津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ グランプリからWMCQ、世界選手権に向けて

更新日 Feature on 2015年 8月 20日

By 津村 健志

 こんにちは!晴れる屋の津村です。

 今週は先週末に行われた「グランプリ・ロンドン2015」(リンク先は英語カバレージ)の結果を追っていきたいと思います。《ドロモカの命令》がかつてない輝きを放つ最中、結果を残したのはどのようなデッキだったのでしょうか。

 まずは、いつものようにトップ8デッキからご覧ください。

■「グランプリ・ロンドン2015」トップ8デッキ

  • 優勝・「ハンガーバック・アブザン(《搭載歩行機械》アブザン)」
  • 準優勝・「ハンガーバック・アブザン」
  • 3位・「白緑・大変異」
  • 4位・「ジェスカイ」
  • 5位・「アブザン・コントロール」
  • 6位・「ハンガーバック・アブザン」
  • 7位・「赤緑ドラゴン」
  • 8位・「ハンガーバック・アブザン」

 「アブザン」の大躍進。「アグロ」型と「コントロール」型を合わせれば、トップ8に5名ものプレイヤーを送り込む大暴れっぷり。2日目進出率(参考:Day 2 Metagame of Grand Prix London 2015)でもワンツーフィニッシュを飾っており、これらのデッキが今大会の勝ち組と言って差支えないでしょう。

 「アブザン」と聞くと新鮮味のないデッキのように聞こえるかもしれませんが、今回上位を独占した「アブザン」は既存のリストとは一味違います。その実態は後ほどご覧いただきたいと思いますが、その前に簡単にメタゲームの流れをおさらいしておきましょう。

■グランプリ・ロンドン2015までのメタゲームの変遷

 前回の記事でお伝えしたように、現在のスタンダードでは《ドロモカの命令》が一大旋風を巻き起こしています。「白緑」系のデッキであればほとんどのデッキで採用される傾向にありますが、そんな中でも頭ひとつ抜けた完成度を誇るのが「白緑・大変異」デッキです。

■「白緑・大変異」

Erik Skinstad

グランプリ・ロンドン20153位 / 8月15~16日開催
Download Arena Decklist

 このデッキはプロツアー『マジック・オリジン』後にメキメキと頭角を現してきたデッキで、この度のグランプリ・ロンドン2015でも3位入賞を果たしています。このデッキに勝てるかどうかは今のスタンダードで勝ち上がるための指針のひとつで、「白緑・大変異」に相性の良いデッキ、または「白緑・大変異」を超えるデッキが登場するか否か、というのがグランプリ・ロンドン2015までのメタゲームの流れでした。

環境を代表する1枚

 実際にグランプリ・ロンドン2015では、多くのプレイヤーがこのデッキを意識していたようで、何名かのプレイヤーは明確なるアンチ「白緑」デッキを持ち込んで結果を残しています。その代表格は、マーティン・ジュザ/Martin Juzaやブラッド・ネルソン/Brad Nelsonといった有名どころが持ち込んだこのデッキです。

■「赤緑ドラゴン」

Martin Juza

グランプリ・ロンドン20157位 / 8月15~16日開催
Download Arena Decklist

Brad Nelson

グランプリ・ロンドン2015 44位 / 8月15~16日開催
Download Arena Decklist

 「白緑」デッキの隆盛に伴い、トッププレイヤーたちが目を付けたのは《嵐の息吹のドラゴン》でした。「プロテクション(白)」を持つこのドラゴンは、「白緑」系統のデッキに対して抜群の効果を発揮します。

 このクリーチャーには《ドロモカの命令》も《勇敢な姿勢》も効かないため、メインデッキではダメージレースを挑むほかありません。サイドボードにこそ《悲劇的な傲慢》、《太陽の勇者、エルズペス》など《嵐の息吹のドラゴン》に対処できるカードは存在しますが、「赤緑ドラゴン」側も《棲み家の防御者》や《精霊龍の安息地》で《嵐の息吹のドラゴン》を再利用できるので、マッチ全体を通して「赤緑ドラゴン」が優勢だと思います。

繰り返す悪夢

 このデッキは「《ドロモカの命令》に強い」という現在のスタンダードを勝ち抜くための条件をクリアしていますし、ネルソンが11連勝という驚異的な勝率を叩き出していたため、大会途中までは「このデッキこそが次なるソリューション(解決策)か」と期待されていました。

 しかしながら、結果として王座は揺るぎませんでした。多くのプレイヤーが「白緑」デッキを倒すために試行錯誤を繰り返すなかで、《ドロモカの命令》の入ったデッキもまた、着実な進化を遂げていたのです。

■「ハンガーバック・アブザン」(《搭載歩行機械》アブザン)

Fabrizio Anteri

グランプリ・ロンドン2015 優勝 / 8月15~16日開催
Download Arena Decklist

Matteo Moure

グランプリ・ロンドン2015 準優勝 / 8月15~16日開催
Download Arena Decklist

 今大会で台風の目となったのは、《搭載歩行機械》を入れた「アブザン・アグロ」でした。このデッキが示すように、《搭載歩行機械》も《ドロモカの命令》と同様に、スタンダード環境を定義するほどに使用頻度が高くなっています。

 このデッキと「白緑・大変異」との最大の相違点は、《先頭に立つもの、アナフェンザ》が使えることです。

 前述の通り《搭載歩行機械》を見かける機会が非常に増えていますが、《先頭に立つもの、アナフェンザ》や《アブザンの魔除け》のような汎用性の高いカードでそれに対処できることは、このデッキならではの強みです。

 また、「白緑」系のデッキ対策として白羽の矢が立った《嵐の息吹のドラゴン》に対しても、黒が入っていれば《究極の価格》や《英雄の破滅》で対処することが可能となります。

 優勝者の方がトップ8インタビューで、「追加の《真面目な訪問者、ソリン》と《風番いのロック》を入れたい」と仰っていたように、今後ミラーマッチが多発するのであれば、《風番いのロック》はぜひとも採用しておきたい1枚です。

■「ワールド・マジック・カップ予選(WMCQ)」に向けた展望

 ここにきてさらなる変化を見せるスタンダードシーンですが、今後の展望としては、「アブザン・コントロール」や「青白コントロール」の活躍に期待できるのではないかと思います。その理由としては、下記の二点が挙げられます。

 どちらもビートダウンデッキに勝てないことはないので、どちらかというと2の理由が大きいですね。

■「アブザン・コントロール」

Piotr Wald

グランプリ・ロンドン2015 5位 / 8月15~16日開催
Download Arena Decklist

 『タルキール覇王譚』がリリースされてから、コントロールの代表格として絶えず活躍を続けている「アブザン・コントロール」。初速の遅さゆえに、環境が速いと2マナの除去を増量する必要がありますが、現在のように環境が少し遅めであれば、その心配も必要なさそうです。先ほどご紹介した「ハンガーバック・アブザン」に対しては《究極の価格》がほとんど効かないため、その枠には再考の余地があると思います。

 色マナの厳しさに目をつぶって、《搭載歩行機械》のトークンにも強い《胆汁病》を増量するのが良さそうに思えますが、この辺りは「緑信心タッチ赤」や「赤緑ドラゴン」をどこまで意識するかにも左右されます。個人的には《胆汁病》2枚、《究極の価格》1枚くらいのバランスが良いと思います。

■「青白コントロール」

Chemfy

Magic Online Standard Daily #8552200(2015/8/9) 3勝1敗
Download Arena Decklist

 こちらは古典的な「青白コントロール」。当然ですが、こういったデッキは環境が遅くなればなるほど、その力を発揮しやすくなります。

 勝つまでが長いのは難点ですが、プレイ時間さえきっちり管理できれば、かなり良い選択のひとつだと思います。

 《ヴリンの神童、ジェイス》をいつ「変身」させるかは非常に難しいですが、《溢れかえる岸辺》やインスタント呪文で対戦相手の計算を狂わせるタイミングで実行できると理想的です。もちろん、即座に「変身」させてしまい、[-9]能力を狙うのも一考に値します。

 《束縛なきテレパス、ジェイス》の[+1]能力と《今わの際》を駆使すればパワー4のクリーチャーまで除去できたりと、色々な小技の隠れたデッキでもあるので、コントロールデッキ好きの方はぜひ一度お試しください!

■終わりに

 今回のスタンダード・アナライズは以上です。《ドロモカの命令》だけでなく、《搭載歩行機械》の存在感もかなりのものになってきましたね。今よりもさらにビートダウンが少なくなれば、マークが甘くなり「赤単」や「青赤《アーティファクトの魂込め》」デッキの復権もありえると思いますし、虎視眈々と王座を狙う「緑信心タッチ赤」や「ジェスカイ」デッキが優勝を勝ち取る可能性も大いにあると思います。

 今週末に迫った「ワールド・マジック・カップ 大阪予選」、来週末に開催される「世界選手権2015」の結果が待ち遠しいですね。「世界選手権2015」には、日本からなべ君(渡辺 雄也)とやまけんさん(山本 賢太郎)が参戦予定です。彼らのデッキ選択と活躍もお見逃しなく!

 それでは、また次回の連載で!

最新Feature記事

FEATURE

2022年 5月 23日

『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』のメカニズム by, Jess Dunks

『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』では、「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の大人気の冒険が再びマジックへやってきます。このセットではD&Dで最も有名な場所の1つを訪れ、エキサイティングな新メカニズムや「d20を振る」などの人気の再録メカニズム、そしてひと味加えた再録メカニズムも登場します。ですがはじめは詳しく語り過ぎず、背景からお話ししましょう。 背景 ...

記事を読む

FEATURE

2022年 5月 17日

『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』をコレクションする by, Max McCall

編注:《正体を隠した者》にはエッチング・フォイル仕様やフォイル仕様が用意されないことをお伝えいたします。 『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』は、フォーゴトン・レルムの重大な岐路となるだろう。そこでは意匠を凝らしたマジックのカードをはじめ、異国情緒あふれる品々が何でも手に入るんだ。 6月10日にお近くのゲーム店やAmazonのような通販サイトで発売されるこの...

記事を読む

記事

記事

Feature Archive

過去の記事をお探しの場合 アーカイブのページをご覧ください。人気の著者による、数千にわたるマジックの記事が残されています。

一覧を見る