デベロップの旅

更新日 Magic Story on 2014年 4月 22日

By Dave Humpherys

Dave Humpherys has been managing the development team for Magic R&D since 2010. He led development for the Avacyn Restored and Gatecrash sets. He was inducted into the Magic Pro Tour Hall of Fame in 2006.

原文はこちら

 『ニクスへの旅』のデベロップ中に行われた大きな変更についてお話ししようと思いましたが、その前に、『ニクスへの旅』のデベロップ・チームをご紹介します。

デイブ・ハンフリー/Dave Humpherys (リード・デベロッパー)

 ウィザーズ・オブ・ザ・コーストでの私の仕事は、マジック開発部のデベロップ・チームをマネジメントすることです。私は『ギルド門侵犯』や『アヴァシンの帰還』、またまもなくお目にかける『コンスピラシー』でリード・デベロッパーを務めました。もう一つ誇っておきたいことは、私は2006年にマジック殿堂顕彰者に名を連ねることができたということです。

エリック・ラウアー/Erik Lauer

 デベロップ・チームをマネジメントするのは私ですが、技術的な意味でマジック開発部のデベロップを主導しているのがエリックです。彼は最近だと『テーロス』、『ラヴニカへの回帰』、『イニストラード』、『モダン・マスターズ』でリード・デベロッパーを務めました。彼はこのセットでの「次席者」です。次席者というのは最近チーム内で公式に割り当てられるようになった、リードの代理を務める役職です。次席者は、彼のように経験を分け与えることもあれば、経験の浅いメンバーに将来リードを務められるようにするための洞察を与えるということもあります。今回の場合、この記事でも触れますが、彼はこのセットのデベロップで重要な役割を果たしてきました。彼はまた、『ニクスへの旅』デザイン・チームの代理人でもありました。

イアン・デューク/Ian Duke

 イアンはマジック開発部のデベロップで2年間働いています。彼と彼の弟のリード/Reid Duleのどちらがより強いプレイヤーか、未だに判断がつきません。イアンは『Magic Online』の『Vintage Masters』(リンク先は英語)でリード・デベロッパーを務めました。また、彼は対戦キットという構想を助け、『マジック2015』の対戦キットのリード・デベロッパーを務めたのです。

トム・ジェンコット/Tom Jenkot

 トムはウェブチームからやってきました。彼はDailyMTGなどサイト全体のビジュアルを担当するグラフィック・デザイナーを統括しています。また、彼は『テーロス』ブロックのパッケージのデザインをし、『テーロス』のフレイバー・テキストを書きました。『ニクスへの旅』は彼が初めてデベロップに関わるセットです。彼はミノタウルスのファンで、長年のカジュアル・プレイヤーなので、チームに独特の視点をもたらしてくれました。

ケン・ネーグル/Ken Nagle

 ケンはマジック開発部のデザイン・チームに所属しています。彼が最近リード・デザイナーを務めたのは、『神々の軍勢』『ラヴニカへの回帰』『統率者』です。また、ケンは『テーロス』ブロックで行われている「英雄の道」の全てのチャレンジ・デッキのリード・デザイナーでもあります。ドラフトをやっていて大型クリーチャーがどこにも見当たらなければ、特に緑の大型クリーチャーがいなくなっていたなら、彼のカード・プールを見てみるのが一番でしょう。

3本の柱

 いわゆる伝統的な大-小-小のモデルでブロックを完結させたのはもう何年も前のことです。つまり、このセットが何をもたらすべきかをもう一度検討し直すだけの時間が空いているのです。ブロック内の物語を伝えるという目的の他に、新鮮さを保つために全体のプレイパターンを変化させるアイデアはいくらでもありました。私たちがデベロップ・チームとしておこなった最大の変更の1つが、デザインが最初に考えていたよりも多くのメカニズムを再録するということでした。あまりに多くのものが詰め込まれることになるというリスクはありますが、リミテッド、カジュアル、構築でのデッキを仕上げるためにはそれぞれのメカニズムを再訪する必要があると感じたのです。

 ブロックの他の部分と同じく、デザインとデベロップの軸になる柱、つまり神々、英雄、怪物について見ていきましょう。

神々

 ブロックの15柱の神々を、敵対色の5柱の神々で仕上げるというのはほぼ疑いのないところです。『神々の軍勢』の友好色2色の神々が作った枠組みからそう外れる必要もありません。問題なのは、神々のクリエイティブ的な独自性を踏まえて新しい地平を進まなければならないということです。

 神々以外に、神々やニクスと関連づけられるエンチャント関連のものについても様々な変更が必要でした。私たちは、神々と定命の者の高まり行く対立に焦点を当てました。そのため、対立の両陣営に1つずつ、2つの新しいメカニズムに焦点を当てることになりました。星座はいかにも相応しいものに思えました。星座能力を持つカードそのものも含む、エンチャントをプレイすることを推奨するのです。星座カードを戦場に並べていくと、得られるものはどんどん激しくなっていくのです。このメカニズムの内容は、デザインからほとんど変わりませんでした。といっても、カード1枚1枚に手を入れ、このメカニズムの持つ反復の可能性がリミテッドでも構築でも楽しい範囲に収まるようにする必要がなかったわけではありません。

 授与は、比較的大きな難問でした。神々と定命の者が戦っているので、デザインから、不利にするオーラにするという意図が示されました。デザインの間は、授与クリーチャーは、例えばエンチャントされたクリーチャーに防衛を与えるようなものでした。やがてそのクリーチャーがブロックしたら、授与クリーチャーは自陣の防御に回ってくれるのです。デザインは、これらの授与クリーチャーはブロックの過去の授与クリーチャーと違い、パワーやタフネスを強化しないことにしていました。ほとんどのプレイヤーが、この変更をあまりに奇妙だと思いました。また、この例の場合、対戦相手はわざわざブロックしてくれないでしょうから、クリーチャーが自陣に戻ってくることは稀でしょう。不利益になる授与クリーチャーを、より直観的な何かに入れ替えようとなったとき、私は、不利益はあるけれどもパワーやタフネスは強化される、というものを試してみるべきだと思ったのです。デメリットに手を入れ、相手のクリーチャーにつけたいと思うことがあるようにする。デメリットを踏まえて、授与クリーチャーのコストや授与コストはかなり過激にできました。

 『神々の軍勢』では、神々や授与クリーチャー以外のクリーチャー・エンチャントに手を着け始めました。他に何か加えられるものがないか、私はかなりの時間を費やして考えました。空き時間に、私は過去のカードを見て、「クリーチャー化」できるエンチャントや、クリーチャー・エンチャントにしても違和感のないクリーチャーを探しました。目を見開き、耳を澄まし、頭を巡らせてみてください。

Pyrostatic Pillar

 『ニクスへの旅』はエンチャントを中心としたブロックの最後になるので、私は他にも何か新しくて楽しくてイカした、エンチャント関連のものを探しました。私は『テーロス』と『神々の軍勢』の両方でデベロップ・チームに所属していました。その両方のチームにいた間に、私は、《春の鼓動》のような両方にとって利益になる対称な効果を持つ、瞬速つきエンチャントというアイデアを提示していました。ただし先に利益を使えるのは自分です。これまでのセットでは採用されませんでしたが、今回はプレイテストにかけてみることにしました。サイクルを作り上げるのは大変で、最終的にはサイクルを多少緩めて、対称性のある効果に縛るのを止め、瞬速を持っていたら面白いエンチャントを探すことにしました。これらのカードに触れた内部のプレイテスターは興奮し、私も結果に満足しました。クリエイティブ・チームがそれらを神々の指図としてまとめてくれたことにも満足しています。

英雄

 定命の者側の様々な変化について掘り下げていく前に、このセットで私の一番のお気に入りの、そして今日のプレビュー・カードでもあるカードを紹介します。このカードは新しいメカニズムを含んでいませんが、プレイスタイルとしては英雄カードとかなり近くなります。これはデザインから渡されたカードで、作ったのは イーサン・フライシャー/Ethan Fleischerと彼の率いるデザイン・チームです。デベロップにやってきたときは、このカードはで2/4のクリーチャーでした。私はこのカードに魅力を感じ、ゲームの序盤で見かけるようにしたいと思いました。そこで、デベロップの最初の2週間で、このカードをの1/4に変更しました。2ヶ月後の、数週間の間、エリック・ラウアーが私に代わってカード・ファイルの管理を担ってくれました。たまたまこのカードの最初のデザインを手がけていたエリックは、カードの働きに大きな変化を加えました。の1/3にしたのです。彼がこの変更をしたのは、私の人生にとって特別な日でした。その日に、私の第1子、現時点では唯一の子供が生まれたのです。つまり、エリックは私を助ける役目を担った直後、私の居ない間にこの変更を加えたのです。その1週間後、彼はこのカードにさらにトランプルをつけました。1/3クリーチャーにトランプルとは似つかわしくないと思うかもしれませんね。

 まだプレビューを表示していない皆さん、赤の《影魔道士の浸透者》をちょっと考えてみて下さい。神話レアだとどうなりますか? 少なくとも1回、赤の目玉カードで使われたことのあるメカニズム空間を使っています。正解は、こちらです。

 自分のいない間に加えられたこの変更を初めて目にしたとき、私はこのカードを試してみたくて仕方ありませんでした。デベロップの間を通して、私はこのカードを何かの面で弱くしなければならないのではないかと思っていましたが、このカードはあまりに美しかったのです。〈予言の炎語り〉は汎用性が高く、《ゴーア族の暴行者》などの最近のメカニズムやカードと組み合わせて使っていて満足できるものでした。また、爆発力もあるかと思えば、継続的にリソースを生み出してもくれます。どの使い方にせよ、このカードは戦場にある限り興奮させてくれるものなのです。

 他にも、私が父親産休で離れている間に、エリックは新しい定命の者のメカニズムを試し始めました。デザインとデベロップの中間で、私たちはいくつかの別のメカニズムを試しました。メカニズムに必要なものが何なのかはわかっていたのです。

 私たちが一番求めていたのは、英雄的メカニズムとよくかみ合うものでした。マナを使う方法が充分に多くはなかったので、特にゲームの後半で余ったマナを使う方法を考えていました。また、このセットで、「広く」する、つまりクリーチャー1体にオーラを大量に貼るのではなく、クリーチャーを大量に並べる戦略を採ることを強く推奨したいと思っていました。広くすることを推奨することで、ゲームプレイ上の戦略の幅が広がり、また神々の側に対峙する定命の者の側に大量の個体がいることで戦争らしさを出せると思ったのです。その効果が段々と強化されていくようなメカニズムはセットにもブロックにもいくつも存在したので、最終的に、私たちはすごい一瞬を作り出すメカニズムを探すことになりました。

 奮励メカニズムはまさにこの目的全てを見事にこなしていました。その後、自分のクリーチャーを対象とするカードを大量に作り、英雄的誘発型能力を可能な限り誘発させられるようにしました。また、対戦相手のパーマネントを相手にするカードも作り、メカニズムをより目立つようにしました。幸いにも、これまでのメカニズムは充分に似ていたので、これまでのカード・デザインを流用することができました。

 デベロップ中に、定命の者の側に神啓を再録することにしました。『神々の軍勢』のデベロップを終えて、神啓にはまだ掘り下げる余地があると気付いていたのです。そして、神啓を、特に青黒をドラフトするプレイヤーに、また構築でも、さらなる道具を与えることが重要だと感じたのです。

怪物

 このセットの焦点は、定命の者と神々との対立にあります。では、怪物は? デザイン・チームからイカしたデザインが大量に提出されましたが、ブロック内のこれまでのセットのような怪物の一貫性はありませんでした。共通したメカニズムがなかったのです。

 リミテッドのプレイテストを重ねて、私たちは、怪物にも何かが必要だと判断しました。しかし、新しいキーワード・メカニズムを追加する気はありませんでした。複雑さを考慮して、メカニズムをもう1つ再録して巧く行くでしょうか? まず、どのメカニズムを再録するかが問題です。貢納は魅力的な怪物を何体か生み出しましたが、リミテッドでも構築でもそれを軸にしたデッキ戦略を作ることには向いていません。怪物化カードは土地を並べて大量のマナを出すことを推奨します。怪物化なしでリミテッドのプレイテストを重ねれば重ねるほど、マナの使い道や土地を出すメリットが存在しないことが目立ってきました。怪物化を、入れたい色に再録することで怪物を使った戦略ははっきり強化されました。

 デザインから、コントローラーが出している、そのクリーチャーの色の基本土地の枚数を参照する魅力的な怪物カードが提示されました。デベロップ・チームはそれらが気に入ったので、私たちはアンコモンとレアを使ってそのサイクルを仕上げました。それらのカードは怪物に光を当て、また土地を並べることを推奨し、リミテッドでも構築でも単色信心デッキにそれらを入れることができるかもしれません。

 こうしてすべて見てきて、私たちは、このセットにおいて多くのプレイヤーのために多くのカードやテーマを詰め込むことに最善を尽くしたと言えます。皆さんがそれぞれ違うカードを気に入ってくれたら幸いです。この新セットをぜひお楽しみください。

 お読みいただきありがとうございました。

 デイブ・ハンフリー

 

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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