埋葬 その1

更新日 Magic Story on 2013年 2月 8日

By Adam Lee

Adam Lee had a long freelance career as a writer and artist in the greeting card industry before coming to Magic's creative team. He grew up in the commune-laden wilds of Northern California in the 70s and his Guild Quiz result was Selesnya. "Be groovy, people."

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神無き祭殿》 アート:Cliff Childs

 彼らはそこに立ち、無傷の窓を見つめていた。オルゾフのギルドシンボルが朝の陽射しを受け、廃墟となった聖堂を黄金の輝きで満たしていた。瓦礫帯でこれほど驚嘆できるものを見るのは稀だった。

 ドムリ・ラーデは滑らかで重い石をその手に転がしながら、傷のないガラス製の太陽の円盤を見定めた。彼の親友達、ウィップとラッキィは彼の隣に立ち、来たる予感に張りつめていた。

 これはきっと凄いことになる。

 ドムリは友人達を見た。「いいか?」

 ウィップは歯を輝かせ、頷いた。

「いいぜ。やっちまえよ、ドム」 ラッキィは戦化粧の下からにやりと笑った。ウィップは彼を促した。悪くない仕事だ、ドムリはそう思った。

 ドムリは向き直り、振りかぶって石を放った。トカゲを、鳥を、ゴルガリ団を、商人を、荷車を襲ってきたドムリの若い人生のあらゆる経験は、目標へと向かって投げられた石を、まるで運命の飛翔体のように導いていった。ドムリは内心、石を放つ前にその結果を見越していたが、衝撃でガラスが砕け散る音に満足するために、心構えは何もしなかった。崩落した広間に破壊音が響き渡り、ガラスが至る所に飛び散った。黄色をした巨大なガラス板が二枚、石の床に落ちて次なる眩惑的な音とともに砕けた。

 それは崇高なものだった。

「いやっほう!」 ウィップが言った。そして彼らは歓喜と笑いを爆発させ、略奪後のゴブリンのように踊った。

 そして友人三人は動き回り、色鮮やかなガラス片を拾い上げ、最良の破片を見つけるとそのガラスを木製の柄に縛りつけた。それらはまるで魔法の、黄金の剣のように見えた。

グルールの魔鍵》 アート:Daniel Ljunggren

「欠片の刃族ってどうだ。俺達の部族だ」 ドムリはそう言い、手製の禍々しいナイフに感服した。

「いいな。それを持てるのは首領だけだ」 ラッキィは彼の短剣を完成させて掲げた。彼の父親は葦とガラスで有用なものを作ることに長けており、ラッキィはガラスを縛る腕の巧みさで知られていた。

「おっかないな、それ」 ウィップは感嘆とともに言った。彼は自身のガラスの剣をラッキィへと手渡した。「俺のもやってよ」

 ドムリは両端にガラスを縛り、見苦しくない両刃の短剣を作った。彼はそれを完成させると架空の敵に向かって効果を試した、まず切り裂き、次にめった切りにした、まあまあ熟練の動きで。

 ラッキィはウィップの短剣を仕上げた。ドムリは友人達を見てにやりと笑った。

「よし、何か壊しに行くぞ」


 野営地への帰路は暗くなりかけており、ブンブンと飛来する薄暮の昆虫達を食そうと気の早い蝙蝠達が飛び周り初めていた。暗い時間の瓦礫帯を外出するのは危険だ。戦士一人を飲み込み、その脚の下に荷車を踏みつぶしてしまう獣が徘徊する。少年達は本能的に早足になった。ウィップは柳の枝で火虫を叩き、ドムリは廃墟の建物の下の影へと目をこらした。ラッキィはいつものように、別の世界へと没頭していた。ドムリはかつてマッカに食べられそうになったラッキィを救ったことがあり、またドローマッドに踏み潰されぬよう留めたこともある。ラッキィは真のグルールとしての人生を切り捨ててしまうのではないか、ドムリは怪しんでいた。彼はセレズニアのようだった。

腐食スカラベ》 アート:Adam Paquette

 合わせるかのように、ラッキィが言った。「あれってさ、どんな風なんだろうな? ほら、『埋葬』のことだけど」

「ラッキィ! このゴブ頭」 ウィップは彼を柳の枝で叩くと、鞭痕がついた。

「痛え、何すんだよ! ちょっと聞いてみたかっただけだよ」 ラッキィは腕をさすり、ウィップを睨んだ。

「気にすんな」 ドムリは言った。「覚悟はできてる」 ただその言葉だけでも、彼は自身の声が内に震えている弱さを裏切っていないよう願った。

 ウィップもラッキィと同じように興味を持っているとドムリは知っていた。彼ら二人も、この年のうちに「埋葬」を受けるのかを推しはかっていた。グルールの成人の儀式の話は秘密と恐怖に覆われている。

「埋葬」は、グルールに加わりたいと願う全ての者に訪れる。年配の呪術士達曰く、それは法の奴隷であり自然の破壊者の代表であるラヴニカの都市、その内の人生への執着を全て取り去るのだと。そして「埋葬」を耐えて部族へと戻ってきた者は皆生まれ変わり、決意を新たにグルールとして生きる準備ができるのだと。全てを秘密にするように誓わされるため、未だそれを通過していない者へと詳細が語られることはない。定められた日時が近づくグルールの若者全員の心の中、未知の恐怖という石棺に「埋葬」は封じられていた。

 それはドムリの腹に、スズメバチの巣のようにざわめいていた。彼の「埋葬」は次の日の出とともに始まる。


 その朝は、ドムリに埋葬衣と灰と泥からなる死化粧を纏わせることに費された。呪術士達はその間、天幕の外で埋葬の詠唱を呟き続けた。部族は嘆き悲しんでいた、まるで彼が昨晩死んだかのように。彼らの嘆きの響きにはあまりに現実的な何かがあり、彼は不安な心持ちになった。

「何で皆ああしてるんだ? オレは何ともないのに」 ドムリは怖れから湧き上がる苛立ちを感じた。

 彼を世話していた呪術士、サバストは黄土と灰の仮面の下のドムリを見た。「彼らは、彼らの知る少年を失うことを悲しんでいるのだ。なんらかの形でその少年は今日、死ぬ」

 一瞬、ドムリは恐慌へと陥りかけた。きっとこれは彼にとって大きすぎる。きっと危険すぎる。だがドムリは知っていた、他の者は自分よりも先に越えてきたのだと。もし皆ができたのなら、自分だって。

 午後、ドムリとサバストはウトヴァラの奥深くへと歩み入った。そこは数世紀に渡る大破壊を経て、またその地の所有権を主張するオルゾフ開発者の企てにも関わらず、多くのグルールが住処としてきたラヴニカでも広大な地域だった。

「自然がどう応えるかを見るがよい」 古の廃墟に入って行く中、サバストは言った。「いつか、あらゆるものが土へと還る。それがゴルガリの説く真実だ。彼らは自然の衝動を、建造物を砕きそれらを大地へと還すことを頭で理解してはいるが、彼らの心は鈍ってしまっている。彼らに生命への情熱はない」

 ドムリは自然のごく緩やかな力を見た。石は木々に身を委ねる。蔓は煉瓦を突き抜け、それらの根はあらゆる場所へと纏いつく。生命は、生命なき石と都市の煉瓦を引き裂く。

踏み鳴らされる地》 アート:David Palumbo

「死へと近づくことがグルールに多くをもたらす。はっきりとした目的、しがらみからの脱却、決まりごとの空しさを知ること、そして何よりも、生きている実感を取り戻すことだ。活力と生気は、戦士が死に向き合った時に何よりも強くなる。それこそが、ゴルガリとグルールの道を分けるものだ。奴らは死へと飛び込み、生者に奪わせる。だが我らは自然の円環を使用して、より多くの生への情熱を焚きつける。今日、お前はこれを直に体験するだろう」

「何が起こるんだ?」

「心が完全に理解すべきものを、頭で構えてはいけない。我が言葉はお前の心のためのものだ。生命は心にある。わたしの言葉を近くで聞きすぎたなら、お前はアゾリウスとなるだろう。お前自身のやり方で感じねばならん」

 夕闇が近づく中、植物の生い茂る廃墟が不気味な影を投げかけ始めた。ドムリはその年若い放浪の中で、ウトヴァラのここまで深くへと入り込んだことはなかった。馴染み深いものは何もなかった。彼らは一見行き止まりの蔦とうねる根の壁へと近づいたが、サバストは分厚いその中、隠された洞窟の入り口に足を踏み入れた。サバストは壁から松明を取ると点火の呪文を呟き、グルールのシンボルと絵文字に覆われた岩がちの小道を下っていった。

 洞窟を下る長く滑りやすい道の後、地下の泉を横切り、石筍を迂回し、彼らはついに暗き土の中、グルールの埋葬品に囲まれた穴へと辿り着いた。

 サバストは松明を地面へと放り捨てると、火花が飛び散った。そして彼は墓の前に立ち、その姿は来世から来た精霊のように見えた。松明の明りの中、彼の目がドムリを見据えた。

「ドムリ・ラーデ。偽りのお前が死する時が来た。真のお前が誕生する時だ」


(Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori)

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