『マジック2015』―私はそこにいる

更新日 Feature on 2014年 6月 27日

By Aaron Forsythe

原文を読む

 ただありとあらゆるものを詰め込むことが必要なときもある、のです。

 ここマジック:ザ・ギャザリング開発部のメンバーが義務だと思っていることですが、毎日の終わりまでに何かを作らなければならないという状況に追い込まれたとき、アイデアをすぐに使い果たしてしまわないようにする強烈なプレッシャーがあります。「これを先行して作る必要が本当にあるのか?」と、私たちの中の慎重派は言うでしょう。「つまるところ、それは2037年のブロックでうまく活用すべき貴重なデザイン空間なんだ」と。

アート:Phill Simmer

 いやまあ、実際私たちはそこまで先のことは言いませんが、でもセットには本当に必要なものとあとちょっとだけを入れることにしています。そうすることによって、後で使えるものが多く残るのです!

 『マジック2015』では、私はこの考え方の多くを投げ捨てました。すごいアイデアを全部詰め込んだのです。

なぜ

 1人のデザイナーとして、『テーロス』や『イニストラード』のようなブロックのセットに詰め込みすぎることはよくあることです。基本セットと違い、ブロックのセットでは、私たちが入れたいと思っているあらゆるカードやデッキに繋がる新しいキーワード、独創的な世界構築など、ありとあらゆる愉快なおもちゃが活用できます。つまり、アイデアをすぐに枯渇させてしまう危険性だけでなく、あらゆるクールなものを詰め込んだために複雑怪奇になってしまう危険性も伴っているのです。

 基本セットにはそういう問題はありません。実際、その逆です。マジックの「基本線」セット、また新規プレイヤーがこの素晴らしいゲームに触れる入り口として、基本セットはほぼ無地になるのが普通です。設定はほとんど「伝統的ファンタジー」であり、『イニストラード』のゴシックホラーや『テーロス』のギリシャ神話といったクリエイティブ的な独自性は追加されていません。使われているメカニズムは理解してもらいたい「常磐木」キーワードと、変化を付けるために人気のあるものを1つ再録するだけに制限されています。

 これによって、始めようかと思う人を怯えさせないようにしています。要素を1つ付け加えれば、新規プレイヤーが最初に覚えなければならないことが1つ増え、「わかった」と思えるまでの障壁が1つ増え、そして基本を会得した人たちと同じマジックを楽しめるようになる可能性が1つ減ってしまうことになります。

 同時に、マジックをもっとも単純な部品へと分解することは、感動的な体験には繋がらないということも判ってきました。もちろん、理解するだけでいいなら簡単になりますが、しかし、好きになるかは別の話です。《熱心な士官候補生》と《灰色熊》の戦闘はわかりやすいものですが、しかし誰かをマジックに引き込むいいものとは言えません。入り口がそれだったなら、初心者はきっと「どっちの数字が大きいかを見ればいいってことか?」と聞いてくることでしょう。違いますよ! マジックはもっとずっと奥深くて、想像したこともないような形で頭を使うものです! 初心者への紹介では、シンプルだと見せておきながら、奥深さや可能性、何時間も、もしかしたら何年も!頭を使うような遊びなんだと予想できるようにする必要があるのです。

アート:Jason Felix

 そのため、私は過去数年にわたって有益だったガイドラインを守りながら基本セットに入れられる深さはどれだけなのかを知りたいと思い、ここ4年でははじめて、裏方から飛び出してリード・デザイナーをすることにしました。幸いにして、それまでの基本セットには私が作る元にできるよい材料がたくさんあったのです。

だれ

 マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterがいつも通りデザイン・チームのメンバー全員の紹介をしてくれていますから(編訳注:翻訳は6月30日掲載予定です)、私は軽く触れるだけにしておきます。マイク・ギルス/Mike Gillsはブランド・チーム代理人で、最初はこのセットで好き放題やっていいことにした多くの外部デザイナーとの優秀な橋渡し役でした。ショーン・メイン/Shawn Mainは私の一押しのデザイナーで、無数のカードのアイデアを作ることに関して頼りにしています。また、ギルスが他のゲーム会社で働くためにウィザーズ・オブ・ザ・コーストを離れてからは、外部デザイナーとの橋渡しを務めてくれました。ジェンナ・ヘランド/Jenna Hellandはチーム内のかけがえのないクリエイティブ代理人でした。彼女はストーリーが『マジック2015 ― デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ』で展開しているストーリーとうまくかみ合うようにすることと、私たち(あるいは彼女自身)が思いついた、奇妙なトップダウン・カードのアイデアを精査することの両方を担当していました。マックス・マッコール/Max McCallはデベロップの視点を持ったメンバーでした。魅力的な再録カードと深いリミテッド環境を好む彼の存在は、チームにとって大きな助けになりました。

 面白いチームでしたし、このチームで本当に多くの面白いものを思いついたのです。

なに(1)

(1) 外部デザイナー

 2012年のこと、まだM15がどうなるか想像も付かなかったころ、私は、特定の基本セットを他の基本セットから差別化する、もっと過激な方法はないかと探していました。私の注意を惹いたのは、シアトル近辺、あるいは全世界中に存在する他のゲーム会社との相互関係の数でした。近傍にあるビデオゲームのメーカーとマジックをプレイしに派遣したこともありますし、心からの要望に応えて記念品のパッケージを送ったこともあります。また、友人や元同僚から、周囲でマジックが活発にプレイされているという話を聞いたこともあります。マジックは、他のゲーム・メーカーでプレイされているということは明らかでした。それを誇示する方法はないでしょうか? 他の偉大なゲーム心をセット作成に取り入れるというのはどうでしょう?

 ブランド・チームの一員でゲーム社会に太いパイプを持つマイク・ギルス/Mike Gillsの協力の下、M15でゲーム・デザイナーやゲーム社会の著名人に足跡を残してもらおうという計画が持ち上がりました。ショーン・メインがこのこととその結果できたカードについての詳細な話をしてくれることになっていますが、一言、私はこのことによってこのセットに加えられる突飛さがどの程度になるか楽しみです。

アート:David Palumbo

(2) 『マジック2015 ― デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ』用デッキ作成

 もう1つ、M15の形を決めた大きな要因が、『デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ』のプレイモデルの変化でした。ばらばらのデッキを使って、それの特定の追加カードをアンロックしていくというのではなく、コレクションを集めて好きなように組み上げられるようにするというものになりました。『マジック2015 ― デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ』には基本セットのカードを多く含みたかったので、基本セットを、ゲーム中に手に入れられるコモンやアンコモンだけでも幅広いデッキのアイデアをもたらしうるものにする必要がありました。私のチームは様々な方法で攻撃してくる、またその一方で自分なりにカードを組み合わせることもできる、環境を作り上げました。

 この種のデザインの恩恵はただ『マジック2015 ― デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ』だけにとどまらず、エントリーセットやデッキビルダーセットなど、テーマ的デッキ作成を表現しようとする商品にも、さらにはM15リミテッド環境にも及びました。2色の組み合わせそれぞれに、焦点となっているいくつかのプレイスタイルなりデッキのテーマなりが存在しますが、その部品の多くは交換可能で、非常に豊かで再プレイ性の高いリミテッドを生み出します。

 実際には、デッキのテーマというのは大きく2つに分類されます。友好色の組み合わせは多少わかりにくく、普通のマジックのプレイ・パターンにはまります(例外は緑白です。これについては後で説明します)。例えば赤緑は、マナ加速をして大型クリーチャーを出す。白青はテンポと回避能力に長ける、と言った具合です。一方、敵対色はもう少し特徴的で、特定のカードの組み合わせやはっきりした軸になるカードに焦点が当てられています。例えば青赤はアーティファクトと、《爆片破》のような活用にアーティファクトが必要なカードに焦点が当てられています。黒緑は墓地を中心にしており、多くのものを墓地に送ることによって利益を得るようになっています。

なに(2)

 セット作成の足がかりとする大きな牽引力を手に入れたので、次はそれぞれの中身を作り始めました。

(3) 召集

 M11、M12、M13と同じように、セットにさらなる色と個性を与えるためにキーワードの再録を行いたいと考えました。しばらくの議論を経て、旧『ラヴニカ:ギルドの都』セットの召集に落ち着きました。『ラヴニカ』と同じように、このメカニズムはその本質である緑と白に重点を置くことにして、ドラフトにおける緑白のアーキタイプの中心に据えました。しかし、それで終わりにはせず、他の色ではそれぞれ少し個性をつけることにしました。黒では、儀式のような呪文の詠唱、赤ではクリーチャーが関与する戦闘用魔法。青にさえ、このメカニズムの新しい使い方をするカードがあります!

(4) ガラクの物語

 デザインの初期に、私たちは『マジック2015 ― デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ』で語るべき物語、すなわち堕落した《野生語りのガラク》がプレインズウォーカー狩りをするという物語を認識して、そして物語の上で出会う中心人物と舞台にスポットライトを当てることでそれを『基本セット2015』にも反映することにしました。

アート:Jung Park

 物語の中心人物(と、おなじみの顔ぶれ)を伝説のクリーチャーのサイクルとして加えました。基本セットに伝説のクリーチャーが入るのは、《群衆の親分、クレンコ》や《空召喚士ターランド》など、大成功したM13のサイクル以来です。スタンダードや統率者戦、その他どこででも今年のカードを見るのが楽しみです。

 もう1つ、物語にそぐうものというと、ガラクを今日の姿にしてしまった伝説のアーティファクトを神話レアで収録しています。そのカードについて知りたい方は、Uncharted Realmsをお楽しみに。

(5) 「《密林の猿人》」

 もう1つ、ダグ・ベイアー/Doug Beyer率いるM13のデザイン・チームの作り上げたものとして、《火打ち蹄の猪》など、他の土地タイプの存在によって強化されるアンコモンのクリーチャーのサイクルがありました。内部では、元となった『アラビアンナイト』の有名クリーチャーにちなんで「《密林の猿人》」サイクルと呼んでいました。そして、M15にもこれを逆回転で(赤のクリーチャーは森があるときに強化される、といった具合です)導入することにしました。これらの存在は、リミテッドではその色に合わせようという大きな原動力になりますし、また、色を「散らす」ことへの動機付けにもなります。

(6) 色のロード

 10種類の2色デッキのテーマがあるだけでは足りないとばかりに、私は1色デッキをプレイしようとする動機付けもしたいと考えました。そのため、単色にしたくなるよう、「模範」と呼ばれるアンコモンのサイクルを作ったのです!

 マーク・グローバス/Mark GlobusがM14のデザインでしたことを見て、私は、デッキ作成における簡単な条件の強さがはっきりと示されたと思いました。そして、これらのロードはまさにそういった条件付けを行うという意味で非常に有用なものです。ドラフトにせよ、カジュアルな構築にせよ、模範は単色デッキに強烈な力をもたらしてくれることでしょう。

(7) スリヴァー!

 え? スリヴァーはM14のカードじゃないか、ですって? はい、そうでした。でもM14でスリヴァー・デッキを作りたかった人はそれ以来新しいおもちゃを手に入れていなかったのです。スリヴァーはテーロスには住んでいませんから、M15が新しいスリヴァーを《風乗りスリヴァー》《捕食スリヴァー》その他のM14のスリヴァーとともにスタンダードに投入する唯一のチャンスだったのです。アンコモン5枚のサイクルの多くは、単独でも使えますが組み合わせると壊滅的です。そして、熱烈なスリヴァー・ファンが待ち望んでいた新しい神話レアのスリヴァーも強烈です。

(8) 神話レアの「魂」

 神話レアと言えば、神話レアのクリーチャーによるサイクルはM12のタイタン以来試してきませんでした。タイタンはもちろん強烈なものでしたが、その役割を完璧にこなしていたかというとそうは言えません。構築のマッチにおいてはどれだけ早くタイタンを戦場に出すかの競争になってしまい、その結果私たちは《ワームとぐろエンジン》や《聖別されたスフィンクス》など、さらにありえない6マナ・クリーチャーを投入して対抗しなければなりませんでした。それでは、もう少し正しい強さにしたタイタンはどんなものになるのでしょうか?

アート:Raymond Swanland

 デザイン中に、ショーン・メインが出したアイデアが、マジックに存在する様々な次元を体現するクリーチャーのサイクルを作るというものでした。『マジック2015 ― デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ』で5つのキャンペーンの舞台はそれぞれ異なる次元で、新規のプレイヤーもそこで取り上げられている多元宇宙の各地に馴染みがあるはずです。色は非常にうまく割り当てることができました。ゼンディカーは緑、イニストラードは黒、テーロスは白。ラヴニカは何色でもよかったんですが、ギルドパクトの体現者がジェイスなので青にするのが自然に思えました。このサイクルに6種類目として、新たなるファイレクシアを表すアーティファクトを投入しました。ですが、赤はどうしましょう?

 赤には2つの選択肢がありました。1つめは次の舞台となるタルキール。非常に赤っぽい場所ですし、未来を予見させるのはとてもクールです。ですが、結局私たちが選んだのは馴染みある「基本セット」の舞台のザスリッド、カロニア、テューン、その他が存在する古典的ファンタジーの次元であるシャンダラーでした。シャンダラーは『マジック2015 ― デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ』でも重要な場所で、このクリエイティブ的な繋がりを維持することのほうが、まだ数ヶ月姿を見せない世界を見せるよりも重要だと判断されたのです。

 シャンダラーの魂が何をするのでしょうか?

 これは非常に強烈なカードです。

 デザインとデベロップはこのサイクルが真っ当に動くものに仕上げるために長い長い時間を費やしました。サム・スタッダード/Sam StoddardはLatest Developmentsの記事でその何度もの調整繰り返しについて語ってくれることでしょう。結局のところ、私にとってもっとも重要だった、「魂」が死語に何か意味を持つことはうまく再現されています。

 魂サイクルは全てが6マナ6/6で、キーワード1つと、墓地からもう1度追加で使える起動型能力1つを持っています。それぞれ、色と世界の雰囲気を詰め込んだつくりになっていて、魂が死んだ後でも対戦相手に災厄を巻き起こすのです。

なに(3)

 セットの実際のデザイン以外にも、M15には様々な要素が詰まっています。

(9) 「カードを作ろう」

 外部デザイナーというプロモーションを始めたので、それ以外のゲームのファンのグループ、つまりあなた方に協力を仰ぐこともできるようになりました。〈無駄省き〉は、まさにこのウェブサイトで昨年作られたものです(リンク先は英語)。このカードをM15で実際に目にして楽しむことができるでしょう。

(10) 進化したカード枠

 M15からカード枠が変更になることについて、今年の前半にお話ししました。しばらく使ってみたところ、もう当たり前に感じるようになりました。ホログラフのマークもカワイイですね!

(11) ブランドプレイ/プレリリース・ボックス

 これまで、基本セットのプレリリースでは特別な出し物をしませんでした。しかし、ガラクの物語は非常に魅力的なので、現実にもそれを反映させることにしました。詳細はどこかで告知されるでしょうが、一言で言うと、ガラクは強力な相手で、そしてあなたはゲームだけでなくガラクにも勝たなければならないのです!

 プレリリースについての詳細は、お知らせ記事をご参照ください。

アート:Brad Rigney

(12) プロツアー

 驚くべきことに、基本セットのプロツアーは今まで開催されてきませんでした! ついに、この不公平が是正されます。このセットを使った、大舞台での最高の対戦を見るのがとても楽しみです。

 プロツアー『マジック2015』はオレゴン州ポートランドで、8月1〜3日に開催されます。twitch.tv(や、ニコニコ生放送)で動画配信もされますので、ご期待下さい。

ぜんぶ

 かなりの時間と労力、さまざまな要素を費やしましたが、その甲斐あって『マジック2015』は史上最もエキサイティングな基本セットになりました(偏った見方なのは認めます)。物語もあり、クールなデッキが組め、綺羅星のようなゲストがいて、楽しい再録があって、プロツアーがあって、プレリリースの出し物も魅力的です。他に何が必要でしょうか?

 『マジック2015』には全てがあります!

@mtgaaron

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

最新Feature記事

FEATURE

2022年 5月 17日

『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』をコレクションする by, Max McCall

『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』は、フォーゴトン・レルムの重大な岐路となるだろう。そこでは意匠を凝らしたマジックのカードをはじめ、異国情緒あふれる品々が何でも手に入るんだ。 6月10日にお近くのゲーム店やAmazonのような通販サイトで発売されるこのセットには、統率者戦ファンにとって素晴らしいカードにあふれている。ここでは、君たちが出会うであろう感動的なも...

記事を読む

FEATURE

2022年 5月 17日

『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』 by, Harless Snyder

ようこそ、旅のお方! 長期にわたるダンジョン探索を経て、あなたは休息をとるために近くの街へ向かいました。今日は朝から季節外れの暖かさでしたが、1時間ほど前から空は深い灰色に覆われ、雨も降り出しています。未舗装の道は濡れてぬかるみになり、一歩進むごとにブーツから足が抜けそうです。それでもあなたは、苦心しながらなんとか進みます。疲れ切って凍えそうなあなたの目に宿屋の看板が映...

記事を読む

記事

記事

Feature Archive

過去の記事をお探しの場合 アーカイブのページをご覧ください。人気の著者による、数千にわたるマジックの記事が残されています。

一覧を見る