七つの鐘 その2

更新日 Serious Fun on 2012年 11月 23日

By Jenna Helland

Jenna Helland is a designer and writer for the Magic creative team. She's a member of the story team, a creative liaison with design teams, and the author of the Theros novella, Godsend.

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ボーリ・アンダーンの日誌 十日目

 違う、違う、違う。あのやり方は無益で、鐘は鳴らなかった。さらに悪いことに、黒髪の男がまたも俺を監視していた。あいつはきっと俺の失敗を議会に報告し、奴等は俺が費やした金額に思う存分笑っているに違いない。おまけに、鳥が頭上を飛び続けている。スパイとして訓練された鳩の話を聞いたことがある。解決策として風を使うのはあまりに単純すぎた。人々の思考エネルギーを変換し、それを大鐘楼塔へと送らなければ。そして鐘を鳴らす。思考の重さはどのくらいだろうか? 一人の脳が放散するエネルギーはどのくらいだろうか?

 俺は再び電送装置を調整し直した。この装置――催眠寄集装置――は鐘楼塔近隣の全思考を集め凝縮する。俺はその凝集した思考をエネルギーに変換して鐘楼塔に直接送り、全ての鐘を同時に鳴らすだろう。その影響によって前脳部がうずく、痒い感じがするだろう。人々がどんな経験をするのか、想像もつかない。

監視者の報告

 まだガラスも片付かないうちに、彼は別の装置を携えて戻ってきました。帽子が更に高くなっていたため、新しいものだとわかりました。通行人の表情から察するに、それは悪臭のする煙を発しているのでしょう。持ち場を離れる許可を願います。私は下層で安全な距離から監視を続けます。

 カルニカ街区にて大規模な精神攻撃が放たれた。記憶の喪失、方向感覚の喪失、耳からの出血が広範囲に渡って報告された。容疑者もしくは容疑者集団は未だ逃走中と思われる。

ボーリ・アンダーンの日誌 十日目 追加

 催眠寄集装置では鐘を鳴らせなかったが、その代わりに何やらとてつもない事が起こった。俺が装置を起動すると、人々はぼろ人形のように地面に倒れた。計画通りに、俺は集めたエネルギーを鐘楼塔へと送った。突然、空中に何百もの輝線がまるで幾何学的な織り糸のように交差するのが見えた。俺の場所から、それぞれの線が大鐘楼塔と交差するのが見えた。これは何だ? 境界線か? 導管か? センサーか? 一体どういうことだ?

 恐ろしい秘密が隠されているのかもしれない。俺は街区に走る秘密の霊脈の類を発見したのだ。鐘楼塔は連結点なのだ。もしかしたらニヴ=ミゼット様は、俺に罰ではなくこの不可解な秘密を解明するために定理を与えたのだろうか。俺は定理を解明するつもりだったが、何を発見したんだ?

イゼットの魔除け》 アート:Zoltan Boros

監視者の報告

 はい、衝撃でした。言葉も出ないほどに。何と言ったらいいかわかりません。あのいかさま師はやってしまいました。彼は鐘を鳴らしませんでしたが、我々の秘密の導管を発見したのです。彼は大鐘楼塔の伝達交点としての役割も含めて、我々の精神感応網を明らかにしてしまいました。あの装置を入手し、彼を速やかに始末せねばなりません。カルニカ作戦全体が脅かされています。

ボーリ・アンダーンの日誌 十二日目

 俺はこれを街区の外れ、薄汚い下宿で書いている。研究室に戻ってみたら侵入者がいた。奴等は入口で俺を捕まえ、続けて俺の装備を奪った。奴等は仮面をかぶっていて分厚い手袋をはめ、カビ臭いにおいがした。一人が俺の催眠寄集装置を掴み、それがどう作動したかをしつこく聞いてきた。

 奴等は俺を誘拐するつもりだ。俺は殺されるのかもしれない。だが俺は入口に現れたボロスの捜査官二人に助けられ、侵入者と捜査官は争い始めた。混乱と炎の中、俺は日誌と予備の装置を掴んで隠し扉から逃げ出した。

 泥棒と悪党のことを考えて、俺はこの哀れな部屋に落ちついた。俺は既に装置を再調整するのに必要な材料を手に入れてきた。敵は手の内を見せ、俺はやるべき事を全て悟った。ニヴ=ミゼット様は導管を発見するだけをお望みなのではない。俺に、それを破壊して欲しいのだ。

危険な影》 アート:Clint Cearley

監視者の報告

 我々はアンダーンの住居におりましたが、大規模精神攻撃に対するボロスの捜査官が数人、不意に現れました。我々が彼等を黙らせている間に、アンダーンは隠し扉から逃走しました。彼は一体何を計画しているのでしょう? 彼の発見に全工作員を動員せねばなりません。そしてどうか、どなたか執行者の方を手配して下さいますでしょうか? この件は制御不能になりつつあります。

アート: Slawomir Maniak

ボーリ・アンダーンの日誌 十三日目

 俺はこれを地底街入口近くの汚らしい下水管で書いている。どこへ行っても敵だらけだ。奴等は俺を殺す気だ。奴等は俺の頭の中にいて俺の考えを全部ねじ曲げてるんじゃないか、という不安もある。決して忘れないよう、この数時間に起こったことを書き留めておく。操られるわけにはいかない。議会に知らせなければ。ああ、マイカス・ヴェイ本人へ。俺達全員が危機にあると警告しなければ。

 俺は霊脈を破壊する為に設計した新しい装置を仕上げた――炎によって、それをこの世から消滅させる。装置を起動した次の瞬間、霊脈は輝き、ちらつき、そして爆発した。炎の織糸が音を立てながら通りを暴れた。不意に、空が嵐雲で暗くなった。靴の下で地面が震えた。遠くで、堂々たる黒鳩ドームが砂のように崩れ落ちた。脳内の痛みが我慢できない程になり、俺は踵を返して走った。

 走っていると、何者かが俺の背中を殴りつけた。俺は地面に倒れた。黄色い目をした男が俺を掴んで立たせた。棘付きの手袋を着けていて、そいつの声は虚ろで非現実的だった。奴は言った。

 お前はディミーア家に大きな厄介事を持ち込んだ。

 そいつは暗い小道を、赤い扉まで俺を引きずっていった。俺はそいつを攻撃したが、想像以上に強かった。そいつは俺の喉を掴んで地面から持ち上げて、壁に打ち付けた。そいつが口を開いた時、俺は自分の敵の正体を知った――吸血鬼だ。

 そして奴が俺の心に入り込んできた。鐘の音を聞け、奴はそう言った。鐘が俺に命令をする。だが奴が俺の意識へと完全に浸透する前に、俺は胸に下げた装置のスイッチを弾き、音波の爆発がその怪物を襲った。驚いて、奴は後ろによろめくと俺の喉を放した。俺は炎に包まれた街路を逃げた、その混乱に乗じて奴を撒くことができた。できるだけ高い屋根の上のごみ箱の中で夜を過ごすつもりだ。鐘を避けるのに十分な高さであることを祈る。鐘を避けなければ。鐘を避けなければ。

監視者の報告

 アンダーンは執行者から逃走しました。ですがむしろ最良の結果と思われます。執行者が彼を食してしまう所でしたので。アンダーンの装置の性能は最高水準であるという報告を受け、我々は命令を再び変更します。殺してはなりません! 繰り返します、殺してはなりません! 制圧し、捕えるのです。ボーリ・アンダーンは我々の一員となる資格があります。私はイゼット最高階級内の潜伏工作員としての思考を楽しんでいます。常に最も操りやすいのは、狂気じみた者です。

至高の評決》 アート:Sam Burley

ボーリ・アンダーンの日誌 十四日目

 俺は雑居建築の屋上にあるゴミ箱の中でこれを書いている。読みづらいのは許してもらいたい、隙間から入る光はわずかで空気は埃っぽくてたまらないからだ。

 奴等は俺を追っている。奴等の影が互いに符丁を交わし合っている。あらゆる屋根の上で見張りが俺をあざ笑っている。だが奴等は動くことはできない、何故なら俺の耳は小石とにかわで塞がれているからだ! 奴等はあの忌まわしい鐘で俺を誘うことはできはしない。ニヴィックスに行かなければ、ドラゴンにお会いして、俺は堕落してしまったと伝えなければ。だが街路はもうだめだ。いつまでたっても橋を渡ることができない。どちらに曲がろうと、俺は別の方向に行き今来た道を歩いている。もう時間がない。鐘が鳴り始める。もし鐘の音を聞いてしまったら、敵は俺の心を支配する、そして俺は自分自身を永遠に失うだろう。

 カルニカ街区近隣のあらゆる鐘が同時に鳴りました。聴覚の喪失、頭痛、方向感覚の喪失が広範囲から報告されました。凄まじい力で鳴らされた鐘の幾つかは二つに割れました。大鐘楼塔のうち三つは反響により損害を受けました。条項90903.35bにより、この件は突発的出来事ではなく、悪意的秘術による行動と分類されます。

ボーリ・アンダーンの日誌 一日目

 新しい日誌を書き始めた。研究室をくまなく探したし、あらゆる物が正常だったが、古い日誌はどこにも見つからなかった。

 今日、議会で俺は喝采で迎えられた。七つの大鐘が同時に鳴り、同時不調和定理は解明された。彼等はどうやって成し遂げたのかを知りたがったが、俺は返答を渋った。俺がやったのではない、そう強調した。彼等は俺がただ謙遜しているだけだと考えたようだった。もしかしたら俺が鳴らしたのかもしれないが、正直に言うと思い出すことはできない。

 つい先ほど、使者が扉を叩いた。彼は匿名の人物からの包みを渡してきた。ああ、贈り物だ。何せ今日は俺の誕生日だからな。中にはとても心地よい音を奏でる、優美な銀の鐘が入っていた。それは玄関に下げてある。いつの日か、密かな称賛者へと感謝を伝えたいものだ。

(Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori)

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