改善の余地あり

更新日 Reconstructed on 2015年 6月 29日

By Gavin Verhey

When Gavin Verhey was eleven, he dreamt of a job making Magic cards—and now as a Magic designer, he's living his dream! Gavin has been writing about Magic since 2005.

 マジックというゲームの大部分を構成しているのは、デッキ構築だ。私達プレインズウォーカーは、多大な時間を研究に費やして、何もないところから素晴らしいものを生み出す。デッキ構築を通じ、アイデアを具現化していくのだ。

 ところで、デッキを構築したあとに存在する工程のことはどうかな?

 最初にデッキを魔法の炉から取り出して完成させたあとも、まだまだやることはある。私たちは実際にやっている。ちょっと中身をいじったり、デッキについて考えたりするはずだ。

 そして、新しいセットが出るたびに、新しいパーツを見つける。新カードを追加してみる。そう、デッキを改善していくのだ。

 環境の最前線に居続けたいなら、改善は必須だ。そして間近に迫った『マジック・オリジン』に向けて、今回はデッキを改善する方法について詳しく取り扱いたいと思う。「新しく登場するカードはどのようにデッキを変化させるのか?」というのが、扱いたい主題だ。そこで今回は、全体の工程をひとつずつ分けて解説していくぞ。

 ある1つの方針からデッキを構築するやり方は、『マジック・オリジン』のプレビュー期間で何度かお目にかけられるだろう。そして、今回の記事で、既存のデッキをどう改善できるかについて知ることで、デッキそれぞれをより良く構築できるようになる。他のプレイヤーが考えをまとめきれずにいる間に、新カードを採用する準備を整えることができるんだ。個性的なデッキを引っさげて遊んでいるにしても、グランプリで登場した最新のスタンダード・デッキを使うにしても、デッキの改善は必ず関係してくる。フォーマットの環境が新しくなった時に利用できる、デッキ改善法を知っておくことは、素晴らしい利点になるだろう。

 つまりどういうことかって? デッキ改善をするやり方を、3つの段階に分けて紹介していくってことさ。このまま読み進めてくれ!

http://media.wizards.com/2015/images/daily/cardart_RampantGrowth.jpg

不屈の自然》 アート:Steven Belledin


ステップ1:自分のデッキを理解する

 デッキを変更しはじめる前に、まずそのデッキがどのような動きをするのかを理解しておくことが重要だ。

 簡単なことに思えるかもしれないが、誤った理解をしていることがよくある。とりわけスタンダードの主要なデッキは、頻繁に目にしていると思うが、そうかといって、それらのデッキのことを何もかも理解している、という考えは幻想に過ぎない。

 最新のトーナメント結果からデッキリストをコピーして、デッキを使う前からあちこち変更してしまう人をよく見かける。それからそのデッキを使って、「全然使えない」と文句を言う、ということが多すぎるんだ。それでは、台所に必要な全ての部品を確認する前に台所を据えつけてしまうようなものじゃないか。確認しなくても台所を設置すること自体はできるだろうけど、きっと水漏れを起こしてしまうだろうね!

 「ReConstructed」では私が持つ過去の豊富な経験に加えて、題材にする予定のデッキについて、それがどのように機能するかを理解するために、Magic Onlineで事前に回してみることにしている。

 独自のデッキを生み出して使うにしろ、単にトーナメントで成功したデッキリストを使うにしろ、まずはデッキを実際に回すことから始めよう。デッキの長所と短所を理解し、カードそれぞれがデッキに入っている理由を知るんだ。

 なぜかって? 新カードによる改善を行うためには、それが改善になるのかどうかをまず把握できなければならない。個々のパーツが目的を達成しているかどうかを知っておく必要があるんだ。

 デッキを知るための最も効率的な方法の1つが、デッキのカードを役割ごとの「バケツ」に分けていくことだ。

 例として、『運命再編』後、『タルキール龍紀伝』前のスタンダード環境のグランプリで優勝した、イマニュエル・ゲルシェンソン/Immanuel Gerschensonの青黒コントロール・デッキを見てみよう。

イマニュエル・ゲルシェンソンの「青黒コントロール」

グランプリ・セビリア2015 優勝 / 過去のスタンダード
Download Arena Decklist

 さて、このデッキリストのカードをそれぞれのバケツに分けてみようか。プレイしたことがないとしても、最初は簡単だ。《時を越えた探索》と《ジェイスの創意》は「ドローカード」バケツに入れよう。《胆汁病》と《英雄の破滅》は両方とも「除去」バケツだ。

 しかし例えば、《悪夢の織り手、アショク》となるとどうだろう? これはデッキの脅威に分類されるカードだろうか? それとも時間を稼ぐためのカード? 対コントロール・デッキ向けのカードかも? それを知るためには、実際にデッキを動かしてみる必要がある。

 例えばこの場合、《悪夢の織り手、アショク》は、クリーチャー中心のデッキが頭を抱える原因となるほどに時間を稼ぐ力もある、脅威として存在するカード、ということになる。(コントロールに対して優秀なのも間違いない。)

 それで、このバケツ分類は何のためにやるんだろうか? ああ、これには目的がある。しかしまずは、次の段階に進もう!

ステップ2:新カードを確認する

 おそらく言うまでもないことだとは思うけれど、デッキに必要だと思うカードが何なのか分からないままでは、新セットのカードをデッキに投入するのは難しいだろうね。結局のところ、何らかの目的のためにカードを採用したいのであって、目隠しして無作為に選んでもかまわないものじゃない。

 使っているデッキを改善するために必要な最初の行動は、新セットのカードイメージギャラリー、つまり全ての新カードに目を通すことだ。自分が使う色だけ見るのは良くない。なぜなら、デッキの色を変える価値のあるカードを見逃してしまうことがあるからだ。例えば、『テーロス』発売後、デッキに軽いクリーチャー一掃呪文が必要だと感じて、《神々の憤怒》を利用するために青赤でコントロールを組んでいたとしよう。その後『神々の軍勢』が発売されると、《悲哀まみれ》が利用可能になる。これは赤を黒に変更したほうがいいかもしれないぞ!

 全ての新カードを調べて、新しい選択肢になりうるものを書き留めておくことを推奨する。そうすればセットの全てに目を通し終わったときに、検討の余地のあるカードの一覧が手に入るというわけだ。

 さて、大体の場合、そのカード選択肢一覧は実際にデッキに採用できるカード枚数よりも多くなる――だがそれでいい! 選択肢を最大限に確保して、それから余分な水分を取り除いて最高の要素を抽出することが大事なんだ。どんなサイズの麺でも余分な水分を取り除いて美味しく仕上げる、パスタ・ストレーナー(湯切りざる)のようにね。

 もし、自分のデッキに必要な選択肢が分かりかねるなら、デッキに不要な選択肢を排除することが、デッキの既存のバケツに投入できるカードを見つけることの代わりになるだろう。例えば、青黒コントロールには「軽量クリーチャー」バケツが存在しないので、《血顎の狂信者》のようなカードを採用する可能性はほぼ無い。

 前述の青黒コントロール・デッキで試してみよう。例えば、目を通すうちに《シルムガルの嘲笑》は確実にピックアップするはずだ。現状のデッキには打ち消し呪文が入っているので、必要とする要素であると判断できる。それは《忌呪の発動》や《究極の価格》にも当てはまる。どちらも除去呪文だからね。また、《龍王シルムガル》のような大型ドラゴンもいくつかチェックしておくことになるだろう。そして、他の色についても目を通すようにしているおかげで、白を足せば《卓絶のナーセット》や《龍王オジュタイ》が採用可能なことも把握できる。

 各カードがどのバケツに入るかを確認していこう。全てが既存のバケツに入るわけではないが、ほとんどは分類できるだろう。

 使えるかもしれないカードを確認したら、最も難しいかもしれない次の段階に進むときだ。実際にデッキに変更を加えてみよう!

ステップ3:変更する

 ここまでで、デッキのカードをバケツで分類し、追加できそうなカードのリストを作った。いいぞ! あと残っているのは、実際にデッキに入るものと抜くものを判断する作業ということになる。

 バケツ分類が役に立ってくるのはここからだ。

 デッキを使い込んでいれば、新カードを満足の行く箇所へと投入できる。すでに大規模トーナメントで成功した、ある程度実証されているデッキであっても、長く使い込んで動きを知り尽くし、ほぼ完成させたデッキであっても、デッキを改善する余地はある。

 各バケツ内に振り分けられている枚数を1、2枚どころではなく変更してしまってもいいとか、デッキ全体の構造を不安定にしてしまってもいい、ということではない。最終的にはそういった変更が正解である場合もたまにはあるが、最初に大きな変更を加えるのはやめたほうがいい。

 そこでまずは、デッキにすでに存在しているカードと、追加検討カードを、同種のバケツごとに比較していこう。

 例えば、《究極の価格》と《忌呪の発動》について考えてみよう。これらは除去呪文なので、デッキの既存の除去呪文と比較検討しなければならない。《胆汁病》、《英雄の破滅》、そして《信者の沈黙》だ。デッキには今9枚の除去呪文があるので、数を変更するとしてもプラスマイナス2枚までにしたいところだろう。

 この場合は、それぞれ比較してみればいい。このデッキではどのカードが強そうだろうか? マナカーブを改善できるものは? 既存のカードでは対処できなかったものに触れる要素が、新カードになら存在しているか? これらはカードを基準に比較判断する作業だ。少なくとも除去呪文とランプ呪文(マナを伸ばす呪文)を比較する場合よりは、同じ分類でより良いものを選択するほうが判断しやすいだろう。

 これは、より独特な分類のバケツについての知識がかなり有効に活かせる部分でもある。

 さっき例として挙げていた《悪夢の織り手、アショク》を覚えているかな? 私は「クリーチャー中心のデッキが頭を抱える原因となるほどに時間を稼ぐ力もある、脅威として存在するカード」と評した。

 そう、そこを理解していれば、《シルムガルの命令》と《忌呪の発動》の補助も兼ねて、何枚かのドラゴンを加えるという発想が容易になる。なぜかって? 役割がほぼ同じだからだ!

 アショクについて述べたことが《氷瀑の執政》にも言える。脅威でもあり、クリーチャー・デッキに対して大いに時間を稼ぐこともできる、とね。

 『タルキール龍紀伝』が加わり、変更できるであろう部分を検討してみた後、最終的に仕上がるのはこのようなものだろう。

八十岡 翔太の「青黒コントロール」

プロツアー『タルキール龍紀伝』 準優勝 / スタンダード
Download Arena Decklist

 これらの工程を極めて丁寧に進めることで、八十岡のデッキリストにたどり着く。ドラゴンが多く採用されているけれども、これらはアショクと良く似た役割を果たす。(そして他に追加したカードを補助するためにも必要だ。)

 もちろん、これが唯一の正解というわけではない。いつでも違う選択肢を試すことができる。スタンダードで実際に見ているように、《龍王オジュタイ》のために白を採用し、安定させるためにエスパー・ドラゴンとして仕上げるのも簡単だろう。

 ともあれ、小さな変更を行うためにこれらの手法を用いることで、新セットのカードを試すときにすぐさまデッキを戦える状態へと改善することができる。

 その変更が正しいか、方向性が合っているか、それらを判断できるのは、テストプレイだけだ。けれども、これまで述べてきた工程は、プレイヤーにほぼ正しい指標を与えてくれる手がかりになる。

実践練習

 今回の記事を書いたのは、『マジック・オリジン』が迫っているからでもあることを忘れないでほしい! プレビュー時期は、公開されるカード全てに目を光らせるんだ。どれが自分のデッキに関係するか見極めよう。その後、プレリリース・イベントでカードを手に入れた時に試せるアイデアを、ストックしておくためにね!

 『マジック・オリジン』といえば、私が最初に扱うプレビュー・カードはもう公開されているぞ! こいつは破天荒なカードで、話題になること間違いなしだ――こんなカードを印刷してしまえたことにまだ驚いているよ。絶対に見るべきだ!

 次々回もプレビュー週間なので、今回はデッキ構築の募集はない。とはいえ、感想や意見などがあれば、私へのツイートや、Tumblrで質問などを送ってもらえるのは大歓迎だ。必ず拝見させてもらうよ! この記事が役に立ったり、この工程に対する考えを深めるのに有益であったなら、ぜひ知りたいからね。

(編訳注:「次々回」にあたる6月30日掲載分は、日本時間7月1日0時に掲載いたします。そちらもご注目ください。)

 また次回お会いしよう!

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight

(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing)

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