ゼンディカーの為に

更新日 Magic Story on 2015年 8月 12日

By Kimberly J. Kreines

Kimberly J. Kreines is a creative designer new to the Magic team. But neither playing Magic nor writing are new to her. She has a penchant for dragons, the Oxford comma, and chicken tikka masala. In her opinion, all three are equally delightful.

前回の物語:チャンドラ・ナラー――「炎への献身」

 ゼンディカー世界が最初にニッサ・レヴェインへと接触してから長い年月が経つ。世界は彼女へと幻視を送り、その山の内に囚われた闇の怪物を取り払う助力を願った。そしてニッサは勇敢にもエルドラージの怪異と対峙したが、それを滅ぼすことも、その仲間を滅ぼすこともできなかった。最初の遭遇以来、ニッサはその人生を世界にはびこるエルドラージの軍勢との戦いに捧げてきた。彼女は多くの過失と失敗に直面し、だがゼンディカーは今も彼女を信じているように思える。世界は彼女の呼び声に応えてその力を送り、それは巨樹のようなエレメンタルとして顕現し、彼女の戦いを助けた。だからこそニッサ・レヴェインはエルドラージとの戦いを続けている。ゼンディカーが自分を選んでくれたのは正しかった、そう願いながら。

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精霊信者の賢人、ニッサ》 アート:Wesley Burt


 巨森を見下ろす尾根にて、ニッサは高く聳えるゼンディカーのエレメンタルの隣に立っていた。その高さからはほぼ全容を見ることができた――そして仮に視線の集中を緩め、ほんの僅かに目をこらしたなら、認識できたのは緑色と茶色だけだろう。森の、自然の色。

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精霊信者の覚醒》 アート:Chris Rahn

 だがそこには白く乾いた場所があると彼女は知っていた。それらは干上がった川床のように大地を細く流れていた。その全てが干上がった川だったならよかったのにとニッサは思わずにはいられなかった。干ばつ、それが最悪の干ばつだとしても、今世界が直面しているものよりも遥かに好ましい。

 枯れた、荒廃の白い痕跡。ウラモグの血族のエルドラージがその通り道に死を残していった。それらは虚無だった。何もなかった。エルドラージは遭遇したあらゆる生物の命と精を吸い取り、それらが通った後には草一本すら残らない。頑固な獅子蠅すらも広範囲にわたって荒廃に屈する。当初、その死んだ土地は復活するとゼンディカー人の多くは信じた――時間さえ与えられれば、生命は戻ってくるだろうと。だが年月が過ぎても、エルドラージの荒廃の狩り跡は広がるだけだった。エルドラージが与えた傷は決して癒えないもののように思われた。ゼンディカーが失った命は二度と戻ってこなかった。

 もはや屈するものすら世界に多くは残されていない。それは核心を突いていた。

「何もかもを奪って行こうとする」 ニッサは言った。「時々わからなくなるの、私達が止められるかどうかも」

 大体において彼女は自分自身に語りかけていたが、同時に隣にいるエレメンタルにも語りかけていた。この数日間ずっと、彼女はそれに語りかけていた。だが思うに、それはニッサが言っていることを理解してはいなかった。

 ニッサがそのエレメンタルと意思の疎通を得た兆候は、それが毎日数度繰り返す身振りだけだった。それは一本の枝のような手を伸ばして掴む仕草をした。ニッサが見えない、もしくは理解できないものを。

 彼女はその意味を解釈しようとしたが、推測するたびにそれは間違っている気がした。それでもニッサがそれに語りかけるのを妨げようとはしなかった。ハマディや他のエルフ達といった仲間と離れてから、巨森の残骸を横切るのは自分達だけのように思われた。そして自分の声を鬨の声以外に使うのは、ニッサは快適に思えた。

「上出来だったわね」 彼女らが今しがた片付けた森の一角を指し示すように、ニッサは肩越しに頷いた。エルドラージの屍が二つ、背後に横たわっていた。ニッサの隣に立つエレメンタルは最大のものの触手四本を引きちぎる功績を果たした。

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ウラモグの破壊者》 アート:Todd Lockwood

 ニッサは感謝の意を示したかったが、それが伝わるのかどうか今も測りかねていた。この聳え立つエレメンタルを初めて召喚した時は、周囲の者達と同じようにただただ衝撃だった。その力、全くの大きさ。圧倒的だった。確かに彼女はこれまでもエレメンタルと共に戦い、それらを通して大地の力を呼び起こしてきた。だがこのように使ったことはなかった。

 このエレメンタルは他とは異なっていた。中型のエルドラージをその枝のような片手で持ち上げられるほどに巨大というだけではなく――それは明確に否定しがたい特質を持っていた。このエレメンタルは、戦いが終わっても大地へと戻らなかった。

 それは留まり続け、ニッサを追い、見つめていた。そして理解してはいないかもしれないが、ニッサの言葉を聞いているように思えた。

 それは存在と個性があった。もしかしたらそれ以上が。

 だからこそ、それが名前を持っていないのは奇妙だと感じた。

「あなたのこと、どう呼んだらいいか知りたいの」 ニッサはエレメンタルの枝の向こう、新たな夜明けの空の光を見上げて言った。「こんなふうに話をする時、あなたを何かで呼びたい。名前はあるの?」

 そのエレメンタルは反応の動きを見せず、ニッサもそれが来るとは思わなかった。それでも……「あなたに名前を付けてあげてもいい?」

 エレメンタルは拒否した様子を見せなかった。

「アシャヤはどう?」 ニッサは言った。「目覚めし世界、アシャヤ」 彼女はハマディからその名前の案を得ていた。ニッサがこのエレメンタルを初めて召喚した時、ハマディはニッサを『シャーヤ』と呼んだ。彼曰く『世界を目覚めさせる者』を意味すると。もし自分が『世界を目覚めさせる者』ならば、そのエレメンタルが『目覚めし世界』と考えるのは唯一納得がいく。

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ガイアの復讐者》 アート:Kekai Kotaki

 エレメンタルの枝がよじれて伸びた。まるでその名前を試し、判断しているようにニッサには思えた。そしてその根が落ち着き、エレメンタルは満足したように見えた。

「うん、じゃあ、アシャヤね」 ニッサは言った。その名前は正しく、良いもののように思えた。最初の陽光が地平線へ一つ伸びると、彼女は息をついた。「さあ、アシャヤ、どうしよう?」

 それは近頃何度もニッサが自問自答してきた質問だった。

 一人のエルフがその力全てをもってして、何ができるのだろう?

 この大きな世界に一人のエルフが。更に広大な多元宇宙の中で。

 一人のエルフに何ができるというのだろう?

 だがそれこそ、ハマディが自分に言おうとしていた事ではなかったか? 自分は世界を救うことを求められている。その力を、エレメンタル、アシャヤを用いて、エルドラージを倒す。ゼンディカーは自分を選んだのだ。

 だがハマディは一部始終を知らなかった。ゼンディカーは以前にもニッサを選んだ。まだとても若かったその頃、世界は彼女へと幻視を送り助けを求めた。

 そしてニッサは助けようとした。

 だが、失敗した。

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ニッサの天啓》 アート:Izzy

 彼女は失敗した。

 ならば、何故世界はまたも自分を選んだのだろう?

「ねえ、真面目に尋ねたいの」 ニッサはアシャヤの木製の顔らしきもの、もし目があるのならば目なのであろう場所を見上げた。「ゼンディカーは私に何をしてほしいの? あなたは私に何ができるって思ってるの?」

 エレメンタルは彼女の声を聞いている様子は何も見せなかった。

「あなたはゼンディカーの一部なんでしょう?」 ニッサはその枝を揺さぶりたかった、その表情のない木の姿から回答を引き出そうと。「どうして――私とここにいるの? エルフの中でも……ゼンディカーの皆の中でも。コー、マーフォーク、ゴブリンだってあなたは選べるのに。でも私なの?」 ニッサはかぶりを振った。「私は失敗したの。前回、あなたが私を選んでくれた時に。失敗した。今回はそうじゃないって思う理由があるの? 私が何か良くなったって、強くなったって、勇敢になったって思う理由があるの? 私はこれが全て。ここにいるのが全て」 ニッサは両腕を伸ばし、エレメンタルへと全身を示した。「これが全て。そして私はずっとこれだった」

 目覚めし世界、アシャヤは身動きをした。それは巨大な片手を持ち上げ、その掌をニッサへと開いて止まった。

 それは以前に何度も見せてきた仕草だった。ニッサは溜息をついた。「何? それは何て意味なの?」

 太い枝のような指で、エレメンタルはゆっくりと拳を作った。

 ニッサは苦い顔で睨みつけた。「わからないわよ。何を伝えようとしているの?」

 アシャヤは拳をその胸に押し当て、そして再び腕を伸ばし、そして一本また一本と、掌を上にして指を開いていった。

 その仕草はそれで終わりだろうとニッサはわかっていた。彼女は以前にもそれを見たことがあった。

 彼女はエレメンタルの手に自身の手を置いてみた。そして掌を上に向け、腕を伸ばしてみた。それは上を向いて欲しいと、彼女自身を開き、ゼンディカーへと手を伸ばして欲しいと、そう願っているとニッサは推測した。そして彼女はずっとそうしてきたが、無益だった。

 アシャヤはその仕草を繰り返した。

「あなたは私と同じくらい頑固ね」 ニッサは言った。

 三度アシャヤは繰り返した。そして四度。

「もうやめて」 ニッサはエレメンタルの動きを半ばで止め、その巨大な親指を両手で掴んだ。接触すると、彼女自身の肩から力が抜けた。彼女はアシャヤの匂いを吸い込んだ。森の香り――土、樹液、木、葉。それは素晴らしかった。強力だった。「ごめんなさい、あなたのことがわかればいいのだけど」 その率直な願いにニッサの心が痛んだ。

 アシャヤはもう片方の手をニッサの手の上へと動かし、巨大で枝のようなそれらで小さなエルフの手を包んだ。その仕草は何か新しいもの、エレメンタルがこれまでに見せなかったものだった。

 ニッサの心臓が高鳴り、来たるものへの期待に指がうずいた。

 互いの間に密な空気が流れ、ニッサはアシャヤから強い力が放たれるのを感じた――そしてその時、眼下の谷で微かな、だが絶望的な悲鳴が上がった。

 ニッサとアシャヤは共にはっと固まった。そして叫びが上がった方角へ共に振り向き、尾根の端から森を見下ろした。

 二つ目の、今度はくぐもった悲鳴が夜明けを貫いた。

「あそこ!」 ニッサは指をさした。遠くない所にエルドラージの、不自然な紫色をした張りのある肉が早朝の光に輝いていた。

 ニッサの場所からは、エルドラージが小さな野営地を侵略しているように見えた。その近くから少なくとも二つの煙が上がっており、木々の間には十ほどの天幕が散在していた。

 エルドラージを三つの人影が取り囲んでいた。一人はコーらしく、もう二人はエルフのようだった。そのエルドラージは四人目を――恐らくは人間を――その骨ばった肘の下に捕えているように見えた。その人間が再び悲鳴をあげた。

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逆行》 アート:Izzy

 ニッサとアシャヤが見守る中、その小さな野営地近くの木々が震えた。そして素早く折れる音が三つ聞こえたかと思うと、木が三本地面へと倒れてエルドラージの怪物が更に二体現れた。一体は触手、もう一体はとても多くの手を持つそれらが木々を押し分けて野営地へと入ってきた。その通り道では白く乾いた荒廃が、倒木を貪った。

 三本の木がゼンディカーから永遠に消え去った。

 触手のエルドラージは最初の、紫色の怪物と忙しく戦うコーへと触手を伸ばした。

「後ろ!」 ニッサは声を上げた。だが風は彼女の声を谷から運び去っていった。

 エルドラージの触手でも最も分厚いものがコーの膝の裏を裂いた。彼女は地面に倒れ、ニッサの視界から消えた。「いけない!」

 アシャヤが手を放すと、ニッサは尾根を駆け降りた。「こっちよ」 彼女はエレメンタルを引っぱるように誘導し、ついて来させた。

 藪は深く、進むべき明確な道はなかった。だがニッサは深い森の中を動くことに長けており、そのコーへの心配が彼女をかつてない速度で前に進ませた。彼女は下りながら二度転げ、その度に貴重な時間を費やしたと自身を叱りつけた。

 平らな地面に達すると、ニッサは太陽から方角を確認して木々の間を進み、ついて来るようにアシャヤを促した。枝が顔を叩き、茨が足首を噛み、だが彼女は引っかき傷の一つごとに森の力を実感した。エルドラージに対して振るうことのできる力を。

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》 アート:Jonas De Roe

 彼女とアシャヤがその小さな野営地に到着した頃には、辺りにはテント、糧食、そして死体が散らばっていた。血と、エルドラージの濃い体液とともに――もしくは虚ろに白く乾いた抜け殻とともに。それら全ての中心では、張りのある紫色の肉のエルドラージが、エルフの死骸を貪っていた。

 ニッサは少しの間顔をそむけ、喉にこみ上げてくる胆汁を飲みこんだ。そしてアシャヤへと共に来るように促し、向き直ると突撃した。

 彼女は紫色をしたエルドラージの下の大地へと呼びかけ、巨大な地塊を引き出し――植物、落ちた枝、そして森の様々な破片を乗せたまま――大きく引いた。下の地面が傾いてエルドラージはニッサが作り出した小さな傾斜を滑り落ちた……待ち受けるアシャヤの腕をめがけて。

 エレメンタルがエルドラージの首を掴むと、ニッサはそれに向けて力を込めた。アシャヤはその怪物を内部構造ごと握り潰し、持ち上げると命なくだらりとぶら下がった。ニッサの命令で、アシャヤは無力になったエルドラージを手放した。鈍い音とともにその怪物は森に落下し、エルフの屍の隣に横たわった。

 一体のエルドラージを倒し、ニッサは振り返ってもう二体に備えた……だが遅すぎた。

 一本の太く、赤い触手がアシャヤの足に迫っていた。触手のエルドラージ、とはいえ今やその触手は三本だけの――この野営地のゼンディカー人がもう数本を何とか切断したに違いなかった――エレメンタルによじ登ろうとしていた。

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ウラモグの種父》 アート:Izzy

 ニッサの胸に怒りが渦巻いた。「アシャヤから離れなさい!」

 彼女は力強い、より合わさった根を近くの木から召喚し、エルドラージの背中の触手に絡ませるように向けた。そして力比べになった――ニッサはアシャヤへと、大地の力で動く木の根とは別方向に歩くよう願った。エルドラージはすぐにその赤く膨れた肉を真二つにしてちぎれるだろう。

「助けて!」 その声がニッサの集中を切り裂いた。

 それは頭上から聞こえてきた。一人のコーが――ニッサが峰から見た者が――高木の枝の上にいた。三体目のエルドラージが彼女を掴もうとしていた。その八又に分かれた付属肢の先端には十六の手があり、それぞれに八本の指がついていた。

 そのコーは近づいてきた付属肢を鉤で切り裂き、四番目の関節から三本の指を奪った。だがその動きに彼女は苦痛によろめき、近くの枝に落ちた。ニッサが目にした戦いの中で彼女は傷を負っていたらしかった。助けが必要だった。

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コーの鉤の達人》 アート:Wayne Reynolds

 ニッサはその木の枝へと意識を伸ばし、十本もの枝へと一度に、コーの身体を包むよう命令した。だがその障壁はエルドラージを僅かに防いだに過ぎなかった。その怪物の十六の付属肢が枝を一本一本掴み、引いた。最も太い枝ですら小枝のように折れた。

 ニッサは助けを求めてアシャヤを見たが、エレメンタルへの集中を欠いたために、触手のエルドラージが優勢になろうとしていた。それは力比べに勝利し、別の触手でアシャヤの脚に登る手がかりを確かにしていた。そして囀る口へとエレメンタルを引っぱっていた。

「助けて!」 そのコーが再び叫んだ。「お願い!」

 ニッサの心臓が高鳴った。彼女はアシャヤからコーへと視線を移した。一度に二つの場所には行けない。つまりは単純な事だった:コーを助けるために、アシャヤの力が要る。「持ちこたえて!」

 彼女は全力をアシャヤへと向け、その捕われた脚を軸に旋回し、巨大なもう片方の足でエルドラージの触手を踏み潰すよう願った。一度、二度、再び。

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活発な野生林》 アート:Eric Deschamps

 その衝撃にエルドラージの体液が飛び散り、結果エルドラージには一本の触手だけが遺された。その傷にエルドラージは平衡を失って投げ出された。そして滑るように後ずさりし、のたうち軋む音を立てながら木々の間へと退却していった。

 ニッサは止まらなかった。彼女はアシャヤを引いた――切断された触手や他の全てごと――三体目の、手の多すぎるエルドラージへ対峙すべく。

 だがそれはいなくなっていた。

 コーもだった。

 ニッサは視界から枝を押しのけ、絶望的に木々の間を探した。あの怪物は何処に? 何処へあのコーをさらって行った?

 葉ずれの音が道を示した。ニッサが震える木々をかき分けると、エルドラージの通り道が現れた。それは既に数百ヤード離れており、十四本の付属肢で素早く小走りに進んでいた。それは身体をひっくり返して腕七本を脚として使い、八番目の付属肢は不自然な角度に曲げられてコーを掴み、摂食器官へと持ち上げていた。

 白い、乾いた荒廃が道からコーの足まで昇っていた。

「そんな!」 エルドラージが木々の間に掘った窪みへとニッサは駆けた。だがそれを止められるものはなかった。エルドラージはコーの命を食らい、青白く動かないその身体を塵と化した。

 その塵はニッサの視界を曇らせ、両目を突き刺した。彼女は足を緩め、涙に瞬いた。あのコーにしてあげられる事はもう何もなかった。

 その心と肺に残ったものを晴らすために長く息を吐いてから、彼女は野営地へ、アシャヤのもとへと引き返した。

 彼女は道中、荒廃の痕跡を横切った。ほとんどはエルドラージが一本の触手で傷つけ残したものらしかった。ニッサの心が沈んだ。あのエルドラージが野営地から離れていったということは、そこに食らうものは何も残っていない。全く何も残っていない。

 すぐに彼女はそれが正しかったとわかった。小さな空き地にはエルドラージの荒廃だけが残されていた。ニッサは五つの屍を数えた、だが既にもう幾つが消滅させられたかを知る術はなかった。

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汚染された地》 アート:Christine Choi

 アシャヤは空き地の中央に立っていた。緑と茶――不自然な白色の広がりの中で、それは唯一の色だった。そのエレメンタルは悲嘆しているような姿に思えた。自分たちはこの戦いに敗れた。多くがその命を失い、そして土地もあまりに多くを失った。その事実が、ニッサは重苦しいほどに申し訳なかった。だが彼女はアシャヤへと警告していた。自分はゼンディカーにとって正しい選択ではない。今や、それはようやくわかったに違いない、彼女のその言葉が正しかったと。

「君の失敗ではないよ」 薄い、乾いた声がニッサを立ち止まらせた。ほんの一瞬、ニッサはその声がエレメンタルのものだと考え、だが彼女はその源を見た。吸血鬼が一人、重い足取りで深い木々の間から彼女へと向かって来た。彼は意識のない人間の身体を抱えていた。「君は力を尽くした」 ニッサから数歩離れて彼はひざまずき、その人間を白い地面に優しく横たえた。

 一人の吸血鬼が別の生命をそんなにも優しく労わる光景には戸惑うばかりだった。ニッサは眉をひそめ、その吸血鬼から意識のない女性へと視線を移した。

「心配しなくていい、彼女は苦しんでいない」 その吸血鬼は呟いた。「僕が保証する。彼女はすぐに逝く、そして埋葬されることができる」 彼は別の白化した屍をざっと見た。「安らかに」 彼は立ち上がり、ニッサへと一歩近づいた。

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マラキールの選刃》 アート:Igor Kieryluk

 反射的に、ニッサは後ずさった。

 その吸血鬼は笑った。低く、冷静に。「吸血鬼との君の経歴を考えれば当然か、ニッサ」

 ニッサは鋭く息を吸った。「どうして私の名前を知ってるの? あなたは何――どこで?」 彼女は言葉を失い、狼狽した。

「疑問は沢山あるだろう。その全てに答えよう」 吸血鬼は喉を鳴らして笑った。「だけどすまない、まずは君に質問がある、何故まだ君はここにいるんだ? このゼンディカーに?」

 ニッサは瞬きをした。混乱が増した。

「君はだいぶ前に離れていったと思っていた」 その吸血鬼は言った。「君と同じような者と一緒に。僕はこの任務に就いた時、灯に覚醒する寸前の者を見つけようとした。この死にゆく世界から離れていける力を持つような。だけど初めて次元渡りをする前のプレインズウォーカーを見つけるのは、言葉よりもずっと不可能な仕事だ」

「あなたは知っているの?」 ニッサは更に一歩後ずさった。腕の毛が逆立った。「あなたは――?」

「僕? 違うよ。だけど嬉しいかな、僕らの種族にも灯を育むほどの魂があると君が思ってくれるのは」

「そう思ったわけじゃない……」

 その吸血鬼は両手を挙げた。「いやいや、君が僕たちの間に築いてくれた親善を傷つけることはないよ。僕が君に持つ信頼には固い基礎がある」

 信頼? 吸血鬼と? この生物はウラモグの下僕である可能性が、吸血鬼はエルフの敵であるのと同じくらいに高かった。ニッサは吸血鬼を信頼しなかった。彼女は足を踏みしめ、しっかりと立ち、心を澄ませるために大地から力を引き出した。「私達の間に親善なんてない。あなたをそこに立たせたままでいるような理由を頂戴」

「とても良い理由が四つある。まとめてあげよう。贈り物だよ、アノワンからの」

 ニッサは震えた。彼女は実に長いこと、その老いた吸血鬼の名を耳にしていなかった。彼女は影を探した。彼は再び自分を見つけたのだろうか? これは不意打ちなのだろうか?

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遺跡の賢者、アノワン》 アート:Dan Scott

「怖がらなくていい、小さなエルフさん。心配することはない。アノワンはここにはいない」

「あいつはどこに?」

「僕は知らない。彼がいなくなってずいぶんと経つんだ。けれど姿を消す前に、彼はしばしば君のことに言及していた。君の力、能力、灯を。僕がこの探究を始めて最初に考えたのが君だった。でも君がまだここにいて見つけられるとは思っていなかった。だから、とても嬉しい」 彼は折りたたまれた灰色の絹を取り出し、彼女へと差し出した。

「それは何?」 ニッサはそれに触れなかった。

 またも穏やかな仕草で吸血鬼は一番上の布をめくると、四つの小さな種がその中央に固まっているのが見えた。彼は一つずつ指をさして言った。「コルヤ。赤マングローブ。ジャディ。血茨」

「血茨」 ニッサの心が痛んだ。それは彼女の故郷の大陸の、大切な植物の名だった。だが彼の言葉は嘘に違いないと本能が告げていた。「でもバーラ・ゲドは破壊された」

「この種以外は」 その吸血鬼は再び絹を注意深く折り畳んだ。「僕が君に何を頼みたいか、わかってくれたよね。プレインズウォーカー・ニッサ、君がゼンディカーを救ってくれることを僕がどれほど願っているか、わかってくれたよね」

 ニッサは理解した。彼は求めているのだ。その種を受け取り……他の次元へ持っていくことを。

「吸血鬼の願いとしては変なことだとはわかっている。だけどこの世界の終わりの時には、だれもが変なことをするものだよ。わかるよね、僕自身もバーラ・ゲドで血茨を沢山見た。恐ろしくて、棘だらけで、ねじれてる」 彼は微笑んだ。「だから、こいつらは別の何処かでも耐えられると思うんだ」 彼はどこか残念そうに、空へと手を振った。「そうしたら、何かして、僕もまた生きられる。僕ら皆、生きられる」 彼はニッサへと今一度、その絹を差し出した。「お願いだ、受け取ってくれ」

 ニッサは目を狭め、その吸血鬼を観察した。彼女はこの生物を理解できずにいた。彼は自分が知る他の吸血鬼とは違っていた。「真面目に言っているの?」

「世界の終わりよりも真面目なことなんてないよ」

「世界が終わるって信じているの?」

「終わりだよ」 その吸血鬼は近づき、囁いた。「君だってそう知っている、ニッサ」

 その非難はニッサにグサリときた。だがこの吸血鬼は間違っている。ニッサはこれが終わりとは考えていなかった。ゼンディカーは今も戦い続けている。まだ勝機はある。「それは違う」 彼女は言った。「ええ、今は大変な時。だけど私達の多くが立ち上がって、戦い続けようと思ってる。そして大地そのものも対抗してる。あなたも乱動を経験したことあるでしょう」

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ゼンディカーの乱動》 アート:Sam Burley

「あらゆる勇敢な戦い。それはわかるよ、君の今日の戦いもそうだ」 その吸血鬼は荒廃した野営地を示すように腕を伸ばした。彼が運んでいた女性も死者に加わっていた。「問題は、その努力じゃ足りないってことだ。特に、数で圧倒されている時は」

「数は変えられる。今朝よりも、この森の落とし子は三体減った」 ニッサは言い返した。

「それで、この次元全体で今日どれほどたくさん生まれたんだろうね?」

 ニッサは口を開きかけたが、何も言えないとわかった。

 その吸血鬼は指を組んだ。「君の失敗じゃない。不可能な賭けだ。何百何千ものエルドラージがいて、更に増え続けている。君がどれほどを倒したかは問題じゃない。ここに巨人たちが居座る限りは。君は賢いエルフだ。わかっているよね、僕の言葉が正しいと。君はずっとわかっていた筈だ」

 ニッサは気色ばんだ。

「君を怒らせるつもりはない。単に事実を喋っただけだ。君が、一体の巨人を倒すほど強力じゃないってことも」

 それは真実だった。ニッサの顔が紅潮した。自分では力が足りない、彼女はゼンディカーへとそう伝えたかった。それが耳を傾けてくれたらいいのだが。

「君はただ、免れないものを後回しにしているに過ぎない。だけど君がゼンディカーを離れる時間は迫っている」

「私は離れは――」 だが吸血鬼はニッサの言葉を遮った。

「君はいつか離れる。だからこそ、僕らの道が交錯したのを嬉しく思う」 彼は種をニッサの手に押し付けた。「君は力のあるプレインズウォーカーだ、そしてゼンディカーを深く気にかけてくれている。君はこの任務のためにいる。ニッサ・レヴェイン、僕たちの世界を救ってくれ」

 救える。初めて、ニッサは求められたことができると思った。

 彼女は種を受け取った。

 瞬間、彼女の頬が熱く疚しい血で紅潮した。自分の背後にエレメンタルが立っていることをニッサは思い出した。彼女はまだ、指示が終わっても大地に戻らないエレメンタルに慣れていなかった。アシャヤはずっとそこにいて、種を受け取るのを見ていた。

 ニッサはゆっくりと振り返り、目覚めし世界と顔を合わせた。エレメンタルは彼女よりもずっと高くそびえ、彼女の裏切り行為に直面しても冷静だった。ニッサのはらわたに羞恥が広がった。「待って」 彼女は吸血鬼へと振り返った……だが彼の姿は消えていた。死体もまた。

 ニッサは彼を探そうとも、追おうともしなかった。できるだろうが、しなかった。

 代わりに彼女はその荒廃した無人の野営地、エレメンタルの影の中に立った。手の中で絹が湿り気を帯びた。彼女は種の中の生命力を感じた。それらがいつの日か成長する木々――それぞれが、ゼンディカーの小さな一部なのだ。ならば、それらを守りたいと思うことの何が罪だというのだろうか?

「何で、少なくとも試してみなかったんだろう」 彼女はアシャヤを見た。「私はずっと言ってきたよね、あなたが私に望んでくれる事はできないって」彼女は待ったが、もちろんアシャヤは反応しなかった。「だけどこれは、これは私にできること。少なくとも、あなたにも知っていて欲しいの」 彼女は絹をポケットに仕舞った。「ゼンディカーは続く。それを知っていて。きっとそれで十分だから」

 アシャヤが反応した。開いた手をニッサへと伸ばした。そしてそのエレメンタルは拳を作りそれを胸の前まで引き、再びその手を伸ばし、ゆっくりと指を開いた。

「私はまだわからないの」 ニッサは囁き声で言った。「もしかしたら、他の誰かになら」

 ニッサの言葉でもアシャヤは止まらなかった。エレメンタルはその仕草をもう一度続けた。

 それが三度目の繰り返しを始めると、ニッサはそれを押しのけ、大地へと、ゼンディカーへと戻るように告げた。時間だった。

 だがエレメンタルはニッサの指示を無視した。その根はねじれて地面に戻ることはなく、その枝が張りを失うこともなかった。

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〈目覚めし世界、アシャヤ〉 アート:Raymond Swanland

 ニッサは更に強く押し返した。「行って」

 アシャヤはわずかにニッサへと近づき、手を伸ばし、再びその仕草を繰り返した。

「もういいの」ニッサは力を込めてそれをエレメンタルに向け、去らせようとした。

 だがそれはただそこに立って、手を伸ばしては掴み、そして掌を空へと広げた。

「何でそれを続けてるの? わからない」 ニッサは言った。「何を意味するのか、わからない」 彼女はアシャヤの動きを模倣した。「これは何?」

 アシャヤが拳を作りそれを胸まで引くと、ニッサもそうした。「ええ、こうね、でも……」ニッサの息が止まった。彼女が指を開いた瞬間、そこから流れ出したのは輝く緑の線だった。それは大地へと潜り、荒廃をくぐって遠くに再び現れ、木々の間をうねり、植物の葉の間をよじれていった。それは力に揺らめいていた。

 息もできず、ニッサは二本目の指を開いた。別の線が現れた。この一本は僅かに異なる方角へと伸び、上方に向かうと森の最も高い枝の間を縫うように進んだ。

 三本目の指。三本目の強い繋がり。世界がニッサの前に開け、緑色に輝いて力を放っていた。力線。ニッサはその力について耳にした事があった。大地の力、カルニの中心の力、世界全体を流れる力。

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カルニの心臓の探検》 アート:Jason Chan

 ニッサが空へと広げた掌から、最後の力線が流れた。それは逞しい根のような、最も太い線だった。それはニッサの掌からアシャヤへと伸び、エレメンタルの胸、腕、脚を形成する根と枝を曲がりくねった。それはニッサとアシャヤの全てをつなげる線だった。彼女とゼンディカーの魂とを繋げる線だった。

 ひとつ。

 それは言葉ではなかった――聞こえるよう語られた言葉ではなかった――アシャヤからニッサへと届いた、一つの感情だった。

 ひとつ。

 その輝く、緑の力は広がった。ニッサの掌から腕へ、胸へ、そして彼女は理解した。この力、この繋がり。今ここにある全てこそ、アシャヤがニッサへと見せようとしていたものだと。今や、ニッサはそれを見る術を知った。

 ニッサは指を一本また一本と動かし、その複雑な繋がりを感じた。まるで何百もの新たな手足を持ったようだった。指は木々、拳は茨、大地そのものが腕であり脚。ゼンディカーの力が彼女の内にうねり……そして脈打った。

 ひとつ。

 彼女は間違っていた。ハマディは間違っていた。ゼンディカーは彼女に、一人だけでやれと言っていたのではなかった。世界は彼女を選んではいなかった。選択などなかった。彼女は世界の一部、あらゆる生命と繋がるもの。一本の木は一本の枝を選ばない、枝はただ木の一部。それは木と一つのもの。その木が成長したなら、たわんだなら、もしくは倒れたなら……枝もまたそうなる。そして枝が風に鳴る時、葉を生やした時、果実を実らせた時、木もまた。ニッサはゼンディカーに選ばれたのではなく、ゼンディカーを選んだのでもない。彼女はゼンディカーと一つなのだから。

 ゼンディカーが危機に瀕している限り、ニッサも。そして世界が戦い続ける限り、ニッサも。疑問も、躊躇もなく。

 ゼンディカーのために。その想いがアシャヤから放たれた。

「ゼンディカーのために」 ニッサの声がうわずった。

 ゼンディカーのために! アシャヤの確信がニッサを満たし、彼女を通る輝く力線が輝き、力に沸いた。

「ゼンディカーのために!」 彼女は叫んだ。

 ニッサが森へと駆けると、その熱烈な想いを反射して世界の全てが照らし出された。

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活力の力線》 アート:Jim Nelson

 彼女はあの触手のエルドラージが野営地を去る際に残した荒廃の軌跡に沿って走った。その情熱の標的だった。

 ほんの数歩で、森がニッサにとって全く新しい場所になったとわかった。途方もなかった。

 彼女は以前にも数えきれないほど森の中を走ったが、このような経験をしたことはなかった。これは、ニッサは思った、大地と真に繋がるというのはこういうこと。

 世界は彼女の存在に反応した。足が地につく度に、土は明確にその形を作って受け止めた。足首をひねってしまう穴は閉じられた。つまずかせる根はその代わりに彼女の足を包み、前方へと放ち、茨に進ませるとそれはニッサを枝へと跳ね上げ、枝は彼女を受け止めて振り回し、苔のベッドへと優しく着地させた。それはまさに、ゼンディカーと一つになるようだった。

 アシャヤはニッサの隣を大股で走った。その存在は確固としていた――ニッサはエレメンタルを動かそうという意思やエネルギーすら必要とせず、導く必要もなかった。アシャヤは知っていた。彼女はニッサが行く所を知っていた、ニッサが必要とするものを、ニッサが感じるものを知っていた。

 アシャヤはニッサの自責を知っていた。

 そして彼女はニッサの決意を知った。世界を危機から救い、今その手に持つ種を、いつの日かこのゼンディカーの土に植えるのだと。

 あの吸血鬼がニッサに種を与えたのは正しかった。ニッサはゼンディカーを救える、彼のその確信もまた正しかった。だがこの世界を去るべきだと考えた彼は間違っていた。彼女はあの巨人を倒せない、その考えが間違っていた。彼女が背負う世界とともに、彼女を導くゼンディカーの力とともにあれば、不可能などない。

 彼女はアシャヤを見た。二人が感じるものは同じだった。大胆にして力強く、意欲に満ちている。共に戦う覚悟はできていた。

 岩の表面が分かれてニッサを通し、触手のエルドラージの姿を露わにした。その怪物に残された触手は一本だけで、防ぐものもなく花の絨毯の上を小走りに駆けていた、その足跡に荒廃を残しながら。

 これ以上はさせない。

 ニッサは前方に駆けた。岩の表面が砕け、それに生える茨と苔を乗せたままニッサの腕を流れる輝く力線を辿り、彼女の動きとともに並んで共に一つの姿となった。

http://media.wizards.com/2015/images/daily/cardart_WWK_Vastwood-Zendikon.jpg

巨森のゼンディコン》 アート:Rob Alexander

 ひとつ。

 エルドラージの背後の荒廃に足をつけた時、ニッサは攻撃の構えをした。大地は彼女の手の中、内から輝く槍となった。背後で、アシャヤが彼女の動きを鏡写しにした。二人の攻撃は合わさり、確実で、致命的だった。大地の槍がエルドラージを切り裂き、同時にアシャヤの拳がその骨ばった外殻を叩き潰した。

 崩れ落ちながら、その怪物は空気の抜けるような最期のさえずりを上げた。

 それは最早、ゼンディカーの草一本すらも傷つけることはない。

 ニッサは倒れた怪物の上に立ち、大きく息をついた。疲労からではない――彼女は奮起していた、更に求めていた。立ち上がる時だった。戦う時だった。世界を救う時だった。

 アシャヤはニッサが感じているものを理解した。彼女もまた同じものを感じていた。彼女はその巨大な手を下ろし、ニッサの目の前の地面に広げた。開き、招いた。

 ニッサがエレメンタルの枝のような指に乗ると、輝く緑の力が突風となって渦巻き、彼女を満たして溢れた。「ゼンディカーのために!」 ニッサは叫んだ。

 アシャヤはニッサを持ち上げ、その頭上、木製の分厚い角の間にある窪みに乗せた。輝く力線が反応し、アシャヤから織り上げられてニッサを通り、またアシャヤへと戻った。その力線はアシャヤが動き出して森を進むとニッサを繋ぎとめた。それは巨人を追うもう一体の巨人だった。

 彼女らは狩りへと赴くのだ……その獲物は、エルドラージの巨人。

 ニッサは両腕を広げ、指から走る力線に乗せて呼び声を送った。

http://media.wizards.com/2015/images/daily/cardart_WWK_Groundswell.jpg

地うねり》 アート:Chris Rahn

 応えて、ベイロスのような巨体のエレメンタルが軍勢を成して現れた。彼らはニッサとアシャヤの隣に並び、攻撃に、世界を救う戦いに加わった。

(Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori)

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