From the Vault: Twenty

更新日 Reconstructed on 2013年 8月 20日

By Gavin Verhey

When Gavin Verhey was eleven, he dreamt of a job making Magic cards—and now as a Magic designer, he's living his dream! Gavin has been writing about Magic since 2005.

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 私はWebページを眺めていた。親指と人差し指の間に顎を置いて、表情は穏やかだったと思う。心に乱れはなく、落ち着いていた。私の周りには何枚もプリントが置かれていて、そこにはデッキリストとそれが使われた日付、そして世界王者の名前が印刷されていた。右手側にあるメモ帳には、「20周年を記念するセット。各年につきカード1枚」と書かれた文字が丸で囲まれている。それは、私にしか解読できないような走り書きだった。私は研究室にこもる科学者のようで、そこにあるのは、私とカードだけだった。

 私は世界選手権2010へのリンクをクリックした。と、その瞬間、すべてが変わった。

 顔を手から離した。鼓動が早まる。頭脳は倍の速さで回り始めた。もし眼鏡をかけていたなら、私はそれを押し上げて外していたことだろう。

 私はディスプレイを凝視した――私の思考を一気に加速させたものをじっと見つめた。

 できるのか? そんなことが本当に? 『From the Vault』に《精神を刻む者、ジェイス》を収録するなんてことが?

 そんなの……無理だろう?


 20周年記念特集へようこそ!

 今週は、いつものデッキを調整するコラムはお休みだ。ああ、分かっているとも――さぞかしがっかりしたことだろう。でも、今日は良い知らせを持ってきたんだ。きっとみんな許してくれると思う。

 本日は、『From the Vault: Twenty』のすべてを語るつもりだ。アイデアの起源、開発中の裏話……ああ、そうだ、それから「20枚のカードすべてを」明かそう。これでみんな機嫌を直してくれるよね。

 それじゃあ始めるぞ。

    初めに、「無」があった

 ……そこから「有」が生まれた。それは灯。アイデアだ。

 始まりはこうだった――私がウィザーズ社で働き始めて3ヶ月になろうかという頃、『From the Vault』のリーダーだったマーク・ゴットリーブ/Mark Gottliebは、デザイン・マネージャーとしてより多くの責務を負う予定になっていた。私はデザインとは関係ないものの『From the Vault: Realms』に携わっていて(とりわけ、カードのテキスト欄を埋めるのが私の仕事だった)、そのおかげでこのシリーズの面白さを感じていた。このプロジェクトを引き継げる者を探していたゴットリーブは、私にバトンを手渡したのだ。

 2013年に出る『From the Vault』の開発! なんて素晴らしい。それで……どうすればいいんだ?

 私はほぼ白紙の状態から始めた。ゴットリーブは将来の『From the Vault』についてもいくつかアイデアを書き留めていたけれど、この製品は今や私のものだ。いわば私の子供。そう、私の! 私のかわいい……

 それがマジックの20周年記念に発売されるものだ、ということはすぐにわかった。そしてそのとき、あるアイデアをひらめいた――記念すべき大きな年にふさわしい何かをしてやりたい。私はマジックの歴史の中で最も象徴的なカードをいくつか挙げて、イーサン・フライシャー/Ethan Fleischerに投げ込んだ。すると彼は、今回の『From the Vault』の収録枚数を各年で1枚ずつの20枚に増やす、というアイデアでさらに私を後押ししてくれたのだ。

 私はそのアイデアに夢中になった。

 誰もがそのアイデアを認めた。そのことを知るより先に、私はデザインを始める準備を終えていた。

    時空を巡る大冒険

 目標は見えた。マジックの歴史を物語るような製品を作ることだ。そのための最善の方法は何か? それぞれの年を表現してやればいい――その年の大会と、発売されたセットの両方を。

 つまりどういうことか? 私は、(現在まで続くブロックというコンセプトが始まった『ミラージュ』から)各ブロックを代表するカードを1枚ずつ収録しようと考えたのだ。

 また、私はマジックの大会の歴史も感じさせたかった。これを達成するため、各プロツアー・シーズンでのプロツアーや世界選手権の優勝デッキに見られるカードを収録することにした。

 このふたつの方針を絡ませる(あるいは今の時代に合わせて言うなら「融合」させる)と、次のような解答に近づいた。各ブロックから1枚ずつ収録し、それらはプロツアー・シーズンに沿って選ぶ、というものだ。プロツアーのスケジュールは何度か変更されているため区分をつけにくいものもあるけれど、この方針でいくことになった。

 こうして、一筋縄ではいかなそうな手ごわい目標がふたつ出揃った。しかし、私はその上にさらにもうひとつ目標を掲げていた。

 それぞれの製品には、それぞれ簡潔に言い表せる目標がある。ある製品は新規プレイヤーにマジックを教えるため。またある製品はデッキ・ビルダーの心を惹きつけるため、という風に。

『From the Vault: Twenty』での目標、それは「こいつはスゴイ」と思わせることだ。

 ちょっと遠回しになるが、別の言葉で言うなら、「プレイヤーたちが持っていたくて、かつ、使ってみたいと思われるような、愛すべきカードの数々を収録する」ということだ。

 すべてのキューブマスターや統率者のプレイヤーのために。歴史愛好家やコレクターのために。そして世界中のエヴァン・アーウィン/Evan Erwinのために、この『From the Vault: Twenty』があるのだ。(豆知識:この製品を開発しているとき、わたしは度々「エヴァン・アーウィンはどれだけ喜んでくれるだろう? 『エヴァン・メーター』はどの数値を指し示すだろう?」というのを基準にしていた)。


 私は、収録されるカードすべてに目的を持たせたかった。すべてがスゴイものになって欲しかった――マジックの歴史を感じさせるために収録されるカードでも、わくわくするようなものじゃなきゃいけない。

『From the Vault: Twenty』は、マジック20年目の誕生パーティだ。マジックは本当に良い仲間たちに恵まれている。すべての『From the Vault』がマジックの誕生日を祝うものではないけれど、20周年の記念となれば特別なものになってもいいだろう。

『From the Vault: Twenty』の開発は、時間をかけて慎重に行なった。これは私が手がける初めての製品で、同時にマジック20周年を記念するものだった――ちゃんと正しい方向に進んでいるか確認したかった。私は収録カードの初期リストをいくつか作り、オフィス中のみんな(開発部であるかどうかに関わらず全員――開発部じゃない人の意見こそ大切なのだ!)に見せて、どのリストが一番喜んでもらえそうか意見を聞いた……それからリストを洗い直してまた意見を聞き、気に入ったリストの基礎ができるまでそれを繰り返した。

 そこからさらに私は延々とカードを入れ替え、ついに君たちがこれから目にする形になった。収録カードについては何度も考えて何度も入れ替えて、また大量のデッキリストを何度も繰り返し見て、開発には数ヵ月を費やした。それでも今回の『From the Vault』は、これがマジックの歴史を並べたショーケースとして世に出るのを心から誇りに思えるような、そういう製品になった。

 さあ、20周年記念特集にふさわしいTop20カードをお見せしよう。きっとみんなが心惹かれるような――『From the Vault: Twenty』に収録される20枚を!

(ドラムロールを鳴らす)



『From the Vault: Twenty』収録カード

    #1:1993年

 すべてはGen Conで始まった。

 1993年、当時は世界選手権がなかった。ウェブキャスト放送も、DailyMTG.comもなかった。携帯電話で利用できるインターネットもなかった。しかし、マジックというまったく新しい駆け出しのゲームには、ある特別な出来事があった――史上初のDCI認定大会だ。

 Gen Conで開催されたこの大会が、マジック初のイベントだった。第3ゲームをこのように取り今大会を制したのが、アレックス・パリッシュ/Alex Parrishだ。(リンク先は英語記事)

 その結果を除いて、この大会の記録は残っていない。すべてが時間と共に失われた。マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterのようなマジックの歴史愛好家でさえも、この大会当時の人たちとはもう繋がりがない。この大会は、今でも謎に包まれたままなのだ……

『From the Vault: Twenty』にとって、優勝デッキに含まれるカードが一躍大切なものになったため、私はアレックス・パリッシュを探し出しこの大会について彼と話をすることに全力を挙げた。彼自身が歴史の一部そのものであり、もし可能なら失われた歴史を掘り起こすつもりだった。

 努力の末ついに私はアレックスと連絡を取り、インタビューを行なった。そのときのやり取りは、今回の記事の最後に載せておこうと思う――読みごたえのある素敵なインタビューだったし、彼のマジックに対する視点は本当に感動的だった。しかしながら、当時使ったデッキについて覚えていることを彼と話し、その内容を深く検討した後、私は彼との連絡がつかなかった場合に備えて選んでおいたカードを再検討した――それが《暗黒の儀式》だ。

 《暗黒の儀式》はマジックの歴史を象徴する1枚だ。黎明期の「《暗黒の儀式》、《惑乱の死霊》、ターンどうぞ」という動きから、これを燃料にした技巧的なコンボ・デッキまで、《暗黒の儀式》はマジックの歴史が始まって以来ずっとその存在が意識されてきたカードなのだ。私は、このカードがお気に入りだと話してくれたプレイヤーをたくさん見てきた。さらに、驚くなかれ、唯一残った試合の記録に、アレックスが《暗黒の儀式》を使う場面があったのだ。そこから、彼のデッキに《暗黒の儀式》が入っていたことがわかった。

 《暗黒の儀式》は、まさに「これしかない」という選択だった――アレックスと連絡を取ってインタビューができたことは、心から嬉しく思っているよ。(この記事の最後に載せるインタビューをぜひ見て欲しい。本当に)。それでは、もうひとつ「これしかない」選択の話をしよう……

    #2:1994年

 《剣を鍬に》もマジックの歴史を象徴する1枚だ。

 発売当時は有用なカードだった? これからご説明しよう。現在のレガシーでも欠かせないカード? その通り。キューブ・ドラフトでも絶対に取りたいカード? そうとも。統率者戦でもよく見られるカード? 間違いない!

 このカードは、ザック・ドラン/Zak Dolanが世界選手権1994を勝ち取った際に使用した、かの有名な緑白青コントロール・デッキに採用された。ザックのデッキには《セラの天使》のような勝負の決め手と共に、この1マナのインスタントが4枚フル投入されていたのだ。

 君たちが《剣を鍬に》を使用できるフォーマットで遊ぶプレイヤーなら、きっとこのカードに心惹かれることだろう。私はこのカードの収録が可能だと気づくと同時に、マジックの歴史を表現するのにぴったりなカードであることがわかった。

 鋭い視点を持ちよく注意して観察した人は、この《剣を鍬に》が実は再録セットからの採用であることにお気づきだろう! 《剣を鍬に》は元々『アルファ版』に収録されたカードで、ザックのデッキに入っていたのも『アルファ版』だ。しかし『アルファ版』からはすでに1枚採用が決まっていて――それが《暗黒の儀式》だ――、そのため《剣を鍬に》は再録版を採用することになった。私は『From the Vault: Twenty』を、マジックの歴史を代表するようなスゴイ製品にしたかったのだ。ちなみに、次点の候補は《宿命》だった。

 《宿命》と《剣を鍬に》を天秤にかけた結果、私は《宿命》を採用して製品のチェックを安心してできるようにするよりも、マジックを代表するカードである(実用的にもぴったりな)《剣を鍬に》の採用を選んだ。それに、《剣を鍬に》が入っていた方が『From the Vault: Twenty』を開封するプレイヤーたちは喜んでくれる、と私は考えたのだ。なお、再録セットからの採用はこのカードだけだ。

ザック・ドランの「エンジェル・ステイシス」

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ソーサリー (4)
1 Regrowth 1 Time Walk 1 Timetwister 1 神の怒り
インスタント (2)
1 Ancestral Recall 1 Mana Drain
35 カード

    #3:1995年

 おや、これはゲームの開幕から《暗黒の儀式》と組み合わせるのにもってこいのカードじゃないか……

 おや、これはゲームの開幕から《暗黒の儀式》と組み合わせるのにもってこいのカードじゃないか……

 マジックの黎明期を象徴するカードがまたひとつ収録される。1994年11月、『Fallen Empires』の発売以来、《Hymn to Tourach》が撃ち込まれるたびにそれを受けたプレイヤーたちは顔をしかめてきた。このカードはまたたく間にマジックの根幹を成し、次の年の世界選手権ではアレクサンダー・ブルンク/Alexander Blumkeの黒をベースにした《拷問台》デッキに、この凶悪なソーサリーは4枚積まれた。(大変興味深いことに、このデッキにはここまでプレビューしてきた2枚――《暗黒の儀式》と《剣を鍬に》――も採用されていた。まさに歴史を感じるデッキだ!)

 キューブ・ドラフトでもレガシーでも、《Hymn to Tourach》の凶悪さは今なお健在だ。そうそう、キューブ・ドラフトと言えば、そのときに使われたイラストはどう思う?

『From the Vault』に携わる中で楽しいことのひとつは、どのカードのイラストをそのまま残し、どれを新規イラストにするか考えることだ。(後で詳しく話すけれど、もちろんどのカードについても議論が起こっている)。その一方で、Magic Onlineで行われるキューブ・ドラフトでは、多くの人気カードのイラストが現在の枠に合わせたものへ描き直されていた。偶然にも――私たちは、ちょうど昔の人気カードに焦点を当てた『From the Vault』を発売しようとしている! 今回の製品は、Magic Onlineのサーバーのどこかにしまってあるイラストを実際のカードとして印刷する、この上ないチャンスだったのだ。

 その結果、『From the Vault: Twenty』は、これまで印刷されたことのない新しいイラストに満ちた、驚くほど充実した製品となった。(新規イラストの数は9枚にものぼる!)さて、このまま印刷されたことのないイラストを持つカードの話を続けよう……

アレクサンダー・ブルンクの「拷問台コントロール」

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ソーサリー (4)
4 Hymn to Tourach
インスタント (2)
2 恐怖
アーティファクト (2)
2 Zuran Orb
エンチャント (4)
3 Dance of the Dead 1 魂の絆
37 カード

    #4:1996年

 マジックの歴史を詰め込んだ製品に1マナのエルフが入っていなかったら、一体どうなってしまうだろうか?

 緑のデッキの概念そのものと言っても差し支えない1マナ域のマナ加速役は、黎明期からその中心にいた。正直に言えば、たぶん《ラノワールのエルフ》の方が良く知られているのだが――この製品の方針に沿っているのは《Fyndhorn Elves》なのだ。(加えて、《ラノワールのエルフ》はもう十分に行き渡っていると思った)。

 《Fyndhorn Elves》の採用はまた、殿堂顕彰者オーレ・ラーデ/Olle Radeと《巨大トタテグモ》を用いた彼の赤緑デッキの活躍を、余すところなく紹介する機会にもなった!(序盤の展開に《Fyndhorn Elves》が貢献したことは疑いないだろう)。弱冠16歳にしてプロツアー・コロンバス1996を制したこの天才は、のちにマナ・エルフの力を活かしたgt;自身のインビテーショナル・カードを作ることになる。

 《Fyndhorn Elves》を採用するもうひとつの利点は、新規イラストで印刷できたことだ! このカードはこれまで1度しか印刷されたことがなく、紙の方には新しいイラストを与えるチャンスがなかった。Magic Onlineでキューブ・ドラフトを遊ぶプレイヤーたちの多くが、他でもこのイラストが使えることを望んでいる、と私は聞いていた。そして今、ついにそれが実現したのだ。(ジャスティン・トレッドウェイ/Justin Treadway、君のためにね!)

オーレ・ラーデ

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クリーチャー (10)
4 Fyndhorn Elves 2 Orcish Cannoneers 4 Woolly Spider
ソーサリー (3)
2 Lava Burst 1 紅蓮地獄
インスタント (6)
2 巨大化 4 火葬
アーティファクト (2)
2 Lodestone Bauble
土地 (18)
7 7 4 カープルーザンの森
39 カード

    #5:1997年

 《衝動》は当時の大会常連のカードで、今でもキューブ・ドラフトや統率者のデッキに必ず見られるものだ。数年前までは、たまにレガシーでも《High Tide》デッキで見られたほどだった。これは間違いなく一時代を築いたカードであり、このカードの戦略や使い方、果ては《衝動》が各自のプレイ・スタイルに合致していると仮定して、様々なプロ・プレイヤーに使わせるとどうなるか、といった(冗談も混じった)ものなど、《衝動》に関する記事は数え切れないほどあった。(興味があるなら、まだインターネット上に残っている記事を見つけることはできるだろう)。

 このように実に多くの場所で見られた《衝動》というカードだが、おそらくマジックの歴史上最も象徴的な場面は、マイク・ロング/Mike Longが用いたプロツアー・パリ97だろう。(この大会の逸話として、マイクがデッキに入っている唯一の《生命吸収》を追放した上で勝利した、という話を聞いている人がほとんどだろう――しかし実は、その話は真実ではない(リンク先は英語))。マイクは彼の生み出した「プロス・ブルーム」デッキ――《死体の花》、《資源の浪費》、《繁栄》を中心としたコンボ・デッキ――でスター揃いのトップ8を勝ち抜いた。《衝動》はこのデッキのキー・カードで、マイクはコンボを完遂するのに必要なカードをこれで探したのだ。

 《衝動》はマジックの歴史において重要な一角を占めるだけでなく、『From the Vault: Twenty』に新規イラストで収録されることになった。あの巻物を引っ掻き回す見た目が怖い狂った男の絵ではないのだ。(まあたとえどんなイラストでも、どう見えるかは君たち次第だろう)。アート・ディレクターであるジェレミー・ジャーヴィス/Jeremy Jarvisが、このカードの新イラストをとにかく求めていたことを私は知っている。歴史を持っていて、素晴らしい新規イラストを得るチャンスを持っていて、さらに非常に高い実用性を持っているこのカードは――言うことなしだ。

マイク・ロングの「プロス・ブルーム」

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土地 (18)
7 5 6
18 カード

    #6:1998年

 《花の壁》が大好きな人はたくさんいる。

 ブロックができてキャントリップも持っている《花の壁》だが、しかし何よりもこのカードは懐かしさに溢れている。このカードが弱いと言うつもりはないけれど――いや実際強力なカードだ――、多くの人たちにとって《花の壁》は、1998年夏のワシントン大学に戻れるような楽しさの方が際立っているのだ。

 ブライアン・セルデン/Brian Seldenが「RecSur」デッキで大会を支配したとき感じたような楽しさは、君たちも知っていることだろう。(「RecSur」は《繰り返す悪夢》と《適者生存》の英語名をまとめて略したものだ)。ブライアンがシアトルで行われた世界選手権を勝ち取ったとき、《花の壁》はブロックに回ったり、カードを引く効果のおかげで《gt;貿易風ライダー》の最高の相棒になったりと、実に様々な役割をこなした。あまりの楽しさにしばらくは盤面を進めるつもりがなかったのだろうと、私は確信しているよ!

 マジックの歴史にしっかりと名を残し、現在でも大いに愛される《花の壁》は、特に苦労なく『From the Vault: Twenty』に採用された。

ブライアン・セルデンの「RecSur」

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    #7:1999年

 ウルザ・ブロックについて考えると、思いつくのは大抵これになる。それはマナ加速だ。

 世界が「コンボの冬」に沈んでいた頃は、(実際に《記憶の壺》や《トレイリアのアカデミー》のコンボを回すのには時間がかかったものの、少なくともターン数で見れば)ゲームは凄まじい速さで終わっていた。

 やがて、(全体を見ればまだコンボ・デッキは暴れ回っていて、あくまでも比較的だが)その状況は改善され始め、カイ・ブッディ/Kai Buddeという誰もが聞き覚えのある名前の小さな魔道士が、世界選手権1999を制した。《スランの発電機》は彼の《燎原の火》デッキの心臓だった。《欲深きドラゴン》を戦場に留め、《燎原の火》が盤面を噛み砕いてもマナを残し――あるいはそう、単純に、《ミシュラのらせん》を憎らしいほどに強くできた。

 豆知識:私がマジックを始めた2ヶ月後が私の誕生日で、母が誕生日プレゼントにカイ・ブッディの『World Championship Decks 1999』を買ってくれた。(ウィザーズ社は世界選手権トップ8のデッキを金枠カードで製品化し販売していたのだ)。11歳といううってつけの時期にカイのデッキが持つ力を味わったことは、今の私を作る上で大きな刺激となったものの一部だった。(ジョン・フィンケル/Jon Finkelの《水位の上昇》デッキもプレゼントでもらったけれど、こちらは11歳の私には完全にわけのわからないデッキだった。あまりにも勝てないので、当時の私は「これはドラフトのデッキに違いない」という結論に至ったものだ)。

 そして今、私はデザイナーとして再びカイのデッキに光を当てる、という素晴らしい巡り合わせの中にいるのだ。

カイ・ブッディ

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アーティファクト (6)
2 摩滅したパワーストーン 4 通電式キー
土地 (13)
13
19 カード
サイドボード (4)
3 地震 1 ファイレクシアの処理装置

    #8:2000年

 カイ・ブッディを記念するカードは収録した。私がこのままジョン・フィンケルを象徴するカードを収録せずに、このマジックの歴史を物語るセットを世に出すと思うかい?

 《からみつく鉄線》は、史上最も有名な決勝戦のひとつに勝利したデッキから採用した。時は世界選手権2000、フィンケルがもうひとりの偉人ボブ・マーハー/Bob Maherを相手に繰り広げた奇跡の3ゲームからだ。また、このカードは史上最も成功したアーキタイプのひとつから採用した――それが「ティンカー」だ。《からみつく鉄線》は、ジョン・フィンケルのデッキから採用した。この選択がマジックの歴史を体現している。

 《からみつく鉄線》自体はどうだろうか? このカードは私が聞く限りでも様々な呼ばれ方をしていた――ここで改めて呼ぶことはしないけれど、使われていらいらするという意見が多いカードのひとつだった。(私としては、そうだな、「お気に入り」のカテゴリに入るカードのひとつだ。「スタックの積み方が重要なカード」だからね)。でもこれだけは言っておこう。ザック・ヒル/Zac Hillは、キューブ・ドラフトにおいて最強のカードは《からみつく鉄線》だと、何度も私に教えてくれた。そしてその主張が的外れだった場面には遭遇したことがない。私も熱心なキューブ・プレイヤーのひとりとして言わせてもらうなら、《からみつく鉄線》は対戦相手に使われるのが最も怖いカードのひとつだ。それは言うまでもなく強力な1枚なのだ。

 それから、今回は昔のイラストを新規イラストに変える絶好の機会だった、ということを再度言っておこう。

ジョン・フィンケル

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クリーチャー (1)
1 ファイレクシアの巨像
インスタント (4)
4 渦まく知識
アーティファクト (8)
4 通電式キー 4 ファイレクシアの処理装置
土地 (9)
9
22 カード

    #9:2001年

 私たちはこれまで時代を作るカードをたくさん見てきたが、おそらく『インベイジョン』時代を定義するカードはこの4マナのインスタントをおいて他にないだろう。あまりの強さに、「EOTFOFYL」なる略語が生まれるほどだった。初めて知ったという方のために説明すると、これは「End Of Turn Fact Or Fiction You Lose(エンド前、《嘘か真か》、君の負け)」の頭文字をとった略語だ。

 スタンダードに続きエクステンデッドでも一時代を築くとなれば、ブロック構築でも決め手となる活躍が期待できるだろう――殿堂顕彰者ズヴィ・モーショヴィッツ/Zvi Mowshowitzは、「ソリューション」と名付けた白青デッキにこのカードを4枚詰め込んだ。彼の組んだデッキはまさに環境への解答(Solution)で、ズヴィはトップ8ラウンドで接戦を繰り広げた末に優勝を掴んだ。このとき勝利の大部分を運んできたのが、《嘘か真か》なのだ。

 私はほとんど常に、《嘘か真か》を『From the Vault: Twenty』に収録したい、と意識し続けていた――何度も議論を重ねた大きな部分は、どのイラストを使うかということだ。なぜここでこの話題を持ち出したかというと、君たちの多くがそこに目をつけると確信できるほどに、私たちもイラストについては開発中に話し合ったからだ。

 論点はどこにあったか? 『デュエルデッキ:ジェイス vs. チャンドラ』に収録されたイラストもフォイル加工は施されておらず、元のイラストとどちらを採用するかで議論はふたつに割れた。ひとつは懐かしさを呼び起こすという意見で、すでにキューブ・ドラフトに向けて多くのカードを新規イラストにしている今、象徴的な昔のカードをそのまま残すのも良いことだった。

 しかし一方で、元のイラストの《嘘か真か》はもう新枠でフォイル仕様のもの(FNMプロモ版)があり、まだフォイル加工を施されていないイラストをフォイル仕様にする、というのも私が目指すところだった。どちらの議論も充実したものだった。

 最終的に、私はクリエイティブ・チームやアート・ディレクターのジェレミー・ジャーヴィスに相談して、今回は元のイラストがふさわしいだろうという結論に至った。《嘘か真か》は人気のあるカードなので、今後も機会は無数にある、ということを付け加えておこう。いつの日か、ジェイス vs. チャンドラ版のイラストでフォイル加工がされたプロモ・カードが作られたとしても、驚くことはない。プロモ・カードには、まだまだエキサイティングなものになって欲しいと私は思うのだ。

 開発部が度々やらなければいけないことは、将来の製品に向けてイラストを取っておくように気をつけることだ。『From the Vault: Twenty』ではすでに、今後出る製品まで待つこともできたレバーを引いてしまったかのように大盤振る舞いを見せている。今回の《嘘か真か》がなぜこのイラストになったのか、と疑問を持ったみんなへ、その理由は以上の通りだ。

ズヴィ・モーショヴィッツの「白青」

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クリーチャー (8)
4 翻弄する魔道士 4 万物の声
インスタント (8)
4 排撃 4 嘘か真か
土地 (20)
10 10 平地
36 カード

    #10:2002年

 この年の採用候補には素晴らしいカードがたくさんあった。

 真っ先に思い浮かぶカードのひとつは、《サイカトグ》だろう……だがちょっと待って欲しい。《サイカトグ》は世界選手権2002を支配し、カルロス・ロマーオ/Carlos Romaoの手に勝利をもたらしたが、大会を支配していた《サイカトグ》デッキにはすべて《チェイナーの布告》が入っていた。その後ブロック構築で行われたプロツアー・大阪2002で、《チェイナーの布告》はトップ8中合わせて20枚もの採用率を誇り、再び大会を牛耳ることになった……この大会は、ほぼ黒単コントロール・デッキに制圧されていたのだ!

 《激動》も手堅い選択肢のひとつだ。とはいえ、《激動》はキューブ・ドラフトには欠かせないカードであるものの、統率者戦では禁止されている。また、構築においては他の選択肢と比べて象徴的であるとは言えない。

 結果的に、私は『From the Vault: Twenty』に優秀な黒の除去呪文を採用したいと考え、また《チェイナーの布告》はこの時代をしっかりと思い起こさせるカードだと思った。加えて、元のイラストとはまったく別のずっと素敵な新しいイラストを与えるには、《チェイナーの布告》がうってつけだったのだ。

カルロス・ロマーオの「青黒サイカトグ」

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インスタント (11)
4 対抗呪文 4 排撃 3 嘘か真か
土地 (17)
10 3 4 地底の大河
28 カード
サイドボード (6)
1 嘘か真か 4 強迫 1 殺戮

    #11:2003年

 マジック黎明期の頃より、白の全体除去はこのゲームに欠かせないものであり続けた。《神の怒り》と《ハルマゲドン》が印刷されたのは『アルファ版』の時代まで遡り、その後幾度となくデッキに採用されてきた。全体除去を使うデッキは、1度それらを撃ち込めばかなりの優位を取れるように組んであるので、「平等に被害を受ける」ことによる影響はほとんどないのだ。

 私は、マジックの歴史を網羅する今回のセットのどこかに全体除去を収録したい、と思っていた。ちょうど折り良くその機会をくれたのが、オシップ・レベドヴィッツ/Osyp Lebedowiczだ。『オンスロート』ブロック構築で行われたプロツアー・ヴェニス2003の優勝をもって、彼はサイクリングもできる全体除去がどれだけ強力か見せつけてくれたのだ。

 これだけは言っておかなければならないだろう。私は、ジェレミーがこのカードの新規イラストを欲しがるとは期待していなかった……だが嬉しいことに、彼は新規イラストに興味を示したのだ。このイラストは私を心酔させ、数あるカードの中でもお気に入りの1枚になった。近いうちにキューブ・ドラフトで使えることを、楽しみにしているよ。

オシップ・レベドヴィッツの「アストラル・スライド」

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ソーサリー (4)
4 アクローマの復讐
31 カード
サイドボード (4)
3 啓蒙 1 奉納

    #12:2004年

「スイレン/Lotus」。マジックの世界では、この言葉にはかなりの重みがある。起源にして頂点である《Black Lotus》から《睡蓮の花》のような亜種まですべて、スイレンと名のつくものは同時に力を連想させた。実際に、私は実物のスイレンを見たり、店名に「Lotus」が入るタイ料理屋で食事をしたり、スイレンの絵柄がプリントされたシャツを目にしたりするたび――そういったものなら何でも――、すぐさま《Black Lotus》を思い浮かべるのだ。私は、なんとかして今回のセットに「スイレン」を収録したかった。そして幸運にも、うってつけなカードがあった。それは《金粉の水蓮》だ。

 力と言えば、2004年は異常な年だった――『ミラディン』が発売されるやいなや、どんなことでも可能になったのだ。プロツアー・ニューオーリンズ2003は、さながら西部の荒野のごとき様相だった。突如として、非常識なまでに強力なアーティファクトの数々が《修繕》や《金属細工師》のようなカードを使用できる世界に解き放たれ、何でもできるようになった。エクステンデッドへの影響はその上の環境にも矛先が向けられた――まるで、動物園のふれあいコーナーに恐竜の一団が襲いかかったようだった。

 当時を知らない人から見れば、誰の目にも明らかに狂った大会だった。そこで起きることに心当たりのある者はひとりもおらず、すべての試合において、目玉が飛び出るようなまったく新しい独自の戦略が見られることになった。ここまでの混乱を目にしたのは、他にはモダンが初めてプロ・レベルの大会に導入された、プロツアー・フィラデルフィア2011くらいだ。

 あるラウンドでは、「使用に耐えない」カードであるはずの《ぐるぐる》や《エネルギーの炸裂》のようなカードで《金粉の水蓮》をアンタップし、《精神の願望》へ繋げる「ぐるぐるデザイア」の姿が。またあるラウンドでは、《ゴブリンの溶接工》と《精神隷属器》によるロックが決まる場面が目に飛び込んでくる。そして、これでもう全部だろうと考えたそのとき、《等時の王笏》に刻印された《最後の賭け》に続いて……《修繕》から《白金の天使》が現れるのを目にするのだ! 瞬きでもしようものなら、《マナ切り離し》からの《ゴブリンの放火砲》でプレイヤーが倒れる様子を見逃してしまうことだろう。

 こうした狂乱の中で頂点に立ったのは、リカルド・オステルベルグ/Rickard Osterbergが「ジョージ・W・『ボッシュ』」と名付けた、《ゴブリンの溶接工》と《修繕》を用いたデッキだった。このデッキに入った《金粉の水蓮》は1枚だけだったけれど、それに騙されてはいけない。このカードは重要な《修繕》先だったのだ。

 余談だが、《金粉の水蓮》の元のイラストが「金粉」をまとっていないことを、ジェレミー・ジャーヴィスはいつも嘆いていた。『基本セット2013』でもそのチャンスは巡ってこなかったのだが(《金粉の水蓮》はプレイテストを通すと安全でないことがわかるかもしれない、という懸念が開発部内にあり、念のため新規イラストを用意しなかったのではないかと私は予想している)、今回ついに絶好の機会が訪れた。新しいイラストにこんにちはしましょう――本当の「金粉の」水蓮に!

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