数多のヴォーソス・デッキ

更新日 Reconstructed on 2015年 9月 15日

By Gavin Verhey

When Gavin Verhey was eleven, he dreamt of a job making Magic cards—and now as a Magic designer, he's living his dream! Gavin has been writing about Magic since 2005.

 今回の記事はヴォーソス向けだよ。

 物語や背景世界を愛してやまないプレイヤーであるヴォーソスにとって、今はまさに黄金期といえる。『マジック・オリジン』では、物語をこれまで以上に重視する新たな時代へと、私たちをいざなってくれた。『戦乱のゼンディカー』でも、さらにその先の物語を紡ごうとしている。そして、私自身、来年以降にマジックが向かう未来を全て知っている。その上で、次の言葉を信用してほしい。皆が本当に楽しめる体験をこれからも届けてみせるよ。胸を食い破って登場するエイリアンのように、私の中のヴォーソスが今にも体をぶち抜いて飛び出しそうだ。

 そこで今回は、いつもと違うものを取り上げたいと思う。これまでに様々な題材を取り上げてきたReConstructedでも、今までに一度も手をつけたことがなかった題材をね。多種多様な、雰囲気重視の視点がもたらすデッキ構築を見ていこう。

 ああ、そういうことだ。今回は対戦相手を倒して勝利することを重視するのではない。いいオレンジを使ったオレンジ・ジュースからは、素晴らしい風味を感じ取れる。それと同じく、雰囲気をたっぷり感じ取れるデッキを構築する、いくつかの手法を紹介したい。

 どうやって紹介するかって? もちろん、皆が投稿してくれたいろんなデッキを見ていくのさ!

 さて、今回はいつもと違う、ということはあらかじめ伝えておきたかった。ReConstructedの通常営業は、美術体験会に例えることができる。それは絵を描くための、より良い方法について伝えるものだ。その例でいけば、今回のReConstructedは美術館だと言える。あふれ出るひらめきと表現力を見ていくことによって満たされるだろう。ヴォーソス・デッキでは、雰囲気を表現することが中心となる。そしてそれは、デッキを組む芸術家の腕の見せ所だ。私は、純粋に芸術的視点で構築されたデッキに対して、どこかを調整したいとは全く思わない。それよりも、それが何をどう表現しようとしているデッキなのか、そして同系統のデッキを構築する上で何をどう生かせるかについて語っていきたい。

 準備はいいかな? エンジンをかけて出発だ!

部族を集めてみよう

 一口にヴォーソスと言っても、いろいろな切り口がある。ある時は、物語に重きを置くことかもしれない。またある時は、単に使うカードの題材を統一して、デッキ全体で雰囲気を醸し出すことを指しているかもしれない。そこには多少の違いがある。

 部族デッキは後者だ。神河の《清められし者、せし郎》と、ラヴニカの《翼膜のバイパー》を組み合わせたときの活用法について話すとき、そこに物語は関わってこないだろう。しかしデッキ全体の雰囲気は伝わるはずだ。デッキ製作者はおそらく蛇という部族が好きで、次元を股に掛けて良いもの全てを探し出し、雰囲気たっぷりの相互作用を取り入れているのだろう、とね。

 例えば、こういうデッキだ。

アンドリュー・ワイゼルの「なんでよりによってヘビなんだ?」

モダン
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 使われているカードの範囲が許す以上、このカジュアル・デッキはモダンのデッキだと言える。グランプリや何かの大会にこれで参加したりはしないけれども、このデッキがモダンの枠内に納まるものであることは間違いない。雰囲気重視のデッキは、フライデー・ナイト・マジックに参加するときや、友達に軽くモダンを遊ぼうと誘われたときに選ぶのが一番いいだろう。

 これは部族を使うこと、そして部族をお披露目することを(おそらく)満喫できる。そうすることを使い手が楽しむ類のデッキだ。私はここで、アンドリューがこのデッキを蛇の部族デッキという程度で終わらせず、その先、蛇を主題にしたデッキという位置にまで高めた点について述べておきたい。《蛇変化》はこの蛇デッキの運用上、まったく必要ない効果を持つカードだが、蛇が関係している。最高だね!

 さて、このように部族を披露するデッキを考える場合、そのテーマが一般的に最も活躍するといえる舞台は、統率者戦だろう。いつでも統率者を出せるからね。自分の統率者で、味方の軍勢を先導する、その見本がこのデッキだ。

ブランドン・ダウアーの「ミノタウルスの神、モーギス」

統率者:殺戮の神、モーギス
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他 (9)
1 ヴォルラスの要塞 1 タールルームの勇士ターンガース 1 タールルームの笛吹き 1 怒り狂うミノタウルス 1 ゼラパのミノタウルス 1 タールルームの勇者 1 タールルーム・ミノタウルス 1 闇の覆い 1 激浪の複製機
99 カード

 このデッキからは独自の素晴らしい物語性が感じ取れるだろう。これは単なるミノタウルス部族デッキではない――モーギスによって戦場に導かれるミノタウルス部族デッキだ。

 ちょっとの間、心の中で想像してみてくれ。次元の壁は無視するんだ。多元宇宙のあらゆる戦場で戦う、あらゆる側の、あらゆる腕の、あらゆる蹄のミノタウルスが集まった大軍勢を、モーギスが率いる場面を想像できるだろう。雑多で粗野な集団に見えるが、鋭い殺気が感じられる。どんな相手でも打ち倒してしまいそうだ。

 もし、自分が使いたい部族の中心となれる伝説のクリーチャーがいるなら、統率者戦はそれを披露するのに向いている舞台だ。ヴォーソス統率者デッキはかなり人気のある分野だが、その中では、部族が一番ヴォーソス統率者デッキを組みやすいぞ。

イラストに注目してみよう

 ヴォーソスには様々な側面がある。例えば、物語に注目するものや、全体の雰囲気を重視するものだ。しかしそれらと同様に、カードのイラスト、そしてそのイラストを通して表現したい題材の全体像を見せていくものについても忘れてはならない。

 ヴォーソス・デッキとして構築できるものの1つが、イラストを基準としたデッキだ。気に入った題材を選んで、マジックの全ての美麗なカード・イラストから最もそれらしいものを選び抜いて、デッキを構築しよう。対戦するときには、相手に問題を出してみてもいいかもしれない。「このデッキは、ある題材に合わせてイラストをそろえてるんだけど、何だかわかるかい?」ってね。

 例えば、これを見てみてくれ。

The Ultimate Priceの「ドラゴンを倒せ!」

スタンダード
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 どういうデッキかな? そう、よく見てみると、全てのイラストがドラゴンと戦うか、ドラゴンを倒すことに関連しているんだ! 簡単だね。カード・イラストを通して、その題材を披露していこう。

 さらに言えば、気軽なスタンダードの対戦の場で、相手がドラゴン部族デッキか何かだったら最高だね。相手は苦笑いするしかないさ。

物語を手軽に表現してみよう

 さて、今まで紹介したデッキはマジックの物語を直接的に表現するというよりは、思いついた題材の雰囲気をデッキ全体で表現することを重視したものだった。しかしデッキの中で物語を表現できる、素晴らしい方法もある。特に『マジック・オリジン』が登場した今は、これまでよりも手軽に物語を表現できるようになった。

 ヴォーソス・デッキを組む場合、題材に適したカードだけを厳選して事細かに物語を再現しなければならない、というのは誤解にすぎない。ヴォーソス・デッキを手軽に組んだっていいじゃないか! 気軽に楽しみたい人向きのやり方は、いくらでもある。例えば、このチャンドラ・デッキはいい感じだぞ。

ライアン・ジェームス・パリィの「カジュアル構築・チャンドラの炎」

カジュアル
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 ライアンは単にチャンドラのカード、あるいは何らかの形でチャンドラと関係するカードをとにかくデッキに突っ込んだだけだ。マナカーブはどんな状態だろうか? どういう戦略があるだろうか? 一番にあるのはチャンドラを題材としたデッキを披露することなので、それ以外の問題は二の次だ。

 さて、このデッキはこれまでに登場したチャンドラ関連のカードを全て投入しているわけではない。別にそれでもいいじゃないか。手持ちのカードの中から、やりたい題材に合うものを取り出して組むだけでも、楽しめるはずさ。

 誰かと軽く遊ぼうと言われたときに、このデッキをさっと準備できれば、気持ちよく遊べるだろう。チャンドラの気分を味わえるこの赤いデッキを使えば、勝つにせよ負けるにせよ、対戦を終えるまではチャンドラ関連のカードで遊べるぞ。私自身ヴォーソスなので、こういったデッキには心がくすぐられる――使ったときに対戦相手にも楽しんでもらえると、もっといいね。(もちろん、チャンドラのオリジン・ストーリーについて語り合いながら遊びたいところだ!)

物語を綿密に表現してみよう

 もちろん、デッキで物語を表現するやり方には、手の込んだものもある。上のチャンドラ・デッキを使えば、チャンドラを題材にしたデッキをこんな風に組んでみたんだ、と内容を紹介できるし、チャンドラの物語に関するカードをいくつか唱えられるだろう。それもまた良いものだ。

 しかし、より詳しく表現する方法も確かに存在する。もしやってみたいなら、実際にその領域へと挑戦してみよう。

 このブランドン・エルカーのデッキは、そのお手本になるものだ。この紛れもない傑作は、マジックで長期に渡って展開された古き物語を表現したものだ。そう、これはもちろん、ファイレクシアに立ち向かうウェザーライトの物語だ。

 これをちょっと見てくれ。

ブランドン・エルカーの「ウェザーライト&ドミナリア連合軍」

カジュアル
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他 (26)
1 真鍮の都 1 見捨てられた都市 1 艦長シッセイ 1 タールルームの勇士ターンガース 1 サマイトの癒し手オアリム 1 熟達の魔術師アーテイ 1 ラノワールの使者ロフェロス 1 ラースのスターク 1 マローの魔術師ムルタニ 1 銀のゴーレム、カーン 1 葉の王エラダムリー 1 追放するものドロマー 1 ヤヴィマヤの農夫 1 ドラコ 1 メタスランの輸送船 1 メタスランの兵士 1 メタスランの軽飛行船 1 Scion of the Ur-Dragon(TSP) 1 飛翔艦ウェザーライト 1 ウルザのろ過器 1 次元の門 1 殉教者の墳墓 1 エルフェイムの聖域 1 ムルタニの融和 1 偵察行 1 オアリムの詠唱
100 カード

 このデッキは並外れたヴォーソス・デッキで、物語が語られた長期間にわたって登場した関連カードのほとんどを投入してある。ブランドンは分かってるやつだ――ヴォーソスの巨匠として独自の研究を進めている! このデッキについて、ブランドンよりうまく説明できる適任がほかにいるだろうか? 彼が送ってくれたメールから内容をいくつか抜粋して紹介しよう。ブランドンは、こう語ってくれた。

 そこで私が選んだ題材は、他より多少詳しく知っている、ウェザーライト号の乗組員でした。見てのとおり、仲間は全員揃っています!

 ウェザーライト号の乗組員以外も入っていますが、物語に関連していたクリーチャーから選んで採用してあります。つまりは副題である連合軍の枠内に納まるものです。例えば、ムルタニ直属のヤヴィマヤの住人たちとともに、元から連合軍に所属していた一員として、メタスランのクリーチャーや《セラの天使》を採用しています。

 《銀のゴーレム、カーン》や《葉の王エラダムリー》など、実際のゲームプレイという観点では関連性が見えないカードも含まれていますが、これらと連合軍との関連性は無視できるものではありませんでした。例えば、エラダムリーはタデウスの死後、連合軍の半数を率いています。そして、このデッキリストでカーンの2番目の能力が役に立つことはありませんが、彼はウェザーライト号のメンテナンス担当です――デッキから彼を抜くなんてできません。

 次は『インベイジョン』のドラゴンと《始祖ドラゴンの末裔》に関してです。ファイレクシアの侵略が行われているとき、テヴェシュ・ザットは、《点火するものデアリガズ》としても知られるラミーデアリガズに対して、原始ドラゴンの存在を明らかにしました。そして実のところ、デアリガズ自身もまた、原始ドラゴンでした。全ての原始ドラゴンが復活してから、デアリガズの愚行をカーンが諭すまでの間、彼らはドミナリア連合軍とファイレクシア、双方と争い続けました。デアリガズは争いを止めるために火口に身を投げて生涯を終え、それにより他の原始ドラゴンは負けを認めることになりました……

 原始ドラゴンは神のような存在であるだけでなく、始祖ドラゴン――究極のドラゴンの王という概念に関連した属性をそれぞれが持ち合わせています。

 フレイアリーズと《殉教者の墳墓》もまた、「《殉教者の墳墓》は、世界を守るために命を散らした連合軍の勇士を讃えるため、プレインズウォーカー・フレイアリーズが建立した記念碑である」というちょっとした気づきから、デッキリストに加えたカードです。彼女はドミナリアの物語のそこかしこに登場していましたが、私が気づいた中ではこれが彼女とドミナリア連合軍の関係を最もよく表している情報でした。

 ウルザとジェラードの対決を表している《ファイレクシアの闘技場》は当然入りますし、もちろんヨーグモスを倒し《合同勝利》をもたらした《レガシーの兵器》も欠かせません。

 今まで見てきたものはどれもヴォーソス・デッキだ。しかし彼は古い物語を題材として、それを完璧にデッキで表現しただけでなく、選択したカードそれぞれが物語上の何をどう表現しているかについての長い解説までつけてくれた。

 例えば、マジックの歴史が続く中でジェイスの物語は今よりもさらに増えていくだろう。その豊富な物語に基づいてこの規模のデッキを構築し、思い出を語れるようになるときが来るんじゃないかな。だから私はこれから先を楽しみにしているんだ。マジックの物語がこれからも続いていくのは間違いないからね。

独自の物語を考えてみよう

 私が取り扱いたい最後の分野について、まだ話してなかったね。物語の二次創作だ! さて、驚いたり、それは本当のヴォーソスではないと言う人もいるかもしれない。確立された趣向として愛好者がいるわけではない。ここで私が言いたいのは、創造性や物語を表現したいという気持ちは、どんなものであっても大事だということだ。まだ語られたことのない素敵な物語を思いついたなら、早速それをデッキで表現してみよう! 加えて、ドラゴンボールZからハリー・ポッターに至るまで、あらゆる作品の読み手や書き手となっている人、それにもちろん、ドクター・フーについて考察の真似事をしている人も、本質的には二次創作の世界に向いていると思うよ。

 二次創作デッキとはどんなものだろうか? よし、これを見てくれ。

ローワン・アーケルの「ウルザのエルドラージ」

カジュアル
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 このデッキリストが問いかけている内容はこうだ。ウルザは鉱山、魔力炉、そして塔を使って何をしようとしていたのか? もちろん、エルドラージを作ろうとしていたんだ!

 さて、これが真実の背景世界であるというと、そうではない。しかし、間違っているからといって、それをとやかく言うのは野暮じゃないか。デッキの楽しみはそんな間違いなんか吹き飛ばしてしまうぞ!

 このデッキで遊べば、頭の中で勝手に作ったこのデッキにまつわる物語について、友達とちょっとした雑談を楽しめるだろう。ここで大事なのは、マジックは創造性が関わるゲームだということだ――独自の物語を披露することだって、間違いなく創造的なことなのさ。

ゼンディカーの時間

 エルドラージといえば、『戦乱のゼンディカー』が間近に迫っている!

 今回の記事ではデッキ募集はないが、次回は「戦乱」の中にある多数のカードを見ていくぞ。幸いにも、このセットには要注目のクールなカードがたくさんあるから、代わりとする価値があると考えているよ。

(編訳注:そこで、原文9月15日掲載分の「ReConstructed」は、プレビュー特別編として日英同時掲載(日本時間9月16日0時公開)となります。)

 今回の記事と、マジックのヴォーソス的な一面を楽しんでくれたなら幸いだ! 皆さんの感想をぜひ聞いてみたい。質問や感想その他なんでも、私に送っていただきたい! ツイートを送る、または私のTumblrでの質問など、いつでもご連絡をお待ちしているよ。

 それではまた次回!

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight

(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing)

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