プロツアー『マジック2015』と、旅の終わり

更新日 Feature on 2014年 8月 27日

By 中村 修平

 互いにマリガン後とはいえ、対戦相手は初動《新緑の安息所》からの《腐敗喰いの蛆》という動き。
 盤面に並ぶのは《》《》、そして《》《平地》。どうやらこの環境では珍しい多色デッキ。

 一方私のデッキは派手なカードこそありませんが典型的な青白の飛行ビートダウンデッキ。
 3、4、5ターン目と途切れなく飛行クリーチャーを展開していくこちらの陣営に対して、《サテュロスの道探し》からの3/3程度の《衆生の熾天使》では、1本目を取るのにそう時間はかかりません。

 2本目も好調そのもの。
 《サテュロスの道探し》を連打する対戦相手に対して、3ターン目にきっちり追加の土地へたどり着き、飛行で攻め立てる展開。
 5ターン目に《幻影の天使》を出すタイミングで《無私の聖戦士》の2マナを立たせることができずに、考えうる最悪のカード《火炎放射》で飛行戦力が半壊してしまいましたが、それでも4/4の天使と駄目押しの飛行戦力で残すところ1ターン。

 《サテュロスの道探し》で《テーロスの魂》が墓地に落ちて、これを起動。
 全体に+2/+2、先制攻撃、そして絆魂。

 残していたクリーチャーで即死こそ防ぎましたが、挽回できる要素は全く残っていませんでした。

 そして3本目、
 やや遅めながらキープせざるを得ない手札から、《火炎放射》と《テーロスの魂》が《再供給》で帰ってきて…

 まるで今シーズンのプロツアーを表していたような初戦でした。

 もちろん程度はあれど、マジックとはそういうゲームです。マジックで常に勝てるだなんて幻想は観客席のものであって、私がいるところのものではありません。
 実際には理不尽の連発ですし、むしろ勝てる時というのはそういうものをやっている側ということでもあります。

 それでも、それにしてもシーズン内の全てのプロツアーで追加のプロポイントを取れずに終わるとは。
 嵐に備えていたつもりでした。ですが嵐がここまで続くとは思っていませんでした。

 最終的な獲得プロポイント41点で、プラチナまで4点足らずでゴールドレベル。

 これが私の今期の成績です。
 シーズンが始まる前から厳しいものになるのは予想できていましたが、予想以上にグランプリで頑張ったのに、予想以上に最終戦で1点を取りこぼし続けて、予想以上にプロツアーで負けすぎたシーズンでした。

 あれがこれがと言い募ることもできますが、意味があるとは思えませんし面白く書けそうにもないので省略します。
 かつて、好きだから出来るだけやり続ける為にと選んだ道ですが、かなり前から決めていたことがあります。

 しばらくマジックを辞めます。

 このしばらくというのがどれくらいの期間であるかは私にも解りませんが、絶対にやらないなんて言うにはそれほど意思の強靭さを信じていないので、とりあえずそういう表現にしているだけですね。

 そしてこの場合のマジックとは、私にとってマジックの全てであった競技マジックについて。

 まあ素直に競技マジック引退宣言とでも言った方が良いでしょうね。
 少々疲れきってしまったのです。

 幸いなことに、いつでもプロツアーに戻ってこれる身分でもあることですし、2〜3年くらいしたらひょっこりやる気になって戻ってくるかもしれませんね、それではその時まで世界の何処かで…

 とまで書いておいたところで急展開。

 2014年8月から始まる、プロ・プレイヤーズ・クラブの新たな拡張

 ゴールドレベルの規定変更、おまけに殿堂の報酬変更があったので、少々頭を抱えてしまっているのが現状。

 ちょっと文章に時間差が発生していたのでそれまでのものを補足するなら、殿堂というのはある意味これ以上ないアガりであり、ロールプレイングゲームで例えるならクリア後の世界で特に目的もない状態でやっているにも近いというところです。そこから、気がつけば実に3年も経過していたのです。

 なかしゅー世界一周2011・第18回:グランプリ・ピッツバーグ(殿堂顕彰選出に際して)

 おまけに、ちょうどこれで終わるには都合が良いプレインズウォーカー・ポイントによる世界選手権がいつの間に有耶無耶になって、無くなるかに思われたプロポイントシステムが何事も無く以下略。
 この記事ではついつい色々と言い過ぎてしまうこともありましたね。連載中に特定箇所の表現を巡って1ヵ月ばかり押し問答をし続けたなんてことや、もっと遡れば帰国後すぐに原稿を出したのに編集の都合で掲載は半年遅れなんてことなんかもありましたっけ。(編注:なかしゅー世界一周 「世界選手権2013」編・その1のことです)

 一方でまだやれると思ってなくもない節も私にはもちろんあります。
 まあ、この辺はなんやかんやいっても負けず嫌いですしね。
 未練?もちろんあるに決まってるじゃないですか。
 そんな不安定な状態なところに、来期のプロツアーでの待遇変更というのは、さながら棺桶に入れられて葬式を挙げられているところに蘇生してしまった間の悪さ感。
 かと言ってこのまま火葬されるのもそれはそれでなんだかなというものです。
 見る分には面白いかもしれませんが、当人としてはこれほど困ることもないでしょう。もちろんそんな経験は無いので想像ですが。

 というようなことを考えていた結果、こんな方針となりました。

  • 競技マジック引退路線は変わらず。中途半端にやるのはこの1年。
  • 基本的に、グランプリには参加しません。
  • プロツアーだけは参加、航空券が貰える上に行くだけで報酬がもらえますし
  • プロツアーに行くからには納得できるだけの準備は当然していきます。なので中途半端と言われればその通り。

 かつてゲイリー・ワイズというプロプレイヤーがシーズン開始にあたってこのシーズンでの引退宣言をしたことがありますが、私のものも概ねそのようなものです。
 色々と含みを持たせてはいますが、フルタイムでプロレベルの維持が不可能だったのに、片手間でそれができるなんていう幻想は全く持っていないので。

 でもプロツアーに関連した「接続」グランプリは、相乗りできるし練習にもなるので出るかもしれませんね。航空券ロハにできそうなら。
 名づけて退役将校、年金だけはちゃっかりもらっておこうプラン。今シーズンが終われば予定通りあとは野となれ山となれです。

 あ、プロツアーを中途半端に勝ってしまったらその時はゾンビの如くプラチナ復帰することを画策しないとは限りません。

 と言ったところでしょうか。
 さて書きたいことは全て書き終えました。
 なんやかんやでマジックには関わり続けるでしょうが、なによりも今の私に必要なのは休息。太平洋のどこかで記憶もなく突っ伏したいというのが最も素直な心情です。

 それではこのあたりで、最後までありがとうございました。

中村修平

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