津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ 世界選手権とグランプリ・プラハ2015

更新日 Feature on 2015年 9月 3日

By 津村 健志

 こんにちは!晴れる屋の津村です。

 先週末に、世界中が注目した「世界選手権2015」が終了しました。選りすぐりのプロが見せるドラフト術やデッキリストは非常に参考になりますね。

 今週はそんな「世界選手権2015」の結果と、同日に開催されていた「グランプリ・プラハ2015」(リンク先は英語カバレージ)の結果をご覧いただきたいと思います。

 前回までのまとめとしては、突如として「ハンガーバック・アブザン(《搭載歩行機械》アブザン)」が大流行し、それに伴い環境が少しずつ低速化の模様を呈してきました。果たして、各国を代表するプレイヤーたちはどのようなデッキ選択をしたのでしょうか。それでは、まずは「世界選手権2015」の結果からご覧ください。

■「世界選手権2015」トップ4デッキ

  • 優勝・「アブザン・コントロール」(予選ラウンド4ー0)
  • 準優勝・「アブザン・コントロール」(予選ラウンド2ー2)
  • 3位・「ハンガーバック・アブザン」(予選ラウンド2ー2)
  • 4位・「白単信心」(予選ラウンド4ー0)
  • 予選ラウンド4-0 「アタルカ・レッド」

■「アブザン・コントロール」

Seth Manfield

世界選手権2015 最終成績:優勝・予選ラウンド4-0
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Owen Turtenwald

世界選手権2015 最終成績:準優勝・予選ラウンド2-2
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 「世界選手権2015」の決勝戦へと駒を進めたのは、ふたつの「アブザン・コントロール」でした。予選ラウンドを13勝1敗という驚異的なスコアで駆け抜けたセス・マンフィールド/Seth Manfieldと、9勝5敗と堅実な成績でまとめたオーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwaldの両名が選択したリストは、実に基本に忠実な構成でした。

 すでに完成された感のあるデッキではありますが、「ハンガーバック・アブザン」の隆盛を受け、《究極の価格》が1枚まで減らされているのが印象的です。「ハンガーバック・アブザン」の主力は《搭載歩行機械》・《羊毛鬣のライオン》・《先頭に立つもの、アナフェンザ》と、《究極の価格》を受け付けないものばかりなので、「緑信心タッチ赤」や「赤緑ドラゴン」が流行っていた一昔前とは違い、現在は《胆汁病》やその他の除去カードが優先される傾向にあります。

 マンフィールドは2マナの除去カードを極限まで切り詰め、その枠に《信者の沈黙》と《悲劇的な傲慢》を採用しています。これらは環境の低速化を見越した見事なチョイスで、これにより《搭載歩行機械》への耐性を落とすことなく、「緑信心タッチ赤」や「赤緑ドラゴン」といったデッキにも対応することが可能になっています。

 ターテンワルドはサイドボードに《悲劇的な傲慢》ではなく《対立の終結》を採用していますが、これはクリーチャーデッキをより強く意識した結果だと思います。「ハンガーバック・アブザン」・「緑信心タッチ赤」・「赤緑ドラゴン」といったデッキに対しては、《悲劇的な傲慢》の「自分のパーマネントが残るメリット」よりも、「対戦相手のパーマネントがひとつでも残ってしまうデメリット」の方が重くなってしまう展開が多々あるので、これらのデッキを意識するのであれば《対立の終結》を優先してもいいと思います。

 ただし、一般的に《悲劇的な傲慢》が優先されることが多い理由として、《払拭の光》などを多用するデッキに強い点が挙げられます。エンチャント過多のデッキに対しては、《悲劇的な傲慢》の有無が勝敗に直結しかねないので、総合力では《悲劇的な傲慢》に軍配が上がるのではないかと思います。

■「白単信心」

Samuel Black

世界選手権2015 最終成績:4位・予選ラウンド:4-0
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 世界有数のプレイヤーが集う「世界選手権2015」の中でも、一際目を引くデッキを使用していたのがサミュエル・ブラック/Samuel Black。彼が持ち込んだデッキは、これまでは不遇とされていた”白単”の「信心」デッキです。他色の「信心」デッキが確かな足跡を残す中で、過去に「白単」だけはほとんど実績らしい実績を残すことができませんでしたが、『マジック・オリジン』で《白蘭の騎士》と《徴税の大天使》が加わったことで、瞬く間に実戦級のデッキへと昇華しました。

 各マナ域のクリーチャーも、《万神殿の兵士》と《アクロスの英雄、キテオン》に始まり、これぞ集大成と言わんばかりの豪華な布陣が名を連ねます。

  《万神殿の兵士》は久しぶりに見かけるカードですが、《羊毛鬣のライオン》と《先頭に立つもの、アナフェンザ》擁する「ハンガーバック・アブザン」に効果的なクリーチャーで、一方の《アクロスの英雄、キテオン》は、「変身」後の[+1]能力が魅力的な1枚。この能力は普通に使用しても攻守に渡って活躍してくれる優秀なものですが、《搭載歩行機械》や《徴税の大天使》との組み合わせは特筆に値します。

 このデッキもまた、他の「信心」デッキと同じく《ニクスの祭殿、ニクソス》を利用した圧倒的な爆発力が持ち味となっています。一度この土地が膨大なマナを生成できる体制が整えば、驚異的な速度で《見えざるものの熟達》を起動できるため、生半可な戦闘ダメージや火力呪文で死ぬことはなくなります。

 《見えざるものの熟達》の恐ろしさは、「緑白信心」のそれと何ら変わりがありません。強いて課題を挙げるとすれば、《ドロモカの命令》を筆頭に、当時よりもエンチャントに触れる手段が多いことですが、それを差し引いても1枚で勝てるカードは魅力的です。特に「青黒コントロール」や「エスパー・ドラゴン」などの青いデッキに対しては、設置のマナが軽く単体でゲームメイクができるカードは頼りになりますね。

 各マッチとの相性としては、除去が満載の「アブザン・コントロール」と、こちらよりもスケールが大きい「緑信心」系のデッキにこそ不利が付きますが、その他のデッキに対しては善戦できます。ただし、白いデッキであればほとんどのデッキのサイドボードに搭載されている《悲劇的な傲慢》には注意が必要で、クリーチャーだけでなくエンチャントまで複数枚吹き飛ばされると窮地に陥ってしまうため、対戦相手のデッキが白ならば《悲劇的な傲慢》を見越して《払拭の光》をサイドアウトしたりと、何かしらの工夫が必要になると思います。

 今が旬と評して差支えのない「白単信心」デッキ。最後の最後で大成を果たしたこのデッキを、みなさんもぜひ満喫してみてください。

■「アタルカ・レッド(赤単タッチ緑)」

Magnus Lantto

世界選手権2015 予選ラウンド:4-0
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 今大会で4勝0敗を記録した最後のデッキは、「2014 Magic Online Championship」(リンク先は英語カバレージ)の勝者として招待されたマグナス・ラント/Magnus Lanttoさんの駆る「アタルカ・レッド」でした。

 『マジック・オリジン』が登場してからというもの、《極上の炎技》を起用した「赤単」型が主流になっていましたが、《悲哀まみれ》の減少を受けて《アタルカの命令》を採用したこの形を選択したようです。

 最近では火力呪文の強さゆえに、《悲哀まみれ》よりも《アラシンの僧侶》が優先される傾向にあったため、「トークン戦略」が活躍しやすい環境になったと思います。《搭載歩行機械》のせいで《胆汁病》が増えてきたことは懸念材料ですが、以前の《悲哀まみれ》地獄と比べると随分と楽な状況です。

 ミラーマッチにおいても、火力では対処しづらい「トークン戦略」は非常に有効なので、今後も《悲哀まみれ》の状況次第では復権が期待できるアーキタイプでしょう。


 「世界選手権2015」の注目デッキ紹介は以上となります。続いては同日にヨーロッパで開催されていた「グランプリ・プラハ2015」(リンク先は英語カバレージ)の結果をご覧ください。

■「グランプリ・プラハ2015」トップ8デッキ

  • 優勝・「赤黒ドラゴン」
  • 準優勝・「青黒コントロール」
  • 3位・「ハンガーバック・アブザン」
  • 4位・「ハンガーバック・アブザン」
  • 5位・「ハンガーバック・アブザン」
  • 6位・「ジェスカイ」
  • 7位・「ジェスカイ」
  • 8位・「エスパー・ドラゴン」

 またもや3名ものプレイヤーを送り込んだ「ハンガーバック・アブザン」の好調が目を引きますが、決勝戦は「赤黒ドラゴン」対「青黒コントロール」というカードとなりました。「青黒コントロール」と「エスパー・ドラゴン」の復権は、環境の低速化を示すという意味でも印象的ですね。

 それでは、優勝を射止めた「赤黒ドラゴン」をご覧いただきましょう。

■「赤黒ドラゴン」

Eliott Boussaud

グランプリ・プラハ2015 優勝
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 「赤黒ドラゴン」と名付けられていますが、その実体は除去が満載のボードコントロールデッキです。この手のデッキでは必ずと言っていいほど採用されていた《ゴブリンの熟練扇動者》すらもメインデッキから抜いてしまい、序盤はとにかく対戦相手の脅威を削ぐことに注力します。

 そうやって時間を稼いでしまえば、あとは《雷破の執政》・《嵐の息吹のドラゴン》・《嵐の憤怒、コラガン》がゲームを決めてくれるという算段です。

 「プロテクション(白)」を持つ《嵐の息吹のドラゴン》以外のクリーチャーに除去耐性はないものの、そこは4枚の《コラガンの命令》と2枚の《精霊龍の安息地》がしっかりとカバー。

 このデッキにも当然のごとく《搭載歩行機械》が起用されていますが、そこから生み出されるトークンは《嵐の憤怒、コラガン》と抜群の相性を誇ります。

 これは他のデッキでも見られるテクニックですが、十分な数のトークンが出る状況ならば、自らの《英雄の破滅》や《コラガンの命令》での自殺も視野に入れて動くといいでしょう。とりわけ、《嵐の憤怒、コラガン》という一撃必殺があるこのデッキならば、なおのことその機会も多いのではないではないかと思います。

■「ジェスカイ」

Oliver Polak-Rottman

グランプリ・プラハ2015 6位
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Steve Hatto

グランプリ・プラハ2015 7位
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 ここ数週間で着実に評価を上げてきているのが「ジェスカイ」です。毎回のごとくグランプリトップ8に進出していたアーキタイプですが、今回の「グランプリ・プラハ2015」ではトップ8に2名を送り込む活躍を披露しています。

 また、「世界選手権2015」のスタンダードラウンドにて最も使用者が多かった(24人中7人が使用:参考)アーキタイプでもあり、今後大きく飛躍する可能性のあるデッキだと思います。

 このデッキの強みは、序盤から終盤まで安定したゲーム運びができることです。「ジェスカイ」を象徴する《ヴリンの神童、ジェイス》・《魂火の大導師》・《カマキリの乗り手》が序盤のプレッシャーとなり、《オジュタイの命令》や《時を越えた探索》が終盤戦を締めくくります。

 「ジェスカイ」デッキの難点としては、《稲妻の一撃》や《勇敢な姿勢》など除去呪文に「当たり外れ」があることですが、《ヴリンの神童、ジェイス》のおかげで手札を整理できるようになったため、以前よりもその問題が表面化する機会は減っています。

 今回トップ8に残ったリストは比較的オーソドックスな構成でしたが、「ワールド・マジック・カップ2015 大阪予選」を突破された玉田(遼一)さんは、上記リストとは全く違う前のめりな構成で結果を残されていたので、お時間のある方はぜひそちらもご覧になってみてください。(参考

 個人的に「ジェスカイ」は構築もプレイングも現環境で最も難しいデッキだと捉えていますが、勝ち残ったデッキリストを参考に、ぜひ自分なりのリストを完成させていただければと思います。

■~今週の一押し・「エルフ・ラリー」~

Dan Musser

StarCityGames.com Open New Jersey 20位 (8月29日開催)
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StarCityGames.com より引用)

 「今週の一押し」は新型の「《先祖の結集》デッキ」を。以前にも「アブザン・ラリー」を紹介させていただきましたが、これまでの一般的なフィニッシュ手段は《ナントゥーコの鞘虫》+《モーギスの匪賊》がほとんどでした。

 しかし、このリストは《エルフの幻想家》や《ドゥイネンの精鋭》といった「エルフ・クリーチャー」を多用することで、《群れのシャーマン》の採用を可能とし、《包囲サイ》と合わせて攻撃することなく勝利できる仕組みになっています。

 攻撃せずとも勝つことができる最大のメリットは、《搭載歩行機械》を苦にしない点です。《ナントゥーコの鞘虫》+《モーギスの匪賊》が正にそれでしたが、このコンボは《搭載歩行機械》が出ると勝つことができませんでした。《搭載歩行機械》全盛期にこの問題は重大な欠陥となりかねないので、《群れのシャーマン》や《鍛冶の神、パーフォロス》のように、殴らずに勝てるプランは一考に値すると思います。

 噂によると、カナダの強豪アレクサンダー・ヘイン/Alexander Hayneがこのデッキを使って「ワールド・マジック・カップ2015 カナダ予選」を突破したようですし、まだまだ新デッキの誕生にも期待できますね!

■終わりに

 今週のスタンダード・アナライズは以上です。「世界選手権2015」で1・2フィニッシュを記録した「アブザン・コントロール」の安定感はさすがです。使用していたプレイヤーが強かったことももちろんですが、『タルキール覇王譚』が登場して以来、これほどまでに安定した戦績を残したデッキは他になかったでしょう。

 来る「ワールド・マジック・カップ2015 名古屋予選」で現環境も一区切りとなりますが、僕はこのままだと「アブザン・コントロール」で参加すると思います。ずっと使い続けていた《クルフィックスの狩猟者》や《太陽の勇者、エルズペス》、そして何と言っても「占術土地」が使える最後の大型イベントかと思うと少し悲しいですね。

 もちろん、去るカードがあれば新しいカードもあるということで、早くも『戦乱のゼンディカー』の特殊土地が公開されています。

http://media.wizards.com/2015/bfz_8asdifk2Sk2cs/jp_hJwbUyi8w2.pnghttp://media.wizards.com/2015/bfz_8asdifk2Sk2cs/jp_VK2yElFWs9.png

 少し気が早いですが、各種フェッチランドから導くことのできるこれらの土地は、スタンダードに大きな変革をもたらしてくれることでしょう。これまでにないタイプの土地なので、その使用感も気になるところですね!

 それでは、また次回の連載で!

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