水深の布告

更新日 Magic Story on 2013年 1月 18日

By Brady Dommermuth

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文書の目的:諜報資料

文書の区分:写し

第一受領人:ホライゾン軍学校司令官ヤゼン

文書記録人:ウォジェク筆記官ボグミル・ベム

文書の状況:一ヶ月前、首席議長を名乗るマーフォーク女性ゼガーナが、アゾールの公会広場にて演説を行った。彼女は随員とともにアゾールの公会広場へと指定された時間に入場し、中央の演壇に立ち、およそ一万二千人の聴衆へと演説を行った。演説は新シミック連合に関する布告で締められた。数時間の内に、廷吏及び信号兵はその演説を「水深の布告」と呼ぶようになった。

アート:Willian Murai

    首席議長ゼガーナによる「水深の布告」の記録

 ラヴニカ市民の皆さん。雨天にも関わらず、この古よりの地へとお集まり頂き感謝致します(1)。私たちの言葉を伝えるためにこの正当なる舞台を選択させて頂くことで、地表の伝統を尊重すべく努めます。

 地表人の皆様がラヴニカの大海を最後に目にしてから、数千年の時が過ぎました。ですが海は都市の層の下、ずっと存在し続けていたのです。過去、世界の水系を構築するためにイゼットの教術師達が私たちへと手を伸ばしました。他の方々は私たちへと近づくと深く詮索し、暗闇と秘密を探し求めました(2)。その間、私たちは深き住処にしがみついていました。

 我が種族は二つの原理に導かれています。一つは固着の原理と呼ばれるものです。この原理は私たちを海へと繋ぎ止めるものです。流されてしまわぬよう、海藻が海底に固着するように。それは私たちを根付かせ、深淵に留め、野望や思い上がり、独断に飲み込まれることを防いでくれています。固着の原理によって私たちは何世もの間、忘れられた大海の中にいる事に満足してきました。

 ですが固着の原理に対抗する、もう一つの原理が存在します。私たちの海は大いなる周期で生き、呼吸しています。養分が枯渇した表層水はその下の、豊かな水と入れ代わるのです。これは湧出というものです。湧出無しには、私たちの海は墓所となってしまうでしょう。

アート:Mike Bierek

 数年前のことです。我らが民(3)は、これまでになかった成長が私たちの海面へと手を伸ばしてくるのを発見しました――数千年もの間見られなかったものです。根です! 地上の大樹の根が(4)――石と鋼を破り、水を探し求めて深みへと伸びてきたのでした。喜ばしい帰還です。

 これが貴方がたの行いだったのかどうかは今なおわかりません、地表人の皆さん。私たちは貴方がたの世界の知識を何世紀にも渡って探究し、それゆえギルドの存在やその志も存じております。私たちは、ラヴニカにより多くの自然の場所を創造するために貴方がたのうちの何人かと共に働くことは想像しませんでした。後に貴方がたの行いを学ぶまでは。私たちの称賛と、その働きを支えたいという欲求を今、世界へと広く伝えるこの時までは。

 地表から手が下方へと伸ばされるほどに私たちは上方へと引かれ、新たな生命に活気づき、喜びを感じました。深水の賢者達は私たちの大湧出の場を探し求めました――貴方がたと私たちの世界を繋ぐ、永続的なトンネルとなることのできる、無人の地を。最初のそれは、今や貴方がたが第一ゾノットとして知るものです。

 とても強力な生術によって私たちは最初のゾノットを開き、多量の海生植物の格子で強化しました。慎重に設計しましたが、私たちは当初その安定性に自信を持てませんでした。ですがそれは強固に、私たちの地上への最初の門となってくれました。私たちの性質に沿う、上下逆さまの塔です。私たちは地表では珍品でしょう、それは判っていました。私たちの出現に対する暴力という危険性もです(5)。ですが私たちは、ラヴニカの皆さんが忘れて長いその大海を一目でも見たならば、きっと喜んで下さるだろうと予測していました。そして私たちのその思いは正しかったのです。

 以来、私たちは他のゾノットを創造してきました。更に多くが続くでしょう(6)。各ゾノットは共同体となり、それぞれに言論者が置かれます。これら言論者は順に首席議長の地位に就き、現在のところ私がその役割を担っております。

 首席議長として私はこの数カ月の間、多くの指導者と協議を行ってきました。それらを通し、私は学びました。私たちの深みへと届いた根ははっきりとした目的を持つものであったと、野生主導権(7)gt;によって育まれたものであったと。この気高き行いは秘密にされておくべきではありません。世界中に野生の地を切り開くために、ゴルガリ、グルール、セレズニアのシャーマンとドルイド達からなる、夢のような一団が長い間共に働いてきました。ギルドマスターの認めることのない、このギルドを越えた行動はラヴニカを作り変える力を秘めています。私たちの世界に真に自然を生き返らせるために。大いなる湧出です。

アート:Daniel Ljunggren

 この再生の新たなサイクルを始めたのは地表人の皆さん、貴方がたです。貴方がたの行動は私達を深淵から引き上げ、そして貴方がたを広大な、覆われし大海と再会させてくれました。ですがもう一つ、大切な事をお話しさせて下さい、私たちが継承するものを。シミック連合の遺物です。

 モミール・ヴィグの思い上がりを学び、私たちは悲しみました。彼の創造物がもたらした破壊は許されるものではありません。細胞質体、クラージ実験体……ヴィグの者達はその目的からあまりに遠くへと流されてしまいました。彼らは自然の守り手という役割を放棄し、替わりにそれを玩具とみなしていたのです。

 彼らは固着の原理を失ったのです。

 私たちは、シミック連合の残存者を探し求めてきました。そして出遭ったものへと、私たちの原理と目的を与えました。今や、シミックの真の任務を信じる者達は私たちに加わりました(8)。私たちの助力によって野生主導権が繁栄すると知り、そして私たちがかつてのヴィグのように、思い上がりや進歩の流れにさらわれることのないようにと。

 私たちは海の深みにある故郷に、永遠に繋がれ続けるでしょう。私たちはラヴニカの最高と最深との間の永続的な繋がりとなるよう努めます、どうか私達の助けとなって下さい。私たちは、シミック連合です(9)

記録者による要約:マーフォーク種族の建前上の代表者による概要説明。マーフォークの再興、より多くの「ゾノット」計画、そしてシミック連合の所有と再形成の意志表明。

推奨される行動:新たな「ゾノット」が何処に出現するかについての鍵となる特徴を質問すること。現存するもの周辺の巡視を継続すること。新シミック連合の活動と組織を監視すること。

保留中の行動:シミック再興の進行に対する潜在的予防策について、ヤゼン司令官からの更なる指令を待機中。


ウォジェク筆記官ボグミル・ベムによる補足

(1) ゼガーナと随員達が到着する直前に天候は雨へと変わりました。恐らくは魔法的に引き起こされたものと思われます。(戻る)
(2) 地底街深くにおけるディミーアの活動の影響は、現在推測されている以上の事項についてはより多くの調査が必要と思われます。(戻る)
(3) ボロスによるマーフォーク人口の推定が進行中です。当初の予想は統計的に有意なものですが、膨大な数には及んでおりません。(戻る)
(4) 侵略的な根に対する、ボロスの主要な要塞の基礎部の検査を考慮下さい。(戻る)
(5) ウォジェクによれば地表においてマーフォークに対する暴力は報告されておりません。ですが群衆が呆気にとられていたとの事です。(戻る)
(6) 現地からの報告によれば三つの「ゾノット」が現在のところ出現しているとの事です。(戻る)
(7) 内密に入手したアゾリウス内部連絡状から、この計画の存在が確認されています。(戻る)
(8) マーフォーク種族全体が同調して行動していないのではと情報部は示唆しています。ウォジェクの報告によれば、個々のマーフォークが複数の地区で独自に行動しているとの事です。(戻る)
(9) ゼガーナは演説に続いて質疑応答を行いませんでしたが、後に会見を行った筆記者と出席者は、ゼガーナの意向は彼女こそがシミック連合の新たなギルドマスターであると布告すること、大筋においてそう同意しました。

(Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori)



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