高潔なる驚き

更新日 Serious Fun on 2004年 8月 31日

By Anthony Alongi

Translated by Yoshiya Shindo

 時には、戦いの正しい側にいることもあるだろう。

 そうなったら、相手に偉大なる《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath》がいて、こっちにはちっぽけな《入り江の鷹/Bay Falcon》しかいなくたってかまわない。相手にトランプルのついた 6/6 のワームのトリオが揃ってて、こっちにリス・トークンが若干いるなんて事態でも知ったこっちゃない。事実、そもそも戦闘なんか関係ないだろう。

 何せ君らは高潔な側にいるんだからな。

 このゲームのベテランなら、このカードは《高潔のあかし/Righteousness》のやりたい放題バージョンだと感じるだろう。

 俺が神河物語の《戦線維持/Hold the Line》を最初に見た印象は、こいつはエンペラー戦ドラフトで強烈な一枚になるだろうなってことだった。俺たちのグループがこの新しいフォーマットについて数か月検討した結果、皇帝がしばしば求めるのは、副官があまり使えない強くて強烈で使い勝手のいいカードだってことだ。副官も理論的にはこのカードを使えるが、来たパックにはもっとおいしそうなカード――クリーチャーそのものとか――があるだろうし、白が強いと思っている皇帝にとっては取りがいのあるカードだろう。

 で、俺がこのカードを見たときの第二印象は、エンペラードラフトなんかやらない magicthegathering.com の読者諸君は、俺のコラムから別なものを読み取んなきゃいけないだろうなってことだった。いいじゃないか、好き嫌いの激しいご友人殿。だからって、俺がいつもの多人数ゲーム寄りのコラムから遠く離れるなんて思うなよ!

 《戦線維持》は、俺が“蜘蛛”って読んでるグループのカードだーーこいつはデッキにわなを仕掛け、それによりカードアドバンテージを得るってやつさ。理想的なシナリオはこんな感じになるだろう。

 君のデッキは兵士デッキだ。君は3ターン目に《動員令/Mobilization》を出して、そこから1ターンに1個ずつトークンを吐き出し始めた (もちろん、マナを使には直前のプレイヤーのターン終了まで待つんだぞ。いいな?)。他にすることはあまりなかったが、そのうち一人の攻撃的なプレイヤーが、君をほっときすぎたと感じ始め、7ターン目に殴りかかってきた……クリーチャーは《つつき這い虫/Clickslither》に《怒り狂うゴブリン/Raging Goblin》に《スキジック/Skizzik》(とっくにキッカー払い済み)に、いま変異が解けたばかりの《焦熱の火猫/Blistering Firecat》だ。

 君の前には兵士トークンが3体いるが、こいつは1枚のカードから出てきたやつだ(おまけにテンポもバッチリだ)。こいつでデカいのをブロックすると、君は14点のダメージを食らう。致命的じゃないかもしれないが、ここから復活できるやつもそんなにいるわけじゃない。

 だが、たぶんーーあくまで、たぶんーー君の兵士は“戦線維持”してくれるだろう。つまり、この場合で言うならば、「線を敷いて、そいつをピンと張り、両端を持ってすごい勢いで走って、とんでもないスピードで突っ込んでくる軍団にクローズラインをしかける」ってところだ。

 で、舞った埃が消えた後に残るのは、墓地のインスタント1枚と、ぴんぴんのトークン3つって寸法さ。しかし相手のほうは、墓地にクリーチャーが3体落っこちているだろう(相手が《つつき這い虫》にゴブリンを生け贄に捧げるほどバカだったら、4体かもしれないがな)。相手が《悲哀の化身/Avatar of Woe》でも使うつもりなら悪くはない。そうでなきゃ、向こうは列車が転覆したような気分だろう。

 こいつが蜘蛛カードの役割さ。

 蜘蛛は大抵インスタントで、プレイヤーは2通りの方法で罠を仕掛けることができる。攻撃的にいって、そいつに勝負をかけて対抗してきた相手に対しさらに予想外の回答を叩きつけて、そのでしゃばった奴を罰してやるか、あるいは弱点を晒した振りをしてハゲタカ野郎を誘い、突然その蛆虫食いの羽を蟲って叩きつけてやるのさ。どっちにせよ、君の腹の中はほんわかした気分になるだろうな。

維持のときと、意地のとき

Righteousness
 《戦線維持》のようなカードの弱点は、その前の《高潔のあかし/Righteousness》と同様に、相手の特定の行動が必要になってくるところにある (おそらくこのせいで、トーナメントでの価値が下がってるんだろうな)。君が殺してしまいたいクリーチャー何体かで相手が攻撃を行わなくてはいけないだけじゃないーー君はそれなりに弱そうな(ルビは「誘っている」だな)状況に陥ってて、それなりの攻撃を誘っていなくちゃいけない。そしてもちろん、ブロッカーの1体もいない、真剣にぼろぼろの状況であっちゃいけない。つまり、これだけのことを準備しなくちゃいけないわけで……。

 それに加えて、相手が君の英知に満ちた呪文に対応して素早く除去を打ち、ブロッカーを一、二体持ってかれる、なんてことがないことがそれなりに確かじゃなきゃいけない (まあ、ブロッカーと《戦線維持》を相手の除去呪文1つと交換したって考えるならそれでもいいけどな)。

 ここまで何とかそろえることに成功したら、その結果には満足いくだろう。

 それじゃ、君は《丘巨人/Hill Giant》が毎ターン3発ずつ殴ってきている時に、渋い顔をしていらついている《熱心な士官候補生/Eager Cadet》を横目に、手札に《戦線維持》をかかえて完璧なタイミングまで待とうって言うのかい? おそらく、それは間違いだな。理由は二つ。

 第一に、上手いプレイヤーは絶対に必要な分以上のプレッシャーをかけてこない。その《丘巨人》が仕事を続けてるようなら、実際にそいつをどうにかしなくちゃなくなるまでは、そいつだけでしか攻めてこないだろう。《戦線維持》を持ってたとしても、使うタイミングなんか来ない――あるいは、しかめっ面をしながら20ライフのときにできた相打ちと同じことを4ライフのときにするだけだ。

 第二に、時として蜘蛛カードはそれが実際に蜘蛛じゃないときに使うのがベストということもある。例えば、君が《戦線維持》を序盤で使うのを誰かが見てたとして、君の元にが残っている時に、誰が好き好んで最強の軍団を君のブロッカーに突撃させるだろうか? この場合、《戦線維持》は手札にあるときよりも蜘蛛っぽくはなく、むしろ墓地のガラガラヘビっぽく働くことになるな。

 なんで、序盤に使うことをびびってちゃいけない。後半になって君の手元にそいつがあるかどうか、他の奴らに心配させてやりゃいいのさ。

 さて、分析とか戦術とかはこの辺にしとこう。そろそろデッキのネタ探しはどうだい?

デッキアイデア色々

 最初に考えたのは、友人みんなに《電撃虫/Electryte》をプレイさせることだ。そうすりゃ、《戦線維持》はそれに対する最高の対策になるからな。しかし、そいつはすこし頼りなげに見えた。次に考え始めたのが《手加減無し/No Quarter》だが、カードの新しいオラクルの表記だと、俺のトリックは実用性がなかった。

 他に手はないのか? こんちくしょうめ、お前らこのカードから何も学ばなかったのか? 状況は厳しく見えるかもしれないが(そうだと信じてるにしても、《電撃虫》は実際より遥かに強いってのも考えなきゃいけないぜ)、このカードの使い方は実に様々なんだぞ!

 俺はそれぞれのデッキで、デッキリストじゃなくて方向性を示して、ポイントを浮かび上がらせていく。俺はコラムでデッキの方向性を示すほうが好きだ。こいつは創造性を喚起するからな。

方向性1:遅いブーメラン

Serra Avatar
 まずは白の秀でている戦略から始めよう。ライフの獲得だ。まず大量のトークン製造機(《Kjeldoran Outpost》とか《動員令》とか)を並べ、以下のカードのいくつか、あるいは全部を使って、最終的に巨大な《セラのアバター/Serra Avatar》で止めを刺す。

《崇高なる目的/Noble Purpose
《堂々たる抵抗/Noble Stand
《獣の墓場/Animal Boneyard
《価値ある理由/Worthy Cause
《賛美されし天使/Exalted Angel
《セラのアバター》

方向性2:最強の危機回避ブロッカー

 直感には反するかもしれないが、俺は《戦線維持》のより創造的なアプローチがちょっとばかり気に入っている。基本的にはこのカードは、何体かのブロッカーを増強するカードだ――そして面白いのは、こいつらはそのインスタントが手札に無くたってブロックに回って構わないってことだ。この戦略にはさらに《高潔のあかし》を入れるべきで、これでブロッカーが1体しかいないような状況でも、同じぐらい強い(おまけに安い)カードが使えるようになる。

《輝きの壁/Wall of Glare
《光明の守護者/Luminous Guardian
《馬上の射手/Mounted Archers
《希望の化身/Avatar of Hope
《双頭のドラゴン/Two-Headed Dragon
《高潔のあかし》

方向性3:ひたすら混乱

 自分が関わってる戦闘にしか《戦線維持》を使っちゃいけないなんて、誰が言ったんだ? 誰かが別な相手に攻撃を仕掛けて、それが無残にも敗れるのを見届けてから、おもむろに叩き潰してやるのさ。このやり方で行くなら、他にも小道具をいくつか仕込むといいだろうな。

《隠れたる捕食者/Hidden Predators
《剛胆な勇士/Intrepid Hero
《オパール色の輝き/Opalescence
《銀のゴーレム、カーン/Karn, Silver Golem

方向性4:超蜘蛛型奇襲

 マナが十分あるのなら、空中から夜にも恐ろしい軍団をつかみ出すことも可能だ。こんなのはどうだろうか。

《うなる類人猿/Simian Grunts
《法の防衛者/Defender of Law
《俊足の豹/Fleetfoot Panther
《ぶどうのドライアド/Vine Dryad
《ベナリアの騎士/Benalish Knight

方向性4a:コンボ型蜘蛛奇襲

Wall of Blossoms
 こいつを“即死”コンボにするつもりはないが、次のリストにはなかなか厳しいシナジーが揃ってるぜ。3体の7/11の《花の壁/Wall of Blossoms》が戦闘中に登場して24枚カードを引いて(インスタント速度で場に出した時にカードを3枚引くのを忘れるなよ)、その後に大量の熊トークンを残していったとなれば、ほとんど誰でも勝つ手段を見つけられるだろう。

《魔の魅惑/Aluren
《よりよい品物/Greater Good
《花の壁》
《鉤爪の統率者/Caller of the Claw

方向性5:花火

 《戦線維持》を使い出のあるものにするには、おそらく“パワーで生け贄”系と組み合わせるのが一番確実だ。俺はさらに《熱烈な突撃/Fervent Charge》も加えてみた。色も合っているし、《戦線維持》の防御時と同様に攻撃時に強化をしてくれる。

《投げ飛ばし/Fling
《血まなこのサイクロプス/Bloodshot Cyclops
《ギトゥの火食い人/Ghitu Fire-Eater
《深淵の狩人/Abyssal Hunter
《燃えがらの影/Cinder Shade
《トゲ撃ちゴブリン/Spikeshot Goblin
《タールルームの勇士ターンガース/Tahngarth, Talruum Hero
《狂乱病/Delirium
《反発/Backlash
《熱烈な突撃》

 個人的には、俺の好みのトリックは、対戦相手Aが対戦相手Bを攻撃するまで待って、Bにブロックさせ、《戦線維持》を撃ってBをにっこりさせて、ダメージが解決されてAの攻撃クリーチャーが死んだ後、《反発》をBのアンタップ状態のブロッカーにプレイしてAをにっこりさせることだろう。

 いいかい? 君はいつだって高潔な側にいるんだぜ!

 アンソニー・アロンジはあまりにも高潔すぎてデッキ構築の手助けはできません。

最新Serious Fun記事

SERIOUS FUN

2016年 1月 5日

面晶体の連結 by, Bruce Richard

 ここで担当するプレビュー・カードと最初に出会ったとき、僕は思わず頭を抱えてしまったよ。そいつはあまりに何でもできすぎて、その真価を見出すのに本当に苦労した。まさに「木を隠すなら森の中」だね。僕はそのカードを細かく分析するまで、その素晴らしさに気づけなかった。そいつは僕たちの中の「スパイク」的な部分にも「ジョニー」的な部分にも訴えかける1枚なんだ。  それじゃあ早速…… ...

記事を読む

SERIOUS FUN

2015年 6月 30日

マナ加速? いや、超加速だ! by, Bruce Richard

 マナって悩ましいものだよね。どれくらいあれば十分なんだろう? 多すぎるってこともあるんだろうか? こういった疑問の答えは使うデッキによるものだけど、僕にもだんだん答えがわかってきたよ。  タイタンや始原体、ドラゴン、そしてエルドラージを見回すと、僕はいつもマナがもっと欲しくなる。コストの軽いカードだって、能力を複数回起動するには多くのマナが必要だ。単純にデッキの土地の...

記事を読む

記事

記事

Serious Fun Archive

過去の記事をお探しの場合 アーカイブのページをご覧ください。人気の著者による、数千にわたるマジックの記事が残されています。

一覧を見る