のままこの呪文の対象に取り、それにより再び全員の英雄的能力を誘発させて、さらに対戦相手の全てのクリーチャーをタップしてブロック不能にできる、ということを意味するわけだ。

 そう、まさにこれだ。《太陽神の一瞥》や(述べるまでも無いことだが)《交通渋滞》のようなX呪文は《戦場の秘術師》と共にあることで真の力を発揮する。《戦場の秘術師》とこれらX呪文とのトリックを知った今、秘儀入門1を履修し終えて秘儀入門2の講義へと進む時期ではないかな。

ガヴィン・ヴァーヘイの「秘儀入門1 授業課題」

Download Arena Decklist

秘儀入門2:Xに注目

 秘密は暴かれた。X呪文を悪用する時間だ。

 あなたはまだそれなりに攻撃的な要素を保ちたいと考えるだろう――だがデッキには調整の余地が大いにある。可能性は幅広い!

So,  さて、《太陽神の一瞥》のほかに何が使えるだろうか? そうだな、《豚の呪い》はどうだろう。だけで、どれほどのクリーチャー数であろうとも全て2/2に変えてしまえる。恐らく、対戦相手のクリーチャーを対象に取り、それら全てを弱体化できるだろう。もしかすると、相手の戦線を壊滅させるため、さらに《集団疾病》と組み合わせられるかもしれない。だがもっと邪悪な行為が可能なはずなんだ。対戦相手のクリーチャーに加えて、自分のクリーチャーも対象に取る理由があるとすれば、それはどんなものだろうか?

 《練達の生術師》や《ザーメクのギルド魔道士》は、自軍のその他のクリーチャーを猪へと強化する十二分な理由を与えてくれる――巨大な猪軍団だ! エレメンタル・トークンをばら撒いた《波使い》が単体除去を食らって一掃されるかもしれないって? そいつらを全部猪にしておこう!

 引きすぎたマナエルフは猪へと変化させてしまえばいい――そう、ランプ(マナを伸ばす行動)はどうだろう? ああ、対戦相手のクリーチャーを根こそぎにしてしまうなんてのは?

 そこで《夢への放逐》の出番だ!

夢への放逐

 《夢への放逐》がある状態で《豚の呪い》を使えば、対戦相手のクリーチャーを全て葬り去ることができる――しかも《戦場の秘術師》がいれば格安でね!

 もちろん《戦場の秘術師》と十分なマナがあるなら、《変身体の殺到》で《波使い》を何体か増やすことで、エレメンタル・トークンによる突然死を対戦相手にプレゼントすることも可能だ。

 ここまでの内容はどうにか飲み込めたかな。では、3つ目の秘儀講義に移ろう……

ガヴィン・ヴァーヘイの「秘儀入門2 授業課題」

Download Arena Decklist

秘儀入門3:二重秘儀

 私達は奮励を学び終え、X呪文についても学んだ。次はまだ全く触れていない部分――複数の《戦場の秘術師》をコントロールした状態について精通する時だ。

 いいかな。ここは難しいところだ。さあ、ハイレベルな秘儀的術式を学ぶ時間だ。

 複数の《戦場の秘術師》をコントロールしていれば、そのコスト軽減効果はそれぞれ適用される。2体コントロールしていれば、その呪文は対象とするクリーチャー1体ごとに2マナずつ軽減されるということだ。

 まあ、《太陽神の一瞥》のようなものではその恩恵は受けられない。のコストを軽減したとしても、その軽減の余りは何かに使えるわけじゃない。

 だがもし、マナをつぎ込めるほかの対象があればどうだろう? マジックの歴史上、コストにXを含み、クリーチャーとプレイヤーを好きな数だけ対象に取ることが可能な呪文は少ない。私達にとって幸運なことに、狙い通りに使えるわずかなカード群のうちの1つは現行のスタンダードに存在し、完全に適合する形で《戦場の秘術師》を待ち受けている。《オレリアの憤怒》だ。

オレリアの憤怒

 そうだな、こちらは《戦場の秘術師》を2体、対戦相手はクリーチャーを3体コントロールしているとしよう。さらにこちらの手札には《オレリアの憤怒》がある。

 まずXがいくつであるか宣言する――10にしておこうか。そして対戦相手1人、対戦相手のクリーチャー3体、それから《戦場の秘術師》2体を対象とする。そのあと、コストの減少を適用する。突然《オレリアの憤怒》10点分のコストがだけになった! そのうち5点をクリーチャーにそれぞれ振り分け、残り5点を対戦相手に叩きつけることができる。

 ああ、そうだ。これだとこちらの《戦場の秘術師》を除去して5点のダメージを与えるだけに過ぎない。これじゃだめだ。

 だがもし、コントロールしている《戦場の秘術師》の数が3体だったらどうか? 対象に取れるクリーチャー数が6体で、《戦場の秘術師》がそれぞれ6マナ分軽減するわけだから、突如として軽減マナは18に膨れ上がる――で対戦相手に与えられるダメージは12点だ。さらにもう1体《戦場の秘術師》が加われば、対戦相手に与えるダメージは21点になる。

 さて、そんな機会があるだろうか? 《戦場の秘術師》を4体コントロールするだなんて、本当にできるだろうか? さあ、私達が学んできたものを全て最後の秘儀につぎ込もう――『ジュラシック・パーク』が教えてくれたように、クローン技術は全てを可能にしてくれる……

ガヴィン・ヴァーヘイの「秘儀入門3 授業課題」

Download Arena Decklist

秘儀入門4:選択

 秘儀の可能性は極めて高く、それを発見するのがあなたの使命だ。私は今回、可能性を全て列挙したわけではない。しかも今回はスタンダードだけだった。モダンで《彗星の嵐》や《タジュールの力》といった呪文を使ってどれだけ遊べるだろうか? 秘儀のためにレガシーは何を用意しているだろうか?

 探って明らかにするんだ。 あなたがどんな発見をするか、気になってしょうがないよ!


(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing)

(以下の内容は、原文・本日(4月29日)掲載分の記事から抜粋・収録しております。また、この節のリンク先となっているtumblrアカウントでは英語で会話が行なわれています。 この節の文責・編集 Yoshikawa)

 今週のデッキ募集はなしとする。2週間後(原文掲載日)には『Vintage Masters』プレビューが開始されるので、私の担当するプレビュー・カードとともにお会いしよう!

 それまで、代わりに今週から新しいことを試してみようと思う! 私は毎週、デッキ構築や戦略についての質問を数多く受け取って、注意深く回答を組み立てている。しかし、よく似た質問が多くある――ならば、それらを編集して一箇所にまとめ、みんなが読んでそこから学べるようにしてはどうか? きっと、現在のマジックの戦略と情報の有用な保管庫になることだろう!

 ということで、そのためのtumblrを用意した。光栄にも発表させてもらおう。「GavInsight」だ!

 マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterのtumblrはデザインを知るために最適だし、同じことがフレイバーを語るダグ・ベイヤー/Doug Beyerのtumblr、ルールについて議論するマット・タバック/Matt Tabakのtumblrにも言える。今度はデッキ構築でも同じことをしてみよう。

 デッキ構築や戦略についての質問がある? デッキについて質問してみたいけど今週の「ReConstructed」の募集内容に合わない? 答えられる範囲なら何でもお答えしたい! そしてもちろん、マークのように、ちょっと主題から外れた質問も楽しみにしている。なんとなく知りたいこと、例えば、私が『ドクター・フー』のあるエピソードについてどう思っているか、仕事のときにどんな音楽を聞いているか、でもいいよ。

 どんな結果になるか楽しみだ!

 そしてもちろん、いつものように、フィードバックがあればTwitter、フォーラムへの投稿、または――これがお勧めなのだけど――tumblrへ送ってほしい! いつも皆さんの意見は聞いてみたい。

 また来週お会いしよう!

Gavin / @GavinVerhey

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